秋季・自治体確定闘争に向けた取り組みの柱と重点課題を提示/自治労定期大会

2022年9月9日 調査部

地方自治体の職員などを主に組織する自治労(川本淳委員長、75万2,000人)は8月30、31の両日、都内でオンラインと併用の定期大会を開催した。当面の闘争方針では、自治体労働者の生活を守る賃金・労働条件の確保に向けて、週休日の振り替えの運用の適正化や給与の引き上げ改定などの闘争の柱と、労働時間の適正把握、会計年度任用職員の勤務条件改善などを盛り込んだ重点課題を提示。組織拡大に向けた取り組みでは、新規採用者の組織化状況を点検するなど未加入者対策の強化をはかるとしている。

週休日の勤務に対する振り替え手続きの点検・確認と運用の適正化を

方針でははじめに、秋季・自治体確定闘争の取り組みについて、3つの取り組みの柱と4つの重点課題を提示した。

取り組みの柱は、① 週休日の振り替えの運用を適正化すること ② 人事院勧告を踏まえ、給与の引き上げ改定をすること ③ 賃金の運用改善にむけ、「1単組・1要求」を行うこと――の3点を掲げている。

1つ目の柱である週休日の振り替えでは、現場で運用が適正に行われていない実態を一掃するため、全単組で要求・交渉に取り組むことを強調。週休日に勤務が命じられた場合に「事前に週休日の振り替え手続きが行われているか職場点検を行い、実際に指定された振替休日を取得できているかを確認し、振り替えができていない場合には運用の適正化を求める」としている。

また、業務の都合で振替休日が取得できなかった場合は「休日勤務に対する手当支給を求める」ほか、事前の振り替え手続きが取られずに週休日の勤務を命じられた場合は「代休の取得と休日勤務手当の支給の徹底を求める」としている。

月例給引き上げは評価も増額分の配分方法等で「不満の大きく残る内容」(川本委員長)

2つ目の柱となる給与の引き上げ改定では、8月8日の人事院勧告の内容に言及。勧告では、行政職の月例給について、初任給を3,000円~4,000円増額するなどして平均921円(0.23%)引き上げ、一時金について0.10月分引き上げとしている。なお、月例給は20歳台半ばに重点を置きつつ、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について改定することとなっている。

冒頭であいさつした川本委員長は、3年ぶりとなる月例給、一時金の引き上げについて「新型コロナへの対応をはじめ、国民や住民の生活を支えるため、昼夜を問わず懸命に職務に従事する組合員の期待にも一定答える」と評価する一方、月例給の配分が若年層のみにとどまったこと等、「不満の大きく残る内容」と指摘。「運用改善も含めて、いかに賃金・労働条件の改善を勝ち取っていくかが課題」として、すべての単組の連携による取り組みの必要性を主張した。

方針では、月例給・初任給の水準の引き上げ、一時金の支給月数の引き上げと引き上げ分を上位成績区分に配分しないことなどを求めることを強調している。

なお、勧告ではあわせて、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」として、60歳前後の給与水準を連続的なものにすること、社会や公務の変化に応じた諸手当の見直しなど、若年層から高齢層の職員までの給与制度の見直しについて一体的に取り組む考えが示されている。

川本委員長は、「給与制度の見直しは組合員の賃金・労働条件に大きく関わる重大な課題」として、人事院における検討状況を注視するとともに、交渉・協議の強化、合意に基づく対応を求めることを指摘した。

目標賃金の到達水準を確認し運用改善にむけて「1単組・1要求」を実施

3つ目の柱である賃金の運用改善では、すべての自治体単組が職員の給与実態を十分に把握・分析して、単組が目標とする賃金の到達水準の確認を行うとともに、単組事情を踏まえた具体的な運用改善について、「少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」と提示。

単組の到達目標では、 基本給で ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金などを設定。給料表の引き上げと運用改善により達成を目指している。

始業・就業時間や休日労働やテレワーク等の実態を適正に把握できる労働時間管理を

重点課題は、①定年引き上げの実現や再任用職員の運用改善②労働時間の適正な把握や長時間労働の是正③人事評価結果の賃金等への反映や上位昇給の活用④会計年度任用職員の勤務条件の改善――の4点を掲げている。

このうち、労働時間の適正な把握や長時間労働の是正では、厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」などを踏まえ、「交渉・協議と合意により、すべての労働者の始業・就業時間や休日労働の正確な実態を把握できる労働時間管理体制を構築する」と指摘。テレワーク等においては時間外労働を原則行わず、行う場合であっても事前命令を徹底すると同時に、労働時間の管理を「パソコンの使用時間等の客観的な記録を始業・就業時間の把握に用いることなどにより適正に労働時間を管理する」としている。

また、会計年度任用職員の勤務条件の改善では、「いまだ常勤職員との均等・均衡に基づいた制度が整備されていない単組も多く存在しているといわざるを得ない」として、2022年度の自治労賃金制度等調査で確認した、会計年度任用職員の制度整備状況結果をもとに、単組毎に2022確定期の改善要求を設定して取り組むことを提起。賃金改善については、「期末手当の支給月数が常勤職員より少ない場合は、早急に同じ月数にすること」を求め「、常勤職員と同月の期末手当の支給を達成している場合は積極的に勤勉手当の支給を求める」としている。

新規採用者の組織化に向けた取り組み事項の意思統一をはかる

方針は、組織拡大に向けた取り組みについても言及。新規採用者の加入に向けては、県本部で「2022年6月および9月時点の新規採用者組織化状況を点検し、新規採用者のうち未加入者が多い単組へ具体的な支援を強化する」としている。

本部では、新規採用者の加入強化のための具体的対策を進めるため、「10月は県本部担当者を参加対象に、1月は県本部に加えて単組も対象」に対策会議を実施し、2023年度の新規採用者の組織化のために取り組むべき事項について意思統一をはかることを提示した。

政治闘争の重要性を全体で再共有

政治情勢について、川本委員長は、7月に行われた第26回参議院選挙を「自治労の組織力・結集力が問われる選挙戦だった」と言及。立憲民主党から比例代表選挙に立候補した組織内候補の鬼木まこと氏の当選に触れつつも、得票数は約17万票と、獲得目標だった「最低30万票以上」に届かなかったことから「極めて大きな課題を残したと言わざるを得ない」と発言した。活動の総括を進めるとともに、公務員の職場を取り巻く環境が法令・条例に関係してくることを踏まえて、政治闘争の重要性を自治労全体で再共有し、今後の国政選挙等につなげていく必要性を強調している。