論文要旨 労使紛争の現状と政策課題─合同労組の労使紛争解決を中心に

呉 学殊(JILPT主任研究員)

集団的労働紛争の激減とは対照的に個別労働紛争は多発している。その紛争解決システムは近年、司法、行政で整えられているが、労働組合の役割も無視できない。企業別労働組合は個別労働紛争の半減に寄与する。企業の外に結成されている、誰でも入れる合同労組は、個別労働紛争を当該企業との団体交渉だけで解決する自主解決率が67.9%にのぼり、また、解決件数も多い。合同労組の高い紛争解決力は、幹部のプロ性、広いネットワークと情報交換、固い信念と熱い心、そして共闘によるものである。

労使紛争の順機能は、その解決によって、紛争当事者の労働者が満足し蘇生力を得ていること、紛争の再発防止につながることであり、会社の倒産、それに伴う従業員の解雇という逆機能もあるが、それにつながる要因としては、企業の一方的な労働条件の引き下げ、労使コミュニケーションの欠如、法令違反を挙げることができる。紛争を前向きにとらえて、紛争の原因となっている労働法の違反や無知、ワンマン経営を是正してより良好な職場環境・人間関係・労使コミュニケーションを図る機会とみなすことも重要である。紛争の再発防止のためには、労働法違反に対する労働行政の是正・指導や罰則の強化が求められる一方、合同労組の機能強化のために公的支援のあり方を具体的に検討することも求められる。

2013年特別号(No.631) メインテーマセッション●労使紛争の現状と政策課題

2013年1月25日 掲載