ベア増額、初任給や再雇用者等の賃金改善などの回答/私鉄大手の賃上げ状況

2018年3月30日 調査部

[労使]

私鉄総連(田野辺耕一委員長、11万5,000人)の大手組合は、3月15日までに賃上げ回答を引き出した。回答内容には、主に ① ベースアップ、または前年を上回る賃上げ獲得 ② 初任給の引き上げ ③ 再雇用者等の賃上げ――など多様な改善がみられたことが特徴となっている。

東急のベア1,500円をはじめ各社で前年以上の回答

今春闘では、私鉄総連が統一要求として、月例基本給1人平均2.0%(定期昇給相当分)プラス6,000円(ベースアップ分)の賃金引き上げを求めた。経営側は堅調な業績を認めながらも、「沿線人口や就学・就労人口の減少」などの経営環境やこれまでの賃上げによる人件費増加などを主張し、交渉は難航を極めたという。その結果、ほとんどの組合が前年並みか賃上げ額の上積み回答、またはその他の賃金改善を引き出した。各単組が公表した回答内容をみると、前年までのものより具体的な数値や内容が示されている場合が多い。

私鉄大手13社のうち、ベア回答で特徴的だったのが東急。2015年までの春闘ではベアに相当する昇給を獲得していたが、16、17の両年は定期昇給相当の実施にとどまっていた。今春闘では「一人1,500円相当の昇給(ベースアップ相当)を実施する」との回答で、額の水準も2015年と同等となった。また、近鉄が「前年実績+300円の賃金引上げ」(前年は「前年実績+200円」)、西鉄が「2%+1,000円」(前年は「2%+800円」)など、賃上げ額の上積みがみられる。前年には「基本昇給の実施」のみだった京急は、加えて「賃金改善の実施」の回答を得ている。

初任給、再雇用者やパートナー社員の賃金などの改善も

初任給の引き上げ回答が、名鉄、京阪、西鉄で出ている。名鉄では「鉄道部門における一般職コース4,000円、総合職コース900円」、京阪で「初任給を1,000円引き上げる」、西鉄は「高校卒2,000円引き上げ」など。名鉄では、初任給引き上げに付随して「それに伴う若年層の賃金改善を実施する」としており、初任給引き上げが若年層の賃金改善につながっている。

このほか、各社で手当の改善や契約社員などの賃金改善も出ている。東武では扶養手当の体系見直しを提示し、「配偶者の手当を減じ、子供の手当を現行1万円から3万円に引上げる」としている。また、阪急では「シニアパートナー・フルタイム5万円、週30時間以上40時間未満3万円、週30時間未満2万円」の大幅な増額、南海では時給について「契約社員30円引き上げ950円、60歳以降再雇用者30円引き上げ1,000円」、西鉄では「パートナー社員基本給1,000円引き上げ」などの回答が出ている。