パネルディスカッション

パネリストの様子

濱口 事例報告では、三橋さん、伊藤さんともに、非正規で働く人たちが現場の中心的な戦力として活躍している業界のなかで、労働組合が取り組んできたことを紹介していただきました。

同一労働同一賃金、より正確に言うと非正規労働者に対する均等・均衡処遇という問題について、どのように取り組んできたかということを1つの軸として、パネルディスカッションを進めていこうと思います。まずは、労働組合として同一労働同一賃金に取り組んだきっかけや背景について、教えてください。

同一労働同一賃金に取り組んだきっかけ

経営環境の変化と技術進歩への対応から

三橋 当社には、もともと継続成長する人材が長期に働き続けられる企業環境の創造、それから国籍・年齢・性別・従業員区分を廃止し、能力と成果に貫かれた人事という人事理念があります。特に流通業では、パートタイマーが重要な戦力ですので、2000年代に多くの新店を開ける際に、どのように力になっていただくかを、労使双方で議論した経緯があります。

さらに2000年代に、流通小売業で自動発注システムが導入され始めました。これまで店舗社員が担っていた発注などの業務が、パートタイマーの仕事に移管していくような技術の発展がありました。その結果、現場では社員・パートタイマーの区分なく働くようになり、そこから現実のほうが先に変わっていったのではないかと思っています。この2000年代の経営環境の変化や技術の進歩などが、パートタイマーの同一労働同一賃金に取り組むきっかけでした。

また、そのような環境のもと、2004年から2006年に、当社でパートタイマーの組織化を行ったことも大きなきっかけです。そこから、各店舗から現場についての声があがり、労使双方が取り組むようになったと考えています。

結論としては、変化の実態が先にあり、変化に先駆けてどのように対応していくかということを、労働組合から会社のほうに投げかけていったというような流れになっています。

濱口 組合の組織化が出てくるところが、この問題の取り組みのスタンスをよく表していると感じました。伊藤さん、お願いします。

現場の不満の声がきっかけ

伊藤 イオンさんは社会的変化に対応して、ということでしたが、当社は内部の変化に対応して取り組みを進めてきました。

まず2002年に、経営悪化から109人の希望退職を募りました。当社の営業はトラックでの宅配が中心で、その退職による不足を補う配達のスタッフを、パートタイマーとして導入し、その後に専門スタッフという限定正社員のような雇用形態にしました。

最初は、正規と専門スタッフで職務の内容は差がありましたが、どうしても求められるものがあり、ほぼ同じ職務になっていきました。しかし賃金や福利厚生などは大きな差があったため、専門スタッフの退職者が多く、採用しても1、2年で退職してしまいました。また、モラールの低下、生協組合員への対応のレベルが低下して、不満や苦情が増加しました。

定時スタッフについては、それまでの補助的な業務から、正規職員やフルタイムスタッフが行っていた業務にまで拡大していく変化がありました。拡大した業務を担いながら、賃金などの格差は変わらないことに対する不満も出てきたため、どのように改善していくか検討したことが最初だったと思います。

濱口 外圧的と内発的といえば対照的とも言えますが、いずれも法律ができたから、政府に言われたからというのではなく、自分たち自身が現場の問題に対応しようと始められたということだろうと思います。

渡邊 待遇の見直しか職務分離かという活用戦略にも関連するようなお話で、三橋さんのところは、現実(仕事や働き方)の変化が先で、それに対応するように待遇を変えていった一方、伊藤さんのところは、パートの限定正社員化が進むなかで、仕事も任されるようになっていったという相違がよく表れていると感じました。

 労働組合を中心とした、法律を先取りするようなすばらしい取り組みだと思います。会社側からではなく、労働組合として会社側と議論していく、労使で共にやっていくところが、お手本になる事例だと感じています。

同一労働同一賃金へのアプローチ

2010年前後から正社員の登用を進める

濱口 それぞれの同一労働同一賃金に対する基本的な見直しの考え方は、わりと対照的だと感じます。三橋さんの事例報告から、昇進や資格の取得など、日給月給社員、いわゆる正社員のコースであると思われていたようなことを、時間給社員にもできるだけ幅広く適用させていくという方向で、この同一労働同一賃金を理解して取り組んでいるのだと思いました。また、伊藤さんが紹介したのは、制度的に別であった賃金制度そのもののあり方を、共通化させていくような方向で取り組んだものであり、いずれも大変興味深いものだと思います。

では、なぜこういうアプローチの仕方を取られたのかについて、お話をいただければと思います。

三橋 アプローチが、戦略的にというよりは、現実の働き方の課題からということが、労働組合としての取り組みの原点かと思います。2000年から2010年頃は、日給月給社員と時間給社員で同一の資格が存在しました。現在は均等待遇に当たる資格は存在せず、分離させています。私たちは、日給月給社員と同じような役割を担う人たちは正社員になってもらおうと考えていました。そのため2010年前後は、時間給社員から日給月給社員への登用を大きく進めてきました。

