300人未満の中小の賃上げ回答額、2年連続で大手を上回る/金属労協の賃上げ回答集計

2018年4月4日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の金属関係5産別労組でつくる金属労協(JCM、髙倉明議長、約199万人)は3日、中堅・中小労組の回答を含めた3月30日現在の賃上げ集計結果を公表するとともに、都内にある本部で5産別のトップが会見した。2年連続で、300人未満の組合の賃上げ回答額が1,000人以上の大手組合の回答額を上回った。

300人未満の回答額平均は1,489円、全体平均の1,452円を上回る

JCMがまとめた3月30日現在の集計によると、賃金要求を提出したのは2,621組合で、そのうち、ベアや賃金改善などの賃上げを要求したのは2,179組合となっている。ベアや賃金改善などの賃上げ要求額の平均は3,782円で、規模別にみると1,000人以上が3,514円、300~999人が3,737円、300人未満が3,839円と規模が小さくなるほど高い要求額となっている。

要求提出組合のうち、回答を引き出しているのは1,445組合で、そのうち1,254組合が定期昇給相当分である賃金構造維持分を確保。そのうち賃上げを獲得したのは1,065組合で、回答引き出し組合に占める割合は73.7%と前年同時期よりも11.7ポイント高い割合となっている。今年は特に中小組合の賃上げ獲得割合の高さが目立っており、300人未満の獲得割合は63.2%と前年を12.0ポイント上回り、かつベア・賃金改善などの賃上げ春闘が復活した2014年以降で最高の水準となっている。

回答額の平均は1,452円で、前年同時期の1,195円を約250円上回った。規模別にみると、1,000人以上が1,465円、300~999人が1,364円、300人未満が1,489円となっており、2年連続で、300人未満の組合が1,000人以上の大手組合の回答額を上回った。

なお、賃上げ以外の回答状況をみると、一時金について、要求方式である2,064組合のうち、1,021組合で回答を受けており、平均月数は4.73カ月と前年を0.04カ月上回った。前年よりも水準が上回った組合は552組合で、同水準が177組合、下回ったのが196組合となっており、前年水準を上回った組合数は前年同期よりも127組合多い。

「賃上げの裾野を広げることができたことは大きな成果」(髙倉議長)

3日、都内にある本部で行われた会見で髙倉議長(自動車総連会長)は、賃上げ獲得割合が2014年以降で最高となったことから「賃上げの裾野を広げることができたことは大きな成果だ」と強調。「高度成長期以来の人手不足、繁忙感、業績改善を背景として組合が底上げ・格差是正の実現に向けて取り組んだことが賃上げの裾野拡大につながった」との見方を示した。

5産別トップが、3月末時点での回答状況について報告・コメントした。自動車総連会長として髙倉議長は、3日時点で全体の46.7%にあたる組合(511組合)が解決したとし、そのうちの89.4%に当たる457組合で賃金改善分を獲得したと報告。改善分の単純平均は1,336円で、獲得組合の割合も獲得額も「前年同時期を大きく上回った」と述べた。また、300人未満の中小組合が獲得した改善分の平均は1,367円と全体平均よりも高い水準となり、「全体の水準を押し上げるとともに、格差是正に寄与した」と評価した。なお、非正規労働者の処遇改善に関しては91組合が時給での有額引き上げなどを獲得しており、進展のある回答を引き出した組合数は前年同時期のほぼ2倍にあたるという。

電機連合の野中孝泰委員長は、個別加盟単組だけでなく、大手のグループ組織に属する単組も含む564組合のうち、441組合が4月2日までに要求提出を終えており、うち312組合(71%にあたる)で回答集約したと報告。交渉の進捗は昨年よりも遅いペースとなっており、野中委員長は「5年連続の水準改善がかかった交渉であることから、経営側の慎重さが表れている」と述べた。

賃金水準の改善を獲得したのはうち273組合(88%)で、中闘組合が統一要求の基準とした「開発設計職基幹労働者」(30歳相当)で、中闘組合の妥結額と同じ1,500円を獲得した組合数は電機連合全体で166組合に広がっていると述べた。

JAMでは100人未満組合が全体および300人未満の平均額を上回る

JAMの安河内賢弘会長は、3月30日現在で、交渉単位組合の40.2%にあたる単組で回答を受けており、賃金構造維持分が明確になっている組合のうち380組合で賃金改善分を獲得したと説明した。前年同期と比べると約80単組増加していることから「賃上げの裾野は確実に広がっている」と評価した。改善分の平均額は1,617円で、300人未満の組合だけでみた平均額が1,660円、100人未満の組合だけでみた平均額が1,769円と、中小が全体の水準を上回る結果となっている。また、3,000円以上の改善額を獲得した単組が44あったが、そのうち33単組は300人未満の中小だったと説明した。

基幹労連の神田健一委員長は、318ある交渉単位組合のうち約160組合が回答を受けていると報告した。一時金では造船専業が厳しい結果となったとし、全体では33組合が前年を上回り、8組合が同水準、20組合が下回ったと述べた。65歳現役社会の実現に向けた労働環境の構築については、「経営側は組合主張の必要性をみとめ、議論をスタートさせる基盤整備ができた」と評価。90%の組合で議論の場の設置など前進回答を得ることができたという。賃金改善については、大手を含めた18年度だけの平均額は1,447円となったのに対し、1,000人以上2000人未満の組合だけでみた平均は1,814円などと全体平均を上回っていることから、中堅・中小組合で占める業種別組合も健闘しているとの見方を示した。

全電線の岩本潮委員長は、加盟34組合のうち29組合が1,000人未満の組合だと説明。3月23日までにすべてが回答を集約しており、すべての組合が賃金構造維持分を確保し、26組合が引き上げ分を獲得したと述べた。引き上げ額の平均は1,032円で、規模別にみると1,000人以上が1,250円で、300人未満は991円などという結果となったが、「昨年実績を上回る組合が多く、また、14年以降ではじめて賃上げを獲得できた組合もあり、意義ある取り組みとなった」と振り返った。