大胆な業務削減・定数改善や給特法の廃止・抜本的見直しを/日教組定期大会

2023年7月21日 調査部

日教組(瀧本司委員長、約20万6,000人)は7月15、16の両日、都内で定期大会を開催し、① 教育政策 ② 教育行財政政策 ③ 労働政策 ④ 福祉・社会保障政策 ⑤ 男女平等政策 ⑥ 組織政策――からなる「23~24年度運動方針」を確認した。長時間労働是正とワーク・ライフ・バランスの実現に関しては、「だれもが安心して働き続けられる職場環境の実現・整備」に向けて、勤務時間を意識した働き方を進めるとともに、大胆な業務削減・定数改善、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止・抜本的見直しなどを求めることを掲げている。

公教育の社会的重要性に応える人員確保と意欲をもって働ける賃金改善を

新運動方針の柱の一つである労働政策は、① 公務員制度改革 ② 教職員等の賃金改善 ③ 長時間労働是正、ワーク・ライフ・バランスを実現する ④ 権利擁立、雇用・労働条件改善--の取り組みを列記している。

具体的にみると、公務員制度改革は「ILO勧告に則り、国際労働基準を満たした公務員の労働基本権の回復や自律的労使関係制度の確立、民主的な公務員制度改革の実現」に向けて取り組むほか、住民が安心して暮らせる社会を支える適正な賃金・労働条件と人員確保に取り組む。

教職員賃金については、「公教育の社会的重要性に応える人員確保と、教職員が意欲をもって働くことができるよう、適用給料表の水準引き上げや級・号給格付けの改善、諸手当水準の引き上げなど教職員の職務・職責や勤務実態をふまえた賃金改善をめざし、関係当局との交渉・協議」に臨む。

人事評価制度は、日教組の「人事評価制度への対応指針」にもとづき、「5原則2要件」(評価制度の設計・運用にあたり日教組が求める条件。5原則は「合目的性」「公正・公平性」「客観性」「透明性」「納得性」。2要件は「苦情処理制度」と「労使協議制」)の確保を要求。制度や運用を見直す際には、「十分な交渉・協議、合意にもとづくことを求める」とともに、「評価結果を拙速・安易に処遇に反映することには反対」する。

また、臨時・非常勤教職員の処遇に関しては、地方自治法の改正をふまえ、期末手当の確実な支給と勤勉手当の支給、諸手当の運用を図るよう取り組む。

長時間労働による精神疾患や過労死防止の取り組みを推進

長時間労働是正とワーク・ライフ・バランスの実現に関しては、「だれもが安心して働き続けられる職場環境の実現・整備」に向けて、勤務時間を意識した働き方を進めるとともに、大胆な業務削減・定数改善、給特法の廃止・抜本的見直しなどを求める。

すべての職場に労働安全衛生体制を構築して、長時間労働による精神疾患や過労死防止の取り組みを推進。36協定締結・遵守に取り組み、職場全体での協定違反や未締結での違法な時間外・休日勤務命令等の実態についての是正を求める。さらに、年間を通じて、教職員の未配置が生じないよう、文部科学省・教育委員会に要求する。

定年引き上げ実施に向けた環境整備を

雇用・労働条件改善では、定年引き上げに向けた、「十分な交渉・協議、合意にもとづく学校現場等への円滑な運用実施」を明記。特に、すべての自治体で「段階的引き上げ期間中における計画的な新規採用の実施、少数職種における定年前再任用短時間勤務の職の確立と希望者の確実な任用が行われる」よう、必要な措置を求める。あわせて、「希望通りの再任用の確実な実施と高齢期の適切な労働条件の確保」や「会計年度任用教職員および臨時的任用教職員の勤務・労働条件等の改善」にも取り組む。このほか、あらゆるハラスメントの防止に向けた事業主の防止措置義務の徹底、有期契約労働者の無期転換の促進と雇い止め防止、外国籍教員の処遇改善なども列記している。

「臨時・非常勤教職員の存在なしに学校運営が成り立たない状況の解消を」(瀧本委員長)

瀧本委員長はあいさつで、文部科学大臣の諮問機関・中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」が働き方改革や処遇改善、指導・運営体制の充実等に関する論議を行っていることに触れ、「論議の前提に、勤務態様の特殊性に依拠した給特法体制維持があるならば、その実効性は限定的にならざるを得ない」と指摘。「給特法を盾に労働時間管理はなじまないとして、正規の勤務時間内で処理しきれないほどの膨大な業務を教員に押し付ける従前からの教育行政の無責任な態度を抜本的に見直すことこそ重要だ」などと述べ、給特法の廃止・抜本的見直しを強く訴えた。

さらに、教職員不足の問題について、「教職の志望者が少なく、臨時・非常勤教職員のなり手が枯渇していることに起因しているが、そもそも休職者のあるなしにかかわらず臨時・非常勤教職員の存在なしに学校運営が成り立たない状況の解消なしには、根本的な解決はありえない」として、定数改善計画の早急な策定の必要性を強調した。