JR産別が相次いで定期大会を開催

2017年6月14日 調査部

[労使]

JRグループの二大産別であるJR総連、JR連合は6月上旬、都内で大会を開き、2017年度の運動方針を決定した。JR発足30年の節目である今年は、春闘での交渉結果についての評価のほか、路線の維持問題が焦点となっているJR北海道の経営問題なども取り上げられた。

JR総連はJR東日本の「全組合員一律のベア」を評価

JR総連(7万3,000人)が6月6、7の両日に開催した大会では、今春闘におけるJR東日本でのベースアップ獲得についての評価や長時間労働対策、さらにJR北海道の経営問題をめぐる対応方針などを打ち出した。

JR東日本は、17春闘で「格差ベア」を許さないとし、交渉の結果1,000円の「全組合員一律ベア」の回答を得た。運動方針は、ベアを「物価上昇分、生活向上分、他企業との足並み、企業業績の還元である」とし、JR東労組の交渉結果について「全組合員一律ベアを勝ち取ったことは大きな成果にほかならない」と評価。「春闘の成果を基礎に労働者の格差・分断を許さず、職場からのたたかいを積み上げる」と述べている。

長時間労働問題について、大会であいさつした榎本委員長は、政労使合意で時間外労働の上限が休日労働を含まず年間720時間とされたことなどに触れ、「日本はILO条約のうち労働時間に関する18条約を一つも批准していない」、「日本の労働者の多くは有休が何日あるか知らない」などと指摘した。方針では「適正要員の配置」「長時間労働の撲滅」などを掲げ、「労働諸法制の改悪を許さない」と強調している。

JR北海道の経営問題について「国鉄改革の再検証」を主張

このほか、「単独では維持することが困難な線区」が1,200km以上に及ぶとされるJR北海道の経営問題について、方針は「根本原因は、経営安定基金の運用益の目減りという崩れた『国鉄改革のスキーム』にほかならない」「国の責任で是正すべきだ」と強調し、「国鉄改革の再検証」を訴えている。「経営安定基金」は国鉄の分割民営化に伴い、JR三島(北海道、九州、四国)会社の経営を支えるために設けられた基金。榎本委員長は「経営安定基金の運用益が半分以下になっても補填を要求していない」と指摘するとともに、JR北海道および同エリアでも業務を行っているJR貨物の職員の雇用問題への影響に懸念を示した。

JR連合は「グループ労組」を含めた労働条件改善を重視

JR連合(8万1,000人)は6月12、13の両日に大会を開き、「2018春季生活闘争の取組み」などを柱とする運動方針を確認した。

JR連合はとくに、関係会社などの労働者を組織する「グループ労組」の労働条件改善に力を入れている。今大会時点では、92単組(約25,000人)のうち、76組合で賃金交渉が妥結し、うち42組合がベースアップを獲得した。5月末の段階では41組合がベア回答を引き出しており、前年同期(38組合)を3組合上回っている。

あいさつした松岡委員長によると、グループ労組のベア獲得実績は「一昨年、昨年を上回って」おり、ベアの水準が前年を下回ったJR西日本(250円減の750円)、JR九州(200円減の300円)を含めた全体の状況について、「東海、西日本、東日本が4年連続ベア、九州も3年連続ベア、グループ労組でも連続ベア獲得の単組が多数出たことは極めて意義がある」と評価した。また、ベア回答のなかった組合についても「若年層や高年齢層の賃金改善などを果たし、諸手当や大きな制度改善を実現している」と指摘した。運動方針は、現在設けている「中期労働政策ビジョン」(2014~18年度)が最終年度を迎えることを念頭に、グループ労組を含めた取り組みを進めるとしている。

赤字が続くJR各社の課題は「持続可能な交通体系の構築」を基本に検討

「単独維持困難線区」問題で揺れるJR北海道について、松岡委員長は「この問題は、地方路線のモデルケースになると考えている」と述べ、JR連合が打ち出した「鉄道特性活性化プロジェクト」で整理した考え方に基づき、「持続可能な交通体系の構築」を前提に路線ごとに検討する考えを示した。運動方針は、JR貨物会社(2016年度に黒字転換)および赤字が続くJR北海道を含めた経営問題について、短期的には「現下の経営安定措置を維持」、中期的には期限を迎える経営支援措置の更新や「設備投資や債務返済に係る財政負担の軽減」などを求めていくとしている。松岡委員長は2018年税制改革に際して「来年3月末で期限切れを迎える軽油取引税の減免措置をはじめとする税制特例措置について再延長さらには恒久化を求める」などと、政策課題の取り組みを強調した。