1996年 学界展望
労働法理論の現在─1993~95年の業績を通じて(全文印刷用)

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目次

出席者紹介

  1. はじめに , 討議対象論文
  2. 総論
  3. 労働契約
  4. 労働保護法
  5. 非典型雇用
  6. 紛争処理
  7. 不当労働行為
  8. 国際労働関係
  9. おわりに
  10. 労働法主要文献目録(1993~95年)

出席者紹介

中嶋 士元也(なかじま・しげや)東海大学教授

1944年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東海大学法学部教授。主な著書に『労働関係法の解釈基準』(信山社)など。労働法・社会保障法専攻。

道幸 哲也(どうこう・てつなり)北海道大学教授

1947年生まれ。北海道大学大学院法学研究科修士課程修了。北海道大学法学部教授。主な著書に『職場における自立とプライヴァシー』(日本評論社)など。労働法専攻。

山川 隆一(やまかわ・りゅういち)筑波大学助教授

1958年生まれ。東京大学法学部卒業。筑波大学社会科学系助教授。主な著書に『不当労働行為争訟法の研究』(信山社)など。労働法専攻。


はじめに

中嶋

それでは、学界展望の座談会を始めます。

今回の対象期間は、1993年から95年までの3年間でして、座談会の進め方の方針は従来どおりとしました。

すなわち、この座談会は、この3年間に発表された論文を中心に検討します。そして、外国法研究を中心とした論文と、単行本は除いてあります。論文の選択に関しては、作成された文献リストに従って、初めに注目すべきものを約30本選択し、それを参加者3人が持ち帰って、また読み直し、その中から14本を選択しました。そして、これらについては、それぞれ労働法学の伝統的な手法に従ってテーマを7項目のグループに分類しました。(討議対象論文参照)

今回の特徴的な点として、最初に「総論」という分類があり、これはこれまであまりなされてこなかった立法政策に関する提言を行った菅野=諏訪論文と、それから労働法と社会保障法とのいわば橋渡しを試みた岩村論文の二つがございます。将来の立法政策論議及び社会保障法との連関関係を考える上で、貴重な道筋を示してくれた、あるいは土俵の立て方を提言してくれたという意味で、これらを取り上げたものです。

それでは、最初に山川さんのほうから、この順序に従ってお願いいたします。


討議対象論文

総論

  1. 菅野和夫・諏訪康雄「労働市場の変化と労働法の課題」『日本労働研究雑誌』418号
  2. 岩村正彦「労働者の引退過程と法政策」『ジュリスト』1063号、1064号

労働契約

  1. 土田道夫「労働契約における労務指揮権の意義と構造」『法学協会雑誌』105巻6号、10号、12号、107巻7号、109巻1号、12号、111巻9号、10号
  2. 島田陽一「労働者の私的領域確保の法理」『法律時報』66巻9号

労働保護法

  1. 西谷敏「労働基準法の二面性と解釈の方法」『労働保護法の研究』有斐閣
  2. 籾井常喜「労働保護法と『労働者代表』制」『労働保護法の研究』有斐閣
  3. 小畑史子「労働安全衛生法規の法的性質」『法学協会雑誌』112巻2号、3号、5号

非典型雇用

  1. 水町勇一郎「『パート』労働者の賃金差別の法律学的検討」『法学』58巻5号

紛争処理

  1. 浜村彰「労働契約と紛争処理制度」『日本労働法学会誌』82号
  2. 毛塚勝利「労働紛争処理法」『ジュリスト』1066号

不当労働行為

  1. 道幸哲也「労働委員会命令の司法審査」『法律時報』65巻10号、11号、12号、66巻1号、2号、3号

国際労働関係

  1. 山川隆一「国際的労働関係と労働基準法」『季刊労働法』173号
  2. 荒木尚志「国内における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」『日本労働法学会誌』85号
  3. 野川忍「国外における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」『日本労働法学会誌』85号

総論

論文紹介「労働市場の変化と労働法の課題」

山川

それでは、まず、菅野和夫=諏訪康雄「労働市場の変化と労働法の課題」を取り上げます。

この論文は、労働法を広い意味での労働市場システムを規制するものととらえて社会経済の構造的な変化の中での将来に向けた労働法制の役割を検討するものです。

内容をご紹介していきますと、はじめに、高齢化に伴う構造的な労働力不足といった中長期的な状況や、日本の経済的地位の向上に伴う世界経済における役割の変化などを背景に、日本型雇用システムの変化の予測が示されます。具体的には、[1]長期雇用の縮小と流動化、[2]年功的処遇から能力的処遇への変化、[3]働き方の多様化と柔軟化、[4]縦型組織からネットワーク型組織への変化が挙げられています。

続きまして、労働市場と法の関係が原理的に検討されます。まず市場と法の一般論については、法律とは、市場メカニズムの基盤を整備したり、あるいは市場ルールを整備したりすることによって市場の機能の円滑化を図るものだと位置づけます。その中でも労働法の役割は、伝統的に市場取引における弱者としての労働者を保護するために国家が介入するというものであったけれども、そのコンセプトは変わってきていると指摘されます。

すなわち、労働法あるいは社会保障法も含めて、その目的が一定限度達成され、個人としての労働者が台頭しつつあるという状況変化を受けまして、将来へのコンセプトの視点を打ち出します。その視点は、労働市場における取引の円滑化ないし交渉へのサポートというものです。従来においても、労働法は市場取引における交渉力のサポートという意味を持ってきましたので、従来と共通点はありますけれども、その中身が、たとえば適職選択の自由を広げるというように変わってきているということです。

今後の労働法制の課題としては、外部労働市場、内部労働市場ともにさまざまなものが挙げられておりますけれども、特に重要な点は、教育訓練への支援、労働市場の整備、個別交渉へのサポートです。最後に、今後の労働法制のあり方として、このような基本的観点を踏まえて、具体的な政策提言がなされております。

外部労働市場に関しましては、転職へのサポートシステムを充実させるということです。たとえば、職業紹介機関を整備する、あるいは労働市場に関する民間活力の利用を図る、さらには能力開発について、個人への支援というものを考えていくことなどが挙げられます。内部労働市場につきましては、たとえば労働契約法制の整備や、個別化や多様化に対応した内部労働市場のルールの調整を考えていくといったようなことです。他方では、裁量労働制や、女子保護の規定についての規制緩和の提言もなされております。

さらに、関連する課題といたしまして、個別紛争処理法制の整備が特に取り上げられております。これはたとえば、窓口機能とあっせん機能の双方を果たし、利益紛争も取り扱う第三者機関を設置するといったことです。

そのほか、企業内における労働者の援助システム、あるいは組合の自助的な機能への期待にも言及して、この論文は終わっております。

交渉力のサポートという観点

以上で内容紹介を終わってコメントに移りますが、最近、日本型雇用の変化に関して多くの論文が出てきております中で、最も根本にさかのぼった議論をするとともに、議論の対象についても最も包括的な論文であると思います。内容的に見ると、最も明確な特色は、労働法を交渉力の弱い労働者へのサポートシステムととらえて、そこから現代の状況に適合した法政策のあり方を検討している点です。従来も、労働者が使用者との関係で交渉力が弱いことは言及されてきましたけれども、その位置づけは、たとえば従属労働といった概念の説明の一部に用いられているだけでした。しかし、この論文は交渉力の弱さを正面に据えて、交渉という機能的な概念によって議論を組み立てた点に特色があると思います。

その結果、権利義務論というよりは、政策論が縦横に展開されていますし、また、伝統的な権利義務の議論では、内部労働市場に重点が置かれる傾向がどうしても出てきますが、こういった視点によって、外部労働市場も重視した議論が行われています。さらに交渉というプロセスに焦点を置くことによって、その延長としての紛争処理の問題がクローズアップされています。しかも、紛争処理でも、権利義務を取り扱う裁判のみならず、相談とか助言といった交渉へのサポートの作用も視野に入っています。

その他のコメントは後で述べますが、いずれにいたしましても、この論文は、今後の労働政策あるいは雇用政策の方向性を示すものとして非常に重要なものであると考えます。

討論

中嶋

どうもありがとうございました。

それでは、今の論文紹介について、道幸さん、いかがでしょうか。

的確な問題状況の把握

道幸

確かに問題状況把握は的確だと思います。クラシックな労働法の立場から言えば、議論する際の基本的な視点、たとえば個人としては交渉力が弱いという場合に、それを修正する権利義務のような規範的な概念を前提に展開してくれたほうが、わかりやすい。そういう発想自体を超えようという論文でしょうが、市場論的アプローチとクラシックな権利義務的な流れとがどう関連するかというのが、今後の課題になるのではないかと考えました。

中嶋

今聞いていると、山川さんと道幸さんで少しこの論文に関する基本的な認識に差があるのかなと思いました。山川さんは、個人としてはなお交渉力が弱い労働者のいわば環境整備という点から書かれている、道幸さんは、少し労働者像を変えて、あまり交渉力の弱くない労働者たちの環境整備という、その点が中心的にとらえられた論文ではないかという指摘のようにお聞きしましたけれども、どうなんでしょうね。この論文は、労働者像や労働法はいわば二分化していくという認識なのか、依然として、一つの労働法思想というもので、各種の労働者は統一的に把握されるという、そういう認識なんでしょうか、山川さん、どうでしょうか。

山川

労働者の交渉力の弱さは相対的なものですが、中間的な労働者層が広がっていると指摘されていますので、伝統的な労働者像が全面的に変容してきているという認識ではないように思います。

個人としての労働者の位置づけ

中嶋

「集団としての労働者」から「個人としての労働者」への変容が説かれていますね。これの理解に関わることでしょうが、労働者は絶対的な弱者というタイプは確かに減少している、相対的な弱者、あるいはもはや弱者と見るべきではないといったタイプも目立ち始めたので、労働法制が想定する労働者像は画一的でありえなくなったということは我々も異論はない。そのとおりだと思いますが、集団としての労働者から任意的に使用者に立ち向かうことができる個人としての労働者というもの、これは社会経済学的にはそういう人々が現存するという認識は、労働法に先行しているんでしょうか。

山川

その点の調査は難しいと思いますが、この論文では、そうした自己の責任でリスクを引き受けながら取引を行うという労働者が増えつつあることは否定できないと述べていますね。そう考える場合には、交渉は現実にどういう形で行われるかを考える必要があると思います。つまり、「給料を上げてくれ、そうでなければ私は会社をやめる」という交渉が現実にどれぐらい行われるのか。また、そういう形以外の交渉はどのようなものなのか。この点は力関係のみならず、人間関係や文化の問題とも関わりがありそうです。

中嶋

公的保護と自己決定との微妙なバランスに配慮しなければならないというところが一番難しいところだと思いますが、保護の要らない労働者というのもいるという認識は、社会学的ないし経済学的にはありえますかね。