しかし分離させた今、時間給社員の人たちに問うと、時間給のまま働きたいというニーズが、社会的に存在していることが明らかになってきました。時間給と日給月給に線引きした結果、現在は、時間給の方が均等な待遇で時間数だけは少ないというような働き方が存在しなくなってしまったことが、課題として残っていると思います。

労働組合として組合員の声を取り上げる

伊藤 当社は風土として、正社員が上でパートタイマーが下だとか、雇用形態間の上下関係はないようにしてきました。職務上の上下関係は当然ありますが、フルタイムか、時間を限って働くか、あるいは職務の差だけで、待遇の格差があること自体がおかしいのではないかという考えはもともとあったと思います。

そして、定時スタッフも、フルタイムスタッフと同じぐらい労働組合員がいます。その人たちの声も取り上げて進めるということが重要でした。

濱口 現場に非正規の人たちが多く、労働組合として、その声を吸い上げながら取り組んだうえで、対象的なアプローチになったということが、お2人のお話から浮かび上がってきたのかと思います。

この点について、法律の立場からどのように感じるか、原さんにコメントをお願いします。

労働者が納得して働くことが重要

 パート有期法の使用者の説明義務を連想して聞いていましたが、やはり労働者側が納得して働けることが一番重要だと思います。その納得を得るために、労働者側の意見を労働組合が集約して、会社側と具体的な方策を考えていくあり方が法的にも非常に望ましいと感じました。

そして三橋さんのお話から、パートで働きたいニーズは、それなりに大きいということがわかりました。有期でなければ嫌だという人はあまりいないと思いますが、パートでなければ、という人はいるわけです。これは正社員のほうが働き過ぎというような別途解決すべき問題はあるかもしれませんが、やはり現時点では、パートとして納得して働けるような環境をつくっていく、そのための労使での努力を感じています。

渡邊 三橋さんから、均等待遇にするよりも、正社員転換を促進していったという活用戦略のお話がありました。

関連するアンケート調査結果(「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」)をご紹介しますと、パート有期社員を雇用している企業6,877社のうち、業務の内容も責任の程度も同じ人がいる割合は15.8%、そのうち人材活用まで同じ人がいる割合は4.5%でした。

この人材活用まで同じパート有期社員がいる企業309社に、そうした人を今後どのように活用するか尋ねると、「正社員に転換」という割合が5分の1程度(22.7%)みられましたが、「これまで通り活用」も63.1%と多くなりました。企業ヒアリングでも、いくら優秀で正社員にと言っても断るような、時間の限りがあるなかで働きたい方も少なくないとよく聞きますので、均等待遇も引き続き使われていくのかなと考えています。

同一労働同一賃金の進め方

1つ1つ労使で待遇差について確認していく

濱口 これは、均等、均衡というだけでなく、正社員転換と、少し違う無期転換という問題もあり、なかなか複雑な構造と感じます。

それでは、同一労働同一賃金、あるいは均等・均衡処遇といった問題についての取り組みについて、具体的な進め方に立ち入って話を展開していきたいと思います。待遇の見直しに関して、どういったところから取り組んでいったのか、あるいは取り組むべきなのかということについてお願いします。

三橋 2000年代から毎年、福利厚生や総合労働条件の格差については、組合員の声に基づいて実施してきた背景を持ちながらも、厚生労働省が本格的にガイドラインを発行してからは、労使で均衡・均等処遇の考え方をすり合わせるところからスタートしました。

そのガイドラインに基づいた考え方を整理したうえで、一つひとつの項目の待遇差について労使で確認しました。待遇差のあるものについては、その理由を労使で納得できる形で明文化しました。そして4年間かけて、均等、均衡にしなければならないものを、1つずつ労働組合のほうから要求して、積み上げていきました。

組合員のほうからは、一つひとつ良くなっていることへの実感や、納得感もあります。そして、福利厚生、待遇や教育などについて、時間給社員と日給月給社員で別々の要求を組む必要がありましたが、2020年からは、全て同じように福利厚生の要求ができるようになり、このガイドラインに基づいた労使の整理の結果だと思っています。

濱口 要求自体が、かつては分かれていたものが、共通の形で要求できるようになったこと自体が、同一労働同一賃金に向けた取り組みが進展していることの表れであると感じます。

賃金フレームや人事考課制度の統一

伊藤 エフコープでは、週37時間45分のフルタイムと、週15時間以上35時間未満のパートタイマーで、雇用形態の区分をしており、今のところ職務の内容などでは、特に区分を設けていません。

まずは、賃金労働条件を引き上げながら、賃金フレームや人事考課制度の統一を行っていきました。そして人事制度を統一していくなかで、賃金制度を職務給と職能給という形にしました。それぞれの職務を評価して、全てのスタッフで、同じ職務等級であれば、賃金も同じとしています。また、手当や福利厚生の部分は、格差を洗い出し、是正していきました。

