定年年齢65歳への延長を新たな要求項目に/UAゼンセン中央委員会

2017年2月3日 調査部

[労使]

国内最大の産別労組で、パートタイマーの組合員が半数以上を占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長、約161万人)は1月31日、大阪市で中央委員会を開き、正社員組合員、パートタイム組合員とも、昨年と同じ2%基準の賃金引き上げを基本とする2017労働条件闘争方針を決定した。2025年に年金支給開始年齢が完全に65歳に引き上げられることに備え、新たに定年年齢を65歳に引き上げることを要求項目に加えた。

「賃金水準の低さ」を労使とも真剣に検討を(松浦会長)

方針は、2017賃金闘争に向けての要求の考え方について、「再び物価上昇の動きは弱含み」となっているものの、「デフレに後戻りさせないためにも継続的な賃上げが社会的に求められている」と主張。「経済の成長に応じた公正配分に加えて、積極的に底上げ・格差是正を求め、経済の好循環を前に進める」とし、格差縮小の観点を強調しながら、「昨年に引き続き、賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金水準の引き上げをはかる」と明記した。

あいさつした松浦会長は、今年の賃金闘争について「要求はほぼ昨年並みだが、環境的には生産性向上は見込まれるものの物価上昇がほぼゼロであることから、会社側は賃上げの是非そのものにこだわるところが大半だろう。しかし、マクロ視点とはいえ生産性向上分に見合う賃上げを求めることは生産性三原則の考え方からみて当然のことであり、格差是正も含め人材への投資を怠れば、労働人口減少時代にあって有能な人材を確保できない」と訴えた。

また、「特にUAゼンセンとして、強く意識しなければならないのは私たちの産業・業種の賃金水準の低さだ」と強調しながら、UAゼンセンに加盟する単組が属する業種のいくつかの平均賃金が、全産業平均よりも1万円台~5万円近く低くなっている実情を例示し、「一歩でも二歩でも社会水準に近づかなければ、私たちの産業・業種・企業の将来に関わる。これは『目の前にある危機』として私たち自身が考えねばならない問題であり、労使が今まさに真剣に取り組む課題だ。『生産性向上には私たち労働組合も真剣に取り組むが、生産性向上の源泉が人材にあるのも事実であり、私たちは自分たちの賃金水準の低さを放置できない。だから要求し、勝ち取らなければならない』という思いを共有したい」と組合員に呼びかけた。

賃金水準は【ミニマム水準】【到達水準】【目標水準】の3段階

具体的な要求内容をみると、正社員(フルタイム)組合員では、平均賃金の引き上げで「賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」ことを基本に、賃金水準別に要求基準を設定する」。要求策定の基準となる賃金水準は、産別本部が【ミニマム水準】、【到達水準】、【目標水準】という3段階の指標で示している。

【ミニマム水準】は、「最低限超えるべき賃金水準」との位置付けで、「高卒35歳(勤続17年)」、「大卒30歳(勤続8年)」ポイントともに24万円に設定。【到達水準】は「すべての加盟組合が到達をめざす社会的水準」で、高卒ポイントが「25万5,000円を基本に部門ごとに設定」、大卒は「25万円を基本に部門ごとに設定」するとした。【目標水準】は、「中期的に目指す賃金水準」で、高卒・大卒ポイントそれぞれ「部門ごとに設定する」。

なお、UAゼンセンは「流通部門」「製造産業部門」「総合サービス部門」の3部門に分けてそれぞれの独自性を踏まえた組織運営をしており、労働条件闘争では、UAゼンセン本部が全体の産別方針を確立した後、各部門がそれに基づき、独自の要求基準を策定する。各部門が設定した到達水準と目標水準の一部をみると、「製造産業部門」は到達水準が高卒35歳で25万5,000円など、目標水準が高卒35歳で27万円などとなっている。「流通部門」は到達水準が大卒30歳で26万円など、目標水準が大卒30歳で27万円などとなっている。「総合サービス部門」は到達水準が高卒35歳で25万5,000円など、目標水準が高卒35歳で28万円などとなっている。