山川

そういう場合には、労働者と言えるかどうかの問題も生じないでしょうか。

外部労働市場と起業家市場

山川

逆に考えていくと、この論文に対する疑問というよりは、さらなる展開の余地があるということなんですが、一般には外部労働市場が内部労働市場の外に広がると考えられますけれども、労働者にとっては、たとえば開業するという選択もあるわけですね。そうすると、外部労働市場の外や隣に、起業家市場ないし事業家市場があって、それと労働市場との限界が不明確になってきているような気がします。交渉力の弱さについては、たとえば、退職して個人で事業を始めたばかりの人は、労働者とそう変わらない。ですから、交渉力の弱さから議論を展開すると、起業家に対する支援策も考えられます。たとえば労災保険の特別加入のようなシステムをつくるという方法もありますが、そのほかに、起業そのものに対する支援システムもありうるわけです。それは労働法の領域を超えてしまいますので、この論文の対象にはならなかったのかもしれませんが、その辺も視野に入りうるような気がします。

道幸

労働市場ということから言えば、個別企業の属性を超えた転用可能性というか、外部労働市場で自分をより高く売れるという形で、キャリアとか資格とか、そういう中身が変わっている。それに見合ったような自立が必要で、それを外部からサポートすべきというのは、確かに指摘のとおりだと思います。企業内部で労働者が自立していくためには、内部であるルールをつくっていくという場合の個人の強さと、それから、外部労働市場に出るという形の個人の強さが問題になります。やはり企業内における個人の交渉力の弱さの問題というのは残っていくのではないか。その点では、相談体制等では若干議論されていますけれども、労働者集団的な役割ということに、こういう問題関心からどう展開できるかなというのは、非常に興味を持っております。これは意図的に論じなかったのかもしれません。

山川

論文の焦点は個人としての労働者に置かれていますけれども、内部労働市場における制度的な問題については組合が重要であるということは指摘されています。たとえば、人事システム全般の構築などは、個人としての労働者がいかんともしがたい領域ですね、どのようにサポートシステムをつくっても。その場合、労使の話し合いで制度的な枠組みをつくっていくことが重要になりますから、その点では、団体的な労使関係の果たすべき役割が大きくなります。

組合の機能

道幸

その場合に、今までの組合とは違うようなイメージの組合を前提としているのですか。

山川

そこが難しいところですね。つまり、組合の機能がどうなっていくのか。論文の最後では、交渉支援に関連して組合のサービス機能について言及されていますけれども、具体的にどうするのかは、今後、検討すべきだろうとされています。

中嶋

従来は法律学者というのは、社会経済システムに対応してつくられた法制度を解釈するのが中心で、あまりこういう法律をつくるべきだというのを非常に広い形で提言したことはなかったんじゃないですかね。1990年代になって、諏訪さんや菅野さんが各所で法学者として立法政策論議に参加し始めた。まずその功績は非常に大きいということは間違いないでしょうね。

ただ、私からすると、あまりに盛りだくさんで、道幸さんの言われるのもそういう意味も含んでいると思いますが、少しターゲットを絞らないと論じにくい。ただ、これは今後労働法学研究者が菅野=諏訪論文を一里塚として自分が勉強した分野、得意な分野を詳細化していくに際しての示唆を与えてくれているという功績は非常にあったと思います。ここ10年来最もすぐれた論文の一つだと評した方もあると聞いており、それは私もそのとおりだと思いますが、一つは珍しいということもその評価の中にはあったのではないか。これからはこういうのが珍しくなってはいけないわけですね。多分法学者もこういうのに参加しなければいけないと思います。

それから、これはやはりホワイトカラーの現在の労働状況というものが、基本的には頭の中に想定されているということは言えますでしょうか。

山川

中間層の増大や工場労働中心の労働法からの転換について指摘されていますので、やはりホワイトカラーが念頭に置かれていると思います。ただ、ホワイトカラー一般の問題を超えて、現在の日本特有の状況をどの程度重視するかについては、論文の前半と後半で、少しスタンスの差があると思います。たとえば、前半で指摘される流動化の傾向は、これまでの雇用慣行を考えれば、特殊日本的なファクターがかなりあるわけですね。

それから、規制緩和に伴って経済構造が変わる結果生ずる労働力の流動化と、その際のソフトランディングのあり方などといった特殊日本的なファクターについては、労働法のコンセプトの変容とどう関連するかはあまり議論されていないような気がします。具体的な法政策の提言の中には、もちろん出てきておりますけれども。

規制緩和論との関連

中嶋

もう一つ、昭和56年のいわゆる第2次臨調以来の規制緩和論ですね。本論文はそれをも意識しているか、それともそれはたまたま時期的に一致しただけであって、労働法の内部事情としても、当然こういう方向が考えられなければならなかったというふうに読めるか、道幸さん、どうでしょう。

道幸

労働法における規制緩和というのと、いわば経済法における規制緩和という意味は全く違いますから。特に職業紹介とか派遣とか、そういう部分についての規制緩和はある程度イメージは持ちやすいのですが、それ以外の領域における規制緩和というのは、労働法自体がなくなるということかもしれません。結局、規制緩和の具体的中身をどう考えるかということだと思います。

むしろ最近は、内部労働市場の労働契約につき、規制緩和というより、法的な規制を強めていく、基準法とは別な契約論的な規制による規制強化という側面が注目されます。内部労働市場における規制強化と外部労働市場における規制緩和という大きな流れがあり、規制緩和に伴うサポートシステムが必要であるというのが全体像ではないかという感じがしております。

現在の労働法理論への影響は

中嶋

最後に、こういう論文の方向で個人としての労働者、それから自由な意思と能力を持った労働者というようなものにも焦点を当てて考えていくということになりますと、現在の労働法理論ですね、法規、制度ではなくて、理論としてこういう方向に変わりうるというようなもの、たとえば変更解約告知理論、あるいは解雇権濫用理論、こういったものにそういう法思想が影響を与えうるということはありますでしょうか。

山川

労働者の交渉力が向上してきたという点からすれば、理論的にはそういう余地もあると思いますが、しかし、相対的には弱者であることには変わりがないわけですから、そう一直線の論理でいくものではないような気がします。

道幸

就業規則の不利益変更もそうだけれど、パターナリスティックな議論、つまり首を切らないから一定程度使用者に広範な権限を認めろという議論に対しては、自立した判断主体たる個別労働者の意思等を媒介にして、リスクを労働者に課すというのは変更解約告知的な発想です。だから、そういうのには結びつくと思いますけれども、変更解約告知が問題になった状況における労働者というのは、決して強い労働者ではないことをどう考えるかは残されています。

山川

変更解約告知が出てくるのは、交渉力の強弱という点のほかに、個別紛争だからという点もあります。つまり、集団的処理が可能であれば、就業規則の変更法理がありますが、それでできない問題について変更解約告知が出てきうる。これは労働契約の個別化に対応したものであるという位置づけもできるように思います。

「労働市場」から考える

道幸

素朴な疑問は、労働市場というものに着目する議論が、最近すごく多いんですけれども、労働市場から物を考えたほうが、労働法全体が見やすいというのが、大体共通の傾向なんですか。

山川

共通の傾向とは言えないでしょうけれども、政策論としては考えやすいですし、あとは経済学者なり社会学者なりとの議論の共通の土俵ができる。やっぱり権利義務だけの議論をしていると、なかなか共通の土俵はできないのではないでしょうか。

道幸

それは大きいですね。いわば政策論にも権利論にも、かつ社会学とか労働経済学にも全部適応できるというメリットはあります。

中嶋

社会科学的視点ね。その可能性を示してくれたというような感じがします。

では、これはこれで終わりまして、次に進みます。

論文紹介「労働者の引退過程と法政策」

道幸

岩村正彦「労働者の引退過程と法政策」は、労働者の引退過程という労働法と社会保障法の接点を具体的な法政策の観点から詳細に検討しているということで、総論で取り上げました。

60歳代前半層の民間労働者の職業生活から年金生活――これは引退生活ですが――への移行過程という観点から、1994年年金法及び雇用保険法等の改正を検討したものです。

まず最初に年金支給開始年齢の引き上げの観点から、今回の改正点の目的をとらえなおしています。

今回の改正点につき、支給開始年齢の引き上げは、高齢者雇用の促進という政策目標達成のための手段であったと言われているが、高齢者雇用の動向を左右する要因としては、必ずしも決定的ではなかった。つまり、高齢者雇用の促進という政策目標があるから、支給開始年齢を引き上げるという文脈は成立しない。むしろ今回の改正の基本的な目的は、まさに高齢化の中で年金財政の安定化が目的だったということを認識すべきだという見解を明らかにしております。

具体的には、引退過程の現状と課題として、まず60歳から64歳までの雇用の実態、それから2番目に引退過程の政策課題として、四つの観点を提起しています。一つは、長期的な視点に立っているかどうか。2番目は、労働者のニーズに合った質、量の雇用を堀り起こすことをしているかどうか。3番目は、不足する生計費相当分を補う公的措置があるかどうか。最後に、経過的なものなのか確定的な政策なのか。

それを踏まえて、94年法の検討を行っております。

具体的には、まず年金についての改正点として、支給開始年齢の段階的引き上げ、それから部分年金の創設、賃金と年金の調整、雇用保険給付との関係が挙げられております。

次に高齢者雇用との関係については、高齢者雇用継続給付の問題と高齢者雇用政策の展開について紹介しております。

全体としては、今回の改正点につき、賃金補填機能、就労促進機能、それから、労働力需要の刺激を強めるという意義は認めております。

同時に、非常に複雑な制度と見通しの悪さで、制度の効果の計測を難しくするおそれがあるということを、さらに、全体的視野の欠如が制度全体の効果を減殺しているという可能性もあるという指摘がなされています。特に、年金財政の縮減部分を雇用保険に転嫁したという点については、財政的な改善を図るという目的が、年金だけでは一定程度実現したけれど、雇用保険とトータルに考えますと、財政効果は弱められているという批判です。

次にコメントに入りますが、年金法の改正をめぐる問題を目的と政策の具体化という観点から明快に論じています。労働法の研究者としてのこの論文で学んだというのが正直な感想です。

ただ、外部からの印象めいたことを言うと、社会保障の政策論と法理との関係がどうなっているか、こういう問題を検討する場合に、法学者独自の議論というのはありうるのだろうかが気になりました。