ただ、それまで正規職員の生理休暇は1日有給でしたが、パートタイマーには女性が多く、全て無給に統一しました。こちらに関しては条件の引き下げになりましたが、組合内での議論を経て整理していきました。

不合理な待遇差についての議論

3つの整理の軸

渡邊 (「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」で)ヒアリング調査を担当した当機構の統括研究員の藤澤からも、お二方のお話のとおり、具体的な見直し内容を検討される際には、各雇用区分とその待遇を一覧表にまとめたうえで、判例を収集したり、弁護士等の専門家に相談するなどして、不合理と認められる待遇差や、優先的に対応すべきことなどを洗い出していった企業が多いと聞いています。

この不合理な待遇差について、労働組合ではどのような議論があったのか、教えてください。

三橋 整理の軸としては3つあります。まず、転居転勤できるかどうか。次に、変形労働時間制に応じられるかどうか。そして働く時間が1カ月160時間フルかどうか。これらを軸に置いたときに、正社員は100%応じた働き方をするということで、無期、有期の差をなくすところからスタートしました。それ以外の待遇差についても、ほぼなくなる形で、今議論を進めています。待遇の差があってはならないものについては、3つの軸のあり方から説明できる処遇以外は、ほとんど同じにしてきています。

格差があることが不合理という考え方

伊藤 ガイドラインでは異動の範囲や、職務範囲、将来の活用などに基づく格差については不合理でないと言われていますが、私たちは均衡待遇を求めるのではなく、労働組合として均等待遇を求めていくことを大前提としています。

エフコープの理事会は、今ある格差についての要因を、分かりやすいからということで、職務の異動と、異動の距離に設定していますが、私たちはそのことを受け入れているわけではありません。エフコープの活動エリアは福岡県だけで、異動といっても県内ですので、それぞれの職務に注目した処遇を考えていくべきだと思っています。そもそも格差があること自体が不合理だと考えるため、是正していきたいと思っています。

濱口 伊藤さんからのお話を聞いて、もちろん仕事そのものの問題というのは共通かもしれませんが、異動の範囲といったことでは、全国的なのか、ローカルな企業なのかということによって、違いが出てくるのかもしれないということを、あらためて感じました。今の点も含めて、原さんからコメントをお願いします。

 不合理かどうかの洗い出しという言葉が、キーワードかと思います。

まず、三橋さんのお話のように、どれぐらい仕事に入れるかといったことを基準として進めていくことは、非常に納得しやすいです。どれぐらいのことを社内で担えるのかといったことについては納得が得られやすく、そう進めたことが大きく成功している理由だと思いました。

それから伊藤さんが述べられた、格差をなくしていくことに関しては、法律以上のことを実現しようという取り組みかと思います。法的に考えていくと、ある程度の違いは人事異動の違いということで正当化される場面もあるかもしれません。しかし、法律以上の内容、待遇を労使の交渉で実現することに全く制約はありません。

法律以上の処遇を実現するために、まさに労働組合として、組合員の皆さんからの期待を背負って役割を果たされているのだと思いました。

同一労働同一賃金の課題と留意点

時間帯を選択して働く人のポストの登用

濱口 次に、この取り組みを進めるうえで、どのような課題が出てきたのか、また、どういったところに留意して進めていったのかについて教えてください。

三橋 法律が変わる前提で、どのように対応していくかという視点も非常に重要です。私たちは均等処遇等の対象になる人がいないような制度の仕組みを前提に取り組んできました。時間給社員の職務はここまで、ここからは基本的には正社員になってくださいと、多くの方を正社員と同じ登用試験に乗せて登用を進めてきたというのが、これまでの取り組みでした。

それによって実現したこともありますが、一方で、パートタイマーと呼ばれる、労働時間に制約を持って働くことを希望する方の働き方の拡充というのは、スキルを積む以外では図れなかったという現実があります。

スキルというのは、厚生労働省にも認定されているようなさまざまな社内特殊スキルがありますが、その職務の幅での登用以外の仕組みがなかなか広がらなかったということを感じています。次の労働組合としての課題は、時間帯を選択して働く人のポストの登用をどのように実現させるかということです。

あわせて、日本全国に店舗がありますので、地域間格差も大きな問題です。横並びで見たときにやはり地域間のポストの差、処遇の差というのは、今は見過ごせていますが、今後は大きな課題になると思っています。

下がる人を出さないことで納得してもらう

伊藤 賃金処遇の違う雇用形態を統一していく際には、それまでの正規職員、フルタイムスタッフにとっては、処遇、賃金が下がるのではないかという不安は当然ありました。また家族手当の廃止や、年齢給を無くし年功賃金からの離脱を図るなど、将来に対する不安もありました。そういう不安を解消していくために、丁寧に議論を進めていくことが必要だったと思っています。

