論文要旨 新卒採用における職場マッチング・職務適性
─中小企業に着目して

土居 雅弘(同志社大学大学院社会学研究科産業関係学専攻後期博士課程)

新規大卒者の採用現場では、コミュニケーション能力や問題解決力に代表される「基礎的能力」が重視されている。基礎的能力は、どのような職務にも必要とされる汎用的な能力であるが、評価の客観的な指標がなく、就職活動中の学生が困惑しているという現実がある。本稿では、11社の中小製造業を対象とした聞き取り調査を通じて、面接官が文系学生の基礎的能力、そして基礎的能力以外の職場や個別職務への適性をどのように見極めているのかについて明らかにした。

本稿では、調査対象企業を、研修後に配属を決定する大企業型、初任配属は営業であるが、その後異動の可能性のある営業中心型、文系採用は営業のみである営業型、事実上の職種別採用を実施している職種型の4グループに分類した。大企業型、営業中心型はポテンシャルとしての基礎的能力、営業型は基礎的能力の中でも営業への適性に近い能力を重視しているが、職種型は配属予定先の職務で必要とされる適性や専門知識を採用の判断材料として考慮していた。又、調査対象企業の内数社は、配属先の雰囲気や人間関係に溶け込めるか、ということをも考慮していた。

以上の分析から、大企業と比較し、基礎的能力に優れた学生を採用することが困難であると予想される中小企業は、それ以外の要素も重視していることが明らかとなった。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第2分科会(労働市場、賃金)

2015年1月26日 掲載