企業は説明するだけ、組合はそれを聞いただけ/連合総研のCSR調査

(調査・解析部)

[労使]

企業は行動規準や指針を策定する際、組合の意見は聞かずに説明だけ行っている――。連合総合生活開発研究所(連合総研、薦田隆成所長)がこのほど公表した「企業の社会的責任(CSR)に関するアンケート調査」でこんな実態がわかった。

調査によると、労使がCSRと考える項目は、ともに「コンプライアンス」が最も高い回答率を示した。他には企業が「環境保全」「社会貢献」、組合は「労働関連」が高く、両者に違いが見られた。特に、「実質労働時間の短縮」「短時間勤務者の均等待遇」「育児介護休業取得率の外部開示」「年休取得率の外部開示」などの労働関連項目は、労使の回答率に大きな隔たりがあった。

CSR関連の「行動基準・指針」を持っている企業は全体の71.7%に達している。しかし、その策定を「労使で一緒につくった」とする企業はわずか3.3%。「組合の意見を聞きながらつくった」(10.3%)を合わせても13.6%に過ぎない。最も多いのは「意見は聞かないが説明は行った」で3分の2を占めている。片や、組合は92%が「CSRについて協議、話し合いを行った」と回答しているが、その実態は、「企業は説明しただけ、組合はそれを聞いただけ」が大半のようだ。

その一方で、CSR論の普及は、組合の活動に好影響をもたらしている。CSR論議の広がりで要求環境が改善しているとした組合は41.8%。特に、何らかのCSR活動に取り組む組合では、52.4%で好影響があったと回答しており、その内容は、「休日・労働時間」「次世代・育児休業」「労働の質」「コンプライアンス」などが多かった。

連合総研は「組合の取り組みは、まだ不十分と言わざるを得ないが、熱心に取り組めば労使協議がやりやすくなるなどの傾向が明らかになった。今後、CSRの取り組みが組合の活性化と相乗効果を生み出す可能性もある」などと話している。

調査は、連合が2003年に実施した「雇用実態調査」で企業のCSR対策に何らかの形でかかわったとする労組とその企業などを対象に2005年11~12月に調べたもの。558労組(有効回収率44.9%)、378企業(同30.4%)からの回答をまとめた。