討論

中嶋

山川さんはいかがですか。

山川

岩村さんらしく論理の展開が早い論文で論理についていくのに苦労しました。しかも財政政策論の観点にも踏み込んでいるので非常に意欲的だと思いました。

年金政策と雇用・労働条件

山川

一つのコメントとしては、年金政策には、一方では実質的賃金補助によって労働力需要を刺激するというメリットがあり、他方で、年金によって賃金水準が抑制されるというデメリットもあるという指摘があるんですが、それは必然的に生ずるトレードオフではないかという感じがします。法政策によってそれを解決することができるかどうかですね。これは年金と雇用を考えるときに必然的について回る問題ではないか。

中嶋

年金政策と雇用政策の相関関係を法学者が論じたというのは、あまり見たことないんですが……。

山川

比較法では、たとえば森戸さんの論文(「雇用法制と年金法制」『法学協会雑誌』109巻9号・12号、110巻1号)がありますね。

中嶋

今回は取り上げませんでしたが、比較法的にはそういう手法がなされるようになってきました。現実の年金制度と雇用政策の関係を相関的に論じたという功績は大きいんでしょうね。

山川

そうですね。

中嶋

ただ、たとえば厚生省の政策に対してというか、あるいは政府の方向に対して、岩村さんが独自の観点から異を唱えているというような部分はあるんですか。

厚生年金法改正の論点

道幸

ええ、問題は残ると言っています。政策論から言えば一貫した議論を展開できるけれども、現実の政治過程でこれは修正せざるをえなかったという部分を明らかにしたという点では非常にわかりやすい。

同時に、なぜ政治過程でそういう修正がなされたかという問題を分析する研究領域があるとも思いました。

中嶋

確かに、岩村さんは、今回の1994年厚生年金法改正立法過程の最重要論点は、満額年金の65歳支給開始実施を前提として、60歳代前半層の所得保障(「別個の給付」)をどうするかであったと指摘し、前改正時(1989年)にも同じ議論があり、結局「繰上減額支給制度」が採択されたが、今回は「部分年金制度」(報酬比例部分の年金支給)が選ばれた。しかし、今回の部分年金制度は「高齢化に伴う年金財政の圧迫を防止するという支給開始年齢の引上げ」という政策目的とは相入れないので、従前の繰上減額年金制度に改善を加えて実施したほうが適切であったと述べています。

山川

繰上減額年金制度のほうが適切であったという立法治的評価だと思います。

中嶋

しかし、こういうのは、我々はちょっと判断できませんね。

山川

財政との関係があるので、唯一の正解というものはちょっと見いだしにくい領域ですね。

中嶋

実は、前回の学界展望のときに、社会保障も大いに取り上げましょうという提案をしたのは私だったんです。しかし、今回、労働法研究者3人の座談会になったので、それは申し訳ないけれどできませんでした。せめて労働関係と連関する社会保障制度という意味で、こういう方向を、つまりこういう学問をする研究者が出てきましたと、そういう総論的な意味で取り上げました。これ以上は進まないというか、進めないという、そういうことでこれはよろしいですか。

次回からはメンバー構成も考えていただくということにしましょう。


労働契約

論文紹介「労働契約における労務指揮権の意義と構造」

中嶋

次は労働契約に関するものです。山川さんから……。

山川

それでは、土田道夫「労働契約における労務指揮権の意義と構造」を取り上げます。この論文は、いわゆる労務指揮権に関し、ドイツ法の議論を踏まえ、その意義、法的性質、限界などを包括的に検討した大作です。ここ数年注目されていたのですけれども、最近完結いたしました。

内容を紹介しますと、第2章まではドイツ法の紹介がありまして、その後、日本法を非常に詳細に検討しております。骨子のみ申し上げますが、まず、労務指揮権の概念については、労働契約の本来の内容として予定された範囲内で、労働義務の内容を決定、変更、規律する権利であると位置づけます。その結果、出向命令権や時間外労働命令権、あるいは経営秩序の規律維特権は、対象から除いております。次に、労務指揮権の労働組織機能を肯定いたしますが、労務指揮権はあくまで債権法上の権利であると位置づけます。

さらに、労務指揮権の限界に関する規律の基本原理として、契約原理と労働条件対等決定の原則を挙げます。しかし、その上で労働義務の決定や変更を一定限度労務指揮権の対象とする枠組みを支持します。この枠組みは、労働契約上、一定限度で労働義務の内容を決定する指揮命令権が当然に発生するという枠組みだと思います。しかし、使用者に労働義務の決定変更権限があるとしても、それは合理的限定解釈を行って限界づけるべきであると主張します。その際の基準は、労働者が使用者と対等の立場で自由な意思に基づいて交渉したならば、いかなる内容の権利義務を承認したかという観点から、労使間の利益の比較考量をするというものです。

労務指揮権の法的性質や根拠などにつきましては、労務指揮権とは、先ほども紹介しましたように、労働義務の内容を決定あるいは変更する形成権であると位置づけ、その根拠は労働契約に求められております。最後に、この論文は、労務指揮権等の具体的規制として、日常的な労務指揮、配転、出向、時間外労働、経営秩序等について、合理的な限定解釈の例を提示しております。

コメントに移りますと、労働契約上、最も基本的かつ重要でありながら、これまで十分な検討がなされてこなかった労務指揮権について包括的に検討した論文と位置づけられます。しかも、債権法理論を駆使して、論理的に突き詰めた検討を行っている点に大きな価値があると思います。

内容的な特色ですが、第1は、労務指揮権による労働義務の決定や変更を認めつつ、合理的限定解釈を提唱する点です。第2は、いわば債権法的アプローチから、形成権説を徹底いたしまして、日常的労務指揮を含めた労務指揮行為を法律行為と位置づけ、その効力を裁判上争うことを可能としている点です。

前者の合理的限定解釈は、後でも触れますが、これまでも議論されてきた内容だと思います。ただ、これまでは権利濫用の枠組みが使われることが多かったのに対し、ここでは権利発生のレベルで議論がなされています。2番目に、日常的労務指揮を含めて労務指揮行為を法律行為とした点ですが、これは極めて斬新な主張でありまして、たとえば労働者に精神的苦痛を与えるような労務指揮に対して、形成権の行使として無効という評価ができるという帰結をもたらします。非常によく詰めてある主張で、基本的に賛成したいと思っております。

労務指揮権の概念と範囲

幾つか疑問点もあります。土田さん本人も、最後に幾つか反省点を述べておりますが、私の読む限り、本人が言うほど反省する必要はないのではないかという気もいたします。しかし、疑問に思いましたのは、まず労務指揮権の概念について、労働契約の本来の内容として予定された範囲内で労働義務を決定、変更する権利と解する結果、出向や時間外労働が除外されております。しかし、後の方では、これも限界を検討しているわけです。文章の中には労務指揮権「等」と書いてありますので、論理的には間違いないのかもしれませんけれども、構成の問題として、いったん除外したものを検討対象に含めているという点を指摘できます。

もう一つは、配転は一般に労務指揮権の範囲に含まれると考えるようなんですけれども、その限界を考えるにあたって、労働契約上予定されていない配転というものも想定されています。そうすると職種を変更するような配転は、労務指揮権の範囲から、除外することになるのか。つまり、配転の中にも、労務指揮権の行使であるものと、そうでないものがあるのか。あるいは労務指揮権の行使ではあるけれども、それは行使の限界を超えていると考えるのか。これは理屈だけの問題かもしれませんが、ちょっと位置づけに疑問があります。

さらに、出向などについて「契約自体の変更」という表現が使われていますが、そもそも契約自体の変更とは何か。民法上の更改契約なのかどうか。本来予定された範囲を超える契約内容の変更ということかもしれませんが、「本来予定されている」とは一体何なのか。「本来」とか本質的というのは、非常にあいまいな表現ですので、より具体化する必要があると思いますけれども、具体的に考えれば、労働契約の締結という事実それ自体から変更権限が生ずるのかどうかの問題でしょうか。つまり、訴訟においては、契約内容を変更しうるという合意の存在を使用者側が立証する必要がなく、労働契約自体から変更権限が発生するかどうかという問題なのかもしれません。これは言葉の問題で細かいんですけれども、ちょっと疑問に思いました。

あと、日常的労務指揮も形成権の行使であるということには、基本的には賛成ですが、しかし、現実の労働過程で、すべて形成権の行使が行われているかは、若干疑問です。たとえば、このコピーを取ってきてくれないかといった場合、それは常に形成権の行使なのかどうか。単にそれは申込みに対する承諾により労働義務が特定されたにすぎないのではないか。つまり、形成権の行使の意思があるかないかは個々的に判断すべきことではないかと思います。

いずれも細かいことですけれども、そこまで詰めて考えるようなインセンティブを与える、読んで充実感がある論文だと思います。

討論

中嶋

ありがとうございました。道幸さん、いかがですか。

道幸

広範に目配りのきいた論理を展開しており、非常に示唆的な論文でした。ただ、読んでいて寄り道が多く、いろんなところでけんかしているので、ターゲットを絞ったほうがいいのではないかという印象も持ちました。

理論的には、合意の解釈をどう考えるかにつき労働者が自由だったらどういう合意をしたかを問題にしています。こういうことが果たして合意の解釈と言えるか。むしろ信義則上こういうのは予定されていると構成したほうが的確ではないかと感じました。

2番目の形成権の問題については、ともかく労使間で争いがある限り、全部形成権の問題があるということになります。しかし、配転の場合は、法的に争う価値のある紛争という観点から、事実行為と形成的な行為とに分けるべきではないでしょうか。使用者の指揮命令的行為のすべてを形成権の行使と見るのは疑問です。

もう一つは、出向とか、時間外労働について、労務指揮権の問題はないけれど最終的には合意の問題だと指摘しています。では、その場合の合意というのは何なんだろうか。広い意味の契約上の合意に他ならないから、2種類の合意をしているという構成をするメリットがどこにあるのだろうかという感じがしました。むしろ、合意は一つだけれども、その拘束力の強弱が違うととらえたほうが常識的ではないでしょうか。

中嶋

私は、ある雑誌にも書いておりますが、要するに、これはおもしろいが長すぎる。

道幸さんが寄り道が多いと言ったそういう欠陥がどうしても出てくる。ずっと読者に読ませてきて、最後の「研究の反省と課題」で、自分が責任を持ってそれまで主張したことを同じシリーズの中で否定するというのは、いささかいびつでありまして、やはり長いとこういう弊害がある。まずはこの点が論文形式上の問題です。

しかし、長いのに飽きさせなかったというのは、内容、問題意識がすぐれているということと、それから、土田氏の力量ですね。これをよく示しているものだと思って、私自身は山川さんがおっしゃったと同じように、読み終わったときに非常に充実感というか、うれしかった。自分も勉強したという、そういう思いにさせるすぐれたものであったと思うんです。

