ストライキなどの「争議行為を伴う争議」は昨年は76件
――厚生労働省の2024年「労働争議統計調査」結果
国内トピックス
厚生労働省が8月20日にとりまとめた「労働争議統計調査」結果によると、2024年の「総争議」件数は前年比14件減の278件で、このうちストライキなどの「争議行為を伴う争議」は同1件増の76件となった。「総争議」は2年ぶりに減少したが、「争議行為を伴う争議」はほぼ横ばい。なお、労働委員会などが関与した「争議行為を伴わない争議」は同15件減の202件だった。
ストライキなどの「争議行為を伴う争議」はほぼ横ばい
2024年の労働争議の状況をみると、「総争議」の件数は278件(前年調査292件)、総参加人員は9万5,325人(同10万1,253人)となっており、前年に比べ、件数は14件(4.8%)減、総参加人員も5,928人(5.9%)減少した。「総争議」件数は、長期的には減少傾向で推移してきたが、2019年以降は横ばい圏内で推移している。
「争議行為を伴う争議」の件数は76件(同75件)、行為参加人員は8,982人(同8,414人)で、前年に比べ、件数は1件(1.3%)増、行為参加人員も568人(6.8%)増加した。「争議行為を伴わない争議」は202件(同217件)で、前年比で15件(6.9%)の減少となっている。
「争議行為を伴う争議」について行為形態別の状況をみると、内数の同盟罷業(ストライキ)は「半日以上」が27件(前年調査39件)、「半日未満」が58件(同52件)。また、行為参加人員は、「半日以上」が935人(前年2,157人)、「半日未満」が8,042人(同6,583人)となっている。なお、「半日以上」の同盟罷業での労働損失日数は2,501日(同3,652日)だった。
「争議行為を伴う争議」は件数、参加人員とも「医療、福祉」がトップ
「争議行為を伴う争議」を産業別にみると、件数は「医療、福祉」(35件)が最も多く、次いで「製造業」(12件)、「運輸業、郵便業」(11件)、「情報通信業」(10件)など。行為参加人員も「医療、福祉」(6,459人)がトップで、「製造業」(1,223人)、「情報通信業」(726
人)、「運輸業、郵便業」(498人)などの順だった。労働損失日数は「運輸業、郵便業」(1,277日)が最多で、「製造業」(558日)、「医療、福祉」(411日)、「教育、学習支援業」(146日)などが続く。
主要団体別では全労連が突出
また、争議行為を伴う争議のあった民営企業数(延べ数)は179企業、行為参加人員は8,982人、労働損失日数は2,501日。企業規模別では、企業数は「300~999人」、行為参加人員は複数企業を相手に交渉する「その他」、労働損失日数は「1,000人以上」がそれぞれ最も多い。なお、主要団体別に件数、行為参加人員、労働損失日数をみると、「連合」は8件、264人、174日、「全労連」は51件、7,956人、1,040日、「全労協」は3件、9人、49日。件数、行為参加人員、労働損失日数すべてで「全労連」が突出している。
主要要求は「賃金」が5割超
「総争議」の件数を要求事項別(2つまでの複数回答)にみると、「賃金」に関する事項が154件(総争議件数の55.4%)でトップ。次いで「組合保障及び労働協約」に関する事項94件(同33.8%)、「経営・雇用・人事」に関する事項90件(同32.4%)、「賃金以外の労働条件」に関する事項42件(同15.1%)だった。
争議の2割が解決を「翌年に繰越」
労働争議の解決状況をみると、278件の「総争議」のうち、218件(総争議件数の78.4%)が2024年中に「解決又は解決扱い」となり、「翌年への繰越」は60件(同21.6%)だった。解決方法は、「労使直接交渉による解決」が55件(解決又は解決扱い件数の25.2%)、「第三者関与による解決」が54件(同24.8%)、「その他(解決扱い)」が109件(同50.0%)。なお、「第三者関与による解決」では、労働委員会関与の「あっせん」が50件(同22.9%)で最も多かった。
争議発生から解決に至るまでの労働争議継続期間は、「91日以上」が79件(解決件数の36.2%)で最も多く、次いで「30日以内」が50件(同22.9%)、「61日~90日」が46件(同21.1%)、「31日~60日」が43件(同19.7%)だった。
調査は、労働争議の実態を明らかにすることが目的で、労働争議の発生状況、争議行為の形態や参加人員、要求事項などを調べている。本調査では、対象となる労働争議(労働組合や労働者の団体とその相手方との間で生じた紛争)を「総争議」といい、争議行為が現実に発生した「争議行為を伴う争議」と、解決のために労働委員会などの第三者が関与した「争議行為を伴わない争議」に大別している。
(調査部)
2025年10月号 国内トピックスの記事一覧
- 中小企業における産業・地域単位での人材育成の重要性などを提起 ――厚生労働省の「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」が報告書をとりまとめ
- 労働基準法が適用される労働者以外の就業者への強制適用拡大については「引き続き議論が必要」と指摘 ――厚生労働省「労働保険制度の在り方に関する研究会」の中間報告書
- 若者を対象に社会保障と労働施策の役割や意義などを紹介 ――厚生労働省が2025年版厚生労働白書を公表
- メンタルヘルス対策に取り組む事業所割合は63% ――厚生労働省の2024年労働安全衛生調査結果
- 男性の育児休業取得者の割合が前年から約10ポイント増加し、4割に到達 ――厚生労働省が2024年度「雇用均等基本調査」結果を公表
- ストライキなどの「争議行為を伴う争議」は昨年は76件 ――厚生労働省の2024年「労働争議統計調査」結果
- 外国人労働者数は約182万人で、前年から約22万人増加 ――厚生労働省「2024年外国人雇用実態調査」
~最近の監督行政の結果から~