連合内友好産別や化学・医薬化粧品産業内の連携強化を/JEC連合定期大会

2019年7月24日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の組合でつくるJEC連合(約10万7,000人)は7月18、19の両日、岡山県岡山市で定期大会を開き、連合内友好産別や化学・医薬化粧品産業の連携強化などを柱とする向こう2年間の運動方針を決めた。連合内友好産別との連携では、紙パ連合やゴム連合、フード連合などとの各産別を維持したうえでの連合登録一本化を含む連携に向けた協議を実施する考えを示している。役員改選では、平川純二会長が退任し、新会長に酒向清副会長を選出した。

高齢者が多様な働き方で活躍できる処遇のあり方を模索

新運動方針は、基本理念に① 自らが行動(能動的連帯の醸成)② 助け合う仲間づくり(組織拡大・中小サポート)③ それぞれを尊重(ネットワークの充実)④ 社会に声が届く組織(社会への発信)⑤ 産業の発展(政策活動の充実と政治参画)――の5項目を示したうえで、2020~2021年度に取り組む具体的な内容を列記している。

まず、能動的連帯の醸成については、「労働組合の社会的役割と責任を常に考え、すべての働く仲間の立場に立った運動を能動的に展開し、自由、平等、公正、包摂的な社会の実現をはかる」として、雇用を守ることや労働条件・処遇の維持向上、公正公平な社会や職場づくりを目指すほか、今方針では新たに、「高齢者が多様な働き方で活躍できる社会の実現」を掲げ、多様な働き方やそれに応じた処遇のあり方等を模索していくことも強調している。

中小組合へのサポートとオルガナイザーの育成を

組織拡大・中小サポートでは、「組織拡大を重点活動のひとつ」と位置付けて、① 正社員を含む組織内の対象組合を増やす② 加盟組合の関連・関係企業の組織化③ 連合未加盟組織の組織化--等に取り組む。中小規模の加盟組合に対しては、「業種別部会とオルガナイザーが中心となってサポートを実施する」こととし、「産業別労働組合が本来きちんと伝えなくてはならない技術や背景・歴史を次の世代に繋げるよう」オルガナイザーの採用・育成も進めていく。

ネットワークの充実に関しては、JEC連合が① 石油② 化学③ セメント④ 医薬・化粧品⑤ 塗料⑥中小・一般--の6つの業種別部会の活動を運動の柱とし、ネットワーク型の産業別組織として運動を展開していることを、「それぞれの立場を尊重し積極的な活動とすることが組織の強みだ」と指摘。その強みを活かしながら、「それぞれの産業の特徴を網羅した① 賃金などの労働条件に関する取り組み② 産業政策活動③ 加盟組合との連携・支援④ 組織拡大の推進等のさまざまな取り組みを実施する」としている。

友好産別との連携を深めて連合加盟一本化に向けた協議を実施

JEC連合は昨秋に事務所を移転し、紙パ連合との共同事務所の利用をスタートさせた。社会への発信強化については、こうした取り組みも踏まえ、運動方針に「紙パ連合との連携の深化およびゴム連合やフード連合をはじめとする多くの連合内友好産別との連携(連合登録一本化を含む)に向けた協議を実施する」ことを明記した。吉田事務局長は「これは産別統合ではなく、あくまで登録を一本化し、われわれの声がいかに連合内で届く方向に持って行くかの取り組みだ」と説明している。

UAゼンセンとの産別間合意で産業政策の連携も強化

また、「化学ならびに医薬化粧品産業の連携に向けた取り組み」も強化する。化学産業については、「化学産業で働く者の声がより社会に届くよう、関係団体(産別)と連携に向けた具体的な協議を実施する」こととし、特にUAゼンセン製造産業部門との間で、「産業政策を中心とした連携において具体的な活動を目指す」。なお、JEC連合との連携協定を解消し、連合を離脱した化学総連(大手化学メーカーの労組で構成、約5万4,000人)に対しては、「連携解消から3年を経て未だ膠着状態であることから、今後新たな枠組みを立ち上げ、再度、化学総連全体の連合運動への参画を前提とした融合・連携を促していく」考えを示している。

一方、医薬化粧品産業の連携では、「過去数年間にわたり医薬化粧品産業を取巻く環境変化等にどう対応すべきか検討した結果、現段階で医薬化粧品に特化して新たな産別を立ち上げることは適切でないと判断した」として、「今後はUAゼンセンとの産別間合意のもと2019年4月に発足したヘルスケア産業プラットフォームを中心に、産業政策を中心とした連携を具体的に実行していく」姿勢を強調している。

「同じ産業に働く仲間が集いやすい形を模索し働く者の声を社会へ発信する」(平川会長)