「仮定的自由意思説」への疑問

中嶋

中身については、今両先生から出された批判は、私も大体同じです。仮に労働者が使用者と対等の立場で自由な意思に基づいて交渉したならば、いかなる内容の権利義務を承認したであろうかということが土田説のキーポイントと言ってよい。これはいわば従来の通説判例による包括的合意説に対して、私の命名では「仮定的自由意思説」なんですね。仮定された自由意思を権利発生要件の基軸に据えるということなんですが、契約ですから、両者の合意で成立しなければならないのに、労働者だけの仮定的自由意思で権利発生や義務が左右されるというのは、ちょっとおかしくはないか。そうすると、使用者側が「そうは思いませんでした」という仮定意思は、どういうふうに推定されて、どういうふうに扱われるか。これは基本的な疑問ですね、この学説に対する……。

ただ彼自身も、検討の途中で、上のようなことは、多少おかしいと感じ始めて、普通契約約款論なんかも随分勉強して、就業規則への内容規制を通じての実質的な契約規制として論理化できないか、と考えた時期があったと思うんです。ところが、契約約款論も一般的には同意できる点が多いのですが、労働法に適用できるような約款論というのは、ドイツにもありませんし、その他もあまり見たことはないので、結局、その点は断念して、意思操作による方向を選んだのではないかと私などはそう思っています。今後、ほかの点は山川さんがおっしゃったようにあまり反省しないで、もう少しやってくださったほうがいいと思うのですが、しかし、私の言葉で言う仮定的自由意思、これだけは少しお考えになったほうがいいのではないか。以上が私の感想です。

山川

その点は、土田さん自身も反省しているようですね。そうした意思解釈は、当事者の意思を離れた客観的判断とならざるをえないので、むしろ意思解釈よりは内容規制の位置づけを検討したいと言っておられます(『法学協会雑誌』111巻10号1526頁)。

中嶋

我々はどっちを土田説とすればいいのか。

山川

この論文の合理的限定解釈は、「当事者が対等の立場で交渉したならば、それぞれ主張したであろう利益を探求し、その均衡点を契約内容として確定する」と定式化されていますが(『法学協会雑誌』109巻12号1876頁)、利益を探求して均衡点を確定するというのは、やはり客観的判断だと思います。これに対して、道幸先生は、むしろ、実際の意思の中で労働者の自立をどれだけ認めていくような認定・解釈ができるかというアプローチをとられるのでしょうか。

意思か信義則か

道幸

一つは、解釈論のテクニックでどの程度労働者の真意を反映した解釈ができるかの問題です。それが無理だったら、無理に意思というものを媒介にしないで、正面から信義則で議論したほうが素直ではないかと思います。

この場合の仮定的自由意思というのは、たとえば特定のAという人の自由意思ではないわけでしょう。

中嶋

もちろんある程度客観化されている。

道幸

つまり、一般的な労働者イメージみたいなもの。

中嶋

そうでしょうね。

道幸

そうすると、個別意思の解釈で処理するというのは、やっぱりおかしいと思います。

中嶋

おっしゃるとおりだけれども、土田氏は山川報告にもありましたように、包括的合意による権利義務の発生自体をあくまでも前提にして、権利行使の仕方の場面で、つまり、権利濫用論、信義則機能、これで社会的相当性を見いだしていくという判例は、経験的にあまりにも広範な権限を使用者に与える結果になって現れたので、これに反論しているんですね。だから、やっぱり単なる信義則、権利濫用論では、従来の、特に厚い裁判所の壁を打破できないと考えているんだろうと思います。

そこで、もう1段階前にさかのぼって、そもそもこれ以外には権利義務が発生しない、それを枠づけしたかったんだろうと思うんです。それだと、またそこで信義則を使うのはちょっと変な話ですから、別の解釈技術を用いざるをえなかった。そうすると、それは客観的な一種の社会通念すなわち内容規制か意思の操作かという、この両方しか多分解釈手法としてはないので、“仮定的自由意思”のほうを選んだのではないか。それで、反省点では、内容的規制の理論を選ぶべきだったんじゃないかという、こういうふうになっているので、権利発生要件と権利行使要件を分けないと、判例のような使用者に与えられた広範な裁量権限の行使は阻止できないという問題意識が彼の出発点だと思うんです。

山川

開き直ってしまえば、ここでの解釈が擬制であるとしても、法律の適用には、ある程度擬制はつきものであるという評価もできないではないですね。問題は、裁判所に白紙委任することになるかどうかですが、それも借地借家法みたいに正当事由という抽象的な言葉を使っている条文もあるわけですし、あとは類型化で対処できるのかもしれません。ただ、私自身もどちらがいいのかはよくわからないですね。

中嶋

裁判所に白紙委任するならば、裁判所は刑法理論のように構成要件該当、違法、有責というような幾重かのろ過作業はしないで、おそらく権利濫用論、一本でいくんだと思うんです。だから、やっぱり学説としては、裁判所としても看過できないような何らかの基準が欲しいんですけどね、ほんとうは。

道幸

明示の合意に基づく意思ではないので、意思解釈として通常できることは、本件の場合にたまたま使用者が特定の発言をしたとか、慣行があったとか、使用者が矛盾したことを言っているとか、そういう落ち穂拾い的な行為でもいいけれども、そういうのを使って、なるべく真意に近いような結論に持っていくことぐらいではないでしょうか。

中嶋

仮定的自由意思と仮に言うと、不利益な配転で、仮に仮定的意思を忖度すると、これは労働者も合意したであろうというような場面なんかないわけでしょう。

道幸

争っている限りはないですね。

中嶋

争っているのは、“仮定的な自由意思”が配転に反対だからですね。それをもう一回仮定的自由意思で吟味するというのは、ちょっと機能しないんじゃないか。西谷敏さんのも同じような説ですか。

山川

西谷説も同じ指向ですね、その点では(『労働法における個人と集団』77頁)。

中嶋

そうすると、西谷氏に対してもそういう批判が出てくるんじゃないか。つまり、契約には当然相手方もいるということなんですよね。

形成権の理論構成

道幸

ちょっと形成権のことで疑問があります。

中嶋

どうぞ。

道幸

形成権とか、形成的行為というのは、権利義務というか、有効、無効の判断をするための議論なわけです。そうすると、全部形成的な行為だという立論は、意思を媒介にするから形成的な行為ということなんですか。ちょっとその理論構成がよくわからないんです。

中嶋

形成権が当事者の合意によって与えられるということはありえますね。

山川

契約上当然に発生する場合と、特別の合意によって発生する場合と二つあると思います。

中嶋

契約上当然に発生する場合というのは、今道幸さんが言われた意思に基づく形成権の取得ではないんですね。

山川

たとえば、期間の定めのない労働契約における解約の権限などは、別にその旨合意しなくとも当然発生するわけです。

中嶋

法律になくても?

山川

それは民法627条で……。

中嶋

実定法規になければ、どうなるんですかね。そういうことはありえない?……。ここでは、そういうことでしょう、結局。どこから形成権自体が発生するかということ。

形成権説のメリット

道幸

本論では、普通の意味の形成権の議論よりも、労務指揮権との関係で形成権と言っているのが特徴なわけですね。労務指揮権との関係の形成権というのは、解約権とか、そういうレベルとは違って、ある特定の労務指揮をすること自体が形成権の行使だという理論構成でしょう。たとえば、このコピーを取れというのが形成権の行使である。次のコピーを取れというのも形成権の行使だということになるわけでしょう。無限の形成権の行使をやっているのだという構成が果たして妥当かということになります。結局、訴訟でAというコピーを取らない労働契約上の権利のあることの確認ができることが大きなメリットになるんですか。

山川

それがまさに土田論文の実益で、つまり、法的に争う余地を拡大しているんですね。

道幸

それはやっぱり大きなメリットなんですか。

中嶋

配転命令について、かつて形成権説と合意説というのが対比されたときに、形成権説がよりすぐれているというふうに見られた理由は、配転命令自体を仮処分で争うことができるということだった。事実行為は争えないから。

道幸

ただ、その場合も、今言ったようなコピーの件まで形成権の行使だという議論は必要なんですか。

中嶋

だから、そこまで拡大することの当否……。

道幸

そうすると、無限に形成権の行使をしているというイメージなんですかね。

山川

実際に形成権を行使する意思があるかどうかという点では、単に合意をしているだけだということもあるかもしれません。相手の応諾いかんにかかわらず、効果を発生させるのが形成権ですが、コピーをお願いしますという申込みに対して、やりますという承諾をしている場合もあるのかもしれません。

道幸

それは何の承諾なんですか。

山川

このコピーを取るというように特定された労働義務の決定の申入れに対しての承諾ということになるんじゃないでしょうか。

中嶋

形成行為によって、一定の服従義務を発生させて、それを履行させるという法律効果。ただし、上司の業務命令は、法律効果の設定を常にねらっているわけではない。事実上のものも、おのずから出てくるんじゃないかと思うんだけど。

山川

確かに形成権概念を用いてそこまでミクロ的に構成すべき理論的な理由が何かは、ちょっと難しいところですね。

道幸

必ず意思を媒介にしているので、全部形成権だということを言ったほうが理論的だという側面はありますが、そういう形で裁判で争うメリットというのは、それほど大きいかは疑問です。

山川

この論文でも、ごく軽微な問題については、訴えの利益がない場合もあると指摘されています。ただし、最近人格権を侵害するような指揮命令が問題になっていますから、その点にこの論文の問題意識はあるんじゃないかと思います。

中嶋

それは損害賠償だけでは、やっぱり不足だということなんですかね。つまり、人格権侵害だったら損害賠償で、別に形成権的な構成は必要でないわけですね。だから、どうもミクロ的なというか、細かいところまでやるねらいがね。

山川

たとえば配転などの場合は、命令の効力を否認する実益は非常に大きいんですけれども、ごく一時的なものに対しては、損害賠償以上のことが必要かという点は確かに問題としてありますね。

中嶋

どうもこれは非常に学者好みの論文で、けちをつければ限りなく出てくるというふうに思いますけれども、知的好奇心を非常に誘ってくれた最近でも有数の力作だというような評価でよろしいでしょうか。

道幸

議論を触発する有益な論文だと思います。

中嶋

それは確認しましょう。ただし、こんなに長く書くなということで終わります。

次は、道幸さん、お願いします。

論文紹介「労働者の私的領域確保の法理」

道幸

島田陽一「労働者の私的領域確保の法理」です。

この論文は、『法律時報』の特集で、「労働法における自己決定」という特集の中の一つの論文です。同特集は、他に、西谷敏「労働法における自己決定の理念」、道幸哲也「業務命令権と労働者の自立」、土田道夫「労働保護法と自己決定」、三井正信「労働組合と労働者の自己決定」があります。

