底上げと同一労働同一賃金に向けたシナリオを議論/JP労組定期全国大会

2018年6月20日 調査部

[労使]

日本最大の単一労組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員約24万人)は6月13、14の両日、香川県高松市で定期全国大会を開き、2018年度の運動方針を確認した。増田光儀・委員長はあいさつで、2018春闘において正社員の一時金水準が年間4.3カ月の回答を得たことや、非正規雇用社員に年始手当や夏期・冬期休暇等で底上げが図られたことを、「将来に向けて底上げにつなげられるような当面のシナリオと、そのベースを一定形作ることができた」と評価。その一方で、一般職への住宅手当の廃止や新規採用者の年休発給日数の引き下げ等でマイナスを受け入れざるを得ない状況になったことについては、「トータルで上乗せしていくことができるよう取り組んでいく」姿勢を強調した。

五つの手当と三つの休暇制度の底上げ・拡大を要求

JP労組は、2018春闘と2019春闘で「働き方改革」に対応していくこととし、「関連する法整備までの時限を見通すなかで、客観的に合理性のある処遇や制度等になるよう整える取り組み」を進める考えを示している。

2018春闘では、連合方針を踏まえた正社員のベースアップや期間雇用社員の賃金改善、一時金水準の引き上げ等を要求。あわせて、同一労働同一賃金の実現に向けて、非正規の雇用社員に適用されておらず、客観的に合理性が乏しいと考えられる五つの手当(扶養、住宅、寒冷地、年末年始勤務、隔遠地(日本郵便のみ))と三つの休暇制度(夏期、冬期、病気)の底上げ・拡大を求めることとした。

年始勤務手当や夏期・冬期休暇を非正規雇用社員にも適用

その結果、正社員の基準内賃金については、ベア500円相当の財源を用いた初任給の改善と低位号俸の引き上げを獲得。一時金については、正社員が年間4.3カ月、アソシエイト社員を含む期間雇用社員は、臨時手当の賞与支給係数(協約に定めている実際の勤務日数に応じて乗じる係数)の引き上げと夏期手当支給時の特別加算として上限2万円を上乗せ支給するとの回答を引き出した。

同一労働同一賃金の実現に関しても、手当については、① 一般職の住居手当は廃止(経過措置10年)② 寒冷地手当は見直し(現在の50%水準に圧縮、経過措置5年)③ 年末年始手当は年始分を非正規雇用社員に拡大適用することを前提に年末分を廃止 ④ 隔遠地手当(日本郵便のみ)は手当の目的に沿って生活不便部分と生活環境変化対応部分に分離し、6年目以降は生活不便部分のみの支給として調整手当に再編――すること。休暇制度についても、① 全アソシエイト社員に夏期休暇・冬期休暇各1日を付与(有給) ② 時給制・月給制契約社員の病気休暇(無給)を最長雇用契約の末日までの間として確保 ③ 正社員の新規採用時の年休発給日数を15日に見直す――等の回答を引き出したことで、「少しずつ底上げにつなげていくことができる当面のシナリオを描くことができた」と判断し、大綱的に妥結・整理を図った。

なお、年末年始勤務手当の見直しと一般職の住居手当の廃止、寒冷地手当の見直し、アソシエイト社員の夏期休暇・冬期休暇付与、期間雇用社員の病気休暇期間見直し、新規採用社員の年休発給日数見直し等については労働協約の見直しを行う必要があることから、今大会でその旨、確認した。

「処遇の引き下げを易々と受け入れたわけではない」(増田委員長)

増田委員長は2018春闘での判断について、「処遇の引き下げを易々と受け入れたわけではない。非正規雇用社員の処遇改善を追求していくことは言うまでもないが、正社員の処遇を引き下げて同一労働同一賃金を実現しようと意図するわけがない」と強調。「ただし、厳しい事業環境におかれている状況から、全ての処遇を引き上げてバランスを図るのは困難と言わざるを得ない。仮に一つひとつの手当をそのような形で引き上げていけば、基本的な処遇を引き下げなければならない状況が生じかねない」と述べた。

さらに、① 2010年度までの一時金水準への回復という大きな宿題が残っていた ② 人材確保に向けた若年層の給与水準の引き上げも待ったなしである ③ 先日の最高裁判決で示されたような労働契約法20条に関わる訴訟を注視し、働き方改革関連法案が成立した後の環境変化も見据えておく必要がある――ことを挙げて、「こうした状況を含め、あらゆる角度から可能性を探った結果、将来に向けてトータルで底上げにつなげられるような当面のシナリオと、そのベースを一定形作ることができたと判断した」と説明。そのうえで、一部マイナスを受け入れざるを得ない状況になった点については、「一般職の2017年度の年収の個別保障はもとより、継続的な底上げ追従により、トータルで上乗せしていくことができるよう取り組んでいく」と言及した。

19春闘では扶養手当や定年制が大きな課題に

また、2019春闘についても触れ、「処遇への影響の大きい扶養手当、基本的な給与と大きく係わる(65歳)定年制など、より大きな課題と向き合っていくことになる。続いて難しい判断を迫られることも想定されるので、組合員との丁寧な情報共有と連携をもって、しっかりと将来を見据え、確かな方向性を見いだしていく」と主張した。

来夏の参院選では立憲民主党から組織内候補を擁立

大会では、来年の参院選に組織内候補として擁立する小沢雅仁・副委員長を、立憲民主党から出馬させる方針を明らかにした。

連合は現在、「政権を担い得る大きな固まりとなる野党を再生する途上にある」との認識から、国民民主党と立憲民主党の「両党との政策協定を念頭に、働く者・生活者の立場に立った政策の実現に向け、重要政策の調整を図っていく」としている。増田委員長は、こうした連合方針を踏まえて両党を支援し連携を図っていく考えを示したうえで、「『小沢候補』を擁立する政党については、今春実施した『政治・政策活動に関するアンケート調査』における支持政党の問いに対し、立憲民主党との回答が最も多かったことと、最近の世論調査において野党のなかで最も支持率が高いのは立憲民主党だ」と述べ、小沢氏を立憲民主党から擁立することを明言した。