パート組合員の賃上げ率が2.27%で正社員を上回る/UAゼンセンの妥結状況

(2016年4月8日 調査・解析部)

[労使]

UAゼンセン(逢見直人会長、約154万人)は6日、本部で記者会見を開き、3月末時点での2016年賃金闘争の要求・妥結状況を報告した。300人未満の組合における正社員の賃金引き上げ額・率ともに、全体平均を上回っている。また、パートタイム組合員の時給の引き上げ率が加重平均で2.27%となっており、正社員(2.22%)を上回った。

300人未満の中小の賃上げは額・率とも全体より高い

3月31日時点の要求・妥結状況を、正社員組合員からみていくと、参加している1,859組合中、24.0%にあたる446組合で妥結している。組合員数でみた妥結進捗率(妥結した組合の組合員数/参加組合の組合員数)は52.7%となっている。

妥結した組合の要求額(賃金体系維持分+賃金引き上げ分)の単純平均は9,239円(3.53%)で、そのうち300人未満の組合(217組合)での平均は9,188円(3.75%)。妥結額の単純平均は5,911円(2.21%)で、300人未満の組合では5,544円(2.21%)となっている。

加重平均(35万2,951人)では、要求額(賃金体系維持分+賃金引き上げ分)は9,235円(3.22%)で、そのうち300人未満の組合(2万5,182人)は9,247円(3.63%)。妥結額は6,471円(2.22%)で、300人未満の組合では5,728円(2.22%)となっている。

賃金体系維持分が明確な組合(198組合)だけで、賃金引き上げ分を集計すると、要求額の単純平均は4,274円(1.56%)で、300人未満(70組合)では4,335円(1.69%)。妥結額は、全体計が1,370円(0.50%)なのに対し、300人未満が1,388円(0.53%)となっており、300人未満での平均が、額・率ともに全体計を上回った。

加重平均(20万8,952人)では、要求額は4,127円(1.40%)で、300人未満(9,186人)では4,492円(1.73%)。妥結額は、全体計が1,348円(0.46%)なのに対し、300人未満が1,468円(0.56%)と、単純平均と同様に、300人未満での平均が、額・率ともに全体計を上回った。

「中小も相当、健闘している」(松浦書記長)

また、前年との比較が可能な436組合について、妥結額と率を前年と比較すると、賃上げ総額(賃金体系維持分+賃金引き上げ分)では、今年が5,908円、2.20%と、額、率ともに前年を下回った(マイナス13円、マイナス0.02ポイント)。ただ、300人未満では、今年が5,554円、2.20%と前年を額、率ともに上回る結果となっている(プラス45円、プラス0.01ポイント)。

加重平均(34万7,767人)では、6,456円、2.21%と、額、率ともに前年を下回り(マイナス226円、マイナス0.09ポイント)、300人未満は、5,726円、2.21%と前年を額、率ともに上回った(プラス110円、プラス0.04ポイント)。

賃金引き上げ分でも、全体計(188組合)が1,370円、0.50%で前年比マイナス129円およびマイナス0.04ポイント、300人未満(64組合)が1,381円、0.53%で前年比プラス310円およびプラス0.1ポイントと、300人未満で額、率ともに前年を上回った。

加重平均(20万2,930人)では、1,339円、0.46%で前年比マイナス451円およびマイナス0.15ポイント、300人未満が1,449円、0.55%で前年比プラス239円およびプラス0.08ポイントと、300人未満は額、率ともに前年を上回っている。

松浦昭彦・書記長は「妥結組合数は昨年、一昨年より多く、中小を含めて進み方は少し早い」と説明。300人未満の方が全体平均よりも高い賃上げ額、率となっていることについて「中小も相当、健闘している」と評価した。

パート組合員の時給引き上げは20.5円

一方、短時間組合員(パートタイム組合員)については、集計した192組合での単純平均では、要求額が時給で32.5円(3.49%)、妥結額が20.5円(2.19%)。組合員数(50万9,476人)での加重平均では、要求額が28.8円(3.17%)、妥結額が20.7円(2.27%)。正社員の賃上げ率を上回るとともに、前年同時期(妥結額・率の単純平均が18.4円・2.00%、加重平均が19.2円・2.12%)よりも高い妥結額・率となっている。

前年との比較が可能な167組合で前年と比べると、単純平均での妥結額・率は20.8円、2.20%と前年を4.3円、0.41ポイント上回る結果となっている。加重平均(46万2,775人)では20.8円、2.27%と前年を3.1円、0.32ポイント上回った。

正社員とパート組合員ともに妥結した128組合で、正社員とパート組合員の妥結率を比べてみると、半数近く(61組合、47.7%)が正社員を上回る率で妥結しており、昨年の同組合の割合(32.0%)を大幅に上回った。

UIゼンセン同盟の発足(2002年)以降でみると、4月上旬時点で、パート組合員の賃上げ率が正社員の賃上げ率を上回ったのは初めてのことだ。

会見には、製造産業、流通、総合サービスの各部門の事務局長も出席し、それぞれの部門の妥結状況を概括した。製造産業部門の林憲治・事務局長は、全体的に賃上げ額は昨年よりも下がっているが、格差是正を意識して取り組んだ結果、「300人未満の組合の方がマイナス幅が小さくなっている」と説明した。

パート組合員を多く抱える流通部門の木暮弘・事務局長は、高い時給引き上げ率となった背景として人手不足を指摘。「スーパーなどでは店舗においてパートタイマーが基幹化しており、さらに人手不足の状況から人材の囲い込みが生じている」などと説明した。

中小が6割を占める総合サービス部門の古川大・事務局長は、「UAゼンセン全体とほぼ同じ状況だ」としたうえで、同部門でも300人未満の賃金引き上げ額が、部門の全体平均を上回ったと説明した。