有識者からのご意見4
「メールマガジン労働情報」1000回を記念して
仁田 道夫 国士舘大学教授

※このページは、平成26年4月3日発行の「メールマガジン労働情報」1000号特別編集号を転載したものです。

持続は力

メールマガジン「労働情報」1000回おめでとうございます。何事も、1000回続けるのは大変なことで、「持続は力なり」を痛感します。こうした持続は、惰性で達成されるものではなく、時々の社会情勢やユーザーニーズへの対応のために、継続的な改革努力が求められます。1000回記念の企画も、そうした改革努力の一環であろうと思います。

正統的でバランスのとれた情報の提供

500回記念の企画による識者の指摘を読むと、さまざまな職業・社会的属性をもつユーザーの広がりを感じとることができます。これらの人々は多様な労働情報ニーズをもつに違いないので、そうしたニーズを勘案しつつ、バランスのとれた情報提供を行っていくことはなかなかに難しい課題に違いありません。担当者のご苦心が思われます。

上記500回記念の記事のなかで、私がとくに興味をひかれたのは、新聞記者の方のものでした。世の中の情報に最も多く、また最も早く接するだろう記者の方がメールマガジンを活用しているというお話に、目を開かされる思いがしました。現代は高度情報化社会と規定でき、それも、個人間のつぶやきから、地球上のあらゆる国で起こっている事件情報まで、多層的で大量の情報が間断なく降り注いでいる社会ということができるでしょう。そうした中では、情報の選別ということが最も大事で、また難しい課題となります。端的に言えば、いかにいらない情報を捨てるかが課題だとも言えるわけです。

私などは、ガラパゴス世代に分類され、高度情報化社会とは、ごく限定したおつきあいになっています。実際、そうしたシステム化された情報入手方法より、原始的な情報入手方法のほうが効率的な場合も多々あります。私たちの研究者仲間に、「歩くデータベース」と言われている人がいます。これこれのテーマで、信頼度・有用度の高い調査報告ないし、それに基づく論文を知りたいというとき、彼にメールを書いて質問すると、最も信頼性・有用性の高い助言を得ることができるので、そのように呼ばれているわけです。

メールマガジンに求められているのは、そうした特定度の高い、特殊な情報ではなく、まず何よりも労働に関する正統的でバランスのとれた情報ではないかと思います。新聞などで報道された統計情報などでも、つい見落としというようなこともあり、また、バランス感覚のある見方で情報を整理するのに役立つということが求められているように思います。

ほかでは得にくい情報の提供

もちろん、上記のような一般的情報だけでなく、メールマガジンでしか入手できないような情報も提供されています。そのなかで、代表例は、海外情報でしょう。日本の一般メディアは、海外情報の質量において、海外の高級紙、たとえば、ニューヨーク・タイムズや、ファイナンシャル・タイムズなどに比べて劣っており、実務家が国際感覚を持ち続けるためには、そうした外国由来の情報に直接アクセスするか、なんらかの情報チャネルをもつかしなくてはなりません。

この点で、メールマガジンでは、多くの海外労働情報に接することができ、そのメリットは大きいと思います。これをさらに充実していくことが必要ですが、それには、JILPTが独自に収集している情報を活用するとともに、厚生労働省や労使団体などが収集している海外情報を集めて整理し、人々に知らせていくことも有益なのではないでしょうか。

ネット情報の双方向性という特性を考えると、なんらかの形で、ユーザーから職場や行政の現場で起きている事柄について、投稿を受け付け、それを整理して、他のユーザーたちに提供していくというアプローチも考えられます。しかし、これを適切に運営していくためには、相当の労力が必要になるでしょう。

最後に、多種多様なイベント情報は、大変有益なものだと思いますので、充実してほしいものだと思います。

平成26年4月3日掲載