日常的な組合活動を活性化させ、組合員が一体となることで組織強化につなげる/自治労の定期大会

2023年9月29日 調査部

地方自治体の職員などを主に組織する自治労(川本淳委員長、約73万4,000人)は8月28~30日までの3日間、北海道函館市で定期大会を開催した。向こう2年間の運動方針では、日常的な組合活動の活性化や組合員の一体となった取り組みで自治労の組織強化を目指すことなどの重点課題を提示。当面の闘争方針では、秋季・自治体確定闘争の取り組みとして給与の引き上げや中途採用者の賃金改善などを掲げた。役員改選では、新中央執行委員長に石上千博氏(北海道本部)が就任した。

単組の二極化や担い手不足等を指摘し、重点課題を提示

新運動方針は、はじめに現状の課題として、コロナ禍において、ウェブ等を活用し取り組みを展開していた単組と積極的に対応しなかった単組の二極化が進んだことや、コロナ禍前から続く役員の担い手不足や組合員の帰属意識の希薄化、自治労全体の組合員数の減少や組織率の低下などを提示。

その上で、2024-2025年の運動における重点課題として、 ① 日常的な組合活動の活性化と組織強化・拡大 ② 公共サービスの充実に向けた取り組み強化 ③ すべてに関わる政治、その必要性と取り組み強化――の3点を掲げた。

職場実態や組合員の意見を集めて要求・交渉に取り組む

① 日常的な組合活動の活性化と組織強化・拡大については、改めて「多くの組合員の思いを集め、要求・交渉し、課題を解決する」という基本的活動の強化を指摘。賃金水準の底上げや会計年度任用職員の処遇改善など、多岐にわたる課題について「職場実態や組合員からの意見をもとに要求を積み上げ、しっかりと当局との交渉などの取り組み強化を目指す」としている。

また、組合活動を力強く前進していくために、「労働組合活動の基本である助け合い、支え合いの価値観を共有し、多くの職場の仲間が労働組合に結集していることが不可欠」として、2023年9月から2027年8月までを期間とする「第6次組織強化・拡大のための推進計画」を基軸に新規採用者や未加入者などの組織化の取り組みを展開するとしている。

そのほか、女性や若年層の組合活動への参画促進や、ジェンダー平等を意識した多様な視点や立場、考え方を活動に反映させるため、「自治労ジェンダー平等推進計画」に基づいた取り組みの展開も提示した。

川本委員長は冒頭挨拶で、「組織の強化を図っていくことが喫緊の課題」だと言及。組合員一人ひとりの声を集め、日常的な組合活動を展開して職場の課題を一歩前へと進めていくところから、組合員が一体となって自治労全体の組織力量を底上げし、運動を強化していく重要性を指摘した。

公共サービスの充実に向けた発信と政府・国会対応の強化を

② 公共サービスの充実にむけた取り組み強化については、「すべての人が平等に恩恵を享受するための質の高い公共サービス」の実現に向けて、広く内外に強い発信をしていくために 「公共サービスにもっと投資を!」キャンペーンの通年展開に向けた取り組みをさらに強化することを強調。

また、安心して暮らし続けられる地域や誇りを持って働き続けられる職場をつくりあげるために、地域のニーズを汲み取った質の高い公共サービスが実現できるよう、自治研(地方自治研究)活動をさらに展開していくとしている。

③ すべてに関わる政治、その必要性と取り組み強化については、住民の命と安全を守る公共サービス労働者、民主的な組織である労働組合として、「人権や平和を守るための取り組みの必要性や意義を共有し、運動の強化へとつなげていくことが不可欠」と指摘。社会の問題を個人の視点に置き換えて共有するために学習などの機会を設けるほか、市民団体などと連携して政府・国会対応を強化するとしている。

すべての職員の賃金の引き上げや運用改善に向けた「1単組・1要求」の取り組みを重視

当面の闘争方針では、秋季・自治体確定闘争の取り組みにおける重点課題として、 ① 給与の引き上げ改定 ② 中途採用者の賃金改善 ③ 運用改善にむけた1単組・1要求 ④ 会計年度任用職員の処遇改善――の4点を掲げた。

① 給与の引き上げ改定では人事院勧告を踏まえ、初任給をはじめとしてすべての職員の賃金を引き上げることや、一時金の支給月数の引き上げと引き上げ分の配分にあたり期末手当に重点を置くことなどを求めるとしている。

② 中途採用者の賃金改善については、「初任給格付けの低さや昇格の遅れなどにより、同様の職務を担う職員に比べて給与が極端に低い場合などが存在する」として、中途採用者の給料について、同学年の新卒採用者の給料を基本に初任給、昇格の改善を求めるとしている。

③ 運用改善にむけた1単組・1要求については、すべての自治体単組が職員の給与実態を十分に把握・分析して、単組が目標とする賃金の到達水準の確認を行うとともに、単組事情を踏まえた具体的な運用改善について、「少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」と指摘。単組の到達目標として、「基本給で30歳・24万8,775円 、35歳・29万3,807円 、40歳・34万3,042円」といった個別ポイント賃金などを設定し、給料表の引き上げと運用改善による達成を目指している。

④ 会計年度任用職員の処遇改善では、勤勉手当支給にむけた条例改正を行うとともに、常勤職員との均等・均衡に基づいた処遇改善を行うことや、給与改定にあたって常勤職員と同様に初給改定を行うよう求めるとした。

賃金労働条件の改善を勝ち取る確定闘争への結集と精力的な交渉を

今年の人事院勧告について川本委員長は、月例給が俸給表の約1%に引き留まったことに対して不満が残るとしたものの、2年連続で月例給の引き上げとなったことや一時金の引き上げ分が期末手当に配分されたことについて、「新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、住民の生活を支えるために昼夜を問わず懸命に働く組合員の期待にも一定応える内容」だと言及。

その上で、給与条例を改定させ、新賃金を確定させる秋の自治体確定闘争に向けて、「物価高騰が生活を大きく圧迫するなかで、現場で奮闘する組合員の期待にしっかりと応えるためにも、賃金労働条件の改善を勝ち取るという強い決意を持って、全ての単組での確定闘争への結集と、精力的な交渉をお願いしたい」と述べた。

新委員長に石上氏が就任

役員改選では、4期(8年間)委員長を務めた川本氏(北海道本部)が退任。新中央執行委員長には北海道本部の石上千博氏が就任した。副委員長は木村ひとみ氏(前書記次長/大阪府本部)、山﨑幸治氏(広島県本部)、書記長に伊藤功氏(前書記長/山形県本部)、書記次長に榎本朋子氏(新潟県本部)という顔ぶれとなった。