労働者が使用者の指揮命令に従う義務を負う領域を職業生活領域と呼ぶと、この領域以外に、いわば私的領域がある。この二つの領域の接点をめぐる法律問題を概観し、それを踏まえて新たな法理を提示する内容になっています。

具体的には、私的領域確保の法理形成の、基本的な視点として、憲法13条を根拠とする自己決定権を述ベております。これが私的領域確保の法理における重要な理念である。ただ、注意すベきなのは、私的領域の確保といっても二つの問題が含まれるということです。

一つは、労働者の私生活のような、原則として使用者が制約すベきでない私的領域、この分については自己決定権が妥当する。

第2は、勤務地に合わせて住居を決めるというような職業生活、密接な関連を持つ私的領域。職業生活領域における労使の決定において、自己決定がどの程度考慮されるかという、両者の調整が問題になる領域です。同時に、私的領域確保の法理といっても不介入の側面と配慮を命ずる側面があることを、基本的な視点として打ち出しております。

次に、より具体的にこの職業生活領域と私的領域との境界線について三つの局面、つまり、第1は就業時間外でかつ企業外の局面、第2は就労中の指揮命令下の局面、第3は私的領域の問題であるけれども、職業生活から強い制約を受ける局面に分けて検討をしております。

具体的には、生活上の非行、兼業について私生活の自由と労使契約上の義務と関係づけて議論している。

次に、職業生活における私的領域の確保について、思想・信条の自由、健康診断、それから服装と外観の自由を検討している。使用者の生活配慮義務については、転勤・単身赴任、それから時間外・休日労働について検討をしています。

特に生活配慮義務については、「そもそも使用者には、継続的契約関係に伴う信義則として、労働者の利益を不当に侵害しない義務があると考えられる。この義務は、労使の実質的対等の実現という視点から内容が確定される」と述べ、先ほど検討した土田論文等につながる視点を提起しています。

コメントに入りますけれども、この論文は、私的領域の二つの側面、つまり、純粋な私的領域というのと職業領域との関連での私的傾城に分けてその具体的な各私的領域の確保を考察した点、およびその二つの側面、つまり干渉しない側面と配慮する側面の二つの側面がある点を明らかにし、その上で、具体的解釈を展開したところに意義があると思います。

学界全体として、自己決定権、人格権、プライバシー、それから、私は自立と言っているんですけれども、こういう基本的な概念自体が必ずしもまだ確立していない。島田論文は、私的領域確保という比較的わかりやすい概念を打ち出した点に特徴があります。他方、業務命令権の問題を取り上げているわりには、業務命令権自体について分析をしていないことや、個別解釈論につきあまり独自の主張がなされていないのか気になりました。

討論

中嶋

ありがとうございました。では、山川さん。

山川

私的領域を二つに分けた分析については、私も同感です。あと、個々の領域についてさほど独自のことは主張されていないということでしたが、たとえば兼業の禁止について、労務提供への支障の回避をその根拠とすることには疑問であるとしている点や、転勤命令について、代償措置を欠いた場合の効果は、命令が無効になるのではなくて、損害賠償請求権が発生するだけであると考える点などは、目新しい主張だと思います。ただ、紙数が性質上限られているせいか、それらがあまり詳しく展開されていない点は指摘できると思います。

憲法13条と私法上の義務

山川

あとは、使用者には労働者の私的領域を不当に侵害しない義務があるという見解の根拠として憲法13条の自己決定権を挙げられています。憲法13条は、原則として私人間に直接適用はされないので、間接適用になりますけれども、問題は、13条の間接適用によって、労働者の私的領域を不当に侵害しない私法上の義務が発生するかということです。つまり、憲法上の基本的人権の間接適用は、民法90条や709条を通してその意味が充填されるというのが通常の理解ですから、法律行為の無効や不法行為とは別に、契約上の義務が発生するという結論はどこから出てくるのかがよくわからないのです。

中嶋

私も特に付け加えることはないようなんですが、私的領域を不当に侵害しない義務、それから私生活を配慮する義務というふうにいうのは非常にわかりやすいけれども、それを発生させるには、なお根拠が乏しいのではないか。もちろん、本稿は問題のフレームを示したのであって、中身はこれからさらに吟味なさると思いますから、将来に期待したいと思いますが、そう簡単に義務が発生するんだったら、もうすでに以前から設定され承認されているはずです。労働者と使用者をめぐる環境が変わったという意味での問題提起なんでしょうけれども、法律構成は法律構成ですから、もう少し綿密になさっていただきたい。ただ、これはテーマとしては、前回取り上げた道幸・山田氏の論文に引き続いて、どうしても現代の労働法学上避けて通れないようなものを取り扱った。そして、その際の問題点を示してくれたという意味では、私は評価に値すると考えています。

道幸

その場合の義務というのは、結局は、業務命令権を行使する際に、私的領域に配慮をして行使すべきだということなんですか。

中嶋

それに配慮する必要があるということであって、独立して義務の存否を訴訟で争えるような性質のものとしては、私は考えないのですが。最高裁が年次有給休暇の時季指定権に対して使用者側が時季変更権を行使するときに、代替勤務その他の配置を配慮するようにと述べていますね。あれを多くの方は、「配慮義務」というふうに簡単に評価していますけれども、最高裁は配慮「義務」とは言っていないんです。一種の権利行使に当たっての、いわば相手に不当に損害をかけないように配慮する信義則上の一つの制約要件なんだと思います。それが「義務」として独立したものになるというには、 やっぱり根拠が必要で、「私的領域を不当に侵害しない義務」「私生活配慮義務」もまず契約論の操作によるべきであって、憲法13条をいきなり持ち出すだけでは少し薄弱じゃないか。

山川

労働法上の義務についてまだ議論が熟していないところがあって、不法行為法上の義務なのか、契約上の債務なのか、あるいは権利行使に対する制約要因を述べたにすぎないのかが明確でないことがあります。島田論文の言う「私的領域を不当に侵害しない義務」も、不法行為上の注意義務であるとすれば、憲法の間接適用により出てくることになりますし、また人事権の行使の制約要因としての「義務」であれば、あまり問題はないのですが、たとえば債務不履行をもたらすような契約上の義務と言えるかどうかはやはり難しいんじゃないでしょうかね。

中嶋

その辺をより深めてもらうといいと思います。

山川

ただ、菅野=諏訪論文のいう個としての労働者という視点からは、こういう方向の検討が今後も出てくると思います。

道幸

あと理論的には、自己決定権とプライバシーや人格権とどう関係するか。

山川

人格権や自己決定権はドイツ法的な発想で、プライバシーはアメリカ法的な発想ですが、我が国では両者の関係を十分整理していない感じがしますね。

中嶋

それではこれはこの辺にして次に進みたいと思います。


労働保護法

論文紹介「労働基準法の二面性と解釈の方法」

中嶋

では、三つ目のグループの労働保護法の領域について、まず山川さんから……。

山川

それでは、西谷敏「労働基準法の二面性と解釈の方法」を紹介いたします。

この論文は、労働基準法が公法としての性格と私法としての性格の二面性を持つことに着目して、私法的な側面について弾力的な解釈を主張したものです。

論旨は、労働基準法が労働保護法として刑事制裁規定を持つ公法的な側面と私法的な側面の二つの性格があること、また公法的な側面については、罪刑法定主義の観点から厳格な解釈が必要になることを指摘した上で、従来の裁判例や学説は、両者を一元的に解釈すベきであるという立場に立っていると把握いたします。西谷論文は、そうした一元的解釈によると、労基法の規制が及ばない場合に、民法上の公序に頼らざるをえないことになるが、それには保護の程度が減少したり、法的安定性を損ねたりするといった問題があると主張します。

具体例として、まず労働時間の概念につきまして、労基法32条の「労働をさせ」という文言を根拠として概念決定をする蓼沼説や荒木説に対し、公法としての労働基準法の解釈としては妥当ではあるけれども、私法的側面については狭すぎるので、当事者の約定も考慮をした上で、労働者が事実上拘束される時間も含めるベしと主張いたします。また、年休の成立要件の一つである出勤日につき、労災等による療養期間等を出動したものと見なす労基法39条7項について、年休の取得日も出勤日と考える行政解釈や、さらに使用者の責めに帰すベき休業日なども出勤日に加える学説に対して、公法的側面の解釈としては罪刑法定主義に反するおそれがあるけれども、私法的側面の解釈としては妥当であると述ベられています。

こうした例を踏まえまして、私法的側面については罪刑法定主義の要請が働かないので、柔軟な解釈をなすべきであると主張されます。

方法論としての意味

コメントに移りますが、労基法の私法的側面について柔軟な解釈をすべきであるということは、たとえば従来、結婚退職制について、罰則の関係では労基法違反ではなくても、私法上は労基法違反であるという沼田説などがありましたので、従来こういう考え方がなかったわけではありません。しかし、解釈の方法論として明確に打ち出した論文としては初めてではないかと、思います。刑罰という効果が発生する場合と、私法上の権利義務関係の変動のみが生ずる場合とで要件が異なり個々に解釈できるという発想はもっともなものだと思います。

従来の裁判例でも、公法的な側面の存在を意識せずに、逆に言うと、私法上の問題だからそれが可能なのだということを意識せずに柔軟な解釈をした例もあるかもしれません。

疑問点の一つは、あらゆる労基法上の規定についてこういう作業をすると実務上煩雑になるのではないかという点です。しかし、煩雑になっても必要であればそれはやるべきことであると思いますが、もう一つは、後で取り上げる国際労働関係との関係で、労基法の私法的側面については、たとえば外国の会社が日本で活動する場合に、西谷説によると労基法を適用しないという当事者の法選択が可能になるのではないか。ちょっと細かいですが、そういった疑問が生じてきます。

討論

中嶋

道幸さん、いかがですか。

道幸

このような問題が重要になっていることがよくわかりました。論理展開についても、非常に興味深く読みました。ここでは議論されていませんけれど、関連して、労働基準監督をする際に、たとえば、賃金不払いの問題が争いになったときに、賃金債権があるかどうかというように、私法的な問題に監督署が一定程度関与せざるをえないという問題があることも指摘されています。

労働時間と年休

道幸

本論文に関しては、労働時間と年休で議論の仕方に違いが出てきている。年休の例ではむしろ、当事者の意思ではなく制度目的から年休制度をどう解釈すべきかが争われていると思いました。

山川

そうですね。労働時間の概念のほうは、32条の文言は抽象的ですから、類推解釈というよりは、拡張解釈で対処できる問題じゃないかと思います。

中嶋

この論文の趣旨は、どういうことですか。労基法違反ではないので、刑罰は科せられないが、その外側の契約でも労基法の趣旨には違背するから私法上は無効だとされる領域を確保するべきであるというのか、それとも、むしろ労基法の罪刑法定主義の外側では、なるべく当事者意思を自由に機能させる方向をめざすべきだというんですか。あるいは、規定の性質によっては両方ありうる。だからそれは「弾力的解釈」になる。そういう意味なんですか。

山川

つまり、刑罰は科せられないけれども、私法上は無効になるという領域があるということです。

道幸

たとえば時間外労働ならば割増賃金の問題も生じますね。

時間外労働と割増賃金

山川

その点は複雑になりまして、たとえば割増賃金については、私法的な意味での労働時間が8時間を超えたら、支払義務が発生するけれども、その不払いに対しては公法的意味での労働時間が8時間を超えるまで刑事制裁を行わないと述べられています。おっしゃるとおり、法律行為が無効かどうかという問題のみならず、権利義務の発生についても関係があります。

弾力的解釈の意味

中嶋

そうすると、たとえば労基法の56条、15歳未満の者のみを雇用してはいけない。同じ中学生が夏の段階で、15歳を過ぎた場合を考えます。これが使用者と契約を結ぶと、罰則は科せられないんでしょう、使用者は。罪刑法定義とはそういうものでしょう。そうすると、西谷理論で言うと、やっぱり私法契約としては無効だとなるの。私法契約としては有効だとなるのですか。どっちに機能するかというのは、それは条文によるという、つまり、弾力的というのは、両方に弾力的なんですか。

山川

それは片面的な弾力性だと思います。つまり、刑罰が科せられるものを私法上有効にするということにはならないと思いますが。

中嶋

15歳を過ぎた中学生を雇った使用者との契約は?

