基調講演 日本における人工知能と労働政策について Artificial Intelligence and the Labour Market in Japan

講演者
戸田 卓宏
前OECD雇用労働社会問題局 スキル・未来準備課 労働市場エコノミスト(現 厚生労働省 職業安定局 総務課 課長補佐)
フォーラム名
第143回労働政策フォーラム「安全で信頼できるAIによって支えられた人間中心の職場形成に向けて─OECD報告書を踏まえた展望─」(2026年1月20日)

日本のデータ(JILPTのAI調査)の特徴について

JILPT調査ではOECD先行調査と国際比較可能な設問のほか、日本独自の設問を盛り込む

最初に、経済協力開発機構(OECD)が日本に対する報告書を作成するにあたって、日本に関するデータ構築のために、厚生労働省からJILPTに実施依頼したAI調査の特徴を説明します。

この調査は公務員を含む雇用者2万2,000人を対象としています。日本の母集団の特徴に詳細に合わせることで、日本全体の特徴を把握できる調査となっています。また、OECDが、日本以外の7カ国の金融・保険業と製造業で働く労働者を対象に実施した先行調査と同一内容の設問を中核に据えることで、国際比較分析を可能にしつつ、生成AIなどに関するJILPT独自の設問を盛り込むことで、日本全体のAI利用についてより深く考察できるように調査設計しました。

AIの定義はOECDの先行調査を踏襲し、「通常は人間の知能を必要とするようなタスクについて、知的なコンピュータープログラムや機械が、それを実行することを可能にさせるもの」としています。生成AIの定義も、OECDが当時準備を進めていた調査の定義を踏襲しています。

職場におけるAI導入について、回答者の知識レベルはさまざまです。調査対象である全産業において、具体的なAIの利用例を1つはイメージできるよう、調査画面を設計し、さまざまな調査設計上の工夫を講じて実施しました(シート1)。

「AI利用者」「AI導入者だが非利用者」「AI非導入者」の3グループで労働者割合を算出

シート2は、JILPTのAI調査における日本人労働者のAI利用に関する全体構造を整理しています。まずは、2万2,000人を企業単位でAIが使用されているかどうかで分類しています。さらに、企業でAIが使用されている労働者について、回答者自身がAIを利用しているかどうかで分類しています。このようにしてAI利用者、AIが導入されているが非利用者、AI非導入者の3つのグループに分けた結果、日本におけるAI利用率は8.4%でした。さらにAI利用者については、生成AIの利用状況も把握しています。

日本の職場におけるAI利用の特徴について

日本の職場でのAI利用率は8カ国中最低なものの、今後は利用の進展も予測

シート3の上のほうのグラフは、日本の職場におけるAI利用率が、同様の質問で把握した8カ国のなかで最も低い水準であることを示しています。一方で、下のグラフが示すように、10年先を見据えた際、多くの日本人労働者が職場でのAI利用の進展を予測しており、「わずかに進展する」と「劇的に進展する」をあわせた割合はAI利用者が約93%、AI非導入者であっても約51%となっており、AIが働き方の未来を形成していく1つの潮流として、すでに日本の労働者に認識されている様子がうかがえます。

女性、若年、高学歴、大企業勤務、正規雇用などで高いAI利用率

シート4は、AIの利用状況を被説明変数とし、さまざまな労働者の特徴を説明変数とする計量分析の結果です。日本の場合、女性、若年層、高学歴、大企業、正規雇用労働者、障がい者、育児や介護をしている労働者がAIを利用している確率が高い傾向にあります。

また、ほどほどの労働力の過不足状況にある企業に勤める労働者ほど、AIを利用していると回答する確率が高い一方で、深刻な労働力不足に陥っている企業に勤める労働者では、AIを利用していると回答する確率が統計的有意に高い結果にはなりませんでした。

今回の調査で因果関係まで把握することはできませんが、AI利用が、深刻だった企業の人手不足をある程度緩和した関係性を示している可能性もありますし、企業が深刻な人手不足に陥ってしまった場合、職場でAI利用を検討する余裕がなくなってしまっているという関係性を示している可能性もあります。後者の場合、企業の人手不足が深刻化する前に、AI導入を検討する重要性を示唆している可能性があります。

