「賃金改善額、平均賃上げ額ともに過去最高」とする2022春季生活闘争中間総括を確認/JAMの中央委員会

2022年6月1日 調査部

金属、機械関連の中小労組を多く抱えるJAM(安河内賢弘会長、36万6,000万人)は5月27日、都内でWEB方式を併用して中央委員会を開催し、2022春季生活闘争の中間総括を確認した。今次闘争では、1999年の結成以来、最高の賃金改善額、平均賃上げ額を獲得。7年連続で中小の改善額が中堅・大手を上回った。あいさつした安河内会長は「素晴らしい結果が出た」と評価した。

7年連続で中小の賃金改善額が中堅・大手を上回る

5月13日現在での回答集計によると、賃金改善額の回答の平均は、昨年の1,306円を600円以上上回る1,974円となっている。また平均賃上げでの妥結額(賃金構造維持分含む)の平均は5,707円で、同一組合で昨年と比べると929円増加している。

中間総括は、ここまでの賃上げの取り組みついて、「賃金改善額、平均賃上げ額ともに前年を大きく上回るだけでなく過去最高となった」とし、「2014年来の賃金改善の流れは継続しており、前年大きく減少した改善獲得単組数も増加し、賃金改善の広がりも回復した」と評価した。

中小による格差是正の取り組みについては、「7年続けて、中小労組(300 人未満)の賃金改善額が中堅・大手労組(300 人以上)を上回り、中小労組が健闘している」と評価するものの、「依然、賃金水準の規模間格差は大きい」と指摘した。

あいさつした安河内会長は、ここまでの賃上げ回答について「素晴らしい結果が出た」と表現し、大手が引き出した先行回答が中小の回答の「強固な土台となった」と述べた。

中間総括は回答結果の背景について、「使用者側は、人材確保の観点から、地域の賃金水準や賃上げ額について、これまで以上に意識する事となった」とし、「人材難、法定最賃の引上げなどから、初任給、若年層の賃金改善が重視された」と整理している。

個別賃金により、『人への投資』の必要性について使用者側の理解を得た

JAMでは、賃金の上げ幅ではなく、賃金の絶対額での水準向上による格差是正を重視していることから、加盟単組に対して、個別賃金方式での賃金要求を促している。今次闘争での個別賃金の取り組み結果をみると、30歳ポイントで回答を受けた単組および水準が確定している単組は203組合で、同ポイントでの回答・確定水準の平均は24万2,494円となっている。一方、35歳ポイントについてみると、197単組の平均で、27万312円となっている。

JAMが現行水準、要求水準、回答水準のすべてが揃う組合についてデータを集計し、獲得した賃金改善分の平均を計算したところ、平均賃上げ回答結果での改善分の平均を上回っており、個別賃金の取り組みに優位性がみられた。

こうした結果をふまえ中間総括は、個別賃金要求の取り組みついて、「プロット図、年齢別特性値の活用など、これまで継続してきた『あるべき水準にこだわった取り組み』が、企業内、産業内の賃金格差を明確にし、人材難の中、『人への投資』の必要性に関する使用者側の理解を得ることとなり、賃金改善分の獲得につながった」と評価。人材流出を防ぐためには、「賃金水準の相場感が必要」だとして、「交渉材料として賃金データの価値は高まっている」と言及した。

一時金は中小の回復ペースが遅い

一時金については、半期での妥結平均は2.10カ月(57万1,049円)で、同一単組で昨年と比べると0.12カ月増加。年間では4.35カ月(120万73円)で、同0.26カ月増となった。

中間総括は、「回答月数は、2019年をピークにコロナ禍で大きく落ち込んだが、2020年の水準を上回った」としながらも、「しかしながら、中小労組(300 人未満)の回復ペースは遅くなっており、年収ベースでの規模間格差が課題となる」と評価。「業績の変動が大きく先行きの不透明感から、前年に続き、年間一時金を半期に切り替えるケースが散見された」と振り返った。

23闘争に向け、「予想される物価上昇局面の賃金要求について議論する必要がある」

今後の課題について、中間総括は、「格差是正の核となる個別賃金の取り組みについて引き続き推進を図る」とし、具体的には、「地方JAMにおける単組サポート強化、賃金全数調査の継続と拡大、個別賃金データ開示の拡大などを継続する。特に、個別賃金要求方式への移行には一定の期間が必要なため、次年度へ向けた取り組みを早期に開始する必要がある」として、通年的な取り組みを加盟単組に促した。

また、人材不足が課題となっていることから、人材を確保するためにも「事業継続の面からも、賃金水準の相場形成とあるべき水準の確保が重要となる」とし、「2022年春季生活闘争の成果を継続できるようあるべき水準にこだわった取り組み、賃金全数調査の取り組みを強化していく」と強調した。

このほか中間総括は、物価上昇が2023闘争まで継続する可能性があることをふまえ、「2022年度の物価上昇とその後継続することも予想される物価上昇局面の賃金要求について議論する必要がある」とし、来年の闘争に向けて、物価面を考慮に入れた方針検討の必要性を提起した。一時金については、「中小労組(300 人未満)の回復ペースは遅い」とあらためて述べ、「年収ベースの規模間格差について検討する必要がある」としている。