山川

それはつまり、刑罰は科せられないけれども、無効になるかどうかという問題ですね。

中嶋

刑罰は科せられないんなら、有効だというのは当たり前のことですもね。刑罰が科せられなくても契約としては無効だという方が多いのですか。

山川

今の年少者の契約の問題には触れられてはいませんが、この論文のアプローチによると無効となしうる点に意味があるというんでしょうね。

中嶋

そういう意味だろうね。

道幸

規定の目的をどう考えるかによって有効になったり無効になったりするということでしょう。

中嶋

そうすると、労基法のなかでも労働時間と年休とは違うし、年少者雇用契約問題の独自性もありうる。「合目的観点」というのはそのことですかね。

いずれにせよ、確かに今後の重要な検討課題のように思います。しかし、いくつかの具体例を類型的に示してほしかったですね。

次の論文について山川さんのほうから……。

論文紹介「労働保護法と『労働者代表』制」

山川

それでは、籾井常喜「労働保護法と『労働者代表』制」に移ります。

この論文は、事業場における労働者の過半数代表制について、立法論的な検討を行ったものです。内容を簡単に紹介しますと、労基法の昭和62年改正によって役割の増大した労使協定及び過半数代表制度につきまして、制度的な不備があるという問題意識が出発点となります。ただ、過半数代表制に対する不信感から労使協定に基づく枠組み設定自体に反対するという議論には与しておりません。しかし、現行の過半数代表は、事業場の労働者のある程度の世論の動向を反映する立場にあるという推定をなしうるにすぎないと考えまして、法律の改正による過半数代表への信頼の回復という方向をめざしております。他方コストがかかるという理由による立法論への消極的な姿勢にも賛同しておりません。

その場合の基本的な視点は、過半数代表制はあくまでも労働保護法上のものであって労働組合とは別であるというスタイルで、しかも、労働組合の補完的存在とも位置づけておりません。あくまで労基法上の規制解除に対する労働者集団によるチェックの制度的保障という位置づけを徹底させております。

どのような代表制を考えるかについては、(1)個別の問題ごとについて代表を考えるか、任期を持った持続性のある代表を考えるか、(2)単独の代表か複数のメンバーからなる委員会制か、(3)選出母体から独立して権限を行使しうるような代表制か、あるいは選出母体の意思の統一や形成という仕組みを備えた従業員組織代表委員会かという選択肢を提示します。この論文は、任期があり、統一意思の形成のプロセスを持った従業員組織代表委員会を原則的に選択しております。

具体的な立法構想の特色は、過半数組合がある場合でも、別個に代表を選出するべきであるという点です。それから、原則は任期を備えた委員会制が望ましいけれども、小企業では単独の代表でもよいという点、また、秘密、無記名投票を行うべきであるという点、さらに少なくとも変形労働時間制のような制度的な問題については、従業員総会やグループ総会によって、多数決に基づいて行動をすべきであるという点が述べられます。なお、そうした過程によって結ばれた労使協定の民事上の効力については、少し迷われたようですけれども、結論的に否定しておられます。

労働保護法上の位置づけ

コメントですが、過半数代表制の位置づけを明確にして、その位置づけに沿った具体的な立法構想を示している点に意義があると思います。最近の議論の流れを整理してみますと、一方では、過半数代表制の整備に対する消極論があります。たとえばコストがかかるからという主張や、労働組合に期待するのが筋だとする、中村圭介氏の論文(「従業員代表制論議で忘れられていること」『ジュリスト』1066号136頁)などもあります。また。労使協定の役割を限定しようという方向もあります。たとえば変形労働時間制の採用については個別的同意が必要であるという説はその一つですし、また、労使協定が就業規則を通じて労働者を拘束するという別の面に着目して、就業規則の合理性判断を枠づけようとする野川論文(「就業規則と労使協定」『ジュリスト』1051号69頁1052号116頁)などがあります。

他方で、過半数代表制を整備する方向をとる立場でも、その位置づけについては差がありまして、一つには、労働組合に対する補完的役割を認めるものとして、坂本論文(「従業員代表制と日本の労使関係」『日本労働法学会誌』79号5頁)や毛塚論文(「わが国における従業員代表法制の課題」『日本労働法学会誌』79号129頁)などがあります。これに対して本論文は、労働保護法上の位置づけを徹底させております。同様の方向を志向するものに西谷論文(「過半数代表と労働者代表委員会」『日本労働協会雑誌』356号2頁)がありますが、本論文ほどには保護法上の位置づけに限定していないようです。

本論文では、このように労働保護法上の位置づけを徹底させた結果、過半数組合がある場合でも労働者代表を別個に選出すべきであるという主張が導き出されております。西谷論文も同趣旨ですけれども、本論文では、労使協定の締結が問題になる場合、労働者集団による討論や多数決による採決まで要求する点で、さらに徹底しています。いずれにいたしましても、過半数代表制度に関する一つの立場を徹底させて、その立法論を提示したという点で重要なものだと思います。

討論

無組合企業と過半数代表

中嶋

ありがとうございました。道幸さん、いかがですか。

道幸

私たちが、組合がないところの過半数代表の選出の仕方とか役割というのを調査したときにはっきりしたのは、組合がないところでは、的確な選出は非常に難しいということで、監督署もそういう問題についてはそれほどチェックはしていないという事実です。チェックを厳しくすると、協定を監督署に提出しなくなるということでした。そのときに、組合がないところの従業員代表制というのは、どのような法的な整備をしても機能しないのではないかと感じました。確かに籾井論文は、制度構想としては魅力的ですけれども、それを支える組織とか担い手についてのイメージが非常に持ちにくい。特に組合がある場合でも独自に選出せよというのはやや問題です。

中嶋

一方で、労基法上の労使協定制度がすでに10項目にも増えた。他方で、それらを従業員代表制一般の中で解決しようとすると、いまだ試論段階にすぎない。労基法の方はそんな悠長なことを言っていられない段階だから、さしあたり早急に解決したいとの思いでしょうか。もう一つは、かつての籾井さんを知る者にとっては驚くベきことなんですが。労働組合はいまや信用できないという、そういうことを言っているじゃないかということです。そのために実際的に評価するには、賛否両論あるところだろうと思いますけれども、非常に歯切れのいい方なので、勉強になったというか、おもしろかったと思いますね。籾井さんとしても、ここに至り“決断した”ということでしょう。

組合の機能への影響

山川

問題は、労働保護法上の位置づけに純化しても、組合の機能に影響を与えないかどうかですね。理論上の位置づけと実際上の機能とはまた別で、過半数組合は、やはり保護法上の代表としての機能も果たしておりますから、それが存在するのに別個に代表委員会をつくるとすると、労働組合側からは反論があるんじゃないかと思います。

中嶋

使用者としても、労働組合との間で今まで確立してきた信頼関係が高いところでは、迷惑な話なんでしょうね。逆に、労働組合が少し弱いところでは、使用者側はこれを利用して労働組合を無機能にするという、そういう危険性はありますね。

山川

投票を行うと、組合に対する不信感を示すような票が出てくる可能性もありますね。

中嶋

かといって、今のように労働者代表に、親睦会の幹事が出てくるというように、真の労働者代表じゃなくて、人事・労務の一員というような人が出てくるような状況は放っておけませんし、これはちょっとにわかには……。

山川

何とかしないといけないけれども、具体的にどうするか……。

中嶋

難しいですね。だから、かえってあれこれ言わないで、籾井論文のように旗幟を鮮明にしてくれたというのは非常に意義がありますね。通常言いにくい問題ですからね。

代表システムは機能するか

道幸

こういう議論の延長には、代表というのは機能しないという議論はありうるんでしょう。つまり、個別事項ごとに直接参加の発想です。代表というのはその人にある権限を付与して、その人が一定の裁量をもって使用者と折衝する。そういうのは組合という組織がない限りは機能しえないんだとすると、直接に提案の是非を問う選挙制度みたいなのが一つのアイデアだと思います。

山川

代表を選ぶのではなくて、協定の締結についての選挙でしょうか。

道幸

イエスかどうか、を問題とする。

中嶋

むしろ、代表になじまないものがあるという意味ですね。

道幸

それならば初めから個別従業員に対しイエス、ノーを聞いたほうがいいのではないか。ある意味では従業員代表制否定論みたいなものですけど。特に小っちゃな企業はそうではないかと思います。

中嶋

つまり10個全部についてそういうふうなことも考えられるというわけですか?

