組織強化の検討を促進/NTT労組定期大会

(2016年8月3日調査・解析部)

[労使]

NTT東・西やドコモ、データなど、NTTグループ企業の労組で構成するNTT労働組合(野田三七生委員長、約16万人)は7月28日、都内で第19回定期全国大会を開き、2015年度の取り組みを総括するとともに「次代への挑戦!NTT労組の確かな未来をみんなで創ろう!」をスローガンとする「2016年度運動方針」を決定した。組織の状況をみると過去5年で約1万7,000人の組合員が減少し、現在の年齢構成では55~65歳の組合員のウエートが高く、更なる減少が予想されることから、組織強化の検討を促進するとしている。

今春闘は有期雇用・60歳超えの契約社員で前進的決着

2016年春の労使交渉は過去2年続けて求めてきた非正規雇用への賃金改善に対する回答がゼロだったことから、60歳超の継続雇用社員と契約社員の取り組みを重視。正社員だけでなく60歳を超えた継続雇用の月給制社員と契約社員についても同額の月額1人平均4,000円の賃金改善要求で臨んだ。しかし、非正規雇用の処遇改善で労使の認識が合わなかったため、組合は3月14日終業時から全組織・全職場一斉の時間外拒否闘争に突入。その後、断続的に交渉を続けた結果、一部の定年後の継続雇用社員と非正規社員についても平均1,100円の賃金改善が示され、正社員については月例賃金を平均1,600円(昨年実績2,400円)引き上げることで連合が今春闘最大のヤマ場とした16日に主要8社と妥結した。

この結果については、① 過年度物価上昇がほとんどないい中で3年連続の月例賃金改善を実現した、② 一部ではあるものの今次春闘でもっとも重視した有期雇用者および60歳超え契約社員の月例賃金改善を実現した、③ 正社員については主要産別を上回る水準を引き出した――ことをあげ、「労働組合の社会的役割と責任を一定果たしたものと認識する」と総括した。

今後の課題としては、「時給制から月給制への転換等、企業本部の人員政策と制度課題を含めた処遇改善をセットで検討していく必要がある」としている。

有期雇用者から正社員(無期雇用)への登用・拡大へ

16年度の運動方針を提起した平田雅則事務局長は、今春闘の最終回答で会社側から「将来の事業運営を展望した労務構成とその雇用・働き方のあり方について引き続き議論していく」との考え方が示されたことを踏まえ、NTTグループにおける雇用のあり方について、「秋年末段階で一定の方向感が見出せるよう労使対応を強化する」と説明した。

今年2月の中央委員会で確立した「雇用の安心・安定に向けたNTT労組の雇用政策」は、雇用の原則を「期間の定めのない直接雇用」とし、正社員(無期雇用)については65歳まで働き続けられる環境整備に取り組みつつ、有期雇用者については正社員(無期雇用)への登用・拡大を第一義にするとしている。また、派遣労働者については「派遣労働は臨時的・一時的なものであること、また常用代替を防止する」との原則を踏まえ、「派遣先での直接雇用化」および「派遣元での無期雇用化」による雇用の安定・確保に取り組むとしている。この政策を各企業本部での人員政策の組織的検討と労使間論議に生かすことにしている。また、この取り組みを通じて政府が検討を開始した「同一労働同一賃金」に向けた指針策定、改正『労働契約法』、改正『労働者派遣法』への対応を含め、NTT労使の取り組みが、「雇用の安定・確保」に向けた社会的役割と責任を果たすことにつながると、その意義を強調する。

一方、有期組合員拡大の取り組みが進み、5年前(2011年)の約1万4,000人から約6,000人増加しているものの、一般組合員が大きく減少していることから、2011年と比較する合計で組織人員を1万7,000人減らしている。さらにこれまで活動を支えてきた61~65歳に約2万2,000人、56~60歳に約2万5,000人とこの年齢層の組合員がもっとも多いことから、減少傾向の継続が予想される。そのため、運動方針では「NTTグループに働くすべての仲間の結集をめざす」としている。

民進党とは関係を踏襲し、対応

大会では、先の参議院選挙で民進党比例代表全国区から出馬した組織内候補が再選を果たしたものの、「組合員との接点を含め組織的課題が浮き彫りになったことから、組織基盤の強化に向けた日常不断の取り組みがきわめて重要であることを再認識する必要がある」と総括。そのうえで、民進党との関係については、総括の中で、「新党『民進党』は『生活者』『納税者』『消費者』『働く者』の立場に立ち、共生社会の実現を目指すとしており、これはNTT労組の『基本理念』『指針』に通じるもの」であることから、「相互の主体性を尊重しつつ、相互信頼関係を基本に緊張感ある関係を維持する」としてきた民主党との関係を踏襲し、対応していくとしている。