全国一律最低賃金制を視野に「アクションプラン」を採択/全労連定期大会

(2016年8月3日調査・解析部)

[労使]

全労連(小田川義和議長、約80万5,000人)は7月28日から3日間、都内で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。大会では、全国一律最低賃金制導入を視野に、「今すぐ最賃1,000円以上」を求める「全国最賃アクションプラン」を採択。組織拡大については、新たに今年度開始の「組織拡大強化4カ年計画」を定め、「全労連専任オルグ」を配置するなどして組織化をてこ入れする。

『今すぐ最賃1,000円以上』の緊急的な政治決断を迫る

全労連は方針で「社会的な賃金闘争の強化」を打ち出している。その一環としての最低賃金引上げについては、生計費試算などに基づき「時給1,500円、月額22~23万円程度」が必要としつつ、当面の取組みとして、「労働団体や若者などとの共同を強めて、政府に『今すぐ最賃1,000円以上』の緊急的な政治決断を強く迫る」と述べ、とくに17年の春闘において「広義の最賃闘争というイメージで強力に展開する」と強調している。

「最賃アクションプラン」はさらに、「社会的な賃金闘争」の戦略的な中心課題として、「全国一律最賃制の実現を大きく位置づけ、取組みを抜本的に強化する」としている。討論では、7月28日に答申された中央最低賃金審議会の2016年度地域別最低賃金額改定の目安について、「Dランクの引上げ目安は21円。東京などAランクの25円を上回らないと地域間格差は縮まらない」(長崎県労連)と、全国一律最賃制を目指すアクションプランを支持する意見があった。また、「最賃目安は『格差解消ができない目安』だ。中央最低賃金審議会が制度疲労を起こしているのではないか。最低賃金法そのものの改正を」(静岡県評)と指摘する声も出た。

「全労連大運動」と「地域活性化大運動」を推進

方針では、かねてから打ち出されている「雇用の安定と社会保障拡充を中心にした安全・安心を求める大運動」(全労連大運動)とそれを具体化した「地域活性化大運動」を引き続き重視。「賃金の底上げや中小企業支援」「労働法制」「社会保障・教育の拡充」などを課題としてあげている。

小田川議長はあいさつで、「全労連大運動、その具体化としての地域活性化大運動、そしてその中心的な取組みとしての全国最賃アクションプランは、全労連としてのアベノミクスに対抗する戦略的な運動の提起だ」と位置づけた。

具体的には、当面の活動内容として「2016年秋季年末闘争方針」を定め、最低賃金に関する取組みのほか、①労働時間規制や解雇規制の緩和への対抗 ② 働くルールの確立、働き続けられる職場づくり ③ 人手不足の深刻化のもとで若者や女性が定着し働き続けられる労働条件整備 ④ 医療・看護・介護労働者の必要数の確保、報酬の改善、補助金の拡充などの処遇改善――などの取組みを提起している。

新たに「組織拡大強化4カ年計画」を決定

大会では、2020年7月までの4年間を実施期間とする「組織拡大強化4カ年計画」が決定された。

議案書によると、全労連の組合員数は1998年に約153万人のピークに達した後減少が続いており、16年6月時点では約106万人(全労連発表の数値)となっている。前年からは2万2,000人以上の減少。しかし15年度は、日本医労連、年金者組合、生協労連、全労連・全国一般、民放労連、映演労連、国公労連が増勢となり、地方組織でも13組織が増勢となっている。

このような現状を踏まえ、今回の中期計画は、非正規雇用労働者や青年・女性などあらゆる階層の労働者を視野に毎年10万人を超える既存組織内での拡大を実現することと、単産と地方組織の連携による「総がかり作戦」などによって4年間で20万人を超える労働組合の加入・結成を実現することで、目指す「150万全労連」に接近することを目標としている。

また、① 地域および産業・業種に重点を置いた組織化運動の実施 ② 未組織労働者の組織化運動の連続的な実施 ③ 次世代育成を焦点にした「初級教育制度」――の3点を「特定事業」とした。組織化の財源としては、現行の「特別会費」と同額(単産正規・月額3円、地方組織1円などを設定している)の範囲内で会費を引き上げ、これを充てるとしている。

組織拡大に向け「全労連専任オルグ」を配置

全労連では今回の中期計画に沿って「4カ年計画推進委員会」を設け、併せて組織拡大専任の「全労連専任オルグ」を配置する。初年度に5人程度の配置を目指すとしている。同委員会および専任オルグは、各単産・地方組織の拡大の取組み状況の把握、全労連として重点を絞り込んだ典型例づくりのための資金や人の投入などの計画策定に従事する。専任オルグは典型例づくりの実務を担い、各自が半年ごとに2件程度を担当する。

財源問題に関連して、執行部からは現在フリーダイヤルで運営している「労働相談ホットライン」の有料化が提案された。討論では「組織拡大のためにホットラインをどうとらえているのか。ホットラインは未組織労働者との蜘蛛の糸の役割を果たしている」(神奈川労連)、「県労連では年間110件を超える相談を受けている。組織化も見すえながら対応している」(千葉労連)、「ホットラインの有料化は東北6県すべて反対だ。ホットラインは労働者・国民との信頼をつないできた」(青森県労連)などと疑問の声が多く出た。執行部は引き続き意見を集約したうえで、来年1月に予定している評議員会までに結論を得たいとしている。