化学総連の加盟組織に連帯の呼びかけを/JEC連合定期大会

(2016年7月27日調査・解析部)

[労使]

化学・エネルギー関連産業の組合でつくるJEC連合(約11万2,000人)は7月21、22の両日、横浜市で第15回定期大会を開き、化学・エネルギー分野の労組の結集をめざすことや産別運動の強化などを柱とする2017年度の運動方針を決めた。連携協定を解消し、連合を離脱した化学総連(大手化学メーカーの労組で構成、約4万7,000人)への対応については、「不可欠な存在であることは言うまでもない」として、「化学総連の加盟組織に対して、連帯の想いを強く呼びかけていく」としている。役員改選では、永芳栄始会長が退任し、新会長には平川純二副会長を選出した。

画像 JEC第15回定期大会

中期ビジョンの実現を目指して一体的な活動の展開を

2017年度の運動方針の柱は、2008年から10カ年計画で進めている中期的な組織ビジョンに基づく化学・エネルギー分野での結集や、政策活動を有効に実施する体制の整備、産別としての基本機能の強化など。それらの実現に向けて、「組合員・加盟組合・業種別部会・本部が一体となった活動を展開していく」としている。

化学・エネルギー分野の結集については、「大同団結実現によって社会に対し影響力をもち運動を推し進めなくてはならない」と指摘。「関係する各産別との対話を引き続き実施したうえで、取り組みを模索する」とした。そのうえで、JEC連合と連携協定を締結して連合との関わりを持ってきた化学総連が、5月末日で連合を離脱しJEC連合との連携も解消したことに関して、「連携解消とはなったものの、私たちにとって不可欠な存在であることは言うまでもない」と強調。「連合に集う仲間と同じ連帯の想いを引き続き、化学総連加盟組織に対して強く呼びかけていく」との方向性を示している。

運動を底支えするサポート体制や産別の基本機能を強化

政策活動では、組織内のシンクタンクであるJEC総研が能動的に各部会との連携を図り、化学・エネルギー産業の発展を目指すとしている。「社会政策・労働政策・産業政策は、選挙対応を含む政治活動の取り組むことによって、はじめて成り立つもの。安心して働ける社会になるには、加盟組合とともにあらゆる形での政治活動の参画をすることが必須だ」として、政治活動に注力していくことを掲げた。友好関係にある国会議員で構成する「政策フォーラム議員」との連携も強化。今後の政策影響力なども鑑みたうえで、構成を検討していく考えだ。

一方、産別としての基本機能も強化する。具体的には、現在の組織政策局内に組織担当と政策担当を設け、それぞれが運動の底支えとなるよう、専門に特化したサポート体制を整備する。特に2017年度は、オルガナイザーの人的充実や中小規模の加盟組合へのサポート、地域運動の活性化などに取り組んでいくという。

ワーク・ライフ・バランスや男女共同参画の推進計画も策定

このほか、「いきいきと働く社会の実現に向けた取り組み」も実施。ワーク・ライフ・バランスや男女共同参画の推進計画を策定し、それぞれ実現を目指す。前者は、2017~2021年度にかけて、① 全ての企業で「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」の取得を目指し労使で取り組む ② 年間総実労働時間1,900時間未満の5年以内達成を目指す ③ 男性の育児休業取得率を5年間で30%以上にする――などの具体的な目標を掲げた「目指す姿」を提示。後者についても、家族責任を負う者がその責任を理由に離職をしないで済むための支援や、長時間労働の是正と働き方改革、労働組合のダイバーシティの推進などの取り組みを図っていく。

再び連合の旗の下で活動できる日が訪れることを伝え続けていく(永芳会長)

あいさつした永芳会長は、中期ビジョンについて、「8年前、この中期目標を策定した時に描かれた将来像、その原点であるJEC創設時の思いは何も変わっていない」とする一方で、「(この間に)2度の政権交代、一強他弱の政治情勢と震災を経て、JEC連合を、労働界を、そして日本全体を取り巻く環境は大きく変わった」ことも指摘。「産別として取り組まなくてはならない課題、『労働政策』『産業政策』『中小支援』『組織拡大』等々の実現のためには、一定の規模、人材、財源が必要。その実現のために産別連携強化を視野に入れた協議を開始したい」と述べた。

また、ビジョンの大きな柱でもある化学・エネルギー産業の結集について、「産業政策の進展による長期的な化学エネルギーの発展、そこで働く人たちの安全や労働条件の維持向上のためには、化学エネルギー産業労組の大同団結が大変重要だ」と強調した。 

