企業経営におけるEquityの意味とはなにか

要約

柳 淳也(京都大学大学院特定講師)

本稿は,1980年代まで主に米国内の黒人,ならびに女性従業員の雇用とキャリアの促進を目的としていたアファーマティブ・アクション施策(Affirmative Action)に代わるものとして米国で生まれた1990年代以降のダイバーシティ・マネジメントの流れをレビューし,ダイバーシティ(diversity),エクイティ(equity),インクルージョン(inclusion)概念がそれぞれ学術的にどのように位置づけられているのかについての概観を示した。またダイバーシティ・マネジメントの具体的実践についての学術的議論,3つの概念を統合した理論モデルを紹介した。さらに,近年,経営領域でも広まりをみせている「エクイティ(equity)」概念が,いつどのように発生したのかを企業のダイバーシティ・レポートやWEBのアーカイブ・ページを参照しつつ検討した。その結果,2018年頃から一部の企業でエクイティという語がみられること,ならびに2020年のBLM運動(Black Lives Matter)の広がりと呼応するように,企業でもエクイティ概念が広まっていったことが示唆された。こうした(主として米国の)議論を踏まえると,企業経営におけるエクイティ(公平性)とは,企業内外において,企業がいかにして構造的な差別に対して目を向け,その改善に資することが可能なのかを考え実行することであるといえる。


2024年5月号(No.766) 特集●ジェンダー平等における「公正」と「経済合理性」

2024年4月25日 掲載