ミニマム水準未達の組合は9,500円または4%の要求総額が基準

具体的な要求基準をみると、【ミニマム水準】に未達の組合は「格差是正を強く求め、賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」とし、賃金体系維持分が明確でない場合は「要求総額として、9,500円または4%を基準とする」とした。【到達水準】に未達の組合は、「格差是正の必要性を踏まえ、部門ごとに要求基準を設定する」とした。すでに賃金水準が【到達水準】以上に達している組合については、「目標水準に向け部門ごとに要求基準を設定する」。

各部門の要求基準をみると、「製造産業部門」では、到達水準未達の組合は賃金カーブ維持原資とは別に、2%を基準に少なくとも1%以上を要求する(カーブ維持分が峻別できる場合)。到達水準を上回る組合はカーブ維持原資とは別1%以上を要求する。「流通部門」では、到達水準未達の組合は「賃金体系維持分+ベースアップを含む賃金引き上げ一人平均4,500円基準または2%基準」(賃金体系維持分を峻別できる場合)とし、到達水準を上回る組合は賃金引き上げ分を4,000円基準または1.5%基準として、そのうち2,500円を超える分の原資に関しては時短などの要求を含めてもよいこととした。「総合サービス部門」は、到達水準未達の組合は「4,500円(賃金体系維持相当分)に加え賃金引き上げ2.0%基準(少なくとも1.5%以上)などとし、到達水準を上回る組合は「賃金体系維持分に加え賃金引き上げ1.5%基準(少なくとも1.0%以上)などと設定した。

短時間組合員で「格差是正が必要な場合、正社員組合員以上の要求を」

短時間(パートタイム)組合員に関する要求については、「短時間労働者の待遇の原則(パートタイム労働法第8条)を踏まえ、労働内容、職責、働き方に応じ、資格制度や昇給制度を整備し、正社員と均衡ある処遇制度を構築する」などとしている。平均賃上げでの要求基準は「昇給昇格制度等により賃金体系維持分が明確な場合は、賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」とし、賃金制度維持分が明確でない場合は、「正社員(フルタイム)組合員との均等・均衡をはかるよう要求総額を決定する」とした。そのうえで、格差是正が必要な場合には、「正社員(フルタイム)組合員以上の要求を行う」。一時金では、必ず制度化することを前提に置き、年間2カ月を要求基準とした。

65歳定年制・定年廃止を2020年度までに、勤務間インターバル規制も推進

賃金闘争以外では、労働時間の短縮・改善の取り組みや、定年制度改定の取り組みが柱。所定労働時間の短縮では、まずは2,000時間未満とすることを到達基準とする。時間外労働の削減では、1カ月45時間以内、1年360時間以内というUAゼンセンの「36協定締結指針」で定める上限時間の範囲内での協定化を求める。なお、特別条項については、UAゼンセンでは以前から「特別条項付き時間外・休日労働協定は、締結しないことを原則」とするスタンスをとっている。

流通部門のスーパーマーケット部会では、部会の統一運動として、勤務間インターバル規制の導入に取り組む。昨年も12組合が導入を要求し、8組合で前進が図られた。総合サービス部門では、フードサービス部会(外食など)が勤務間インターバル規制の導入や計画年休制度・連続休暇制度の導入を統一して求める。

定年制度改定では、65歳定年制度(もしくは廃止)を遅くとも2020年度から実施できるよう取り組む。処遇制度については、「65歳定年までの一貫した能力開発、処遇制度を整備し、労働内容、働き方に応じて均衡ある処遇制度を整備する」としている。

闘争の進め方では、今年も妥結権を中央闘争委員会に委譲する統一賃上げ闘争を展開。要求提出日は2月末までと設定した。