期間雇用社員の無期転換前倒しを評価/JP労組定期全国大会

(2016年6月3日調査・解析部)

[労使]

日本最大の単一労組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員約24万人)は1、2の両日、兵庫県神戸市で定期全国大会を開き、2016年度の運動方針を確認した。小俣利通委員長はあいさつで、2016春闘で正社員の一時金水準の4.0月への回復や、期間雇用社員の無期契約への転換時期の前倒し実施などの改善が実現したことを評価するとともに、「さらなる処遇改善を追求する」ことや、「格差是正に向けた議論を深めていく」姿勢を強調した。組織拡大では、当面の目標である「25万人組織の達成」に向け、正社員や期間雇用社員の組織化の取り組みを強化する。

正社員の一時金、4.0月への回復を実現

日本郵政グループの日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険は昨年11月、株式上場を果たした。3社の株価は堅調に滑り出したものの、年明け以降の世界経済の減速懸念等を背景に、初値を下回って推移している。

方針は、そうした状況のなかで迎えた2016春季生活闘争について、「足元の営業推進の厳しさや生産性向上の困難性等に、マイナス金利の影響が加わったことにより、先行き不透明感がますます高まったため、極めて厳しい交渉になった」としながらも、「要求項目の優先度合等について検討を重ねながら交渉を展開した結果、正社員の賃金水準の改善に関しては『一時金4.0月』等の回答を引き出すことができた」と評価。期間雇用社員についても、「一時金の特別加算と無期労働契約への転換制度の前倒しを実現することができ、格差是正に向けた期間雇用社員の処遇改善は一歩前進したものと判断している」などと強調している。

さらに、今後の春闘を含めた将来を展望する観点からは、① 極めて低い収益性の改善に向けた具体的な道筋をどう描くのか ② 自助努力でのユニバーサルサービスコストの負担が限界を迎えつつあるなかで、インフラ公益事業としての存在価値を如何にして証明し、担保していくのか――等、「克服していかなければならない難題が改めて浮き彫りになった」と指摘している。

ここを出発点にさらなる処遇改善を/小俣委員長

小俣委員長はあいさつで、郵政事業のこれまでの経緯と現状を踏まえて、「2007年に民営・分社化が行われ、IT化の進展が大きなインパクトを与えるなかで、郵便の減少を補うための宅配便事業統合が頓挫し、一時金を大幅に引き下げることで債務超過の危機を乗り切った。11春闘で3.0月での妥結という苦渋の判断を行って以降、複数年をかけて段階的回復をめざし、頑張った成果を当該年度内に最大限還元させるための特別手当等の判断も行いながら、毎年の春闘交渉を積み重ね、16春闘をもってひとまず4.0月の大台に戻すことができた」などと説明。「ここを新たな出発点と位置づけ、一時金を含めたさらなる処遇改善を追及していきたい」と訴えた。

さらに、働く環境の変化についても触れ、① 高齢者等雇用安定法の改正により、定年退職者が希望すれば、基本的にはその全員が高齢再雇用社員として採用される ② 労働契約法第18条の新設により、無期雇用への転換を実現できた ③ 国民年金法等の改正により、本年10月から短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大が行われる――ことなどを挙げて、「民主党政権時に成立した法律が順次施行され、日本郵政グループにおいても、少しずつその成果が現出している。それぞれは地味かもしれないが、着実に労働者・生活者の暮らしの改善につながる法整備がはかられた」として、「その具体化に向けた対応をはかるとともに、連合との連携はもちろん、民主党の綱領の根幹部分が引き継がれている民進党との連携をはかっていく」と表明した。

また、2016年度の運動展開に関しては、政策立案機能や、経営と職場両面からのチェック機能の強化、組織活性化の促進が「取り組むべきポイントになる」と主張している。

春闘での成果を組織化に連動させる取り組みを

一方、方針は、組織拡大に関して、組織結成以降掲げてきた30万組織建設を切り拓くための当面の目標として「25万人組織の達成」を掲げている。JP労組では、春闘交渉などを通じて正社員比率の向上に取り組んできており、実際に正社員の採用・登用枠を一定確保してきた経緯がある。方針は、「その成果を必ずしも組織拡大に結び付けられていない。交渉成果を連動させた組織化を強く進める」として、正社員の組織化の取り組み強化を訴えている。

さらに、期間雇用社員に対しても、「(春闘における)処遇改善の取り組みや制度の周知などを通じ、期間雇用社員の組織化を強力に推し進めていく」(小俣委員長)考えだ。