賃金改善は18年度3,500円、19年度3,500円以上を基本に/基幹労連方針

2018年2月9日 調査部

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの労働組合で構成する基幹労連(神田健一委員長、約26万4,000人)は7日、都内で中央委員会を開き、2年サイクルの基軸年となる今春交渉に向けて、賃金改善について「2018年度3,500円、2019年度3,500円以上を基本」とすることを決めた。また、65歳定年制を視野に、60歳以降の労働環境の整備も求める。

基幹労連の春季労使交渉は、働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出すとの考え方にたち、2006年の労使交渉から2年サイクルの労働条件改善(AP:アクションプラン)で統一要求を掲げる形をとっている。今春闘は2018年度と19年度の2年分について賃上げ交渉する年。2年サイクルの1年目はこれまで「基本年度」としてきたが、今回からは「総合改善年度」と位置付けて、「人への投資」に向けた要求・交渉を行う。具体的には、昨夏の大会で確認した「産業・労働政策中期ビジョン」を踏まえ、賃金や一時金、退職金、労働時間・休日・年休付与、割増率関連、労災通災付加補償、65歳現役社会の実現、ワーク・ライフ・バランス等、労働条件全般の改善に取り組む。なお、2年目にあたる来春闘の「個別年度」では従来通り、中小組合の支援などを通じて格差改善に取り組むことになる。

部門・部会のまとまりを重視した要求を

取り組み方針は、「産別一体となって、2018年度・2019年度の中で2年分の賃金改善要求を行う」としたうえで、要求額は「2018年度3,500円、2019年度3,500円以上を基本とする」とした。さらに、「具体的には部門・部会のまとまりを重視して要求を行う」ことや「条件が整う組合は格差改善にも積極的に取り組む」ことも明記。具体的な配分にあたっては、「基本賃金項目への配分をめざしつつ、課題解決の観点も踏まえ、最も効果的なあり方を各組合で追求する」考えも示している。なお、60歳以上の者についても「一般社員に準じた賃金改善を求める」が、その分の原資は「一般社員とは別財源にする」としている。

ちなみに、19年度の要求水準に「以上」の文言を入れたことについて、神田委員長は昨年12月の討論集会で「業種・業態の状況を互いに認めあう議論をしてきた柔軟性の意味を込めた」などと説明していた。基幹労連では、単年度で要求する組合も少なくない。昨年のAP17春季取り組みでは302組合が賃金改善を要求し、回答を得た211組合の約7割に当たる154組合で前進回答を獲得している。19年度に単年度要求する組合は、産業・企業の業績や労働環境等、改めて検討して要求を組み立てるが、その際、3,500円を下限に、それを上回る水準を狙っていこうとの思いを込めた格好だ。

なお、業種別部会は、鉄鋼総合、総合重工、非鉄総合のいわゆる大手組合のほか、普通鋼、特殊鋼、フェロアロイ、二次加工、鉄鋼一般、鉄鋼関連、造船、機器、エンジニアリング、非鉄関連、建設、独立の15部会に分かれている。

企業内最低賃金の協定締結と水準引き上げを

また、定期昇給に関しては、制度的な定期昇給を実施・確認し、制度がない組合でも定期昇給相当分を確保する。定期昇給制度が確立していなかったり整備されていない組合は、制度化または同制度の整備に取り組む。制度未確立または未整備の組合が取り組む場合の2018、19年度の定期昇給相当額は、標準労働者(35歳・勤続17年)を基準とする場合は年功的要素のみで3,700円。平均方式では、平均基準内賃金の2%相当を目安とする。

企業内最低賃金では、協定未締結の組合は新規締結に取り組み、締結済みの組合は、加盟している金属労協(JCM)の方針同様、月額16万4,000円以上の水準を目指して取り組む。具体的には月額2,000円以上の引き上げとし、非正規労働者を意識して、月間の所定労働時間を踏まえた時間額を協定に盛り込む。なお、企業内最低賃金の締結と引き上げについては、「60歳以降者の実態も考慮して取り組む」こととする。

