「揺るぎない産別運動」継承・発展の座標軸として基本理念と行動指針を策定/情報労連定期大会

2023年7月21日 調査部

NTTやKDDIなどの労働組合でつくる情報労連(安藤京一委員長、約19万3,000人)は7月13日、都内で定期大会を開き、向こう2年間の中期運動方針を決めた。新運動方針では、産別運動を次代につなぐ観点で基本理念と行動指針を策定。これに基づき、具体的な運動・活動を展開していくことを確認した。組織拡大では、「2025年20万労連」の必達に向けて、すべての組織が組織拡大推進体制を構築するとともに、強い危機感と責任を持って「結果を出す」取り組みを強化することを掲げた。

基本理念と行動指針に基づき、具体的な運動・活動を展開

2023~24年度の中期運動方針は、まず、「これまでの歴史的な運動・活動を踏まえるとともに、『信頼と共感を得る“情報労連らしい”産別運動』を次代につなぐ観点」から、基本理念と行動指針を策定。これに基づき、具体的な運動・活動を展開することとした。

基本理念は、「私たちは、信頼と共感を礎に、社会的価値ある労働運動を推進し、誰もが暮らしやすい社会の実現をめざします。」とし、行動指針は、「働く仲間の輪を広げ、生活と仕事の安心・安全を追求します。」「平和・人権・環境を守り、公平・公正で持続可能な社会をめざします。」「ICTの利活用を通じ、個人や社会の“well-being”の向上を図ります。」「世界の働く仲間と連帯し、ピープル・ファーストの国際労働運動の発展に貢献します。」の4つを掲げている。

基本理念と行動指針を策定したことについて、安藤委員長はあいさつで「『今さら』感を持たれる人がいるかもしれないが、改めて『基本理念』と『行動指針』を策定し、これまで60年貫いてきた『ぶれない軸』『崩してはならない基軸』である『情報労連らしさ』を未来に向けての礎石として定めておくことにした」と説明。「今後、時代が変わり、人が変われども、めざすべき運動と行動を定めておくことは、『揺るぎない産別運動』を継承・発展していくための重要な座標軸になる」と強調した。

そのうえで、方針は運動の重点として① 「25万労連の追求」に向けた着実な活動の展開 ② 加盟組合活動の充実に向けた取り組みの強化 ③ 産別政策の深化と実現に向けた取り組みの強化 ④ 「暮らしやすい」社会の実現に向けた政治活動の推進 ⑤ 国際活動のさらなる推進 ⑥ 社会的価値ある産別運動の展開――を掲げている。

組織化の推進で安定的な集団的労使関係の強化・確立を

「25万労連の追求」は、中期目標である「2025年20万労連」の必達に向けて「すべての組織が組織拡大推進体制を構築するとともに、強い危機感と責任を持って『結果を出す』取り組みを強化」し、その延長線上にある「25万労連」につなげる構想。具体的には、本部加盟組織は新卒・中途採用者、未加入者、未組織グループ会社、有期契約等労働者(60歳超の再雇用を含む)の組織化の取り組みを強化・推進し、当該企業グループにおける集団的労使関係の強化を図る。ブロック支部は加盟組合の「過半数確保」および「完全組織化」への取り組みを進めて安定的な集団的労使関係の確立につなげ、全国オルグはターゲット業種(情報通信業、情報サービス業、通信建設業)を基軸に新規結成・加盟に取り組むとともに、未組織の情報通信企業への組織化に向けたアプローチを強化する。

「労組の組織力・交渉力を強めるには、組織人員を増やすことが必要不可欠」(安藤委員長)

安藤委員長はあいさつのなかで、「労働組合の組織力・交渉力を強めるには、組織人員を増やすことが必要不可欠。組合の力の源泉は、『団結』であり、多くの組合員が結集しなければ、労働条件も思うように上がらないし、相互扶助(福祉)機能なども維持していくのは難しくなり、組合員サービスが徐々に低下していく。組合加入のメリットが感じられなくなれば 、脱退へとつながりかねず、組織力・交渉力は負の連鎖として低下し続けることになる」と強い危機感を示したうえで、「情報労連・加盟組合双方において、まさしく正念場であり、強い信念をもって 『2025年20万労連』を何としても達成し、その後の『25万労連』をめざそう」と呼びかけた。

若手役員を対象に次世代リーダー育成の勉強会を開催

加盟組合活動の充実に向けては、中央本部はブロック支部・県協と連携し、加盟組合への日常的な対応や教育活動に加え、加盟組合の状況や要望に応じたきめ細かな支援・指導を行うとともに、ブロック支部加盟組合とのコミュニケーションを強化し、産別加盟の意義・必要性の理解浸透や相互の関係強化を図る。

人材育成を重視した取り組みも強化する。ブロック支部・県協役員等を対象とした研修や、ブロック支部加盟組合・直加盟組合役員の人材育成のための研修などを引き続き実施。さらに、若手組合役員を対象に、① 人的ネットワークの構築 ② 情報労連運動の継承や理解促進 ③ 次世代を担う組合リーダーの育成――を目的とする勉強会も開く。

産業政策の取り組みについては、「産別運動の重要な基盤」との認識のもと、社会的な課題解決に向けたICT利活用の推進をはじめ、デジタル社会における諸課題、社会の現状や将来的な変化に伴う労働課題等について、実態調査等を踏まえた具体的政策を策定するとともに、その実現に向けた取り組みを追求する。

NTT労組の決定を待って2025年の参議院議員選挙の手続きを進める

政治活動の推進については、「私たちの雇用と生活の安定を実現するためには、企業内での処遇・労働条件改善への取り組みのみならず、国・地方の政策・制度の改善・改革をめざした政治活動に取り組むことが不可欠」だとして、情報労連がめざす「勤労者・生活者・納税者の視点に立った政策の実現」に向けて、組合員一人ひとりの政治参画意識を高める取り組みを展開する考え。

なお、今後想定される「解散・総選挙」や2025年に行われる「第27回参議院議員選挙」に向けては、加盟組合との連携のもと必要な準備を進めるとした。

この点について安藤委員長は、「NTT労組大会で次期参議院議員選挙に組織内候補を擁立することが決定され、候補者の選出・決定は今後扱うことになった」ことに触れたうえで、情報労連の推薦基準で「組織内候補は、全国単組からの推薦依頼を受けて議決機関で決定することから、一義的にはNTT労組の決定を待っての手続きになる」ことを説明。「組織内候補は、産別政策の推進や働く者・生活者の立場にたつ政策、平和や人権・環境政策などを国政の場で推進する議員が必要であり不可欠だ」などと強調して、全加盟組合での組織内議員の重要性の共有と政治啓発の強化を呼びかけた。

このほか、方針はグローバル経済やデジタル化の進展等に伴う世界共通の様々な課題に対し、各国労働者との連帯を深めて国際活動を推進することを明記。平和運動や防災・減災の取り組み、社会貢献活動などについても、社会的価値のある運動を展開していく考えだ。

大会では役員改選を行い、水野和人副書記長(NTT労働組合)が新書記長に就任。安藤委員長は再任された。