さらに、職業別にみると、ハイスキルである管理職や専門職などに従事する労働者で、AIを利用している確率が高いです。産業別にみると、「製造業」「情報通信業」「運輸業、郵便業」などに従事する労働者がAIを利用している確率が高いです。

仕事のパフォーマンス、仕事の質、賃金に対するAIの改善効果について

仕事のパフォーマンスが「改善した」が「悪化した」を上回るが、上回り幅は他国より低い

シート5のグラフに示すように、日本のAI利用者の利用前後での変化をみると、仕事のパフォーマンスや労働環境が「改善した」人の割合は、「悪化した」人の割合を上回っています。これは他国と同様の傾向です。

ただし、グラフのなかで赤い丸で示しているD.I、つまり「改善した」人の割合から「悪化した」人の割合を引いた値は、日本は他の国よりも低いです。つまり、日本の労働者はAIの改善効果を他国と同様に実感しているものの、その改善効果の発現状況については課題があります。

AI利用で残業時間の「減少」が「増加」を上回る

シート6は、AIによるさまざまな労働環境の改善効果を示しています。日本のAI利用者は利用前後での変化について、「ワーク・エンゲイジメント(働きがい)」「仕事に関する新たなことを学ぶ機会」「仕事を通じた個人の成長機会」「テレワークなどの仕事の自由度」「年間有給休暇の取得日数」が「増加した」人の割合が、「減少した」人の割合を上回っています。また、「月間総残業時間」は、「減少した」人の割合が「増加した」人の割合を上回っています。これらの結果は、職場におけるAI利用がポジティブな効果をもたらす可能性があることを示しています。

シート7は、AIが、労働者がタスクを遂行するペースや、タスクが完了するまでの間のコントロールを改善させている可能性を示しています。

シート8は、AIが、より良い意思決定や、より速い意思決定への支援につながっている可能性を示しています。

日本も他国と同様に将来の賃金に悲観的な労働者が多いものの、利用前後の賃金は増加

シート9はAI利用による賃金への影響を示しています。左側のグラフが「AIによる将来賃金への影響に関する労働者予測」、右側のグラフが「AIを利用した前後での実際の賃金総額の変化」です。製造業と金融・保険業で働く労働者全体について、将来賃金への影響をみると、日本は他の国よりも減少を予測する労働者割合が低いものの、他国同様に労働者が悲観的に予測している状況にあることがわかります。

なお、左図をAI利用者に限ってみると、増加を予想する労働者割合は上昇しますが、OECDが調査した7カ国のAIユーザーでは、依然としてAIが将来賃金を低下させると悲観的に予測しています。日本のAIユーザーでは、増減に関して定まった傾向を示していませんでした(赤丸のD.Iがゼロ近傍)。

AIを利用した前後での実際の賃金総額の変化については、生成AI利用者を中心に「増加した」人の割合が「減少した」人の割合を上回っており、AIが賃金の増加につながっている可能性が示唆されています。

総じてみると、日本のAI利用者は、AIが仕事のパフォーマンスの改善などを通じて実際の賃金を増加させる結果につながっていると実感しているものの、AIの職場導入が進展していくという予測のなかで、AI技術の進歩によって、AIが担うことのできるタスクの量や種類の増加が自身の将来賃金に与える影響について、慎重な姿勢で評価しています。

大企業だけでなく、中小企業に勤める人の労働環境や賃金も改善

シート10は、AIが大企業よりも中小企業に勤める人の仕事のパフォーマンス、労働環境、賃金を改善している可能性を示しています。さまざまな解釈があると思いますが、例えば、日本の中小企業は大企業と比較して人材確保が難しく、既存の従業員がさまざまな仕事に従事してマルチタスク化しやすいことが指摘されており、AIがこのマルチタスクをこなす良きパートナーになっている可能性も考えられます。

他方、大企業は日本的雇用慣行も相まって、組織が階層化しやすく、労働者がAIの支援を受けて仕事の方針を仮決定しても、多くの決裁過程において上司や関係者の意見を反映させていくなかで、当初のAIの意思決定支援を評価しにくい環境にあるのかもしれません。

ただし、大企業はステークホルダーが多いため、影響を慎重に検討するための試験導入段階のAI利用を含んでいる可能性もあり、それが抑制的な結果につながっているのかもしれません。

