「賃上げの流れは力強く継続していると受け止める」/連合中央委員会

2018年6月8日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長、679万人)は7日、千葉県浦安市で中央委員会を開き、2018春季生活闘争の中間まとめを確認した。5月時点で賃金改善分を獲得した組合数が昨年同時期を500組合以上、上回っており、中間まとめは、「賃上げの流れは力強く継続していると受け止める」などと評価した。

回答額の加重平均は6,061円(2.09%)で前年を0.1ポイント上回る

5月8日時点の要求・妥結状況をみると、集計組合(8,142)のうち、月例賃金の改善(定昇維持を含む)を要求したのは5,162組合で、昨年同時期よりも665組合多い。月例賃金改善要求をした組合のうち、妥結済となっているのは3,575組合で、賃金改善分を獲得したのは昨年同時期より547組合多い1,557組合となっている。

回答引き出し状況をみると、平均賃金方式で要求・交渉を行った組合のうち4,091組合が回答を引き出し、回答額の加重平均は6,061円、率は2.09%だった(前年同時期比255円、0.10ポイント増)。賃金改善などの賃上げ分が明確に分かる2,220組合の集計でみると、賃上げ分の加重平均は1,614円(0.53%)。これを300人未満の組合(1,322組合)だけでみると賃上げ率は0.62%で、前年同時期の賃上げ率(0.58%)を上回っただけでなく、全体平均の賃上げ率(0.53%)および300人以上の賃上げ率(0.53%)を上回った。

非正規労働者の賃上げの回答水準は、時給では単純平均で22.48円(昨年同期比2.21円増)、加重平均で25.34円(同3.9円増)となっており、単純平均も加重平均も2014年以降で最も高い水準となっている。

これらの賃金引き上げの取り組みについて中間まとめは「すべての組合が月例賃金にこだわり、賃金の社会的水準確保を重視し、『底上げ・底支え』『格差是正』をめざして取り組んだ結果、賃上げ要求のすそ野が広がるとともに早期決着の流れが前進している」と述べるとともに、回答状況について「昨年を上回る組合が賃上げを獲得しており、企業規模にかかわらず『賃上げ』の流れは力強く継続していると受け止める」と評価した。300人未満の中小組合の賃上げ率が大手組合を上回った点については「『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』が定着・前進しているものと評価する」とした。

「インターバル規制の導入に向けた取り組み」などで前進

2018年は賃上げとともに、柱として「働き方の見直し」にも取り組んだ。長時間労働の是正に関わる要求事項のなかでは、「インターバル規制の導入に向けた取り組み」で回答を受けたり、妥結した組合数が昨年の2倍近く増加した(昨年75組合→今年144組合)。均等均衡待遇の実現に向けた取り組みでは「無期労働者への転換促進および無期転換ルール回避目的の雇い止め防止と当該労働者への周知徹底」で回答を受けたり、妥結した組合数が昨年同時期に比べ大幅に増加した(同57組合→同689組合)。

働き方の見直しの取り組みでは「組織労働者としての務めを果たしている」/神津会長

あいさつした神津会長は、賃上げの取り組みについて「こうした流れを、現在も取り組みが継続している組合や社会全体へつなげていくことが不可欠だ」と強調。働き方の見直しの取り組みについては、政府がめざす「働き方改革」の内容を先取りしたり、法を上回る内容を獲得した組合もあることから、「社会への発信という点も含めて、まさに組織労働者としての務めを果たしているものと言えるのでないか」と前向きに評価した。

中間まとめは今後に向けた検討課題として、「これから先、日本の経済・社会構造や産業構造など大きな変革期を迎えることを踏まえると、足元だけでなく、中・長期的な視点を持って、今後の闘争のあり方や共闘体制の機能強化についても検討していく必要がある」と指摘。今後、① 春季生活闘争のメカニズムを社会に広がりを持った運動としていくための共闘体制のあり方および諸行動のあり方 ② 日本の経済・社会構造や産業構造の変化を見据えた闘争のあり方 ③ 中小企業の底上げ・格差是正、「同一労働同一賃金」の実現を見据えた、めざすべき「賃金の絶対値」の設定と企業横断的な賃金相場の形成 ④ 情報集約と開示の強化――の4つの観点について検討を深めるとしている。

「人口減少・超少子高齢社会ビジョン」検討委員会の最終報告を公表

中央委員会ではこのほか、2019年度の重点政策を決定するとともに、「人口減少・超少子高齢社会ビジョン」検討委員会の最終報告を特別報告した。連合は、結成30周年となる2019年に、運動の羅針盤となる「連合ビジョン(仮称)」を確立するとしており、この最終報告が「連合ビジョン(仮称)」のベースとなる。

最終報告は、経済財政・産業構造や雇用労働・人材育成、社会保障・健康・教育、仕事と生活の両立などの面における「取るべき進路」を提示した。雇用労働・人材育成では、同一価値労働同一賃金の実現や65歳以上の高齢者への働きがいのある就労の場の確保など、仕事と生活の両立では男性中心型労働慣行の見直しなどを求めている。労働運動面では、連合が日本の労働運動全体をけん引する役割と機能を果たすことや、構成組織・単組の枠を超えて社会課題の解決に取り組むこと、さらに、組合員が地域社会づくりに積極的に参加することなどの必要性を盛り込んだ。

働き方改革関連法案の国会での審議状況について神津会長は、「高度プロフェッショナル制度が削除されずに衆議院を通過したことは極めて遺憾だ」と強調。「過労死・過労自殺の温床を増やしてしまうことは絶対に許されない。今回も(2015年の派遣法の国会審議と)同様に、参議院段階での議員の皆さんの奮闘をいただきたい」とし、立憲民主党と国民民主党の両党の対案をベースとした審議を全面的に支援すると述べた。