さらに、化学総連との連携解消について、「他組織の判断について、JEC連合の最高決議機関である定期大会の挨拶で触れるべきか悩んだが、この場でどうしても言っておかなくてはならない」と前置きしたうえで、「自分たちさえよければいいというスタンスでは、労働組合の存在意義はない」と言及。「化学総連の構成組織には、今回の結論にとらわれず、もう1度原点に立ち戻って、再び、ともに連合の旗の下で活動できる日が訪れることを切に願っていることを、これからも伝え続けたい」と訴えた。

賃上げ額6,338円(2.00%)、年間一時金は5.26カ月に

大会では、「2016春季生活闘争まとめ」も確認した。今春の賃上げ交渉の回答状況(6月4日現在)を見ると、回答を引き出したのは、昨年同時期より88組合少ない119組合。そのうち、59組合が賃上げ分を獲得しており、こちらも前年同期より49組合減っている。回答額は、定期昇給分を含めた加重平均で6,338円(2.00%)、賃上げ・ベア額は同1,151円で、それぞれ前年を243円、316円下回った。年間一時金は、加重平均で169万4,154円(5.26カ月)となり、こちらは額(8万3,503円)、率(0.8カ月)ともに、昨年(161万651円、5.18カ月)を上回っている。

こうした回答状況について、まとめは、「回答の引き出しは例年と比較して遅くなっている」「ベア・賃上げ獲得数も今年は2015春闘よりも下がった」などとしながらも、「約半数の組合で何らかの賃上げを確保できたことは評価できる」と指摘。さらに、「300人以上の組合の賃上げ・ベア回答額が1,127円に対し、300人未満の組合の回答額は1,223円と上回った(いずれも加重平均)」ことを挙げて、「連合が評価している中小の頑張りがJEC連合内でも見られた」と評価した。

2017春闘に向けては、「経済の好循環や底上げ・底支えを掲げる春闘の動きをより加速させるためには、春闘をより強固にすることが必要」だとして、「賃上げによってこそ企業業績が向上する、という考え方を広く定着させていくことが大切。人への投資こそ、付加価値向上に向けた正しい道だという認識を労使が共有すべきだ」などと問題提起している。

化学総連の加盟組合には計画的なアプローチをかける

質疑では、石油部会の加盟組合から組織拡大に関連する質問が出された。JXエネルギー労組が、「組織拡大を重点課題と位置付けているが、本部として現状の課題をどう考えているか」と発言。東燃ゼネラルグループ労組は、化学総連とのつながりについて、「本年3月に『連合離脱に関するJEC連合の対応方針』が出され、それには今後一切、関係を絶ち、加盟単組も対応方針に従うよう要請があった。しかし、今回の議案書には『連携解消となったものの、引き続き呼びかけていく』と書いてある」などと述べ、化学総連への対応方針の変化について尋ねた。

これに対し、本部は組織拡大の課題について、「人的体制を含めた本部体制(の強化)と、手順の明確化をしながら、接し方なりをもう少し本部で共有していくこと(が必要)。この先の目標に向けては、化学総連の個別単組へのアプローチも入れており、そこも新年度の大きな課題になる」などと回答した。

化学総連への対応については、「関係を絶つことは、今でも中央執行部はそう思っており、今回の方針も変えたつもりはない。ただ、私たちはいつでも彼らを受け入れる扉は開いている。彼らの力は化学エネルギー産業にとっては不可欠。そういった観点から、今までは化学総連という組織にアプローチしてきたが、今後は加盟組合に対して計画的にアプローチしていきたい」と答弁し、今後は化学総連の加盟単組に対して組織拡大のオルグをかけていく考えを示した。

組織拡大以外の質疑では、化学一般労組から「方針に加盟組合へのサポート体制と雇用の取り組みの充実を図るとあるが、どのような活動をしていくのか」との発言があったほか、ワーク・ライフ・バランス推進計画についても、JXエネルギー労組が、「目標のハードルが高いが、どういった意味を込めて設定したのか」と説明を求めた。

これらの質問には、「サポートは、組織担当を設けてそこに人を増やすことで人的充実を図る。雇用を守る取り組みも、組織担当と政策担当に分けて、それぞれ専門に特化した技術伝承も含めて実施する」「(ワーク・ライフ・バランスの目標は)難しいと思うが、こういう風になりたいと常日頃から思わないと推進計画にはならない。くるみんマークは企業として乗ってくるところ。年間総実労働時間1,900時間未満の達成も相当重いが、上部団体の連合方針1,800時間を目指すうえでは必須だ。男性の育児休業取得30%以上はハードルとして高いが、具体的な項目として挙げた。これ以外にもやらねばならないことはいっぱいあるが、産別として具体的に示したのが推進計画だ」と答えて理解を求めた。

大会では役員改選が行われ、5年間、会長を務めた永芳栄始氏(三菱ガス化学労組)が勇退。平川純二副会長(JXエネルギー労組)を新会長に選んだ。吉田直浩事務局長(日本化薬労組)は再任された。