道幸

そうでしょうね。この論文からちょっと離れますけど、従業員代表制は、結局、使用者のイニシアチブで選出させるということです。使用者のイニシアチブで、場合によれば使用者に不利なことをやらせるというシステムなわけです。それがなぜうまく機能しうるかという根本的な疑問もあります。

山川

選挙の公正さを確保するために中立的な選挙機関をつくれということになると、代表制と似たような問題が生じないですか。

道幸

ただ、特定の人の責任で決めるということはなくなります。従業員代表になったら、従業員からも嫌われるし、会社からもにらまれる。それよりも、投票の秘密さえ確保されたならば、従業員の真意が反映されるのではないかという可能性はあるでしょうけど。

山川

ほんとうに秘密が確保できるような仕組みというのは……。

道幸

それはあるでしょうね。

山川

かといって、それをすべて行政が監督しろとなると、大変なことになるわけですね。いわばアメリカのNLRB型の直接投票を行えというのは、ちょっと難しいのではないか。

道幸

さらに、その場合に提案に対する諾否しか問えないので、量的な処理はできないとの問題もあります。基本的には籾井論文でいろいろ検討しているような、労基法の規制を緩和するような代表的なシステムが、組合がないときに機能する基盤というのは、あるのだろうかというのがやっぱり疑問ですね。

中嶋

我々の議論不足の感は免れませんが、これはこの辺にします。

論文紹介「労働安全衛生法規の法的性質」

中嶋

それでは、労働保護法の三つ目を私から。小畑史子「労働安全衛生法規の法的性質」。副題がついておりまして、―労働安全衛生法の労働関係上の効力―、こういうものです。現行労働安全衛生法の諸法規、諸法令は20を超える、その各規則の条文の合計は1500を超える。冒頭小畑さんはそういいまして、こういったような労働安全衛生法というのは、一体どういう法的性質を持っているか。簡単に言うと、公法的性質を有するにすぎないか、私法的性質をも有するか、こういう問題意識で出発します。

そして、私法的性質をも有するとすると、諸規制に違反した状態があるときは、規制の義務主体を相手としてその義務の確認請求や履行請求を行うことができるということにもなるので、果たしてそれが適当かどうか。判例の立場は必ずしも明確ではないが、我が国の労働法学説は一般に、労働基準法を中心とした労働条件の基準を定める労働保護法規の法的性質については、私法的法規でもある、つまり「労働契約関係上の権利義務を直接的に規律する」という理解に立っている。そして労働安全衛生法もまたかつて労働基準法の中に定められていた安全衛生の規定を独立させる形で制定された立法であることもあって、それが安全衛生という分野に関する労働条件の基準を定める法律であるのだから、行政的、公法的規制とともに、労基法13条の規定と相まって私法的効力をも生ぜしめる、また法所定の基準は安全配慮義務の内容をも形成するというのが通説だとするのが小畑さんの分析です。そして彼女自身は、それらはそうならないのではないか、労働安全衛生法はそれ自体、労基法とは別個独立の民事的色彩を含まない法的規制及び行政的取り締まりの法体系で、自己完結的なものではないかと結論づけます。

この結論を論証するためにとった構成は、まず労働安全衛生に関する現行法の仕組みの解明、次に労働安全衛生法の法的性質に関する裁判例、学説とそれに対する疑問の提示、そして続いて比較法研究を行いまして、我が国の法体制に近い、アメリカとイギリスの両国の安全衛生法規の法的性質を検討するという作業に入ります。そしてその後に、いよいよ我が国の労働安全衛生法の法的性質は、いかなるものかということを、種々の角度から詳細に論じたものであります。

結論としては、我が国の労働安全衛生法は、強行法規制を定める労基法13条のような規定を置いていないのみならず、そういう労基法13条を引用して、私法強制力を認めるような立法経過でもなければ、そういう内容的構成にもなっていないということ。つまり労働安全衛生法が純粋に公法的な法規であることは、その目的、構造、規制内容、義務の履行確保の方法からも明らかである。そして、この安全衛生法の構造は、関係者の義務とともに、履行確保方法を規定する自己完結的なものである。それから安全衛生法の定める義務の主体は、使用者、労働者だけではなくて、さまざまなその他の関係者をも含んでいる。さらには、安全衛生法上の義務の履行方法としては、勧告、要請、勧奨、指導等、任意的、誘導的な行政手法が多用されているものである。そこに私法的請求権が生ずる余地はほとんどないものと考えられる。

このようなことを逐一論証いたしまして、これは直接的、民事的効力を生ぜしめる基準ともならないのだと言います。ただ唯一の例外として、民事的効力を持つとすれば、労働災害の被災労働者が安全配慮義務違反の損害賠償請求訴訟を提起した場合に、安全衛生法の定める基準に違反していたことが、安全配慮義務違反の証拠として主張される場合があるし、主張された場合に、それを考慮する一つの大きな要素にはなる。つまり、安衛法規は安全配慮義務の「具体的内容」にこそならないが、「内容の検討の際に基準となるか、又は斟酌すべきもの」とはなる。そしてその限度でのみ肯定します。

コメントですが、労働法学では従来、私ももちろん含めて労働法学者一般に、安全衛生法規について勉強するなどという気はまったく起こらなかったのです。そして通説、判例は若干形成されているかもしれませんが、小畑論文によって引用されているものは、安全衛生法を綿密に研究した教科書や論文ではなくて、一般的な教科書や論文で、確固たる通説、判例と言っていいかどうかさえわからない状態でありました。つまり民事的効力を有するという場合に、従来の論者が想定したことは、安全衛生法上の非常に強い義務を定めたような、たとえば61条、ああいう明確な禁止規定、こういったものを想定して連結していたんですけれども、そのような規定は確かに少ないわけで、小畑さんはまずそのような基本的な認識につき注意を喚起した。つまり、通説のいいかげんさを明らかにした、こういう意味があるんじゃないかと私は思っております。とにかく取り上げたテーマ自体が非常に勇気があって、よく頑張ったとの評価が与えられていいと思います。

しかし、読んでいくと、すこし張り合いがないというか、あまり優等生のようなきれいな答案で、処女論文としては、力強さ、荒っぽさに欠けるという印象です。それにもかかわらず、今後安全衛生法についてたとえば大学で講義するときとか、研究に際して参照するためには不可欠な文献となったと考えております。

これについて道幸さん、いかがですか。

討論

「通説」とは?

道幸

確かに徹底的に議論するという点では強くひかれました。しかし、通説は労働安全衛生法のすべての規定を、労基法13条を媒介にして無効としているわけではないのです。どうも、そういう説を前提として攻撃しているような立論になっていると感じました。

中嶋

現存する「通説」というようなことになるかどうかは、ちょっと疑問がありますね。みんな、ほんの試論にすぎないのではないか。

道幸

もう一つは労働安全衛生法の観点からはこのとおりでしょうけれども、労働契約論とか、安全配慮義務とか、いわば契約論のレベルから、こういう法律をどう考えるかという作業が必要ではないかと思いました。確かに一定の配慮をするとか、ファクターになるということを言っているんですけれども、我々からすると、どのように関連するかというのにむしろ興味がある。

そうすると労働安全衛生法の中でも、実質的には私法的なレベルでとらえやすい条項と、まったく関係のない条項があって、それぞれに見合った議論をしてくれたほうが、今後の問題を考える際には参考になるという感じはします。どうもきれいに議論しすぎているという印象を持ちました。

山川

確かに非常にスマートな論文で、論理的にもすっきりしていると思います。ただ、今のお話との関連では、私法上の効力があらゆる規定にないこと、つまり例外がないことを証明するのは、実はかなり難しいことでして、この論文も不利益取り扱いの禁止規定だけは私法上の効力があると言っていますね。この点は十分検討されてのことなんでしょうけれども、そうすると、ほかにも例外があるかもしれない。

安全配慮義務との関係

山川

それから、この論文の検討対象ではないのかもしれませんけれども、安全配慮義務との関係で、「斟酌する」とか「参考にする」ということの法的意味は、一体何かという問題があります。どちらも法律概念ではないわけですから、事実認定の問題として、こういう安全衛生法上の措置をとっていれば、結果は回避できたであろうという結果回避措置、あるいは結果予防措置の内容の認定の問題なのかなという気がしますね。

中嶋

認定の問題か、立証責任の問題かどっちかなんでしょうね。

山川

むしろこの点は、安全配慮義務そのものの問題になってくるんでしょうね。

中嶋

そうそう。しかし、小畑さんとしては、安全配慮義務論に重点を置いた気持ちは多分ないと思うんです。要するに労働安全衛生法は、労働行政としての独自の体系であって直接的な民事的効力はないと、まず差し当たりそこは明らかにしたかったんだと思いますね。その試みは、相当程度成功していると思います。

山川

一つ納得したのは、労働安全衛生法規が民事的なものであるとすると、安全衛生法規さえ守っていれば安全配慮義務違反もないという結論になりかねないという指摘です。確かに安全衛生法規は行政上の基準ですから画一的なものになっていて、事情によってはそれ以上の注意をしなければいけないケースはあるわけです。ですから、安全衛生法規の中身と、安全配慮義務の中身が一致すると、場合によってはかえって労働者の保護を減少するおそれがあるということは言えると思います。

道幸

いわば最低基準だという議論をすると、その問題はクリアできるんでしょう。

山川

そうですね。8時間労働というような最低基準とは、ちょっと性質が違うような気がするんですが……。私も、よくわからないのですが、安全配慮義務の最低基準ということでしょうか。

道幸

この基準自体が最低基準のような部分と、ややガイドライン的な部分とかいろいろ性質があるからちょっと難しいですね。おもしろいことに、私法上の効力も認めると申告が多くなるとか、訴訟を激増させるとか、論理的でなく、世故にたけたような論理をも展開しています。ちょっとニュアンスの違うことを言っているなという感じはしましたね。

山川

これは、例外的に履行請求をなしうる規定もないという、証明の困難な問題であるから、こういう根拠を持ってこざるをえなかったということでしょうか。

中嶋

最近の若い人は物わかりがいいね。

道幸

ええ。この部分は。花見先生が言うようなことを突然いっていますね(笑)。

中嶋

私は怒りを忘れてしまったが、若い人はもう少し怒りを持ってほしいね、確かに。それでは次に、4番目のグループで非典型雇用労働についての文献を道幸さん、お願いします。


非典型雇用

論文紹介「『パート』労働者の賃金差別の法律学的検討」

道幸

水町勇一郎「『パート』労働者の賃金差別の法律学的検討」を取り上げます。本論文はヨーロッパ大陸諸国、特にフランスとドイツでは、パート労働者とフルタイム労働者の平等取り扱い原則を、法律上明文化しており、最近ILOのパートタイム労働に関する条約で、平等取り扱いが強調されているという実態にもかかわらず、我が国ではパートとフルタイムとの賃金平等原則の導入に消極的である。その理由としては、年功賃金制度と賃金平等原則は相入れず、我が国のパートは、実態として、いわゆる短時間労働者というより単純労働者でもあるということです。この問題について必ずしも十分な検討がなされていないという問題関心から、パート賃金差別問題を本格的に検討したものです。

