実質的な残業時間が平均で過労死ラインを超過/日教組調査

2023年12月13日 調査部

教員の実質的な月の残業時間は平均でいわゆる「過労死ライン」の80時間を上回っている――日教組(約20万6,000人)が11月30日に公表した今年の「学校現場の働き方改革に関する意識調査」で、こうした実態がわかった。また、4割弱の人が1日の休憩時間を「0分」と答えている。日教組は「長時間労働はほとんど改善されておらず、業務の持ち帰りも常態化している」などとして、教員の業務削減や定数改善の早急な実現を求めている。

平日1日の労働時間は平均11時間24分

調査結果によると、教員の勤務日(月~金)の学校内での在校等時間(教育職員が学校教育活動に関する業務を行っている時間)は1日平均で10時間40分。これに勤務日の自宅での仕事時間(全体平均で1日あたり44分)もあわせると、教員の1日の平均労働時間は11時間24分になる。一方、週休日(土日)の在校等時間は1日平均1時間42分。週休日の自宅での仕事時間も1日平均で1時間13分あることから、週休日の1日の平均労働時間は2時間55分となる。

残業時間は月換算で96時間20分に

次に1週間あたりの労働時間をみると、全体平均で62時間50分(うち学校内56時間44分、自宅6時間6分)。学校種別では、中学校(67時間52分)が最も長く、以下、小学校(61時間32分)、高等学校(58時間49分)、特別支援学校(58時間5分)の順で長い。いずれも所定労働時間の38時間45分(7時間45分×5日)を大きく上回っている。

全体の一週間当たりの平均労働時間(62時間50分)から所定労働時間(38時間45分)を引いた時間外労働時間(24時間5分)を単純に4倍して月換算すると、月の平均残業時間は96時間20分となり、実質的な残業時間は平均値でいわゆる「過労死ライン」とされる80時間を大幅に超過。最も労働時間の長かった中学校の月の残業時間は116時間28分に及ぶ。

また、教員が実際にとれている休憩時間も短い。1日の平均休憩時間は12.7分。休憩を全く取れていない「0分」の人は38.7%で、「15分未満」が全体の60.4%を占めた。

こうした状況について日教組は、「過労死ライン越えの長時間労働の実態はほとんど改善されておらず、在校等時間内に処理しきれない業務の持ち帰りも常態化している。持ち帰り業務が解消されないなかで、勤務間インターバルの導入は不可能だ」などと指摘。「教職員のいのちと健康を守る労働安全衛生の観点からも、業務削減・定数改善が喫緊の課題だ」などと強調している。

夜間見回り・児童生徒補導時の対応業務は8割が「計画されていない」

文部科学省は、2019年の中央教育審議会の答申で示されたいわゆる「学校・教師が担う業務に係る3分類」に基づき、業務の考え方を明確化したうえで、役割分担や適正化を推進している。これを踏まえて調査は、学校・教師が担う業務の3分類の移行状況についても尋ねた。

「基本的には学校以外が担うべき」とした業務のうち「登下校に関する対応」は「完全に移行している」と答えたのは5.4%、「取り組み始めている」も15.4%だったのに対し、「計画されていない」は70.3%。「夜間見回り・児童生徒補導時の対応」も「完全に移行」と「取り組み始めている」がそれぞれ6.5%、8.3%だったのに対し、「計画されていない」は79.0%で、業務の移行があまり進んでいない実態が浮き彫りになった。

日教組は、「『学校以外が担うべき業務』への移行は、教育委員会・学校の責任として取り組みが求められてきたが、計画すらされていない状況が長く続いている」としたうえで、「国の責任として予算措置も含め、学校の業務から移行するための早急な対応が不可欠だ」などと訴えている。

部活動の業務移行は3人中2人が肯定

一方、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない」業務とされたなかの「部活動」については、「早急にすすめるべき」(67.6%)の割合が高く、早急な移行を求める意見が多いことがわかる。これに「すすめたほうがいい」(25.6%)もあわせると93.2%が業務の移行を肯定しており、反対する人は1割に届かなかった。

このほか、「児童生徒の休み時間における対応」や「校内清掃」は、肯定派(「早急にすすめるべき」+「すすめたほうがいい」)が約7割を占める一方、否定派(「すすめなくてもいい」+「すすめるべきではない」)も3割前後あった。これらの活動について、自由記述では「子どもたちと向き合える時間として重要」などの意見が寄せられていたという。

調査は2018年以降、毎年実施。今年は7~8月にweb上で行い、5,809人からの回答をまとめた。