2年連続でパートの賃上げ率が正社員を上回る/UAゼンセンの妥結状況

2017年4月7日 調査部

[労使]

繊維をはじめとする製造業や流通・小売業、外食産業など、幅広い業界をカバーし、組合員の半数以上をパートタイマーが占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長、約160万人)は5日、3月31日時点の2017年賃金闘争の妥結状況を発表した。2年連続で、パートの賃上げ率が正社員を上回った。また、正社員の賃上げ額は前年水準を維持している。

妥結額の単純平均、300人未満は前年比プラス、300人以上はマイナス

闘争に参加する組合の3割程度が交渉を終えた3月末時点での正社員組合の妥結状況(394組合)をみると、賃上げ(制度昇給、ベア等も含む賃上げ額全体)の妥結額の単純平均は6,034円(2.24%)で、比較可能な382組合でみた前年比は128円(0.04%)増となっている。

規模別にみると、300人以上は6,071円(2.12%)、300人未満が5,990円(2.38%)と300人未満の方が、賃上げ率が高い。比較可能な組合で前年と比べると、300人以上は154円(0.06%)マイナスだったのに対し、300人未満は472円(0.18%)プラスとなった。

妥結した394組合のうち、賃金体系維持分が明確であり、「賃金引き上げ分」を峻別できる190組合のベア等の妥結平均は1,273円(0.47%)。前年と比較可能な181組合でみると75円(0.03%)増となっている。規模別では、300人以上が1,287円(0.45%)、300人未満が1,249円(0.50%)となっており、前年と比較可能な組合では、300人以上が36円(0.01%)増、300人未満が143円(0.07%)増となり、300人未満の方が増加額・率ともに大きかった。

5日に本部(都内)で会見した木暮弘書記長は、「先行の大手組合の賃上げが昨年比マイナスとなるなかで、昨年に比べ下がっても、(後続が)どれだけ下げ幅を引き留められるかを意識して交渉を進めた結果、前年に近い妥結状況とすることができた」と述べた。例年は大手電機よりも低い賃上げ額で決着している化繊の大手組合が、今年は大手電機を上回る「画期的な」(UAゼンセン本部)成果を獲得したが、それも「昨年獲得実績を何とか維持しようと努めた」(同)結果だという。

パート組合員の時給引き上げ額、前年を上回る22.3円

短時間組合員(パートタイム組合員)の妥結状況では、190組合が妥結し、時間当たり賃金の引き上げ額(制度昇給、ベア等も含む賃上げ額全体)の単純平均は22.3円(2.39%)となっている。前年と比較可能な174組合でみると、前年を2.7円(0.27%)上回った。また、174組合のうち半数以上の104組合が前年実績以上の結果となった。

加重平均(53万1,600人)でみると、妥結額は22.7円(2.46%)。パートの加重平均での引き上げ率(2.46%)と、正社員の加重平均での賃上げ率(2.18%)を比べると、パートが正社員を上回った。パートが正社員を上回るのは2年連続のこと。パートと正社員についてともに妥結した組合は142組合あるが、半数を超える78組合でパートが正社員の賃上げ率を上回っているという。

木暮書記長はその背景について、「人材不足、地域別最低賃金額の上昇のほか、同一労働同一賃金が議論されるなかで、雰囲気的に正社員と同じ賃上げ水準にしなければという流れがでているのではないか」と話した。

労働時間のインターバル規制導入合意も

賃金以外の労働条件の改善の状況についてみると、流通部門のスーパー、6組合がインターバル規制の導入で合意した。また、インターバル時間を8時間から11時間に延長した組合が1組合あった。

今回の闘争から、2020年度までに65歳定年に移行することを打ち出したが、103組合が65歳定年制、3組合が定年廃止を要求し、1組合が2018年度から65歳定年を導入することで合意。17組合が65歳定年導入に向けた労使協議をスタートすることで合意した。