「真摯な議論を行い、最大限の回答を引き出した」とする2022年総合生活改善の総括を確認/自動車総連の定期大会

2022年9月14日 調査部

自動車総連(金子晃浩会長、79万9,000人)は8日、オンライン方式を併用して栃木県宇都宮市で定期大会を開催し、2022年春季生活闘争(「総合生活改善の取り組み」)の総括を確認した。総括は、賃金改善分の獲得が1,518円と昨年を上回り、獲得組合の割合も昨年より17ポイント高いことなどから「賃上げの流れを強めることができた」と評価。全体結果について、「労使で職場・賃金課題に対する真摯な議論を行い、最大限の回答を引き出した」ことを成果としてあげた。

今年は賃上げに加えて、働き方の改善にも取り組んだ

自動車総連は今次闘争方針において、電動化など自動車産業が変革期にあることや、カーボン・ニュートラルなど中長期展望をふまえながら、「自社および職場の課題認識の共有」と、その解決に向けた議論を「労使で徹底して行う」ことを通じ、「誰もが自信と働きがいの持てる魅力ある職場づくり」を目指すことを、目指すべき方向性として掲げた。

そのうえで、① 働く者の総合的な底上げ・底支え、格差是正に向けて取り組む ② 賃上げを軸とした「人への投資」に継続して取り組む ③ 働き方の改善を進めて体質強化や生産性向上などにつなげる――ことを、取り組みの基本方針とした。なお、自動車総連は2019年から、賃金の「絶対額」の水準到達を重視する方針に転換しているため、方針のなかで賃金の「上げ幅」の要求基準は明示せず、個別賃金要求の定着に向けて取り組んでいる。

絶対額を重視した取り組みは「着実に定着」

大会では、今次闘争までの、絶対額を重視した取り組みの進捗状況を報告した。自動車総連では、「賃金データの入手」を【ステップ1】、「賃金実態の分析・課題の検証」を【ステップ2】、「賃金カーブ維持分の算出・労使確認」を【ステップ3】、「賃金課題の明確化・目指す水準の設定・改善計画の立案」を【ステップ4】、「具体的な取り組み」を【ステップ5】、「配分への関与・検証」を【ステップ6】――と6段階に分け、各組合に対してそれぞれの進捗状況に合った取り組みを促している。

2019年から、ステップごとの取り組み割合をみると、割合が横ばいだった【ステップ4】を除き、すべてのステップで割合が高まっていることから(たとえばステップ6は62単組から74単組に増加)、取り組みが「着実に定着」し、自分たちの組合が抱える課題の解決に向けた「自らの要求」が浸透していることを成果としてあげた。ただ、その一方で、規模間や業種間での十分な格差是正には至っていないとして、「継続した取り組みが必要」と報告した。

個別賃金で要求した単組数は、2022年は610組合で、回答を受けた単組数は172組合だった。2019年以降、ほぼ同レベルの取り組み単組数が続いていることから、取り組みを「継続できた」としたものの、課題として「要求根拠の設定や、会社の納得性の観点で取り組みの難しさがある」ことをあげた。

賃金改善の獲得割合が昨年の46%から今年は63%に増加

平均賃金での賃金改善分の獲得額をみると、2022年は1,518円で、昨年の1,326円を約200円上回った。獲得組合の割合は63%で昨年の46%から17ポイント上昇した。これらの結果から大会では「賃上げの流れを強めることができた」と評価した。獲得額を規模別にみると、「300人未満」の組合が1,693円で最も高く、獲得組合の割合も中小と大手との差が縮小傾向にある。

働き方の改善に向けた取り組みでは、生産性向上の取り組みを実施したのが317組合で、進展があったのが274組合。テレワークやWeb会議などの導入・さらなる活用などのウィズ/アフターコロナの働き方の取り組みを実施したのが122組合で、進展があったのが81組合で、「生産性の向上や意欲・やりがいの向上に向け前進することができた」とした。

企業内最低賃金については、協定締結割合が84%(昨年は83%)に達し、平均締結協定額は16万4,556円となった。年間一時金は、獲得した平均月数が4.33カ月で、昨年から0.03カ月増加。ただ、年間で回答せず、季別回答となったり、付帯事項付きの回答が昨年に引き続き見られたことを課題にあげた。

約37%の単組が賃金改善を獲得できなったことは課題

こうした結果について、「全体の受け止め」では成果として、「労使で職場・賃金課題に対する真摯な議論を行い、最大限の回答を引き出した」ことをあげ、また、企業内最低賃金の引き上げを実現したことや、働き方の改善も果たしたことを評価した。一方、課題として、約37%の単組が賃金改善分を獲得できなかったことや、目指すべき賃金水準を実現するために、中長期的な引き上げを必要とする単組が少なくないことをあげた。

来年の取り組みに向けては、「引き続き自動車総連一体となって、『賃上げを軸とした人への投資』に取り組む」「産業内の付加価値最適循環の取り組みや、各企業労使での生産性向上に向けた取り組みを加速させる必要がある」「日本経済・自動車産業を取り巻く環境などを注視した上で、取り組みの最大化に向けた議論を進めていく」とした。

金子会長はあいさつで、来春の取り組みに向けた検討について、「今後の検討にあたっては、経済・社会の動向に注視しつつ、コロナ禍でも継続して見直してきた働き方やそれにより高められた労働の質、昨今の物価上昇に伴う生活への影響、また、適正取引をさらに推し進めつつ、産業・企業の競争力をいかに高めていくかなど、日本経済の好循環にもつながる取り組みとなるよう、幅広い観点から総合的に検討を重ね、判断する」と述べた。