監督指導した事業場の5割超で改善基準告示違反が認められる
――自動車運転者を使用する事業場に対する2024年の監督指導、送検等の状況
国内トピックス
厚生労働省がさきごろとりまとめた全国の労働局や労働基準監督署が2024年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況によると、監督指導した事業場の8割超で労働基準関係法令違反が認められ、5割超の事業場で、拘束時間や休息時間などの基準を示す「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)違反が認められた。改善基準告示違反の内容で最も多い事項は、「最大拘束時間」(39.4%)だった。
8割超の事業場で労働基準関係法令違反が認められる
2024年に監督指導を実施した事業場は4,328事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、81.6%にあたる3,532事業場だった。主な違反事項別にみると、36協定の未締結や協定範囲を超える時間外労働などの「労働時間」が1,855件(42.9%)で最も多く、割増賃金の全部もしくは一部を支払わない「割増賃金の支払」が977件(22.6%)、客観的な方法等で労働時間を把握していない「労働時間の状況の把握」が302件(7.0%)となっている。
業種ごとの状況をみると、違反があった事業場の割合が最も高いのは「ハイヤー・タクシー」(87.5%)で、次いで「その他」(81.5%)、「トラック」(81.4%)、「バス」(77.5%)の順となっている。いずれの業種も「労働時間」の件数が最も多い。
改善基準告示(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号))の違反が認められたのは、2,360事業場(54.5%)。なお、現行の改善基準告示では、トラック運転者の1日の休息時間については「継続11時間以上とするよう努めることを基本、9時間を下限」、1日の拘束時間が「原則13時間以下、最大15時間。14時間超は週2回までが目安」など、バス運転者の場合は、1日の休息時間が「継続11時間以上とするよう努めることを基本、9時間を下限」、1日の拘束時間が「原則13時間以下、最大15時間。14時間超は週3回までが目安」など、タクシー・ハイヤー運転者の場合は、1日の休息時間が「継続11時間以上とするよう努めることを基本、9時間を下限」、1日の拘束時間が「原則13時間以下、最大15時間。14時間超は週3回までが目安」などとなっている。
改善基準告示違反があった事業場割合が最も高いのは「トラック」
業種ごとにみると、違反があった事業場の割合が最も高いのは「トラック」(58.2%)で、次いで「バス」(51.4%)、「ハイヤー・タクシー」(37.6%)、「その他」(35.1%)の順となっている。
主な違反事項で最も割合の高いものをみると、いずれの業種も「最大拘束時間」で、その割合は「トラック」では43.2%、「バス」では26.9%、「ハイヤー・タクシー」では29.5%、「その他」では19.0%となっている。
(調査部)
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