それから、みんなに納得してもらえなければ、導入はできないわけですから、制度移行や制度を統一する場合には一定の原資は必要だろうと思います。基本給に取り組んだ部分や、職務給になって基本給が下がるという人もいましたが、そこは調整給や調整手当で、下がる人を1人も出さないように対応してきたことで、何とか乗り越えることができたと思っています。

丁寧な説明と経過措置が重要

濱口 同一労働同一賃金と言えば簡単ですが、現場からみると、家族手当がなくなるなど、今までの年功的な賃金カーブが下がるということも起きてしまいます。伊藤さんからのお話は、労働法的に言うと、労働条件の不利益変更という問題にも絡んでくる難しさがあります。そこを労働組合の立場として乗り越えてきたことが、今回のフォーラムで取り組みのご報告をいただいた非常に重要なポイントであることをあらためて感じました。

 制度をつくり変えていくには、さまざまな問題を考えなければいけないと思います。また、不合理ではない待遇を実現するために、どこまで労働条件が下がることを認めるかということで、労働条件の不利益変更もあり得ることになります。

同一労働同一賃金の実現にあたっては、誰かの労働条件を下げるのではなく、上げていくことが望ましいとされていますが、やはりどこかで誰かの待遇が下がることは避けられないと思います。その場合には「しょうがない」ではなく、丁寧な説明と経過措置が重要です。労働条件や、制度をつくり変えていく過程で、調整給などを使った柔軟な対応をしていく、こういった経過的な措置、過渡期における措置をしっかり行うことが、従業員と会社が納得度を高めることにつながるのだと思います。

また、三橋さんのお話から、正社員化は一つ大事なことですが、正社員化をあまりに強調すると、「正社員ではないからパートタイマーの待遇は違っていい」という意識にもつながる危険性があります。正社員化の取り組みと、パートタイマーとしての待遇の向上は車の両輪のようなもので、両方に目配りすることが不可欠だということを強く実感しました。

社内で目線を合わせて考える

渡邊 お2人に質問があります。三橋さんから、時間に制約を持っている人でも、活躍できるような機会が必要とありました。これまでは均衡待遇のほう(均等待遇の対象者が出ないような仕組みづくり)を追求されてきたなかで、今後、均等待遇も取り入れていくような見直しの可能性があるということでしょうか。

また、伊藤さんの報告では、正社員の家族手当を廃止された(その後、月200円で再導入された)というお話があったかと思いますが、どのように調整されたかを教えてください。

三橋 質問に対しての回答としては、取り入れたいと考えていますということです。ただ、同じように正社員で働いているなかで、育児や介護で時短をしている人と本当に均等、均衡であるかといった見方もあり、本当に難しく感じています。しかし、時間に制約がある社員がポストについて活躍することは、本人の成長、それから企業の成長につながっていくと思いますので、法対応も見ながら考えている最中です。

一方で、パートタイマーの方がマネージャー職のポストに就く場合には、社員よりも待遇を高くするというような価値観が社内にあり、どのように目線を合わせていくかということが求められるかと思っています。

また、制度があっても使われないと意味がありません。現在、時間給社員にアンケートをとっており、そういう制度があれば、どのくらいの方がなりたいのかを、職場に投げかけているところです。なりたいけれど、ならない選択をしている人についてはどこに問題があるか、労働組合としてどのように解決していくかを考えていきたいと思っています。

初めて全ての雇用形態で同一の制度を導入

伊藤 家族手当を廃止したのは、制度統合した2008年です。基本給に取り込んだという形で、それまであった属人的手当は、その時点でなくなりました。

ただ、子育て世代というのは生活が大変との声が出てきます。配偶者手当はありませんでしたが、子育てを支援する手当が必要だと、労働組合として要求しました。理事会は、趣旨は理解できるということでしたが、はじめの金額が、健康保険の扶養に入っている20歳までの子ども1人につき、月200円でした。この金額自体は、そのときの経営状況などを考えたものだと思います。

しかし、初めて同一の制度を全ての雇用形態で導入すること、正規職員やフルタイムだけであった手当をつけるということが、労働組合としては大きな前進だという評価をしました。そして、200円という金額は、半年後には5,000円に、2021年度からは1人あたり1万円になり、年齢も22歳までに拡大しました。その後、前進することができ、しっかり導入してよかったと評価しています。

渡邊 家族手当が200円になることで、不利を被った正社員はあまりいなかったと思ってよろしいですか。

伊藤 旧家族手当があった人については、その分は調整手当ということで継続させていました。そして、新たに子育て支援手当を入れ、比較して、対象者にとって多い方を支給するという形で変えています。そのため、それまで家族手当があった人は、下がることはありませんでした。

渡邊 均等待遇の追求にあたっては、正社員の労働条件維持も確保しつつ、反発が起きないようにしながら進められたということでしょうか。

伊藤 そうですね。できるだけ納得性を高めるということで進めてきました。

透明性・公平性が取り組みの成功に

濱口 どうしても手当類については、下げるのは難しいからやめようという話がよくありますが、分け隔てのない形での手当という形で対応していくことも、多くの企業労使にとって参考になるのではないかと感じます。原さん、いかがですか。

