総合重工部会は4,000円の賃金改善要求へ/基幹労連中央委員会

2017年2月10日 調査部

[労使]

鉄鋼、造船重機、非鉄、建設などの労働組合でつくる基幹労連(工藤智司委員長、約26万人)は8日、都内で中央委員会を開催し、今春闘に向けた「AP17春季取り組み」に関する方針を決定した。賃金改善について、業種別部会の判断で昨年度に続き単年度要求する総合重工の大手組合は、4,000円の引き上げを要求に掲げることを表明した。

16年方針を踏まえ、業種別部会でまとまって取り組む

基幹労連では、産別全体の賃上げ交渉としては2年おきに、2年分まとめて交渉するスタイルを採用している。基幹労連では賃上げ交渉する年を「基本年度」と呼び、合間の年は労働条件の格差改善の取り組みや一時金交渉に主に勢力を傾け、「個別年度」と呼んでいる。

昨年が賃上げ交渉する「基本年度」にあたり、16年の方針では2年分で「8,000円を基準」とする要求基準のもとで賃金改善に取り組む一方で、業種や企業ごとの情勢のバラツキに配慮し、業種別部会(鉄鋼総合、総合重工、非鉄総合等)が判断すれば単年度ごとに賃上げ交渉に取り組むことも可能とした。そのため、鉄鋼総合の大手組合などは2年分の賃上げ交渉を行った一方、総合重工の大手組合など160あまりの組合は、16年単年度についてのみ要求し、交渉した。

今期の方針は、総合重工の大手組合などのように、17年度についてあらためて単年度要求・交渉する組合のほか、昨年の春闘で2年分の賃上げ交渉を行ったものの、17年度分については「継続協議」「別途協議」の扱いとなり回答の出なかった組合などがあることから、賃金改善について「AP17春季取り組みで賃金改善に取り組む組合は、AP16春季取り組み方針をふまえ、部会でまとまりをもった取り組みをすすめる」とし、産別としては「賃金改善交渉を行う部会の取り組みを積極的に支援していく」とした。

「強い現場」「強いものづくり産業」「強い基幹産業」を(工藤委員長)

あいさつした工藤委員長は、デフレからの脱却、個人消費の喚起と雇用・生活の安心・安定の必要性を訴えたうえで、「AP17春季取り組み方針は『継続』と『変革』を肝に2年サイクルの『個別年度』とし、昨年定めた16方針と16春季取り組み評価と課題を踏まえ策定していく」と説明。昨年、2年分の賃金改善を要求した126組合のうち、37組合が継続協議となっているとして、「2年サイクルを完遂するためには、継続協議の組織に対するフォローと、格差改善・賃金改善を求める組織に対する支援が不可欠であり、業種別組織単位のまとまりを大切に取り組む」と述べた。

また、工藤委員長は、経済などの面でのさまざまな課題に触れた後、「『ものづくり産業』をプラスサイドに持っていくことは極めて重要であり、そのためには『強い現場』『強いものづくり産業』『強い基幹産業』をつくる努力を続けることが大切で、人への投資は不可欠だ。言い換えれば将来不安を払拭し、産業さらには日本経済を確実に好循環軌道に回していくためには全体の底上げと継続した賃金改善は決定的に必要だ」と主張した。

格差改善では年休付与日数、時間外割増率など

賃金改善以外の項目をみると、年間一時金については「要求基準は、JCMの『年間5カ月分以上を基本』とする考え方をふまえ、要求方式ごとに設定する」とし、「要求方式を含めた基本的な考え方については、各業種別部会の検討にもとづき取り組みをすすめる」とした。要求を組み立てる際には、従来どおり、構成要素を「生活を考慮した要素」と「成果を反映した要素」に区別して検討する。方式ごとの具体的な要求基準は、金額で要求する方式では、生活を考慮した要素を「120万円ないし130万円」とし、「成果を反映した要素」を「40万円を基本に設定する」とした。「金額+月数」で要求する方式では、40万円+4カ月を基本とする。月数要求方式では5カ月を基本とするなどとした。

格差改善の取り組みでは、① 年次有給休暇初年度付与日数 ② 時間外・休日割増率 ③ 労災・通災付加補償――を「速やかに改善すべき3項目」と位置付け、これらを基本に条件改善に取り組む。

要求提出については2月10日を集中要求提出日とし、同28日までを要求提出ゾーンに設定した。

要求方式の見直しを要望する意見も

AP17春季取り組み方針の討議では、総合重工大手の川重労組から「2016年度と大きな環境変化はないと判断し、4,000円の賃金改善に取り組むことにした」との表明があり、総合重工部会の各大手労組の賃上げ要求額が4,000円となることが明らかとなった。また、IHI労連から「産別内で単年度要求する組合が過半数となっていることから、賃金改善の要求額は2年分まとめて提示するのではなく、経済情勢や取り巻く環境を配慮した要求金額を毎年示すことが産別の役割だと思う。賃金改善の要求方式についてさらなる検討を要望する」との意見が出された。答弁に立った神田健一事務局長はAP17の取り組みについて、「2年サイクルの仕上げの年として部会間の連携を強めたい」などと述べるとともに、要求方式に関しては「16、17の取り組み結果や、先輩の過去の議論経過なども踏まえ、(現在、産別内で議論している)産業・労働政策中期ビジョン見直しのプロジェクトのなかで取り扱っていきたい」と答弁した。