大手追従・大手準拠を転換する運動が定着・前進/連合の2019春季生活闘争まとめ

2019年8月28日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は8月23日、第8回中央闘争委員会を開催し、2019春季生活闘争まとめを確認した。賃上げについては中小組合が健闘したとして、「『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』が確実に定着・前進した」などと評価した。

賃金改善獲得率は37%で昨年を下回る

7月5日に公表した最終の回答集計結果によると、要求を提出した組合は6,839組合で、うち月例賃金改善を要求したのは5,504組合となり、昨年同時期に比べ337組合減少した。妥結済みの組合は5,085組合で、うち賃金改善分を獲得した組合は1,896組合。賃金改善獲得率は37.3%で、昨年同時期(38.1%)を下回った。

加重平均は2.07%で昨年と同率――300人未満の賃上げ分の引き上げ率が全体を凌ぐ

賃上げの回答状況は、平均賃金方式で要求・交渉を行った組合のうち、5,405組合が回答を引き出し、加重平均での回答額は5,997円(2.07%)で、昨年同時期に比べ額で63円増加し、率は同率だった。賃上げ分が明確に分かる組合は2,431組合あるが、賃上げ分の加重平均は1,560円(0.56%)で、昨年同時期に比べ額で45円減、率で0.02ポイント増となった。300人未満の組合(1,548組合)だけでみた賃上げ率は0.63%で、率そのものは昨年同時期と同じだったが、全体の賃上げ率を上回る結果となった。

雇用形態間格差の是正も進展

これらの結果からまとめは、賃上げについては「『賃上げ』の流れは力強く継続。とりわけ100人未満の中小組合の健闘ぶりから『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』が前進したものと評価」と強調。また、100人未満の中小組合の賃上げ額・率ともに全規模区分のなかで最も高い結果となったこともあり、「今次闘争より『中小共闘方針』を闘争方針本体に結合し、中小組合の社会横断的水準の確保に向けた取り組みを追求するとしてきた成果であり、『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』が確実に定着・前進したものと受け止める」と評価した。

非正規労働者の賃上げについては、最終的に時給の単純平均では24.23円、加重平均で25.91円といずれも昨年同時期を上回ったこともあり、「雇用形態間格差の是正についても進展が見られた」とし、「この結果は、人材の確保・定着のためには賃金をはじめとした労働条件の向上が必要であり、職場の生産性向上には雇用形態にかかわらず同じ職場で働くすべての労働者の処遇改善が必要との労使の認識がさらに深まったものと受け止める」と評価した。

賃金水準追求の認識が高まったと評価

2019闘争方針では、連合は賃金の「上げ幅」だけでなく、「賃金水準」を追求する姿勢も強調した。この点については、「構成組織の要求方針として初めて目標水準を明記した事例や、300人未満の中小組合を中心に自組合の賃金と社会横断的水準あるいは構成組織が設定する水準などと比較し、その水準に到達するための要求を組み立てるなど、『賃金水準』追求の認識は高まったものと評価できる」とする一方、自らの組合の賃金水準を把握・分析する体制が取れなかったり、経営への理解活動の時間を取れなかった組合もあったことなどを課題としてあげた。

今後に向けた検討課題としては、2020闘争に向け、賃金水準の情報収集と開示など「賃金水準」闘争を強化していくための体制整備や、中小組合の底上げ・格差是正の実効性を高めるためのサポート体制のあり方、社会横断的な賃金水準のあり方などを提示した。

同まとめの確認をうけ、連合は2019闘争の中央闘争委員会を解散した。