論文要旨 教育、職業訓練、労働市場の密接なリンク形成
─教育・訓練の本格連携の推進、デュアル訓練の大幅拡大、日本版資格枠組みの構築

岩田 克彦(国立社会保障・人口問題研究所特任研究官)

欧州等では、職業教育と職業訓練は、VET(職業教育訓練:Vocational Education and Training)として一体的に捉えることが多い。これまでの日本の職業能力開発は、長期雇用システムを反映し、企業による訓練に大きく依存していた。学校の職業教育に対する企業の期待は低く、公共訓練も、企業・個人による訓練が不十分になりがちな若年者、離職者等を対象とした補完的な訓練を実施していればよかった。しかし、急速な高齢化や非正規労働者の急増等、企業の人材育成システムにはもはや大きな期待が持てない社会環境となり、教育、職業訓練、労働市場の密接なリンク形成が日本でも急務となっている。

本稿では、(1)デュアル教育・訓練の本格実施(実習企業の共同開拓、カリキュラム改訂による大学レベルも含めた職業教育・訓練全体での企業実習訓練の大幅拡大等、厚生労働、文部科学、経済産業各行政の省壁を越えた本格連携)、(2)職業生涯を通じて職業能力開発意欲を高め、低生産部門から高生産部門への労働移動を円滑化するため、欧州等の取組みを参考に諸制度見直しの起爆剤としてのJQF(日本版国単位の資格枠組み、すなわち、様々な職業能力評価の「物差し」)の策定、(3)従前学習(ノンフォーマル・インフォーマル学習を含む)の認定、(4)教育・訓練界・労使、そして国・地方の本格連携(「国または民間」「国または地方」「教育行政または労働行政」の二者択一の発想を超えた、関係者の本格連携)、を提案した。

2012年特別号(No.619) 自由論題セッション●Bグループ

2012年1月25日 掲載