 やはり透明性・公平性でしょうか。家族手当はなくなるけれど、その分調整手当によってキープされる部分があり、また、子育ての手当に関しては皆一律に同じ形で支給するという形で、どこを取っても納得を得やすい形で進められています。きっと労働組合のなかでもさまざまな意見があったと思いますが、丁寧な意見集約に努めてきた結果だと感じます。

なかなかここまで実現するのは難しいと思いますが、皆が労働組合に入っている環境も非常に大きいと感じます。例えば正社員のみを中心とした労働組合であれば、納得を広く得られるような調整は難しい部分もあります。もちろん積極的に非正社員の意見を聞いていく労働組合もたくさんありますが、やはり労働組合に多くの人が入っているところが、柔軟な調整や取り組みの成功につながる、大きなファクターなのかと思います。

同一労働同一賃金に対する現場の反応

取り組みの前提は会社の成長

濱口 続いて、取り組みを進めていくなかで、現場や当事者の方々の反応、あるいは納得感について教えてください。

三橋 先ほど原さんからもありましたように、組合員どうしが納得できる、議論をすることが重要だと思っています。

当社は、今までに、社員の制度の原資を取り崩したというのは、長く働いた方への永年勤続表彰ぐらいだったかと思います。社員にも、パートタイマーにも長く働いてもらいたいという前提があり、社員の30年、40年での表彰をなくして、パートタイマーにも永年勤続表彰を導入しました。そのような議論ができる環境は、制度を入れるときの下支えになると思っています。

提案する側にも覚悟が必要ですが、私たちの会社がどのように成長していきたいかということを前提として、待遇差についてどのように助け合うか、分かち合っていくのかを考えることは重要であると考えます。

共に働く人を思いやる風土の醸成

伊藤 正規職員と、それよりも賃金処遇の低いスタッフの制度の統一ですから、やはり双方に不安は大きかったかと思います。正規職員では、家族手当や年齢給の廃止、それから賞与でも差がありましたので、下がるのではないか、今後の生活が成り立つのかという不安もありました。また、専門スタッフという限定正社員のほうでも正規職員転換の制度があり、フルタイムの制度はどうなるのかという不安があったと思います。

そこで、2007年にユニオンショップ協定を結び、アルバイトを除く全てのスタッフを労働組合員にしました。それまで組織率は低下していましたが、やはり人事制度統合は、みんなが納得をするために話し合いが必要だということで、ユニオンショップ協定を結んで論議を進めました。

同じ職場のなかに低い処遇で働いている人たちがいることに、正規のスタッフも心を痛めていました。また、アンケートで理事会からの統合案の提案に対して労働組合のとるべき態度はどうあるべきかを尋ねると、「統合は必要、早期に実現すべき」が44.6%、「理解はするが時間をかけて判断すべき」が30.9%、「統合には反対、現行維持を努力すべき」が1.1%でした。自分のことだけではなくて一緒に働いている人たちを思いやる気持ちや風土を、労働組合の活動を通じて醸成してきたのではないかと思います。かなりの議論がありましたが、みんなが導入に前向きに取り組んでくれました。

濱口 具体的な処遇をどうするかということの前段階として、同じ労働組合の仲間になることが、出発点にあるのだと感じました。

当事者以外を議論に巻き込むことが高い納得性につながる

渡邊 三橋さんに質問です。時に、同一労働同一賃金の問題というのは、労々対立みたいな話にもつながるかと思います。12万人もの組織では、非正規と正規の間だけでなく、時間給社員どうしの不満への対応も含め、かなり苦労があるのではないかと思いますが、労働組合として、従業員の納得性を高めるような取り組み上の工夫はありますか。

三橋 先ほど伊藤さんから言及のあった家族手当などは、私たちは均等処遇の対象となる時間給社員がいないので、2016年に地域限定社員を正社員化したときに、全ての従業員に対応しています。有期雇用だった日給月給社員からはとても喜ばれました。

また、労々対立は見えないところでたくさんあると思っていますし、私たちも難しいと感じていますが、その人たちだけを集めて議論しないことが重要だと思います。もちろん時間給社員だけで話せること、日給月給社員だけだからこそ話せることはありますが、何かを決めるときは、当事者のみにならないようにしていることが大きなポイントです。

育児勤務者だけを集めて育児のことを、海外勤務者だけを集めて海外のことを決めるのではなく、当事者以外の方を議論に巻き込むことで、誰から見ても納得性の高い場になります。何かを決めるときには、総会という形で、各エリアで集まって決議を採っています。非常に難しいのですが、まとめ役が各地にいることに支えられていると思っています。

濱口 本日のタイトルの「多様な働き方」のなかには、多様な利害があり、1つの方向で調整すると、反感も出てくる。そのなかでの、労働組合として現場での努力を痛感しました。

