全国一律最低賃金制導入や働き方に関する「法制度闘争」に注力/全労連定期大会

2018年8月1日 調査部

[労使]

全労連(小田川義和議長、約77万1,000人)は7月26日から3日間、都内で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。今大会を前に、6月29日に通常国会で働き方改革関連法が成立、7月25日には中央最低賃金審議会が最低賃金の目安を示すなど、全労連が掲げる「法制度闘争」や最低賃金引上げの取組みに影響する動きがあり、大会はそれらを踏まえて方針を打ち出す場となった。また、2016年に策定した組織拡大強化4カ年計画の後半2年間を迎えるにあたり、取組みの強化を確認した。

働き方改革関連法に対し「省令・指針の策定プロセス」をチェック

あいさつした小田川議長は、働き方改革関連法の成立について「内容のひどさとともに、政府が説明責任を全く果たさない国会審議で強行された経緯も忘れてはならない」などと批判。「すでに政省令策定の論議が始まっているが、経営側は付帯決議の無視を迫っている」などとしたうえで、とくに高度プロフェッショナル労働制について「労使関係で職場に入れさせなければ、というだけでは事足りない。政省令段階でも徹底して矛盾を追求し、制度の運用に徹底して反対すると同時に、廃止を目指す決意を固め合おう」と呼びかけた。

運動方針は、「職場の仲間」の「働き方実態調査」の実施を打ち出すとともに、「職場の労働時間管理の在り方と36協定の内容チェック」「勤務間インターバル協定の締結」などに取組むとしている。また、大会で併せて確認した当面の2018年秋季年末闘争方針では、「法制度闘争」の中で ① 「労働政策審議会における省令・指針の策定プロセス」のチェック ② 高度プロフェッショナル制度の廃止・残業上限規制の引き下げと適用猶予・除外の廃止など「本物の働き方改革」を求める署名活動 ③ 全労連としての統一要求・政策推進と春闘前段での「労働法制討論交流集会」の開催――などを進めるとしている。

全国一律最賃制度創設のための法改正を視野に取組む

2018年の最低賃金の目安については、小田川議長は「26円の引上げ、加重平均で874円とする内容では、年収200万円以下のワーキングプアが1,100万人を超える状況は改善されない」と指摘。かねてから全労連が提唱している「最低生活保障を求める国民運動と、社会的賃金闘争の連携は不可欠だ」と訴えた。

運動方針は、2020年に全国一律の最賃制度創設のための法改正を目指す「全国最賃アクションプラン」を柱に置いた運動に取組むとしている。当面の運動の具体策として、2018年秋季年末闘争方針は、「最低賃金10万人大学習運動」への取組み、労働組合や経営者団体などとの懇談、5割以上の自治体での最低賃金法改正に向けての決議の実現を目標とする取組み、「ディーセントワーク統一宣伝行動」の実施などを盛り込んだ。

「組織拡大強化4カ年計画」の後半2年間の運動強化を確認

2016年の大会で策定された「組織拡大強化4カ年計画」は今大会時点で前半2年を終える。しかし方針提起した橋口紀塩事務局長代行によると、全労連集計(年金者組合、オブザーバー加盟労組などを含む)の2018年6月時点の組織現勢は約103万人、前年から約1万5,000人の減少となり、減少数が増加を上回る状況が続いている。ただし「減少数は減ってきて」おり、既存組織のこの2年間の拡大数は約21万6,000人と、「目標とした毎年15万人を超える既存組織内での拡大」には達していないものの、「年間10万人の水準の組織拡大」を実現している。

方針は「残り2年間で150万全労連への飛躍を作り出す」とし、 ① 10人に1人の割合で組織建設委員を選出する ② 組合員拡大と要求実現の2本柱を一体的に追及する ③ 単産と地方が一体となって取組み、すべての都道府県組織で調整会議を行って地域労連での調整会議へと広げる――などを打ち出した。

大会ではこのほか、「憲法闘争の強化」や「社会保障闘争」、持続可能な地域経済・社会への転換を図る全労連独自の「地域活性化大運動」などを確認した。小田川議長は「これ以上の労働条件、暮らしの悪化、平和の危機を深刻化させないためにも、政治を変えることが必要だ」と指摘。「衆議院選挙区ごとの市民連合の結成が進み、日常的な市民と野党の共闘・連携が深まってきている」として、代議員に「市民と野党の共闘での役割発揮についての意思統一をお願いする」と訴えた。

なお、役員改選では、小田川義和議長(国公労連)が再選された。新事務局長には野村幸弘氏(全労連副議長、自治労連)が信任投票で選出された。