いずれにしても、ここで強調したいのは、AIが中小企業に勤める労働者の働き方も支援できる可能性があるということです。

障がい者、育児・介護と仕事との両立に取り組む人の業務支援にも

シート11は、AIが障がい者や、育児・介護と仕事との両立に取り組んでいる労働者の業務支援になっている可能性を示しています。例えばソフトバンクでは、AIの画像分析機能を活用し、手話の動きを捉えて即時にテキスト化することで、聴覚障がいの人と手話を知らない人との円滑なコミュニケーションを支援するためのシステムを実証実験しています。

日本だけではなく世界においても、職場でAIが障がいの特性に応じてさまざまな支援を提供することが期待されています。さらに、育児や介護との両立に取り組む労働者は、決まった時間内でタスクを完了させる必要性が高く、AIが良きパートナーとして業務効率化の支援に活用されている可能性があります。

仕事の量やスキルニーズに対するAIの影響について

日本では将来的にAIによって仕事を失う懸念が他国よりもやや高い

シート12の左側のグラフは、勤め先企業でAIを理由に仕事を失った人を知っている労働者割合が、日本は他の国よりもやや低いことを示しています。右側のグラフは、今後10年間において、AIを理由に仕事を失う懸念について「わずかながら心配している」~「かなり心配している」とする労働者割合が、日本は他の国よりもやや高い状況を示しています。日本は他国よりもAI利用が今後進展していく余地が大きいことなどが要因である可能性があります。

AIによる仕事の量への影響は、雇用喪失(Job loss)だけではなく、雇用創出(Job creation)とのバランスを考察することが重要です。日本のAI利用者は、自身の現在の職業について、雇用喪失よりも雇用創出を予想する人の割合が高いです(シート13)。

AIは労働者のスキルを陳腐化させるよりも補完するとの評価のほうが優勢

シート14は、AIがユーザーのスキルに与える影響についての結果です。日本のAI利用者で、AIがスキルを陳腐化させたと評価した人は約30%です。一方、AIがスキルを補完していると評価した人は約58%です。つまり、AIは労働者のスキルの陳腐化よりも、労働者のスキルの補完につながっているという評価が優勢という結果です。

職場に導入したAIの改善効果を高める取組(企業の訓練提供や新技術導入時の労使コミュニケーションなど)の重要性について

企業訓練や財政支援を提供されているAI利用者のほうがよりポジティブな効果を実感

AIのポジティブな効果を高める取組について、AIと協働するための人的資本投資の効果の分析結果を示すことで、その重要性を指摘していきます。

シート15のひし形のマーカーは、AIと協働するための企業訓練や財政支援が提供されているAI利用者の割合です。丸い形のマーカーは、企業訓練や財政支援が提供されていないAI利用者の割合です。企業訓練や財政支援が提供されているユーザーのほうが、仕事のパフォーマンスや労働環境の改善効果を報告する労働者割合が高いです。特に日本は、訓練提供の有無によって、改善効果を報告する労働者割合の乖離が他の国よりも大きく、その取組の重要性が浮き彫りになっています。

企業訓練、自己学習の有無でAIのポジティブな効果に大きな差が生じる可能性

仕事のパフォーマンスや労働環境の改善効果を報告する人の割合は、AIと協働するための企業の訓練が提供されている人や自己学習を実施しているAI利用者のほうが、それらの両方を実施していないAI利用者よりも高いです。すなわち、AIのポジティブな効果をより一層高めていくために、労使双方が人的資本投資に取り組んでいくことが重要であることを示しています(シート16)。

シート17は、労使双方の人的資本投資がAIによる賃金増加の効果を高めていくことを示しています。一方、労使双方が人的資本投資を実施していないAI利用者の場合、AI利用後に賃金が「増加した」と実感している労働者割合よりも、AI利用後に賃金が「減少した」と実感している労働者割合のほうが高いです。

つまり、AIの職場導入によって労働者の賃金増加を目指していくためには、労使双方がAIのポジティブな効果を高めるための取組を実施していくことが必須だと言えます。

そのほか、①職場で新技術を導入する際、事業主と労働者がコミュニケーションを図ること②生成AIを業務で適切に活用するための社内規則やガイドラインを整備すること③勤め先企業が安心で信頼できるAIのみを使用するという従業員の信頼感を醸成すること──これら3つの取組も、AIのポジティブな効果を高めることを確認しています。