経営側も一緒に格差是正に取り組む

渡邊 先出のアンケート調査で、「パート有期社員を含めて労使の話合いを行った」企業は33.3%、「労使の話合いを行ったが、パート有期社員は含まれていない」は13.3%となり、労使の話し合いを行った、あるいは行う割合は、合わせても約半分(46.6%)という状況でした。なお、厚生労働省の労働組合基礎調査によりますと、わが国の労働組合の組織率は全体で17.1%、パート組合員については8.7%と非常に低迷していますので、同一労働同一賃金ルールに対応するための見直しにあたり、労使の話し合いを行っている割合は比較的高いと言えるかもしれません。そこで、伊藤さんに質問があります。

正社員組合員側で、職務・待遇分離のまま現状を維持すべきという意見が仮に少なかったとしても、経営側との間の交渉では、何か困難がありましたか。

伊藤 そこまでの困難はありませんでした。理事会自体も、処遇格差はおかしいという思いがあり、改善したいという意思を持って制度統合案を提案してきました。中身については、一部下がるものもありましたが、それでも、みんなが労働組合員として一緒に前進をさせていくという思いがあり、理事会のほうにも、統合することで全体を前進させていきたいという思いもありました。その交渉自体で対立した感じではなかったです。

同一労働同一賃金が労働者の話合い切り口に

 同一労働同一賃金は、会社だけでは実現できないということを感じました。

法的には、不合理な違い、つまり説明がつかないような違いはつけないことが求められますが、会社側だけで知恵を出しても実現できないことを実感しました。労働者側と話し合っていくことが不可欠です。ただ、会社に労働組合がないという人のほうが圧倒的に多いかと思います。労働組合は重要な存在ですし、労働組合に労働者が集まって、会社側と話をしていくことが、同一労働同一賃金という切り口で求められている部分があるかと思います。労働法では、労働組合法を中心に、労働者が集まって会社側と話し合っていくことをサポートする仕組みがさまざまありますので、同一労働同一賃金をきっかけとして、労働組合、労働組合法へ関心を持っていただくということも重要だと感じました。

見直しを円滑に行うために

今後は今の企業の枠組みを取り払って考えることが必要

濱口 本来は、労働者のなかにある多様な利害の調整を集団として取り組んでいくことが重要な課題のはずですが、現実ではそうなっていません。労働組合があるところは労働組合が役割を担っていますが、そもそも労働組合がない会社も多い。実は、同一労働同一賃金や、均等・均衡処遇の話のなかで、労働組合だけでなく、従業員代表制のような形でこの問題を現場で取り組むべきという議論は出ますが、10年、20年越しレベルの課題であるにもかかわらず、なかなか進みません。

そうした視点も含めて、見直しを円滑に行うためのポイントをうかがえればと思います。

三橋 日本経済が低迷するなかで、処遇をどう調整するのかというのは、労働組合としても頭が痛いところです。もし全ての労働者の能力の発揮、それに伴って企業や日本社会の成長があれば、もう少し容易に議論できるのかなと思います。今の企業の枠組みのなかで、どのように均衡・均等処遇を図るかという議論だけでは、抜け出せない道があると思います。

例えば、1人の成長が他社や地域のなかで生かされるというような、産業別の労働組合などの発想で考えないと、均等、均衡は実現しないのではないかという壁に直面していると感じています。

経営側の均等待遇を進める決意表明

伊藤 先ほど、労働組合の有無という話がありましたが、労働組合がないところでも、働いている人たちの理解をいかに広げていくのかということを丁寧に進めないと、いくら良い制度をつくっても、運用が困難になることもあると思います。労使双方の、均衡・均等待遇に対する理解、納得性をいかに広げていくかということが重要だと思います。

それから、経営側の均等待遇を進めるという意思と決意の表明です。時代の流れということではなく、そのことが正義であることの意思の表明が必要だと思います。そして、労働組合では、労組員の信頼です。それがないと、進まないだろうと思っています。

会社と従業員の対話が重要

 労働組合がない職場が圧倒的に多いですから、そこでどのように意見集約をしていくかということです。先ほどお話があった従業員代表といった議論もありますが、大事なのは、会社側として、丁寧に従業員と話をする姿勢だと思います。対話を通して、働く側も自然とグループをつくって集まって、それが労働組合に発展していくこともあるかと思います。大事なことは、会社側として決めたから従えというスタンスではなく、やはりコストや時間がかかるにしても、より多くの企業に、きちんと従業員と対話をするという姿勢を持っていただくということが基本であり、重要だと感じました。

渡邊 ヒアリング調査を担当した藤澤による整理も同様で、労働組合がない場合でも、例えば労働者代表との話し合いの場や、検討委員会みたいなものを立ち上げたり、ときには従業員に、不合理だと思っている待遇差がないかアンケートで聞いてみる。こうした何らかの意見照会やコンセンサス形成を図ることが、見直しを円滑に行うためのポイントだと指摘しており、あらためてそのとおりだと感じました。

