「賃上げの継続性が重要な課題」(野中委員長)/電機連合の定期大会

2017年7月5日 調査部

[労使]

電機連合(野中孝泰委員長、約61万人)は3、4の両日、神奈川県横浜市で定期大会を開催し、今春闘の総括である「2017年総合労働条件改善闘争の評価と課題」を確認するとともに、第7次賃金政策の検討着手など2016・2017年度運動方針の補強を行った。野中委員長は来春闘に向け、賃上げの継続性は重要な課題との認識を示した。

中堅・中小の水準改善が進む

電機連合が5月9日現在でまとめた賃上げに関する集計結果によると、統一闘争を離脱した東芝、シャープを除く11中闘組合は、「開発・設計職基幹労働者」(30歳見合い)の個別賃金において1,000円の水準改善で決着。一方、中闘組合に次ぐ規模の企業労組で構成する拡大中闘組合で、水準改善があった18組合の水準改善額(同ポイント)の平均をみると1,189円となっており、中闘組合の改善額を上回った。地方の中堅・中小労組で構成する地闘組合では、18組合が水準改善を果たし、水準改善額(同ポイント)の平均は950円だった。

規模別にみると、「1,000人以上」の組合で水準改善があった27組合の平均水準改善額は1,107円で、「300~999人」(15組合)が954円、「299人以下」(4組合)が1,075円で、299人以下の組合が1,000人以上と遜色のない水準となっているとともに、全体平均(47組合、1,053円)を上回った。

電機連合の神保政史書記長によると、水準改善があった組合の割合は2016年闘争では77.5%だったが、今次闘争では81.6%と8割を超えており、神保書記長は「波及効果が増している」と説明。電機連合に企業グループとして一括加盟している組合のなかでも、グループの中闘組合と同じ水準改善額を獲得する組合が増えてきているという。

4年連続の賃金水準改善を評価、課題は来春闘に向けたさらなる上積み

「2017年総合労働条件改善闘争の評価と課題」は、今次闘争の経営側の姿勢について「月例賃金の引き上げにこだわる電機連合の考えに対して一定の理解を示しつつも、① これまでの3年間で6,500円の水準改善という大きな決断をしてきた ② 3年連続の賃金水準改善により賃金ベースが上昇しており、この賃金水準改善による増額は単年度限りではなく、社会保険料や時間外手当にも影響し将来にわたって企業の負担になる ③ 国内電機大手各社の2016年度業績見通しが総じて昨年度より厳しい状況にあることなどから慎重な姿勢を崩さず、交渉は最後まで難航を極めた」と振り返った。

そのうえで賃金の回答内容と評価について、「これまで3年間の賃金水準改善額6,500円に1,000円を積み上げたものであり、電機産業の業績見通しが総じて昨年度より厳しいなかで、実質生活の維持・向上と経済の自律的成長に向け、電機産業労使に課せられた社会的責任と役割を果たすうえで、一定の評価ができる水準である」と評価した。

今後の課題としては、4年連続の水準改善となったからこそ、「これまでの水準改善額にさらに上積みすることに対する困難が予想され、今後に向けた課題として認識し、論議を深めていく必要がある」と述べた。

大会であいさつした野中委員長は、来年に向けた総合労働条件改善闘争の考え方として「人への投資」を重視する姿勢を示したうえで、「日本経済の自律的成長を促すためには、個人消費に支えられた内需拡大による経済構造を実現していくことが極めて重要と考えている。そのためにも、3つの不安(雇用、生活、将来に対する不安)払拭につながる賃上げの継続性や拡がりと底上げは重要な課題だ」などと述べた。

3日、大会開始前に行われた会見で野中委員長は、「個別方式に変わってから5年連続は過去になく、未知数。水準改善の回数を重ねることが目的ではないが、経営側も含めて賃金は上がっていくものだという意識に変えていきたい」と話した。

運動方針の補強では均等・均衡処遇の取り組みを強化

補強した2016・2017年度運動方針では、第7次賃金政策の確立に向けた検討を開始することを盛り込んだ。2018年の定期大会での草案提起を目指す。

多様な働き方に対応した均等・均衡処遇の取り組みでは、政府が発表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」に関する審議を注視し、連合と連携して政党や省庁へ働きかけを行うとしている。非正規労働者の権利保護や労働条件向上に関しては、有期契約労働者の正社員化、組合員化に向けた取り組みを推進しながら、加盟組合を支援するために非正規労働者についての実態調査の実施を検討する。なお、電機連合のある加盟組合(九州)では、100人を超える契約社員を、3カ年計画でほぼ全員、正社員転換したという。

方針補強に関する討議では、来春闘に向け、村田製作所労連から「18年闘争は相当な高いハードルとなることが予測されるものの、産業を取り巻く厳しい環境のなか組合員は日々努力し、生産性向上に貢献していることから人への投資が必要だ」との意見があった。三菱電機労連は、三菱電機が今年1月、長時間労働により労働基準法違反容疑で書類送検されたことをうけ、あらためて本部、加盟組合に対して謝罪するとともに、現在、1カ月80時間以上の残業をなくすことを目標に社内で時間管理の徹底を図っている取り組みを報告。その一方で、働き方の実現に向け、顧客からの無理な注文に応じるなどの理不尽な商習慣や取引を是正していくことの必要性も強調した。