労使双方の人的資本投資が実施されたほうが雇用創出への期待も高まる

シート18は、労使双方の人的資本投資が、仕事の量や職業に求められるスキルニーズに与えるAIの影響をどのように変化させるか整理しています。労使双方の人的資本投資が実施された場合、雇用創出を予想する労働者割合が雇用喪失を予想する労働者割合よりも、より一層高くなります。また、AIが現在の職業に求められるスキルや能力に与える影響が大きいと予想する労働者割合は、労使双方の人的資本投資が実施された場合のほうが、そうでない場合よりも高くなります。

つまり、労使双方の人的資本投資は、AI利用によるポジティブな効果を高めるものの、仕事の量や職業に求められるスキルニーズの変化も大きくする可能性が示唆されるため、日本はリスキリングも含めた積極的な労働市場政策を推進していくことが必要です。

日本の職場へのAI導入・AI利用において何が課題なのか?

AI導入に関する日本企業の課題はAI関連人材の不足など複合的

日本の職場へのAI導入・AI利用に対するOECD報告書での提言内容を説明します。

まず、AIの導入段階での課題です。日本の企業はアメリカの企業よりも、AI関連人材の不足を課題としてあげている割合が高いです。具体的には、「現場の知識と基礎的なAI知識の両方を有し、自社へのAI導入を推進できる人材」「AIツールでデータ分析を行い、自社の事業に活かせる従業員」「AIを活用したソフトウエアやシステムを実装できるAI開発者」「AIを活用して製品・サービスを企画できる人材」などです。

そのほかにも、「AI導入に関する社内の理解不足」「他社の導入事例の不足」「AIをトレーニングするために必要な学習データの用意に関する困難性」「導入コストへの懸念」「企業が導入しやすい製品・サービスの不足」といった課題に日本の企業はアメリカの企業よりも直面しています。

OECDの調査も、生成AIを利用するための従業員のスキル不足や、著作権問題などの生成AIに起因するリスクを日本のAI導入時の課題として指摘しています(シート19)。

日本は2025年6月に、AIの研究開発や利用を促進すると同時に、AIに関連するリスクにも対処することを目的とする新たなAI法を公布しました。この法律に基づき、総理大臣を本部長とするAI戦略本部が内閣に設置されており、2025年12月には新しいAI基本計画が閣議決定されました。

シート20は新しいAI基本計画の概要で、AIと協働していくことや、そのなかでAI人材の育成・確保を推進していく方向性を示しています。OECD報告書は「日本政府は、AI法に基づくこうした基本計画に沿って、AI導入時における諸課題に対処するための取組をより一層進展させていくべき」と指摘しています。

日本では高齢者や非正規雇用労働者がAIのポジティブな効果を実感できていない

AI利用によって得られるポジティブな効果へのアクセス格差を解消することが重要です。シート21は、AIによる賃金への影響に関する回答状況を被説明変数とした計量分析の結果です。日本では、高齢層や非正規雇用労働者のAI利用者が、AI利用後の賃金への影響について「増加」と回答する確率が低く、「変化なし」と回答する確率が高い可能性が示唆されました。また、同様の傾向は、仕事のパフォーマンスや労働環境の改善効果でもみられました。

つまり、高齢層や非正規雇用労働者は、AI利用率が統計的有意に低いことに加え、AIを利用している場合であっても、ポジティブな効果について実感を得られていない状況となっています。日本は、AI利用のポジティブな効果の享受に関して、いかなる労働者も取り残されないようにしていく必要があります。

シート22は、AI利用によるポジティブな効果に地域差があることを示しています。地域差という観点からも、AI利用のポジティブな効果の享受に関して、いかなる労働者も取り残されないようにしていく必要があります。

シート23は、日本で管理職や専門職に就いているAI利用者は、AI利用前後でのAIによる仕事のパフォーマンスへの効果について、「変化なし」と回答する確率が低く、「大きく改善した」と回答する確率が高いという分析結果を示しています。

OECD報告書は、日本がAIのポジティブな恩恵を享受しやすい職業を増やしていく視点を持つ重要性も指摘しており、内閣官房・経済産業省・厚生労働省が策定した「ジョブ型指針」の周知・広報を推進していくことが重要としています。