参加者からの質問への回答

待遇改善の効果は人材の成長

濱口 ここからは、視聴者から寄せられた質問にお答えいただこうと思います。まずは、三橋さんと伊藤さんの両方に対する質問で、待遇改善の結果、業績向上につながったデータや事例について紹介していただけますか。

三橋 コロナ禍で、業績は非常に苦戦していますが、長い目で見たときに、安心して働き続けられる環境があることが、従業員にとってのメリットであり、さらには新しい業態にチャレンジする、新店が建つときに活用できる人材が増えるという意味で、企業全体としてその増収増益を支えていると定義づけられると思います。

狭い範囲で見たときには、特に時間給正社員の戦力化というのが、地域のお客様の生活の下支えになっています。特に食品売場を中心に、技術の向上が売上げに直結しているような例は全国でも非常に多く見られています。具体的な数字では表せていませんが、成果は非常に実感しています。

スタッフのモチベーション向上が業績へつながる

伊藤 制度統合によって、旧専門スタッフのモチベーションが高まってきたと思います。今はそのなかから部長職も出ていますので、意識がかなり高まってきたと思います。業績では、以前は経常剰余という剰余のところが非常に低かったのですが、最近では10億円前後まで到達しました。2020年度はコロナという特殊な事情のなかで、過去最高利益となりましたが、利益もきちっと確保できるようになってきました。それに合わせてスタッフの処遇も、少ないですが、毎年ベースアップや賞与を積み上げて処遇の改善もしています。

均衡・均等待遇の次のステップへ

濱口 続いて、それぞれの労働組合として、現在の到達点についてどう評価されているか、あるいは、今後の改善の余地がどんなところにあるか、お答えください。

三橋 組織する組合員も、確実に前進している実感を持っています。

毎年毎年、一つひとつ、今年の課題を従業員とともに議論するなかで、前進したと思っています。そして、やはり福利厚生の要求が正社員と時間給社員とで別々ではなくなったことが、特に大きいと思います。労災付加給付などでも差はなく、到達点という意味では、全ての総合労働条件の要求が一緒に組める、足並みがそろったところまで到達したという実感は持っています。

また、多くはありませんが、時間給を選択したいという正社員からの声を聞きます。均衡・均等待遇が実現すると、時間帯を選択する働き方を追求できる段階に来たのかなと思っています。これまでは同一労働同一賃金は、非正規雇用の方が正規にどう合わせるかという議論が主だったかと思いますが、次の段階に入っていくことが可能になると受け止めています。

制度以外の面での格差是正

伊藤 制度としては統一していますが、まだ、年収や生涯賃金では格差がありますので、是正を進めていかないといけません。また、同じ雇用形態でも、職務等級の低い層と、60歳を超えた層の賃金水準、あるいは低い層の退職金の水準などに格差があります。60歳を超えると、職能給がなくなり職務給だけという賃金体系になっていますので、生活との関係で、いろいろな声が出てきており、その改善が必要だと思っています。

それから、人事考課制度の統一をしたところ、昇格者をみると、フルタイムスタッフに比べてパートタイマーが非常に少ないという現実があります。何らかのバイアスがかかっていないか点検をしながら、運用も同じにする改善をしていくことを進めていきたいと思っています。

労働者のニーズに合わせた多様な働き方へ

渡邊 ある程度の時間働けないと責任のある仕事や活躍ができなかったり、待遇に制約があったりすると、二極化傾向になってしまうと思いますが、三橋さんから、均衡・均等待遇が実現しているからこそ、時給制社員のほうを希望する人が出ているというお話がありました。まさに、今後のあるべき働き方を実現されていると感じました。

 三橋さんのお話にある、働く時間の選択につながっていくことが理想的な姿だと思います。働く時間を自分でコントロールできることは、育児や介護だけではなく、さまざまな事情について、広い意味でのワーク・ライフ・バランスを実現できる環境により近づいているのだと思いました。

伊藤さんは、これから運用の部分も重要だということをおっしゃっていましたが、運用に関しては、やはり各自の希望によっても違ってくるかと思います。各自がどれぐらい仕事に力を使ってきたかということに合わせて、公平に制度が運用されていくことが重要だと思いますので、1つ制度を実現することによって、各自のニーズに合わせた働き方につながって、まさに多様な働き方に行き着くのではと思いました。

無期転換した労働者の保護

濱口 次は、原さんと渡邊さんを中心にコメントをお願いします。

まずは、パート有期法の対象でない、無期転換した元フルタイム有期労働者、いわゆる無期化した方については、現行法上はエアポケットみたいな形になっていることに関する疑問について質問がありました。

そして、正規と非正規だけではなく、同じ非正規のなかでも待遇差があるのではないか。また、単なる企業のなかの制度というだけでなく、例えば、学生アルバイトと契約社員というような、企業の外で社会的な存在に対応する形での非正規の待遇差についてどう考えるかという質問もいただいています。まずは、原さん、答えていただけますか。

