賃上げの結果で成長が決まる/「連合総研」16~17年度経済情勢報告

2016年11月2日 調査部

[労使]

連合のシンクタンクである連合総合生活開発研究所(連合総研)はこのほど、『2016~2017年度経済情勢報告』をまとめ、来年度の経済見通しを発表した。それによると、労働生産性の伸びを反映した実質賃金の増加によって所得環境が改善した場合、停滞していた個人消費が景気拡大の推進力になるとの試算結果から、2017年度の経済は「賃上げの結果如何で成長が決まる」との見解を示している。

労働生産性が反映した賃上げで好循環へ――「先を見据えた賃上げを」

同報告は2017年度の経済見通しについて、国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済の見通しに沿って、世界経済が緩やかに回復することを前提としている。また、政府の経済対策による景気押し上げ効果については、「2016年度0.2%ポイント、2017年度0.4%ポイントほど実質GDP成長率を押し上げる」と想定する。

そのうえで、今回の見通しでは、2017春闘における賃上げによって、消費が景気拡大の推進力となるケースと、消費が景気拡大の推進力にならないケースの2つに分けて、来年度の日本経済の姿を示す。17春闘の結果、実質賃金を維持する程度のベアにとどまるのを「ケースB」とし、それに加えて労働生産性の伸びを反映し、成長に貢献するような賃上げが実現されるのを「ケースA」としている(表参照)。

それによると、「ケースA」では、労働生産性の伸びも反映された実質賃金の増加によって所得環境が改善した場合、これまで停滞していた個人消費が景気拡大の推進力となり、「個人消費と公的需要の増加により企業活動が活発化し、経済の好循環実現に向けた大きな刺激となる」としている。その結果、17年度の実質GDPは1.6%増、消費者物価上昇率は1.0%と予測し、実質賃金も0.5%増加するとみている。

一方、「ケースB」では、実質賃金の伸びがゼロとなるため、「安定的な成長に向けた推進力は生まれない」とし、実質GDPは経済対策による公的需要の押し上げ効果はあるものの、16年度の成長率を若干上回る程度の1.0%増にとどまるとしている。

10月30日に開かれた連合の2017春季生活闘争中央討論集会で基調講演した連合総研の中城吉郎所長はこの推計を踏まえて、「過去ではなく先を見据えた賃上げが必要だ」と強調した。

<連合総研見通し(2016年9月)>

  • 【ケースA】労働生産性の上昇を反映した実質賃金が実現した場合
  • 【ケースB】実質賃金が横ばい程度の賃上げにとどまる場合

前年度比、%

  2015年度(実績) 2016年度(見込み) 2017年度(予測)
ケースA ケースB
名目GDP 2.2 1.3 2.5 1.6
実質GDP 0.8 0.8 1.6 1
CPI上昇率 0.2 0 1 0.5
現金給与総額 0.2 0.3 1.5 0.5