JR連合、JR総連のベア要求は前年と同水準

2017年2月8日 調査部

[労使]

JRグループの主力労組であるJR連合とJR総連は、それぞれ2月上旬に中央委員会を開き、2017年の春闘方針を決定した。JR連合は、月例賃金総額6,000円以上の引き上げを求め、そのうち3,000円については「純ベア統一要求」とする。一方、JR総連は、定期昇給の確保を前提に「6,000円」を統一ベア要求するとした。ともに要求額は前年と同水準となっている。

JR連合は月例賃金総額6,000円以上、うち純ベア3,000円を統一要求

JR連合(松岡裕次会長、8万1,000人)は2日、北九州市で中央委員会を開き、「2017春季生活闘争方針」を決定した。JR東海ユニオン、JR西労組などJR各単組は、2014年から18年の運動方針である「中期労働政策ビジョン」に基づき、定期昇給相当分(賃金カーブ維持分)の完全実施を求めたうえで、諸手当を含む月例賃金総額6,000円以上の引き上げを要求する。そのうち、純ベア統一要求として3,000円を求めるとしている。

純ベア統一要求以外の諸手当を含む賃金要求項目については、「総合生活改善や格差是正の観点に立って各単組において判断する」としたうえで、「各単組はワーク・ライフ・バランス実現に資する要求項目を盛り込む」とし、要求項目の例として「長時間労働抑制のための超過勤務手当の単価の引上げや少子化対策としての扶養手当増額」などをあげている。なお、グループ会社など定期昇給の仕組みのない単組では、月例賃金総額の1万500円以上引き上げを目安とし、そのうち4,500円を定期昇給相当分、3,000円を目安に純ベア統一要求分とする。

JR連合は傘下組合員について2016年度「賃金実態調査」を実施し、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)との比較を行った。これをもとに年齢別の平均賃金の「目標水準」を設定。たとえば、賃金センサスの大企業(1,000人以上規模・男性高卒標準労働者)の上位1/4水準を「上位目標」としてJR東海ユニオン・JR西労組の平均賃金と比較し、同じく中位水準を「必達目標」としてJR四国・JR九州両労組と比較している。

非正規労働者に関しては、「均等待遇の実現」として、正社員化の制度創設、正社員との均等待遇、諸手当等の制度改善・創設などを求める。時間給については、連合が掲げている「誰もが時給1,000円」を踏襲するとともに、「40円を目安として時給の引き上げを目指す」としている。

闘争日程については、JR各単組の要求提出期限を2月14日とし、グループ労組も可能な限り同月28日に要求書を一斉提出する。交渉のヤマ場は、連合が設定する3月13~17日の先行組合回答ゾーンを念頭に置きつつ、JR連合執行委員会で決定する。

JR総連は統一ベア要求として月額「6,000円」を求める

JR総連(榎本一夫委員長、7万2,000人)は5日、都内で定期中央委員会を開催し、2017春季生活闘争方針を決定した。

賃上げ要求は、前年と同じく、統一ベア要求を掲げた。JR東労組など定期昇給分(賃金カーブ維持分)の算定が可能な組合は、定昇分を維持・確保し、社会保障費の負担増および生活維持・改善分として、6,000円を統一ベア要求する。定期昇給分の算定が困難な組合は、連合・中小共闘方針をふまえ、定昇・賃金カーブ維持分を含めて1万500円を要求する。

非正規労働者に関しては、JRグループ内外までを視野に組織化に取り組む。連合方針を踏まえ「誰もが時給1,000円」をめざすほか、「劣悪な雇用・労働条件の抜本的な改善」に取組むとしている。また、労働時間・休日等の取組みでは、① 36協定違反の根絶、法令・労働協約遵守に向けた職場実態の総点検 ② 連合の「中期時短方針」に基づいた、年間所定労働時間2,000時間を上回る組合をなくすなどの目標達成 ③ 特別条項付36協定の適切な上限設定・適用にあたっての事前労使協議と原則11時間の勤務間インターバル規制の導入――などを掲げている。

主力組合のJR東労組は、2017春闘での「格差ベア反対方針」に基づき、16年10~12月に、組合員の「スト権確立の意思確認の一票投票」を実施した。これを受け、JR総連の方針では、「JR東労組のスト権確立を背景とした格差ベアに終止符を打つたたかいに対して、JR総連全体で支持・連帯する」ことを打ち出している。あいさつした榎本委員長は、「組合が勝ち取ったベアに対し、会社が格差をつけることは許されない」と指摘し、2014年以降3年間続いたベースアップについて、その配分方法に疑問を示した。

要求提出日は、原則として2月中とした。回答指定日は、連合方針をふまえ、最大のヤマ場を3月15日に設定。JR各単組の「第1先行組合回答ゾーン」については同月14~18日としている。