299人以下の賃上げ獲得額が全体平均を上回る/金属労協集計

(2016年4月6日 調査・解析部)

[労使]

金属労協(JCM、相原康伸議長、約201万人)は4日、本部で記者会見し、3月31日までの2016年闘争の要求・回答状況について報告した。JCM全体の集計で、299人以下の組合の賃上げ獲得額の平均が、全体平均を上回っており、相原議長は、中小労組も「水準改善を行っていくことができる土壌ができた」などと評価した。

「春闘メカニズムに質的な変化が起きている」(相原議長)

金属労協全体の集計をみると、3,270ある構成単組のうち、要求提出したのは2,634組合で、そのうち賃上げ要求したのは2,179組合。要求額平均は3,727円で、これを規模別にみると、「299人以下」が3,752円、「300~999人」が3,683円、「1,000人以上」が3,621円で、規模の最も小さい「299人以下」が最も高い要求額となった。

回答を受けたのは1,350組合で、そのうち1,171組合が賃金構造維持分を確保しており、賃上げも獲得している組合数は865組合(回答を受けた組合の64.1%に当たる)となっている。賃上げ獲得額の平均は1,249円で、規模別にみると「299人以下」が1,281円、「300~999人」が1,128円、「1,000人以上」が1,122円と、「299人以下」の平均獲得額が全体の平均額を上回った。

一時金は、2,065組合が要求・回答方式、202組合が業績連動方式で、要求・回答方式のうち回答を受けたのは953組合で、獲得した平均月数は4.63カ月。過去2年の同時期と比べると、いずれの年より多い月数となっている。

300人未満の組合の平均賃上げ獲得額が全体平均を上回る結果となったことについて、相原康伸・JCM議長(自動車総連会長)は、「JC闘争での春闘メカニズムに質的変化が起きている」とし、「大手が相場をリードし、中小がそれに追随するのではなく、中堅・中小も全体として自ら一定の水準改善を行っていくことができる土壌ができた」などとコメントした。

大手51組合はすべて解決、平均1,424円の賃上げ、一時金は5.26カ月

この日の会見では、集中回答日(3月16日)までに回答を引き出す大手労組が中心の「集計登録組合」(51組合)の最終的な要求・回答状況が報告された。それによると、51組合の賃上げ分の要求額の平均が3,817円だったのに対し、すべての組合が回答を引き出しており、そのうち賃上げを獲得したのは47組合、その獲得額の平均は1,424円だった(2014年の最終の平均獲得額は1,737円、2015年2,801円)。

一時金は51組合のうち、32組合が要求・回答方式で、18組合が業績連動方式。要求・回答方式のすべてで回答を引き出した。平均月数は5.26カ月で、昨年(5.35カ月)の平均月数は下回ったものの、2014年の平均月数(5.16カ月)は上回った。32組合のうち、前年を上回ったのは18組合で、同水準が5組合、下回ったのは9組合という内訳となっている。企業内最低賃金協定については、50組合で協定を締結しているが(闘争前の平均額は15万9,692円)、42組合が要求し、32組合で水準引き上げを獲得した。平均引き上げ額は1,784円となっている。

登録の中堅・中小126組合の賃上げは1,174円

JCMは同時に「中堅・中小登録組合」の集計を公表した。JCM加盟の各産別において、各業種や地域に影響を与えるとみなされる労組で、毎年、各産別が抽出してJCMに登録した164組合が対象。JCMは、これらの組合の3月末までの回答状況を集約、公表することで、4月以降も交渉を継続する中小労組の早期回答と相場波及を支援している。

全登録組合のうち162組合が賃金について要求を出し、うち賃上げを要求したのは157組合、賃上げ要求額の平均は3,678円。要求組合のうち、回答を受けたのは143組合で、すべての組合が賃金構造維持分を確保しており、さらに賃上げを獲得した組合数は126組合となっている。賃上げ獲得額の平均は1,174円だった(2014年度の最終の平均獲得額は1,268円で、2015年度は1,862円)。

一時金は、139組合が要求回答方式をとっており、26組合が業績連動方式を採用する。回答を得て支給額・月数が確定している組合は114組合あり、平均月数は4.85カ月と昨年の最終実績を0.04カ月下回った。

規模が小さい組合の健闘が光る(自動車総連)

会見では相原議長を含む加盟5産別すべてのトップが出席し、それぞれの産別の状況を説明。自動車総連トップの立場から、相原会長は、妥結した単組の81.4%にあたる393組合で賃金改善分を獲得し、賃金改善分の獲得額の平均が1,111円となっていると報告。また、「300人未満」の同平均は1,115円と全体平均を上回っていることを明らかにし、「結集度を高めた交渉ができている。JCMの回答と同じ傾向がみられ、規模が小さい組合の健闘が光る」などと総括した。

電機連合の有野正治委員長は、要求組合の84.6%にあたる325組合で賃金水準の改善を果たしたと報告。水準改善額(個別要求ポイントでの)の全体平均は1,472円で、「限りなく(中闘組合の獲得金額である)1,500円に収斂できた。多くの中小組合が1,500円を目指してがんばった結果だ」と評価した。

中小労組を多く抱えるJAMの宮本礼一会長は、要求組合の約3割(約500組合)で妥結しており、獲得したベアの平均額は1,400円となっていると報告。「過年度物価上昇がなく、実質GDP前期比がマイナス、先行きも不透明感で賃上げの条件が整っていないなか、中小も1,400円のベア獲得とがんばっており、評価できる」と強調した。

基幹労連の工藤智司委員長は、要求提出した298組合のうち、183組合で回答を得ていると報告。賃金改善分を要求したのは166組合で、そのうち124組合で「前進が図られた」と説明した。また、ほぼ半数が、大手労組が獲得した1,500円の賃金改善分と同額かそれ以上を獲得できていると述べた。

全電線の海老ヶ瀬豊委員長は、個別要求方式、平均方式合わせて34組合が賃金引き上げを要求し、24組合(昨年比1組合増)が獲得したと報告。賃上げ分の全体平均は854円、300人未満が883円で、中小が大手の獲得額平均を上回っていると報告した。