「特に100人未満の単組が健闘」/JAMの春闘中間総括

2018年5月30日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労働組合、JAM(安河内賢弘会長、36万6,000人)は29日、都内で中央委員会を開き、今春闘の中間総括を確認した。獲得した賃金改善分の平均額がこの5年間で2015年に次ぐ水準となり、100人未満の獲得額が大手を上回る結果となったことから、「賃金改善の流れを継続することができた」と評価するとともに、「特に100人未満の単組が健闘した」とまとめた。

100人未満の単組、賃金改善分の平均額が大手の平均を上回る

今春闘の経過と結果を振り返ると、交渉単位である1,564単組の73.5%にあたる1,150単組が要求を提出し、65.0%にあたる1,017単組が、回答を受けるかすでに妥結している。

JAMは今回の闘争方針において、個別賃金要求を要求の基本としながら平均賃上げの要求基準を前年と同額の6,000円(賃金改善分、賃金構造維持分も含めれば1万500円)と設定した。賃金構造維持分を明示できて賃金改善分を要求した756単組の改善分の要求額平均は4,562円で、この5年間では2015年(5,938円)に次いで高い水準となっている。一方、改善分を要求した単組の回答状況をみると(570単組)、改善分の平均は1,622円で、要求額と同様、この5年間では2015年(1,834円)に次いで高い水準となった。

改善分の回答額平均を規模別にみると、300人未満では1,663円、100人未満だけでみると1,736円となる一方、1,000~2,999人では1,660円、3,000人以上では1,664円などとなっており、100人未満の単組の平均額は大手労組の改善額平均を上回る結果となっている。

平均賃上げの結果をみると、要求額の平均が8,297円、回答額が5,382円、妥結額が5,431円。同一単組で前年と比較すると妥結額は367円プラスとなっている。300人未満だけでみた回答額の平均(5,153円)は1999年のJAM結成以降で最高額だった。

個別賃金の開示では足踏み

前回の春闘から、要求への移行を前面に押し出しているが、結果的に、今春闘での個別賃金水準を開示できる単組数は昨年からあまり増えず、「30歳確定水準」と「35歳現行水準」でのみ、開示単組数は増えたものの、他の年齢ポイントでは昨年を下回った。

水準の達成状況をみると、「一人前ミニマム」と設定している30歳ポイント(24万円)、35歳ポイント(27万円)ともに、到達していない単組の割合が6割強となっている。

一時金については、回答月数を前年と比較すると、300人~999人の単組では下がっており、300人未満と1,000人以上では上がった。1,000人以上では、平均月数がリーマン・ショック前の水準を超えている。

ベア・賃金改善などの賃上げが復活した2014年から2018年までの5年間の賃金改善回答の状況をみると、過去5回すべて、賃金構造維持分を明示している457単組の賃金改善獲得回数の平均は3.7回で、規模が小さい単組の方は平均回数が少なく、5回とも獲得した単組は1,000人以上では7割弱に及んだが、300人未満では4割にとどまった。

企業間取引の公正化など、政策課題として重視した価値を認めあう社会の実現に向けた取り組みに関しては、4月末段階で272単組が経営側への要請を行った。

個別賃金水準の開示件数の再点検、取り組みの通年化が課題

こうした結果から中間総括は、賃金改善の取り組みについては「賃金改善額及び獲得単組数は前年を上回り、2015年に次ぐ水準となり、賃金改善の流れを継続することができた。また、賃金改善額は、5月段階においても、3月の相場を維持し、3年連続で組合員300人未満の単組が組合員300人以上の単組を上回った。特に100人未満の単組が健闘した」と整理した。

安河内会長はあいさつで「300人未満のベア額が1,000人以上のベア額を3年連続で上回っているのはJCM(金属労協)のなかでJAMだけ。JAMの個別賃金要求を重視した取り組みが3年連続でJCMの春闘をけん引した」と述べて、今回の賃金の取り組みを自賛した。また、交渉経過については、大手自動車メーカーにおける具体的な数字を交えた交渉の進捗が遅れたことで、「労使双方が大きな戸惑いのなかで交渉を続けた」ものの、「最後は各企業で、ぎりぎりの交渉を継続して相応の一致点を見い出すことができた」と振り返った。

中間総括は今後の課題について、個別賃金水準の開示件数の再点検や、取り組みを通年化することの必要性などを指摘。共闘体制では、上げ幅から賃金水準を重視した相場形成に切り替えていくことが必要などと強調している。

中央委員会ではこのほか、安河内会長が来年予定される参議院選挙について言及。JAMの組織内候補である「田中ひさや」氏(JAM本部副会長)がどの党から立候補するかについて、あいさつのなかで、国民民主党から立候補する内容を8月に開く定期大会で正式に提案したいと述べた。