300人未満の賃金改善額が6年続けて1,000人以上を上回る/金属労協3月末現在の回答状況

2022年4月6日 調査部

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の金属関連の5産別でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)がまとめた3月末現在の回答集計によると、賃金改善分を獲得した組合数は昨年に比べ大きく増え、平均獲得額も前年同時期を481円上回る1,735円。中小労組の賃金改善分の獲得額が大手を上回る流れも続いており、300人未満の組合は6年連続で1,000人以上の組合の賃上げ額を上回り、2014年以降で最も高い賃上げ額となっている。

賃金改善分の平均獲得額は前年同時期比481円増の1,735円

3月31日までの回答状況をみると、JCMを構成する3,149組合のうち、今次闘争で要求を提出しているのは2,488組合となっている。そのうち、賃上げ(賃金改善分)の要求を提出しているのは2,046組合(対要求組合比82.2%)で、賃金改善分の平均要求額は3,357円。前年同時期に比べ、要求提出組合は前年(2,518組合)より30組合少ないが、賃上げ要求している組合は231組合増え、要求額も399円増加している。

回答・集約組合数は1,252組合。そのうち、1,071組合が賃金構造維持分を確保しており、賃金改善分を獲得したのは838組合(対賃上げ要求組合比41.0%、対回答・集約組合比66.9%)で、賃金改善分の平均獲得額は1,735円だった。前年同時期に比べ、賃金改善分の獲得組合数が340組合増え、賃金改善分の平均獲得額も481円上回った。

年間一時金の平均月数は4.60カ月に

賃金改善分の平均獲得額を組合規模別にみると、「1,000人以上」が1,631円、「300~999人」が1,589円、「299人以下」が1,844円となっており、300人未満の組合の高い獲得額が目立つ。300人未満の組合は6年連続で1,000人以上の組合の賃上げ額を上回り、2014年以降で最も高い賃上げ額となっている。

年間一時金については、要求方式で取り組む組合が1,970組合、業績連動方式が229組合で、回答・集約・確定組合は917組合となっている。平均月数は4.60カ月と前年(4.34カ月)および前々年(4.50カ月)の同時期を上回り、前年実績を上回った組合も487組合(前年同期201組合)を数えるなど、コロナ禍前の水準に戻した格好となっている。

「中小が大手を上回る賃上げ獲得の流れが継続」(金子議長)

JCMと連合・金属共闘連絡会議が4日に開いたリモート会見で金子議長(自動車総連会長)は、「ここまでの回答状況をみると、賃上げ獲得組合の割合がコロナ間前の水準に回復し、賃上げ額も全体としてコロナ禍前の獲得水準を上回っている」ことを指摘。「大手労組が引き出した賃上げの機運が集中回答日以降も中小労組に波及していて、格差是正の観点からもここ数年の大手を上回る賃上げ獲得の流れも継続している」などと評価したうえで、今後、回答を引き出す組合について、「これまでの獲得状況を踏まえ、さらに底上げや格差是正を実現する賃上げを獲得していきたい」などと述べた。

自動車は7割強が賃金改善分を獲得

リモート会見には、JCMを構成する各産別のトップも参加し、最新の回答状況を報告した。

自動車総連の金子会長は、4日午前9時の時点の集計で全単組の47.7%にあたる498単組が回答を引き出していることを紹介した。平均賃上げ額は、賃金カーブ維持分と賃金改善額をあわせた全体で4,934円となっており、賃金改善分の獲得したのは365単組で、獲得割合は昨年同時期(50.2%)を大きく上回る73.2%になっていると話した。

また、非正規雇用労働者に関する取り組みについて、「同じ職場で働く仲間の観点で、時給や日給の有額での回答引き出しなど、労働組合の社会的役割を果たす結果を引き出している」として、「時給の引き上げ額は現時点で15.0円。単純に月例換算すれば2,000円を超える水準になっている」などと述べた。

電機では約9割が賃金水準の改善図る

電機連合の神保政史委員長は、「現時点で集約方向にある組合が260あり、そのうち約9割が賃金水準の改善を図ることができた」と述べたうえで、水準について「賃金体系維持分に加え、引き上げ額が2,115円になっている」と報告。「今次闘争の勢いと合わせ、目指すべき水準に向けて地道に交渉の努力を続けてきたこと、労使で論議してきた結果の表れだ」などと説明した。

さらに、「交渉期間中に電機産業の持続的成長に向けた人事制度について産別労使、個別労使で論議を深めた」ことにも触れ、「意義深いことだったが、短期間で解決することではないので、これからも継続的に労使での論議を深めていきたい」と話した。

JAMは平均賃金、ベースアップとも結成以来過去最高

JAMの安河内賢弘会長は、「中小の先行する単組の回答が出揃った段階だが、平均賃金、ベースアップともにJAM結成以来過去最高で、賃上げに向けた力強い流れがきている」と述べる一方、「一時金は半期で0.14カ月、通期で0.27カ月のプラスにとどまっている」ことを指摘し、「中小製造業が必ずしも景気が良いのではなく、今の賃金では人を確保するどころか人材流出が止まらないという労使の共通認識の下で議論が行われた結果だ」と強調。そのうえで、今後の交渉について「これから中小あるいは世の中全体に賃上げが広がっていくかどうかは価格転嫁が大きな鍵になる」と指摘。「値上げそのものを社会全体が受け入れていくことが重要。物価も上がり続けるが賃金も上がるような社会を目指していかねばならない」と訴えた。

基幹労連と全電線も中小が大手を上回る傾向

基幹労連の神田健一委員長は、今次闘争で複数年では118組合、単年度では157組合が取り組んできたことを報告。22年度では、1,000人以上規模の回答額が2,003円なのに対し、300~999人は2,251円、299人以下が2,449円と、中小組織が高い回答を得ている状況を紹介した。さらに23年分についても「満額回答(3,500円以上)が5組合ほどでている」ことを報告した。

全電線の佐藤裕二委員長は、3月25日までに加盟34単組が集約し、全組合で賃金構造維持分を確保。賃金改善分についても全組合が要求し、「昨年の18単組を大きく上回る31単組で有額回答を引き出した」ことを報告した。改善分は単純平均で1,395円となり、昨年の537円を大きく上回っており、規模別では中小が大手を上回る傾向にもなっている。