人勧期に向け、賃上げをはじめとする分配施策を強力に進めるとする当面の方針を決定/自治労中央委員会

2022年6月1日 調査部

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、75万2,000人)は5月26、27の両日、都内で中央委員会を開催し、当面の闘争方針を決定した。方針は、2022人勧期に向けた取り組みとして、物価上昇に伴う生活防衛の観点からも、公務員労働者の賃金引き上げを求めることを強調。川本委員長は、「分配なくして成長なし」と、賃上げをはじめとする分配施策を強力に推し進める必要性を訴えた。また、定年引き上げに向けた条例改正や、会計年度任用職員の勤務手当支給に向けた法改正にも注力することを提示している。

物価上昇に見合う賃金引き上げを

中央委員会では、賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みをはじめ、職場の権利と勤務条件の確立、公共サービス労働者の総結集と組織の拡大――に対する取り組みなど、14本を柱とする当面の闘争方針を決定した。

賃金・労働条件改善をめぐる人勧期を中心とした取り組みでは、「賃金をはじめとする公務員の労働条件については、交渉・合意によって決定されるべきものである」との基本的考え方に立った上で、2022人勧における「給与改定にあたっては、精確な調査による公平・公正な官民比較に基づき、月例給・一時金の引き上げを求める」と強調。特に「物価上昇に伴う生活防衛の観点からも、2022春闘における民間企業の賃上げを踏まえ、公務員労働者の賃金引き上げを求める」としている。

川本委員長は、「物価が上がっても、それに見合う賃上げがなされなければ、家計を圧迫し、経済に打撃を与え、景気にも悪影響を及ぼす」と指摘。その上で、「真に日本の経済を成長させる、国民生活の改善を目指すのであれば、これまでの政策を大きく転換して、賃上げをはじめとする分配施策を強力に推し進めるべきである」と述べた。

2022人事院勧告に向けた人事院への要求事項としては、① 公務員労働者の賃金の引き上げや賃金水準の改善、② 非常勤職員等の制度及び処遇の改善、③ 労働諸条件の改善――を掲げている。

2022人勧期闘争に向けた諸行動としては、2022人勧期要求行動のほか、単組では6月~7月に「2022人勧期要求アンケート」に取り組み、各単組の課題を洗い出し、確定期要求につながる職場討議を促進するとしている。

定年引き上げに伴う条例改正は6月議会での決着を目指す

定年引き上げに向けた取り組みとしては、はじめに、地方公務員の定年引き上げについて、2023年4月1日の施行日に向け、準備が進められていることを指摘。一方で、これに伴う条例の発出が遅れたことなどから、多くの単組で本格的な交渉に入れていないとして、「春闘以降単組段階での交渉・協議を積み上げ、5月のヤマ場で決着、6月議会での条例改正を目指す」とした。なお、6月議会に間に合わない単組については、遅くとも9月議会での決着を目指して取り組むことを示している。

条例事項に関する最低限の獲得目標では、「定年年齢を65歳とし、2023年度から2年に1歳ずつ段階的に引き上げること」「役職定年(管理監督職勤務上限年齢)を導入すること」「60歳を超える職員の給料については、60歳前の7割以上とすること」など、6つの項目を掲げている。

会計年度任用職員の勤勉手当支給に向けて法改正を

会計年度任用職員の処遇改善に関しては、「勤勉手当支給を可能とする地方自治法等の改正を目指す」と強調。① 2023年通常国会に閣法として地方自治法改正法案が提出されることを目指し、国会・省庁対策、地方三団体対策を行う ② 概算予算編成期に向け、地方三団体要請行動の取り組みを行い、国に対して財源や必要な措置を要求することを求める――の2点に取り組むとしている。

人員確保を重点闘争として積極的に実施

職場の権利と勤務条件を確立する取り組みでは、人員確保について、はじめに「人員要求は、職員の労働条件に関わる重要な要求であることを再確認」することを提示。その上で、「2022春闘方針に基づき、春闘期において各単組で実施した職場点検や安全衛生委員会で報告された、職場ごとの時間外勤務の直近の実態および人員確保チェックリストなどを基礎として、2022人員確保闘争に積極的に取り組む」ことを強調した。

人員確保闘争は、「重点闘争として通年的に取り組むこと」とし、6月3日~9日を基本的交渉ゾーンに設定することを示している。6月期以外になる場合は、県本部が集中期間を設定し、統一闘争として取り組むとしている。

公共サービス現場の組合員の声を国政に

政治情勢について、川本委員長は、参議院選挙に向けた野党間の連携が後退する厳しい状況にあるからこそ、「新型コロナウイルスによって改めて重要性が再認識された公共サービスを維持・発展させることが自治労の使命」と発言。公共サービス現場の最前線で奮闘する組合員の声を国政に届けるために、組織候補予定者である鬼木誠氏(元書記長)の当選に向け、一人ひとりの組合員が選挙闘争に取り組み、「組合員1人1票以上」を目指すことを強調した。

6割が賃金水準改善を要求するも前進回答は1%にとどまる

なお、中央委員会ではあわせて、自治労の2022春闘の取り組み結果についても公表した。これによると、自治体単組では、1,647単組のうち1,132単組(68.7%)が要求書を提出しており、交渉を実施したのは796単組(48.3%)、妥結合意したのは469単組(28.5%)、書面協定を締結したのは252単組(15.3%)となった。妥結合意以外の項目で2021年を上回り、2020春闘の水準に戻る結果となったものの、3割以上の単組では未だ春闘に取り組んでいない。

賃金水準の改善については、956単組(61.4%)が要求。そのうち、今春闘で賃金水準の改善に何らかの前進回答があったのは14単組(0.9%)にとどまっている。これを受けて自治労は、「職員の給与実態の把握と目指すべき到達目標を単組として確立した上で、運用改善に取り組むことが不可欠」として、毎闘争ごとで積み上げ、全体の底上げにつなげていく重要性を指摘した。