あいさつした平川会長は、「今年度は化学産業、医薬化粧品産業での政策活動での推進に向け、同じ産業で働く仲間を組織しているUAゼンセンとの連携を深めた。医薬化粧品産業においては、4月にUAゼンセンとの産別間合意のもと『ヘルスケア産業プラットフォーム』を発足させ、化学産業においては8月にUAゼンセンとJEC連合が共同で『化学産業シンポジウム』を開催する」と説明。「対応すべき課題は多くあるなか、産別統合や新たな産別を立ち上げる動きではなく、同じ産業に働く仲間が集いやすい形を模索し、働く者の声を社会へ発信したい」と訴えた。さらに、「同様の考えで、事務所を共同利用している紙パ連合とは連携を深化させるとともに、連合内友好産別との連携を図り、社会に発信できる体制づくりに努力していく」とも述べた。

このほか、運動方針は政策活動の充実についても、「『雇用の安定確保』『職場の安全・衛生の確保』『総合労働条件の維持・向上』を図るために、『産業の活性化』『企業の健全な発展』が極めて重要だ」として、「行政・政党・議員・業界団体・他組織への積極的な働きかけによって、化学・エネルギー関連産業において、高い政策力と実行力を示せるよう、活動に注力していく」としている。

賃上げ額は加重平均で6,944円(2.06%)、年間一時金は5.51カ月に

大会では、「2019春季生活闘争まとめ」も確認した。今春の賃上げ交渉の回答結果(5月31日現在)を見ると、回答を引き出したのは、昨年同時期より14組合少ない164組合。そのうち、86組合が賃上げ分を獲得しており、こちらも前年同時期より7組合減っている。回答額は、定期昇給分を含めた加重平均で6,944円(2.06%)、賃上げ・ベア額は同1,370円で、それぞれ前年を241円、29円上回った。年間一時金は、加重平均で180万1,581円(5.51カ月)で、こちらも額(6万1,725円)、月数(0.13カ月)ともに、昨年を上回っている。

こうした回答状況についてまとめは、「ベア・賃上げ獲得組合は、昨年同様に半数以上の組合がベア・賃上げを確保できた」「賃上げ回答の内容は、『純ベア』での回答が圧倒的に多く、総じて1,000円程度の回答となった」などの特徴点を記載。中小労組の状況にも触れ、「賃上げ回答額の合計、ベア回答額も大手組合と比較すると大きく下回っている」としながらも、「『99人以下』で36.6%、『100~299人』で47.5%の組合がベアを獲得した」ことを挙げ、「賃上げの流れは続いているといえる」と評価した。

2020春闘に向けては、「(2019春闘では)先行して交渉した組合の多くがベアを獲得したことから、JEC連合に集う『共闘』が持つ意義はとても大きく大切なもので、2020春闘においてもこの流れを続けていく必要がある」としたうえで、「賃上げによってこそ企業業績が向上する、という考え方を広く定着させていくことが大切。人への投資こそ、付加価値向上に向けた正しい道だという認識を労使が共有すべきだ」などと問題提起している。

連合友好産別や化学・医薬化粧品産業での連携強化に関する意見が

質疑では、連合友好産別や化学・医薬化粧品産業での連携強化に関する意見が目立った。化学部会の加盟組合からは「(活動報告で)『紙パ連合との事務所の共同利用を開始した』とあった。そこに向かって活動していくとのことだが、現時点ではどういった情報共有をしているのか」との質問があり、石油部会の加盟組合からも「『化学総連に連合運動への参画を前提とした融合・連携を促す』とあるが、具体的な切り口はあるのか」といった声が上がった。

これらの発言に対し、本部は「紙パ連合とは同じ事務所で敷居もなく、机を並べて活動している。連合の各種委員会に出る時に、『どういった考えなのか』を担当者レベルですぐに意見交換できるなど、運動の方向性についての情報が共有できている。また、紙パ連合は定年延長が非常に進んでいて、JEC連合は男女共同参画や女性活躍推進が進んでいるので、そういった取り組みについての意見交換もしている」などと答弁。化学総連に関しては、「化学エネルギー産業が一つになるべきとのメッセージを常に送れるような枠組みができたらと思っている。例えば今、医薬化粧品でやっているプラットフォームのような枠組みが(化学産業でも)ある程度、見えてきた時に、『ここに参画するには連合運動に戻ってくることが前提だ』と提起することはできると思う。ただ、そういったことをするのは凄く時間がかかるし、互いの理解が浸透していなくてはならない」などと述べて、中・長期的な対応の必要があることを訴えた。

なお、大会では役員改選が行われ、3年間、会長を務めた平川純二氏(JXTGエネルギー労働組合)が退き、酒向清副会長(東ソー労働組合)を新会長に選んだ。吉田直浩事務局長(日本化薬労働組合)は再任された。