所定内賃金は全体平均で月給制が1.9%、時給制が3.6%の増加/NCCU処遇改善調査

(2015年12月18日 調査・解析部)

[労使]

訪問介護ヘルパーや施設介護員など、介護業界で働く労働者を組織する「日本介護クラフトユニオン」(NCUU、陶山浩三会長、組合員約6万6,000人、UAゼンセン傘下)は16日、2015年の「処遇改善調査」結果を公表した。調査は15年3月と8月のそれぞれの賃金を調べることで、年度間の賃金の変化を把握している。15年度は12~14年度にわたって続いた「介護職員処遇改善加算」制度が見直され、新たな加算区分が設けられている。調査では同加算の反映状況についても調べている。

月給制の賃金は全産業平均の水準と7万円の差

調査は毎年実施されており、15年は9月に月給制(常勤職員に相当)・時給制(非常勤職員に相当)の組合員それぞれ2,000人ずつが対象。回答者は、月給制組合員1,650人(回収率82.5%)、時給制組合員966人(同48.3%)。主に従事している職種は、月給制が施設系介護員(入所型)21.1%、訪問系介護員11.3%、ケアマネジャー10.4%、事務職9.1%、サービス提供責任者8.2%、施設系介護員(通所型)7.7%など。時給制では、訪問系介護員32.6%、施設系介護員(入所型)17.9%、施設系介護員(通所型)13.5%、看護師9.3%、事務職8.7%などとなっている。

3月と8月の所定内賃金の変化は、全体平均で月給制の8月が22万2,998円と、3月時点より4,109円(1.9%)の増加。時給制は13万6,991円で、3月時点を4,806円(3.6%)上回った。月給製、時給制とも、介護職員処遇改善加算の対象である訪問系介護員、施設系介護員(入所型、通所型)の増加率は概ね他の職種より高い。

NCUUは、賃金の「社会水準への到達を目指す」方針を掲げており、村上久美子副事務局長は、月給制・全体平均の約22万3千円という水準について「賃金センサス(賃金構造基本統計調査・2014年結果)の全産業平均29万9,600円との差が7万円を超えている」と指摘している。

介護職員改善加算は「手当」や「一時金」で反映されている

介護職員処遇改善加算制度については、月給制で回答者の51.1%、時給制でも51.1%が対象者であると答えている。これら対象者に対して、同加算が「あなた自身の賃金にどのように反映されたか」を聞くと、「手当として入っている」が月給制の44.6%、時給制の49.8%と多数を占めた。次に多かったのは「一時金として入っている」(月給制の25.7%、時給制の22.2%)で、「基本給に入っている」は月給制の5.7%、時給制の12.7%に過ぎなかった。

これに対し、「あなた自身の賃金にどのように反映してほしいか」をたずねると、「支給してくれればどんな方法でもいい」(月給制の33.5%、時給制の42.9%)の割合が高かったが、具体的な要望としては「基本給に入れてほしい」が月給制の32.0%、時給制の16.9%と、とくに月給制で多かった。「手当として支給してほしい」は月給制の25.7%、時給制の22.2%で、「一時金として支給してほしい」は月給制の10.4%、時給制の11.6%に過ぎなかった。

このような結果をふまえ、染川朗事務局長は、「(今年度新たに設けられた)1万2,000円という加算額は、月例給ベースではそれに見合った増加につながっておらず、期待していたのとはほど遠い」と述べ、「本当に年収相当で14万4,000円の増額になったかきちんと見守る必要がある」と強調。また、「加算制度を事業者が理解できていないケースもあり、周知が不十分であることを今回の課題ととらえている」と指摘している。