国民春闘共闘が中間総括を確認/賃上げは加重平均で5,770円(2.02%)

(2016年6月24日調査・解析部)

[労使]

全労連や中立労組などでつくる国民春闘共闘委員会(代表幹事、小田川義和全労連議長)は6月23日、都内で第2回単産・地方代表者会議を開き、2016年春闘の中間総括を確認した。

加重平均の賃上げ実績、前年を388円(0.05ポイント)下回る

国民春闘共闘の第7回賃上げ集計(5月26日時点)では、登録824組合の60%となる494組合が回答を引き出し、前年同期(2015年5月29日時点)の495組合(59.3%)とほぼ同水準となった。うち金額・率回答を引き出した367組合の単純平均(一組合あたりの平均)は5,323円(1.97%)で、金額では前年同期と比べ406円、率で0.09ポイントのマイナス。組合員一人あたりの加重平均では5,770円(2.02%)となり、前年実績を388円(0.05ポイント)下回る結果となった。

前年との比較が可能な組合の集計結果(単純平均)をみると、金額の比較可能な325組合では賃上げ額が5,501円と前年(5,769円)を268円下回っているが、うち48%に相当する156組合(前年はおよそ6割)が前年実績以上の賃上げを獲得した。また、率の比較可能な203組合では賃上げ率が1.98%と、前年(2.10%)を0.12ポイント下回っている。

今春闘では前年と同じく、月額2万円以上、時間額150円以上の要求を掲げていた。あいさつに立った小田川代表幹事は今春闘について、「実質賃金5年連続マイナス、個人消費2年連続マイナス、エンゲル係数急上昇」などの状況について「アベノミクスはこれらに耐えられなくなっている。官製春闘の成果として2016年の成果を語れなくなっている」と指摘した。

ベースアップ獲得組合は前年から微減

国民春闘共闘がまとめた第5回進捗状況調査(6月7日現在)によると、定期昇給制度のある回答引出し組合(786組合)のうち、「定昇+ベア」獲得組合は224組合(28.5%)となり、前年同期の237組合(28.2%)を13組合下回った(率は0.3ポイント上昇)。「ベアゼロ・定昇のみ」は561組合(71.4%)で、前年同期より27組合減少(率は1.5ポイント上昇)している。

これらを踏まえて、中間総括は「今度こそ実質賃金の低下に歯止めをかけ、暮らしを改善する大幅賃上げを獲得しようという目標からすれば、実際の到達点は前年実績さえ下回る低額回答にとどまっており、不十分な到達点といわざるを得ない」、「景気の減速が鮮明になり、中小企業をとりまく状況が予想以上に厳しかった」などと指摘、「何とか微減にとどめたというのが率直な到達点だと考えられる」と述べている。

「全国最賃アクションプラン」を提起、全国一律最賃制を中心課題に

非正規労働者の状況については、時間額での引き上げ額の報告があった162件の単純平均額が19.3円となり、前年実績額を7.5円下回った。ただし日額の賃上げ実績は11件・平均341円で前年実績プラス236円、月額では51件・平均6,002円で同じくプラス2,503円と、前年を上回っている。産別では、建交労の運輸、生協労連、日本医労連などで高額回答がみられる。

国民春闘共闘は、格差是正や最低賃金などで「社会的な賃金闘争」を打ち出している。小田川氏は「最低賃金では、参院選ですべての政党が最賃1,000円以上をかかげているように、これまでとは違う状況になっている。どういう取組みが必要か、議論したい」と強調。春闘共闘は「全国一律最賃制を戦略的な中心課題に位置づける」とし、署名活動やリーフレットによる宣伝などに取り組む「全国最賃アクションプラン」を提起した。討議でも、「最低賃金という言葉が、経営者や労働局とのやりとりで用いる役所用語ではなく、市民権を得た」(愛知県労連)と、「社会的な賃金闘争」の過程における状況の変化について発言があった。