JEC連合全体が2%程度の賃金引き上げとなるよう取り組む/JEC連合の闘争方針

2017年1月13日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(約10万6,000人、平川純二会長)は12日、都内で中央委員会を開き、2017春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、「労働組合の原点でもある『連帯』と運動の源泉である『労働条件の維持向上』を主眼に取り組みを考え、全体が2%程度の賃金引き上げとなるよう、『共闘の精神』に基づいて取り組む」としている。

「『官製春闘』ではないことを再確認しながら共闘の精神で要求を掲げる」(平川会長)

平川会長はあいさつで、昨年秋から開催されている政府の「働き方改革実現会議」のなかで、安倍首相が4年連続の賃上げや中小企業の取引条件の改善等に言及していることについて、「政府の動きは経済政策の行き詰まり、危機感の表れだと思うが、春闘当事者である労使間の交渉に政府が介入することは好ましいことではない」などと指摘。そのうえで、「誰が名付けたか『官製春闘』という表現が当たり前のように使われている。春闘は労働組合の諸条件の改善要求、すなわち連合の春闘方針をはじめとして、産業別労組の方針に沿って、多くの仲間が要求を作り上げることから始まる。決して『官製春闘』ではないことを皆で再確認しながら、共闘の精神で要求を掲げていこう」と呼びかけた。

「連帯」と「労働条件の維持向上」を主眼に「共闘の精神」を組織に落とし込む

闘争方針は冒頭、2017春闘では、① 物価はデフレ傾向であり、物価での春闘議論とはならない ② 景気は停滞ぎみ。先行きはいつも不透明。ただ内部留保と長期借入は劇的に改善されている――ことを念頭に、③ 「底上げ・底支え」「格差是正」を目指し、水準に満たない企業の賃金引き上げに取り組む ④ 各加盟組合が各々ベンチマーク(目標やあるべき姿)を設定した水準闘争を展開する――ことを明記。「労働組合の原点でもある『連帯』と運動の源泉である『労働条件の維持向上』を主眼にその取り組みを考え、JEC連合春季生活闘争のキーワード『共闘の精神(こころ)』を各加盟組合が組織に落とし込む」ことを確認している。

定期昇給制度のない組合は定昇相当分含め1万円を要求基準に

具体的な要求基準を見ていくと、賃上げ要求は、① 全加盟組合は「各企業における賃金」と「JEC連合2016賃金労働条件実態調査の結果」を綿密に比較・分析し組織内にて議論したうえで「加盟組合が目指すべき賃金」との乖離がある場合は、是正に努めるべくベースアップ要求(俗に言う賃金表書き換えによる一律ベースアップ)を含む賃金引き上げに取り組む ② すでに、加盟組合が目指すべき賃金以上の水準となっている加盟組合は、「経済の自律的成長に向けた社会的役割と責任」「組合員の労働条件向上」の観点からベースアップ要求を検討し、前向きに賃金引き上げに取り組む――との姿勢を示したうえで、この2点の取り組みを通して「JEC連合全体が、2%程度の賃金引き上げとなるよう、共闘の精神に基づいて取り組む」としている。

また、賃金カーブ維持分を算出できない組合は、「定期昇給制度を持たない加盟組合における1歳・1年間差の水準である5,000円」を定期昇給相当分とする。それに加えて、JEC連合に加盟するすべての組合における賃上げ要求を勘案した5,000円の引き上げも要求。過去の労使協議で賃金カットや定昇凍結などの積み残した賃金がある加盟組合は、その分の補填にも取り組む。

このほか、雇用問題を抱える組合に関しては、経営再建に向けた労使協議を最優先することとし、連合リビングウェイジ・標準生計費などを交渉材料に、現行賃金カーブの維持ならびに生活保障を軸とした要求を行う。

一時金への取り組みやサプライチェーンへの働きかけも

一時金については、「年収水準に大きく影響を与える」との観点から、ミニマム基準を年間4カ月に設定。一時金の固定部分を持つ加盟組合は、固定部分を4カ月以上に引き上げる取り組みを行う。また、業績連動型一時金制度を導入しているところでは、一時金水準が決定に至るプロセスを再確認するとともに、組合員の努力に対する企業の誠意と姿勢についても問うよう取り組む。

一方、「底上げ・底支え」「格差是正」に向けて、サプライチェーンへの働きかけも行う。関連子会社や業務委託等で関係する企業の労組との連携を取りつつ、各企業が下請法等に鑑み、適正に企業運営しているかを労使協議で確認する。

労働時間管理の改善も模索

ワーク・ライフ・バランスの実現に向けては、労働時間短縮も重視。① 年間総実労働時間2,000時間を上回る組合をなくす ② 年間総実労働時間1,900時間未満を目指し労働時間管理に取り組む ③ 年次有給休暇の一人当たり平均取得日数10日未満の組合および取得日数5日未満の組合員をなくす――ことをめざす。

さらに、時間外労働の割増率の引き上げも求める。企業規模にかかわらず、すべての組合で、① 1カ月1時間~45時間までの時間外割増率35% ② 特別条項付き協定締結を前提に45時間超の時間外割増率50% ③ 休日労働割増率、深夜労働割増率50%――の実現に努める。

一方、男女がともに働きやすい職場づくりを目指す要求では、育児・介護休業法の改正に伴う周知・点検や、次世代育成支援対策推進法に基づき作成した行動計画の進捗チェックなども実施。さらに、各組合の賃金データに基づき、男女別・年齢別賃金で格差が生じている場合には、同一価値労働・同一賃金の視点で点検を行い、改善に向けて取り組む。

「底上げ・底支え」の観点で非正規労働者の処遇改善を

雇用確保の取り組みでは、組合員の雇用の安定・確保に加えて、契約社員やパート労働者等の非正規労働者の安定雇用や派遣社員の雇い止めの防止など、組合員以外の雇用の安定にも力点を置く。

非正規労働者に関しては、「底上げ・底支え」の観点から、連合方針に沿って37円の引き上げを目安に要求し、連合が掲げる「誰もが時給1,000円以上」になるよう労働条件の維持・向上や処遇改善に取り組むとともに、未組織労働者には今後の組織化も含めて検討する。

情報の公開・共有化の推進を

なお、方針には情報の公開・共有化の推進についても明記した。各構成組合は、要求内容、交渉状況、妥結内容を本部にタイムリーに報告。各業種別部会も各組合の状況把握に努め、部会間の情報を共有する。

方針提案した吉田直浩事務局長は、「今回の方針は、組合員が1円でも多くの労働条件を向上できることに主眼を置く形を採った」と説明。そのうえで、「社会運動として情報を共有することは必須。会社との議論やこれまでの経緯もあるが、極力、公開に向けて今春闘の前段に議論をお願いしたい」と訴えた。

要求書は原則、2月24日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基づき、3月第3週(3月13日~17日)を解決に向けた回答ゾーン(第1先行組合回答ゾーン)とし、3月15日を集中回答日とする。これに続く組合は3月20日~24日を回答ゾーン(第2回答ゾーン)とし、遅くとも4月内での決着をめざす。