監督指導を行った事業場の42.2%で違法な時間外労働
――長時間労働が疑われる事業場に対する2024年度の監督指導結果
国内トピックス
厚生労働省がさきごろ発表した2024年度に長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果によると、監督指導を実施した事業場の42.4%で、違法な時間外労働があった。そのうち、時間外労働・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超える事業場の割合は48.7%と半数近くに及んだ。
違反が認められた事業場の全体割合は81.1%
監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に関係する労災請求が行われた事業場を対象に実施される。監督指導結果によると、2024年4月~2025年3月の1年間で労働基準監督署は2万6,512事業場に対して監督指導を実施し、その81.1%にあたる2万1,495事業場で労働基準関係法令違反が認められた。
主な違反事項別にみると、違法な時間外労働があったのが1万1,230事業場(監督指導実施事業場の42.4%)で、過重労働による健康障害防止措置が未実施なものが5,691事業場(同21.5%)、賃金不払残業があったのが2,118事業場(同8.0%)となっている。
違法な時間外労働があった事業場の5割弱が、最長の時間数が80時間超え
監督指導で把握した実態をみると、違法な時間外労働があった1万1,230事業場のうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えていたのは5,464事業場(48.7%)。その内訳をさらに詳しくみると、月100時間を超えていたのが3,191事業場(28.4%)、月150時間を超えていたのが653事業場(5.8%)、月200時間を超えていたのが124事業場(1.1%)だった。
48.6%の事業場に過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導
主な健康障害防止に関する指導の状況をみると、監督指導を実施した事業場のうち、1万2,890事業場(48.6%)に対して、長時間労働を行った労働者に対する医師による面接指導等の過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。指導事項は、「月80時間以内への削減」(7,117事業場)が最も多く、これに「月45時間以内への削減」(5,642事業場)、「面接指導等の実施」(2,522事業場)、「長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議の実施」(1,918事業場)、「面接指導等が実施できる仕組みの整備等」(590事業場)、「ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策に関する調査審議の実施」(547事業場)と続く。
また、4,016事業場(15.1%)に対して、労働時間の把握が不適正なため、厚生労働省が定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導した。指導事項は「始業・終業時刻の確認・記録」(2,390事業場)が最も多い。
(調査部)
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~最近の監督行政の結果から~
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