年間一時金は5カ月を基本に要求方式ごとに設定

年間一時金については、金属労協の「年間5カ月分以上を基本」とする考え方を踏まえ、要求方式ごとに設定。要求方式を含めた基本的な考え方については、各業種別部会の検討にもとづき取り組みを進める。

要求を組み立てる際の構成要素は「生活を考慮した要素」と「成果を反映した要素」に分けて検討する。具体的な要求基準は、金額で要求する方式では、「生活を考慮した要素」を「120万円ないし130万円」、「成果を反映した要素」を世間相場の動向などを踏まえながら「40万円を基本」に設定する。「金額+月数」で要求する方式は、「40万円+4カ月」を基本とし、月数要求方式では5カ月を基本とする。業績連動型決定方式の場合は、中期ビジョンの考え方を踏まえる。

「常に真ん中に人」を据えて6年連続で賃金改善を求める/神田委員長

神田委員長はあいさつで、2年サイクル運動の下で取り組む今春闘を、「『常に真ん中に人』を据えながら、内と外の好循環の歯車を回し、真の成長軌道に乗せる取り組みだ」と表現。そのうえで賃金改善要求について、「(14春闘から17春闘まで)4年連続の賃金改善の成果を踏まえつつ、他に先駆けて向こう2年間、AP14春季取り組みからは6年連続で求めるもので決して容易なことではないが、人への投資の在り様を労使がそれぞれの立場から真摯に議論し、互いのもうひとふんばりで好循環の形をつくり上げていかなければならない」と強調した。

65歳定年延長を視野に制度検討の具体化も

また、今季は、「それぞれの企業においては、60歳以降も引き続き就労を希望する者に対して65歳までの『雇用の場』を確保しているが、多くの場合、雇用形態は1年単位の契約更新であり、厳密に言えば雇用は不安定だ」として、「『65歳現役社会』の実現に向けた労働環境の構築」を方針の項目に加えた。一貫した雇用形態となる「定年年齢の65歳への延長」を視野に、制度検討の具体化を図る構え。2021年度の60歳到達者から年金支給開始年齢が65歳になることを踏まえ、2021年度から該当者に適用できる制度の導入を目指し、「65歳現役社会」の実現に向けた現行制度の改善や労使検討の場の設置などを求めていく。

このほかの要求項目としては、退職金や労働時間・休暇、割増率関連、労災通災付加補償などを盛り込んだ。① 年次有給休暇初年度付与日数 ② 時間外、休日割増率 ③ 労災通災付加補償――は、格差改善の観点から「速やかに改善するべき3項目」とする。要求提出は、2月9日に集中して行うとし、要求提出ゾーンを同日~23日に設定。遅くとも2月末までに要求提出できるよう努める。

次期参院選ではJAM候補者を推薦

中央委員会では、2019年に施行される第25回参議院選挙の対策についても確認した。

基幹労連は昨年の大会で、今後の政策実現活動強化に向けた「組織力の再生戦略」を確認。19年の参院選での対応について、「組織内候補の擁立は難しいとの判断に至った」として、次期参院選では組織内候補の擁立は見送って他産別との連携にとどめ、「第26回参議院選挙(2022年)を目途に、諸準備をすすめていく」ことを決めていた。

今回、推薦に関する基本的な考え方として、① 3年毎のタームのなかで6年パッケージを示し、両組織の擁立の時期を明確にする ② 組織運営・事情を認め合ったうえで、一つになって取り組むことのできる政策協定を結ぶ ③ 当選後の議員の役割を明確にし、両組織ならびに支援者の理解を得る――ことを次期参院選での他産別との共闘の前提として明示。そのうえで、JAMの組織内候補予定者である田中久弥氏の推薦手続きを行っていくこととした。今後、「互いの組織が『必ず勝つ』取り組みを期し、政策協定を結んだうえでJAMとの共闘を組んでいく」(神田委員長)ことになる。