賃金引上げ要求は前年並みの「2%基準」/UAゼンセン中央委員会

2018年2月2日 調査部

[労使]

国内最大の産別労組で、パートタイマーの組合員が半数以上を占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長、約169万人)は1月31日、都内で中央委員会を開き、賃金体系維持分に加え2%基準で賃金を引き上げることを基本とする2018労働条件闘争方針を決定した。短時間(パートタイム)組合員についての要求基準も、正社員と同様に2%基準で賃金を引き上げるとした。

方針で「賃金引き上げに加え、働き方の改善に取り組む」ことを明記

方針は、今次闘争の基本的な考え方として、実質賃金が前年比減少の傾向にあり、それがデフレ脱却を妨げる要因となっていると指摘して、「経済の成長と生産性向上に見合った実質賃金の引き上げが欠かせない」と強調。また、長時間労働や不払い残業などがないワーク・ライフ・バランスのある働き方が必要だとして、「賃金引き上げに加え、働き方の改善に取り組む」と明記した。闘争の進め方では、「顔の見える共闘」「けじめのある闘争」を強化、推進するとして、すべての加盟組合が地域、業種のいずれかの共闘組織に参加するとともに、共闘参加組合が自らの要求基準や妥結目標などを情報共有していくことなどを盛り込んだ。

要求項目の柱は、① 継続的な実質賃金の引き上げ、底上げと格差是正を進める ② 企業内最低賃金の引き上げ、協定化を必須の取り組みとする ③ 雇用形態間での均等・均衡処遇に取り組む――の3本で構成している。

体系維持が不明確な場合は9,500円・4%基準で

正社員(フルタイム)組合員の平均賃金の引き上げについては「賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」ことを基本。そのうえで、底上げと格差是正に力を入れる観点から、賃金水準に応じて基本賃金について各加盟組合がクリアすべき水準として最低限超えるべき【ミニマム水準】、すべての加盟組合が目指す社会的水準である【到達水準】、中期的に目指す水準である【目標水準】を設けている。学歴・年齢別に「高卒35歳勤続17年」と「大卒30歳勤続8年」の絶対額を示しており、高卒の【ミニマム水準】は24万円、大卒の【ミニマム水準】を24万円。【ミニマム水準】未達の場合は、「格差是正を強く求め、賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる。体系維持分が明確でない場合は要求総額として9,500円または4%基準」とし、総額が9,500円・4%に満たない場合は、格差是正の観点から「可能な限り上乗せの要求をする」。

また高卒の【到達水準】は「25万5,000円を学歴・年齢別の基本に部門ごとに設定」、大卒の【到達水準】は「25万円を基本に部門ごとに設定」とした。【目標水準】は「部門ごとに設定する」としている。

部門は、百貨店やスーパーマーケット、専門店などの組合が集まる「流通部門」、化繊や紡績、化学、製薬などの製造業が集まる「製造産業部門」、外食・内食、サービス業などの組合が集まる「総合サービス部門」の3つに分かれて運営されている。3部門は2月1日にそれぞれ評議員会を開催し、UAゼンセンの2018労働条件闘争方針に基づく部門闘争方針を決定した。要求基準の基本的な内容をみると、「製造産業部門」と「総合サービス部門」は2%を基準として賃金を引き上げる内容とする一方、「流通部門」は「2%以上」の引き上げに取り組むとして、他の2部門よりも若干、引き上げトーンを強めている。

短時間(パートタイム)組合員に関する要求基準については、平均賃上げで「賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」とし、正社員組合員と同様の記述内容。「賃金体系維持分が明確でない場合は、正社員(フルタイム)組合員の要求に準じる」とした。また、正社員との均等・均衡を考慮し、格差是正が必要な場合は「正社員(フルタイム)組合員以上の要求を行う」ことを促している。

企業内最低賃金の引き上げや協定化の取り組みでは、正社員(フルタイム)組合員の18歳最低賃金額は月額15万8,000円を基準に都道府県ごとに算出した金額以上で協定化する。

賃上げを「今年やらずしていつやるのか」(松浦会長)

あいさつした松浦会長は、物価上昇や実質経済成長率、政府の3%賃上げ要請など今次闘争を取り巻く情勢に触れたうえで「まさにマクロの環境的には『今年やらずしていつやるのか』といった状況だ」と強調。「唯一最大の問題は各産業・業種・個別企業の業績動向とこれを踏まえた各企業経営者の交渉姿勢がどうか、ということだと思う。『政府や経団連がどう言おうが、マクロの状況がどうであれ、わが社の実情は厳しい』という経営者の主張に対しどう立ち向かうか。今年は昨年以上にこうした主張にしっかり反論しなければならない」と述べるとともに、「今回の賃上げが組合員の期待外れに終われば、人手不足の中で懸命に働く組合員のモチベーションは相当に低下する。今必要なのは労使が協力すべきは協力して、内に向かっては生産性向上に努力し、外に向かっては価格是正や取引条件の改善に努力することであり、賃上げを我慢することではない」と訴えた。

勤務間インターバル規制の導入も求める

賃金闘争以外では、労働時間の短縮・改善や定年制度改定、ワーク・ライフ・バランスの取り組みなどを柱に据えた。労働時間の短縮・改善では、所定労働時間の削減や時間外・休日労働の規制のほかに、連続労働の規制を盛り込み、最低でも連続11時間以上の休息時間を設ける勤務間インターバル規制を設ける。今年は総合サービス部門のホテル・レジャー部会がインターバル規制の導入を部会必須項目として取り組むという。深夜労働は極力規制するよう取り組む。昨年から掲げている定年制度改定では、遅くとも2020年度からの65歳定年を目指し、定年延長や定年廃止に取り組む。製造産業部門の綿紡や化繊の大手組合が揃って会社側へ申し入れを行うという。

ひとり親の組合員への対応に着手

また、ワーク・ライフ・バランスでは、初めて、ひとり親の処遇改善の取り組みを掲げた。昨年秋に組合員意識調査を実施したところ、UAゼンセン全体で、ひとり親となっている女性組合員が約5万人いることがわかり(推計ベース)、平均月収が12万円前後にとどまることが明らかとなった。そのため、まずは各組合で実態把握に努め、相談窓口の設置や、ひとり親にとって必要な情報を個別に案内できる体制の確立から取り組みを始める。

来年の統一地方選挙、参議院選挙を視野に「働く者の目線に立った政策実現」を強調

松浦会長はあいさつのなかで最近の政治情勢について触れ、来年の統一地方選挙、参議院選挙に向け「働く者の目線に立った政策実現のため、安倍一強体制にどうくさびを打つのか、どう闘うのか。その姿が一定の時期、可能であればできるだけ早期に示されることが重要だ」と述べるとともに、民進党について「何とか3党の協力体制をつくろうと努力していると私には見える。希望の党の玉木代表も視点は共通しての今回の取り組みだろうと思う」と語った。一方、立憲民主党に対して「昨年末以降の対応はどうなのか。安倍政権と対峙するにあたって3党協力すべきは協力する姿勢があるのか、むしろ改憲問題を重視するあまり共産党との連携に偏ってしまうのではないか、正直懸念を持たざるを得ない状況にある」と話した。