労働生産性向上のためのトラック運送業における改善

要約

黒川 久幸(東京海洋大学教授)

我が国では生産年齢人口の減少が進み,これに対応して労働生産性の向上が喫緊の課題となっている。特に,物流を担うトラック運送業においては,労働生産性が相対的に低い状況が続いており,これを改善するための対策が急務となっている。本論では,まず国内貨物輸送におけるトラック運送業の重要性を述べた後,労働力不足と労働生産性の現状について確認する。そして,トラック運送業界において深刻な問題となっている労働力不足と労働生産性について,「トラック運送業界における従業者数と労働生産性の関係」と「輸送需要を満たすために必要なトラックドライバー数と労働生産性の関係」について考察し,労働力不足の解決策について検討する。そして,検討を踏まえ,具体的な物流現場における改善事例として,全日本物流改善事例大会の優秀事例などからいくつかの改善事例を紹介する。これらの一連の事例紹介を通じて,生産年齢人口の減少という課題に直面するなかで,トラック運送業界が労働力不足や労働生産性向上にどのように対処していくべきかについてのヒントになればと考える。さらに,労働生産性向上のためには組織の効率性や労働環境の整備が欠かせない。改善の要諦をまとめると共に,経営層に求められる人事管理上の課題についても考察する。


2024年2・3月号(No.764) 特集●モノを運ぶ仕事の労働問題

2024年2月26日 掲載