AI関連の企業研修費用の補助により一層取り組むべき

国際的にみて、AIと協働するための企業訓練などの提供により一層取り組んでいくことが、日本企業にとって重要な課題です。OECD報告書は厚生労働省に対して、人材開発支援助成金によってAI関連の企業研修費用の補助により一層取り組んでいくべきと指摘しています(シート24)。

自己啓発を支援する教育訓練給付は、労働者がAIと協働するためのリスキリング・アップスキリングを支援するうえで重要な役割を果たしています。しかし、制度を活用したのはリスキリング・アップスキリング実施者の55%にとどまっており、さらなる利用拡大の余地があることをOECD報告書は指摘しています(シート25)。

AIと協働するための学びのリソースの拡充に不断に取り組むべき

企業訓練や自己啓発も含めて、AIと協働するために学ぶためのリソース(手段)に関しては、地域間格差が生じています。この解消に向けて、各都道府県に設置されている職業能力開発促進協議会を活用して、企業ニーズに即した支援を拡充していくことや、研修の質と有効性を確保しつつ教育訓練給付においてオンライン講座の提供数を引き続き拡充していくことが重要です(シート26)。

日本の企業が職場に新しいテクノロジーを導入する際は、労使コミュニケーションを実施する機運を醸成していくことが重要です。こうした取組が労使双方にとって相互に有益な成果をもたらし得るものであることについて、厚生労働省は具体的な取組事例やエビデンスを用いた周知を図ることが重要です(シート27)。

また、生成AIに関する従業員へのガイドラインを未策定の企業が多いことが課題であり(シート28)、ガイドラインの内容に対する従業員の理解・遵守にも課題があります(シート29)。

「勤め先企業が安全で信頼できるAI技術のみを使用すると信用している」とする人の割合を国際比較すると、日本は調査国中最下位に近い状況です。厚生労働省は、職場へのAI導入に伴うリスクへの対応に関して、企業が従業員からの信頼を得るための取組を支援すべきとOECD報告書は指摘しています(シート30)。

雇用創出・喪失の予測は、職業によって大きく異なる

日本のAI利用者において、雇用創出と雇用喪失の予測は職業によって大きく異なります。機械・設備オペレーター・組立工や単純作業従事者は、AIにより仕事の量に大きな影響が生じると予測する傾向が強く、雇用喪失が雇用創出を上回ると見込んでいます。一方、管理職や専門職は、雇用創出が雇用喪失を上回ると見込んでいます。雇用創出が相対的に多く見込まれる職種があっても、ロースキルの職から管理職や専門職といったハイスキルの職へ移行することは容易ではないことに留意が必要でしょう(シート31)。

労働移動が困難な労働者にも新たな雇用機会を創出するための支援を

雇用創出と雇用喪失のバランスには地域間格差があります。雇用創出が多い地域への移動が困難な労働者への配慮が必要な可能性もあります。

まずは、雇用創出が見込まれる仕事への労働移動を希望する人が、それを実現できるように、積極的な労働市場政策を推進していくことが重要ですが、ハイスキルの職業への移動や居住地域の移動に困難を抱える労働者の労働条件などの低下を防ぐため、こうした人々の保有する人的資本を最大限に活かせる分野において、新たな雇用機会を創出するための支援策を検討することも有益な選択肢となる可能性があります(シート32)。

プロフィール

戸田 卓宏(とだ・たかひろ)

前 OECD雇用労働社会問題局 スキル・未来準備課 労働市場エコノミスト(現 厚生労働省 職業安定局 総務課 課長補佐)

2009年厚生労働省入省。雇用政策の企画立案や労働経済白書の執筆などを担当した後、2022年9月より経済協力開発機構(OECD)に出向。雇用労働社会問題局のスキル・未来準備課(Future of Work Team)で労働市場エコノミストとして従事。2025年9月より現職。主な著書に『コロナ禍・中長期における賃金の動向と賃金の上方硬直性に係る論点整理』(JILPTディスカッションペーパー、2022年)、『検証・コロナ期日本の働き方:意識・行動変化と雇用政策の課題(第1章担当)』(慶應義塾大学出版会、2023年)など。

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