全雇用形態の賃金改善を引き出した一方、妥結結果と要求との乖離が課題に/NTT労組定期大会

2023年7月21日 調査部

NTT東西やドコモ、データなど、NTTグループ企業の労組で構成するNTT労働組合(鈴木克彦委員長、約14万4,000人)は7月11、12の両日、都内で第26回定期大会を開催した。活動を振り返る一般経過報告では、2023春季生活闘争について、グループ主要会社の正社員の賃金改善が過去9年間との比較で最高水準の引き上げ幅だったことやすべての雇用形態で賃金改善を引き出せたことなどを評価する一方、生活防衛のために求めた10万円を断念せざるを得なかった点などについて「組合員の期待に応えられなかったことを重く受けとめる」と総括した。

すべての雇用形態での賃金改善を引き出して決着

NTT労組は2023春季生活闘争で、月例賃金2%の引き上げと「生活防衛への措置」としてすべての雇用形態で一律「年間10万円」を求めた。

交渉の結果、月例賃金については、主要会社の正社員一人平均3,300円(前年比1,100円増)の改善で妥結。社員の賃金改善は10年連続で、今回は過去9年間と比較して最高水準の引き上げとなった。昨年水準を基本に業績堅調な会社は上積みをめざす方針で臨んだ特別手当についても、主要各社それぞれで上積みが図られている。

また、60歳超の継続雇用の月給制社員には、個人業績を反映する手当を月平均2,250円相当の改善。有期・無期雇用および60歳超雇用(時給制)についても社員に準じた賃金改善(改定水準は社員に上積みして実施)が図られるなど、昨年に続き、すべての雇用形態での賃金改善を引き出して決着した。

その一方で、生活防衛への措置として要求していた「年間10万円」はゼロ回答だった。

組合員の期待に応えられなかったことを重く受けとめる

こうした結果について、経過報告を行った柴田謙司事務局長は、商品・サービスの値上げが相次ぐなかで、① 政府・経団連が過去に比して賃上げに積極的な姿勢であった ② ヤマ場において他企業労使交渉における満額決着の報道が相次いだ ③ NTTグループの通期見通しが『増収・増益』だった ④ 連合方針の『3%』をあえて『2%』に据え置き、『生活防衛への措置(年間10万円)』の位置づけを重くした ⑤ 『ストライキ批准一票投票』が過去最高水準であった――ことを指摘したうえで、「例年以上に高かった組合員の期待に応えられなかったことを重く受けとめている」と述べた。

月例賃金改善は2014春闘から累計2万300円を積み上げ

その一方で決着内容については、① 過去9年間との比較において最高水準の引き上げ幅になった ② 積年の課題であった『すべての雇用形態における賃金改善』を昨年同様に引き出せた ③ その賃金改善が図られてこなかった雇用形態に対しては、賃金改定率では上積みを図られた ④ 特別手当については昨年妥結水準をクリアした――ことをあげ、「NTTグループ全体では多様な雇用形態があり、収益構造の異なる事業会社の集合体にあるなかで、組織の総力でクリアとした結果だ」と説明するとともに、組織の総力でクリアした結果だ」と説明するとともに、月例賃金改善は「2014春闘から累計2万300円(主要会社・正社員ベース)を積み上げてきている」ことも付言。そのうえで、2024春闘の方針策定に向けては、① 要求の在り方 ② 無期・有期雇用の通年的な処遇改善 ③ 闘争戦術 ④ 情報発信のタイミング――等の課題について、「組織的検討を行う」とした。

「決着内容は『年間収入の引き上げをめざす』考え方をふまえたもの」(鈴木委員長)

大会の冒頭であいさつした鈴木委員長は、物価上昇局面で2%の月例賃金改善と生活防衛のための年間10万円に取り組んだ春闘を振り返り、「『要求』については時勢に合ったものと判断しているが、『結果』については、すべての雇用形態の賃金改善と有期雇用者等の底上げを引き出したものの、原要求には到底及ばない厳しい結論だった」としたうえで、特に生活防衛のための10万円は「『妥結結果と要求との乖離』に関する多くの意見があり、率直にお詫びする」と述べた。

その一方で、決着内容について、「会社側が示してきた最終回答が、NTT労組に結集するすべての仲間の『底上げ』『底支え』に向け、年間収入の引き上げをめざすという、今次春闘の基本的な考え方をふまえたものだった」ことから、「いかなる闘争戦術を行使したとしても、これ以上の交渉の前進は見込めないと判断し、妥結・決着を決断した」などと説明し、理解を求めた。

アンケート結果をふまえた政策検討や新人事制度へのチェック機能の発揮を

新運動方針は、柱の一つに「雇用の安定・安心と労働条件の維持・向上」を提示している。

NTT労組では、グループの事業環境の変化とともに、働き方や職場のコミュニケーション、採用・雇用形態などが多様化している現状をふまえ、今年5月、全分会を対象に① (リモートワークを含む)労働環境 ② DXの推進 ③ 労働時間管理 ④ 職場のコミュニケーション ⑤ 人材育成・能力開発・自己啓発 ⑥ メンタルヘルス・フィジカルヘルス――等の現状と課題を把握する「働き方アンケート」を実施しており、その「分析結果をふまえた政策検討等を行う」構え。

さらに、今年4月から制度導入された「人事・人材育成・処遇等の見直し」に関しては、① 適正な制度運用のもと、組合員の働きがいやモチベーションを高めていくこと ② 自律的なキャリア形成につながる環境整備――が重要との認識に立ち、「労働組合としてのチェック機能を発揮していく」としている。

第27回参議院議員選挙の組織内候補の擁立を決定

また、方針は「政治活動の推進」もあげて、「解散・総選挙」や2025年に予定される「第27回参議院議員選挙」への対応などを明記。第27回参議院議員選挙については、「私たちの事業・雇用に直結する情報通信・情報サービス政策や働く者の立場に立った政策実現のため、組織内候補を擁立する」としている。今後、「NTT労組の組織内としての熱い決意と高い志を持った候補者の擁立に向けて、対応を進める」(鈴木委員長)考えだ。

なお、役員改選を行い、持株グループ本部委員長の十川雅之氏が新事務局長に就任。鈴木委員長は再任された。