 まずは現行のパート有期法には限界もあるというのが正直なところです。パート有期法が守るのはパートタイムか有期の方で、フルタイムの有期(契約社員)の方が無期転換すれば、パート有期法による保護は適用されなくなることが1つです。

ただ、そのなかの工夫として、例えば、契約社員、有期の方が事前に不合理な違いを是正してもらう、つまりパート有期法を事前に活用して、待遇を引き上げてもらったうえで無期転換するなど、そういった取り組みも可能かと思います。パート有期法では足りない部分も補いながら活用していくということだと思います。

同じように、例えばいずれも有期のアルバイトとパートの方の違いには、直接パート有期法は適用されませんので、限界があります。そこも、職場でいろいろ話し合う集まりをつくっていくところからのスタートになるかと思います。

まずはパート有期法の理念を広めて、適用していく、その次の課題として、例えば非正規労働者の方々のなかでの違いや、問題にも取り組んでいく。こういった視点を忘れずに持っていくことが重要かと思います。

渡邊 まず、無期転換されたフルタイムの元有期契約労働者が、待遇改善の谷間に取り残されるのではないかという危惧についてですが、同一労働同一賃金ガイドラインには、無期雇用フルタイム労働者のなかに、仮に複数の雇用管理区分があっても、全ての区分とパート有期契約労働者の間で不合理な待遇差の解消が求められる、と書かれています。また、待遇水準の低い区分との比較だけで足りるものではないと牽制もしています。結果として、正社員とパート有期社員の間で不合理な待遇差を洗い出すなかでは、そうした人についてもバランスが図られていくのではないかと考えています。

なお、無期転換すればより長期にわたって働けるようになるわけですから、本人の希望と合意が得られれば、順次職務を引き上げたり、人材活用を柔軟にしたりといったこともあると思います。

学生という枠組みではない客観的な対応を

次に、学生アルバイトについてお話しします。一口に学生と申しましても、コロナ禍で、フードバンクに並ぶ姿が報道されたように、自身で学費やアパート代などを稼いでいるため、アルバイトがなくなれば直ちに生活に困窮するような方もいれば、小遣い程度稼げればいいという方など、本当に多様です。学生だから特別な待遇でいいということではなく、やはり(原則どおり)仕事や働き方の客観的な基準に当てはめた対応を行うことが、重要ではないかと考えています。

定年後再雇用者は事前に労使で取り組んでいく

濱口 それから、定年後再雇用者の賃金の決め方という問題も質問にありました。賃金の決め方だけの話ではなく、仕事を変えることもトラブルの種になる難しい問題だと思います。

 定年後再雇用で議論するときも、いかに納得を得られるかだと思います。例えば、現役時代の何割なら下げていいかという議論は本末転倒です。その仕事内容にしても、現役のときと変わるのか、後輩の指導をどうするか、そういったことをしっかり話し合っていく、そのためには、定年でいきなり切り替わるのではなく、50代、それから40代から、将来的なキャリアプランについての視点を労使ともに持つということです。長期的なスパンで、労使で取り組みをしていくことが必要になると思います。

政府への要望

これからのパートタイマーの活躍の場について

濱口 最後に、政府に対して要望はございますか。

三橋 要望の仕方が非常に難しいですが、年収を抑えるための就業調整に課題を感じています。所得税の非課税限度額など収入制限があることで、働く時間に制限がかかってしまう方がいるため、年末にかけて勤務調整をせざるを得ない状況が、毎年発生しています。

短い時間で同じ賃金、同じ収入を得ることはパートタイマーにとって、喜びの1つではありますが、社会に貢献できる接点を持つ「時間」という観点も非常に重要だと思っています。

賃金が上がるから労働時間が短くなるというのは必ずしも、喜ばしい状況ではなくなっています。労働組合としても、活躍の場が狭まるということに対して、非常にもったいない気持ちを持っています。

労働者が安心して働ける社会に

伊藤 今、三橋さんが言われたことは、当社でも共通します。ぜひ対応を求めていきたいと思いますが、やはり同一労働同一賃金、均等待遇、均衡待遇を求めていくということでいえば、非正規労働者の処遇をいかに高めていくかということがないと、なかなか一緒に解決していかないと思います。安心して働き続けられるという意味では、まず、無期転換ルールがありますが、無期転換逃れや雇い止めなどの契約内容を規制することが必要だと思っています。

そしてもう1つは、非正規労働者は、最低賃金近傍で働いている方が多いので、最低賃金を大幅に引き上げるということです。全国一律最低賃金制度の導入、そのために中小企業への助成、税や社会保険料の減免などもあわせて支援していくということを、ぜひ求めていきたいと思います。

濱口 充実した議論が展開したパネルディスカッションでした。皆さんにとって役に立つ、考えさせる内容だったのではないかと思います。本当にありがとうございました。