最初、フランス、ドイツの状況を検討した上で、分析手法を設定している。具体的には、我が国のパート労働者の低賃金の要因として、短時間制、非定着性、低拘束性、異市場性の4点を挙げている。それぞれの側面が低賃金を合理化、正当化するかという観点から検討する。その際の分析の基軸というのは、経済的合理性と法的正当性の観点です。経済的合理性とは、利益を最大化しようとする個人の合理的な行動の結果として、論理的に説明されうること。法的正当性については、我が国の法体系の構造及び比較法的視点を視野に入れつつ、等しきものは等しく、等しからざるものは等しくなく、扱えという平等命題にかなっているかどうかから判断している。この分析の仕方と分析の基軸から、具体的な分析を行っております。

先ほど述べた四つの側面のうち、賃金差別を合理化するものは、結局、低拘束ゆえの低賃金である。これは経済的合理性もあるし、法的正当性もあるということです。

次に、具体的な法律政策の観点からは、パート賃金差別に対する法律政策としての救済法理として、五つの考え方を打ち出しております。一つは、同一労働の者に対する賃金差別を違法とする。2番目は、同一労働の者に対する著しい賃金差別を違法とする。3番目は、同一義務の者に対する賃金差別を違法とする。4番目は、同一義務の者に対する著しい賃金差別を違法とする。5番目は、同一義務の者に対する賃金差別を違法とし、かつ同一労働の者に対する不相当に大きい賃金差別を違法とする。このうち本論文は3番目、つまり同一義務を前提とした同一賃金という観点を打ち出しています。

その際に、パートとフルタイムといっても、結局いろんな対応があるので、バート等を非正規従業員として、それとフルタイムを比較して、同一義務かどうかを判断すべきだという視点を打ち出しております。

この論文は、賃金差別をどういう観点から正当化するか、特にパートの場合はどうかということを分析視角、分析基軸、いずれも明確に出して検討した点で非常に興味深い内容になっています。特に水町さんはフランス、ドイツについて本格的な研究をしておりますから、そういう意味からも、この問題に対する最適任者だと思います。

ただ、具体的な結論については若干疑問があります。拘束力で賃金格差が発生するというのは何となしにわかるんですけれども、では、拘束力の分、つまり同じ仕事をしていても配転を命じられるかもしれないとか、出向を命じられるかもしれないという部分が、いわば賃金格差の分なのかが問題になります。非常に目配りの効いた議論をしていて、説得力があると思います。問題は低拘束性ゆえに賃金が安くてもいいということが、果たして正当な理由になるんだろうかということはやはり疑問だということです。

やや揚げ足取り的な疑問かもしれませんけれど。

中嶋

ありがとうございました。山川さん、いかがですか。

討論

拘束性と賃金との関連

山川

今おっしゃったことは、低拘束性という事実と賃金の低さとの関連性を立証することが難しいという点でしょうか。

道幸

非常に単純に言えば、外形的に同じ労働をしていても、正社員は拘束があるから賃金は高くてもいいんだということになります。そうすると、たとえば正社員の賃金がパートの2倍だということを考えますと、その差額というのは拘束されているから、その分多く払っているという額になります。つまり額に反映するから意味があるという議論ですから、残業するかもしれない、もしくは配転されるかもしれないということで、賃金が2倍なんだろうかということをどう考えるかです。

山川

ひょっとしたら拘束性は1.5倍かもしれないし、1.2倍かもしれない。そういうことですか。

道幸

その問題もありますし、その点については、ある意味で裁量の問題だと考えるとその部分については、あまり論理的には詰められないわけです。ですから、詰められる部分だけで判断できるだろうかということですね。

山川

おっしゃられるとおり、同一義務というものをどの程度具体的に考えられるかですね。理論的に明快で、経済学のアプローチを十分に消化して取り入れている点は、非常に注目すべきだと思いますけれども、正社員は、「義務」とまではいえなくても「期待」しているということで賃金が高い部分もあるかもしれない。そもそも本当に拘束性の違いの分だけ賃金が高い部分もあるかという対応関係の問題もありますけれども、仮に対応関係があったとしても、それは「義務」に関連しているかどうかですね。

中嶋

この論文は、今の非典型のパートタイマー等に対する使用者の賃金政策がおかしいという論文なんですか。それとも、今現実にパートタイマーが正社員より単価当たり賃金が低いとして、低いのはやむをえないんだということを論証しようとした論文ですか。

道幸

後者の感じはするんですね。

中嶋

そうすると説明のための論文、現状を経済学を交えて法学的に説明した論文ですか。つまり是正のための法理論と、追認のための法理論というのがあるとすると、現状追認のための法理論じゃないかと私は思った。今後、これが応用されて、是正もしかるべきだということになると、同一義務等の定義をはじめ、改善点というか、解明するべき点というのを、もうちょっと詳細化してもらいたかったですね。

道幸

今まであいまいに言われたことを、ある程度視点をはっきりして検討したという点では、非常に注目すべきものだと思います。ただこういう議論をすると、私はやる気があるんだと言った場合に給料を2倍にしていいのか。労働義務というのは、もっと客観的、ドライに考えるべきものじゃないだろうかと考えます。

中嶋

私はパートですけれども配転もさせて下さい、残業もさせてください、それから早く来て準備もするし、後始末もします、ミーティングにも出させて下さい、こういうふうに言った人には賃金を上げなきゃいけないということになるとすると、そう簡単にはいかないんじゃないかという趣旨ですね。

道幸

それは契約内容が違うからという議論をするでしょう。そのような契約内容でなくともそういう申込みをした場合どうするかとかいう問題は残ります。

中嶋

そうすると、契約内容との関係はどうなるの、契約意思でそうなったということと、別に意欲を持っているということはどうなんだろうね。

道幸

意欲になるとやっぱり主観的な問題になるから、論理的に説明できないと思います。ですから、使用者に法的な権限が与えられていることで、賃金額は高いという説明になるでしょう。

等しきものは等しく

道幸

あともう一つ疑問なのは、たとえばこういう賃金の平等というか、差別の問題を考える場合に、障害者に対して同じ賃金を払うというのは、法的には正当でないことになりますか。この場合は、健常者と能力が違うということを一応前提すると、能力が違う人に同じ賃金を払うというのは、法的には正当でないという議論になるんですか。水町論文の例でいえば、低拘束のパートに正社員と同一賃金を支払うことは不当と評価されますか。

山川

そこまでは言ってなくて、この論文は、義務内容が同じ場合に違う賃金を払うことは正当でないということでしょうね。

中嶋

賃金算定の要素に、能力を入れていけないということは言っていないんですよ。それは当然除いてあるんです。それ以外の要素で差別が生じているとしたら問題があるということなんじゃないですか。

道幸

ただ、分析手法のところでは、等しきものは等しく、等しからざるものは等しくなく扱えと書いています。

山川

そうですね。確かにそれが基軸になるでしょうけれども、法的正当性にはいろんな観点がありますから。「同一義務同一賃金」と言う観点からは、たとえば家族手当をどう考えるかも問題になりうると思います。

道幸

今言ったような障害者に対する賃金を、健常者と同じだけ払うという場合に、違法だという議論は難しいでしょうね。

経済学的アプローチの意味

山川

この水町論文の意図は、おそらく、単なる現状説明というだけではなくて、たとえば経済的にも合理性がない賃金差別は、おそらく法的にも正当性がないという点にあるのではないか。経済的に合理性があっても、統計的差別のようなものは法的正当性がないということはあるのですが、そういう経済学的なアプローチからのチェックもかけられるという点はあるんじゃないんでしょうか。

中嶋

失礼だけれども、経済学者はこういう分析をしていってこうですということはよく言うけれども、規範としてこうなるべきですということは、あまり言わないでしょう。法学者はその前提の材料がないから、法的視点しかないので契約理論とか権利義務論しか言わないでしょう。水町さんは、この双方をつなごうとしたんでしょうね。私などにはとてもできない手法で、非常におもしろかったですね、私は。

道幸

もっといろんな側面というか、先ほど言った低拘束性の具体的中身等の、サブの切り口みたいな部分をもう少し出すと、説得力が増すのではという感じがします。ただ、このようなアプローチは、労働法がほかの領域と接点を結ぶ出発点だということは重要でしょうね。

中嶋

いずれにしても、こういう論文が出てきてくれると、頼もしい反面、自分の前途は悲観せざるをえない(笑)。


紛争処理

論文紹介「労働契約と紛争処理制度」「労働紛争処理法」

中嶋

それでは第5番目のテーマは、「紛争処理」ということになっています。道幸さん、お願いします。

道幸

これは、浜村彰「労働契約と紛争処理制度」、と毛塚勝利「労働紛争処理法─個別労働紛争処理システムの現状と課題」の二つの論文です。

中身は若干異なっておりますけれども、基本的には似た内容になっております。具体的には、まず個別紛争処理のニーズが高まったという現状認識を前提として、既存の民事調停、労働基準監督署等の紛争処理機構が必ずしも十分に機能していないと。それに対して比較法的に、特にドイツとかフランスでは、個別紛争処理の独自のシステムがそれなりに機能している。それを踏まえて具体的な提言を行い、個別紛争処理システムを新たに導入する。具体的には労働委員会がそれを担うか、民事調停で行うかというのが基本的な流れになっております。

この問題は労働法学会で最近議論されておりますし、労働委員会でも随分議論されていて、多くの人が興味を持っております。その問題を提起したという点では、この両論文は特に社会的な意義が大きいと思います。議論している中身、それから目配り、提言内容、いずれも的確だと思いました。今後の議論の論点を提示しています。

ただ2点だけ感じたことを言いますと、一つは個別紛争処理法を考える場合の、強制のシステムというのをどう考えるべきかということです。労働委員会でも民事調停でも、強制システムというのを必ずしも前提にしておりませんけれども、強制システムがないところでそういう機構が十分な処理ができるだろうかという問題です。

もう一つは、労使がこういう問題をどう考えているんだろうか。どうも今までの議論は学者もしくは役所主導的な議論であって、実際の労使がこういうニーズを持っているんだろうかという疑問はあります。

討論

山川

基本的に同じような感想を抱きました。二つの論文の違いとしては、浜村論文が契約紛争に焦点を当てて相当詳しく検討しているのに対し、毛塚論文は、紛争の性格に応じた手続を提唱し、たとえば公序紛争には強力な是正措置や制裁的措置を提唱しています。労使がどう考えるかという点については、両論文の出発点になっているのは、現在の労使の自治的な苦情処理や労使協議のシステムではとらえ切れない紛争が増えているということではないかという気がします。その点労使が、自分たちの用意したシステムに入らないで抜け落ちていく問題に対してどう思うか興味深いところですね。

判定的機関の要否

中嶋

単なる調整というか、和解を進めるなら、今の労政事務所のようなところでもやっているわけでしょう。

道幸

そうですね。

中嶋

もう少し判定的な機関をつくるとすると、労働裁判所とかですが、これは現在ちょっと不可能でしょう、政治的にも経済的にも。そうすると今の通常裁判所以外に判定的機関を見いだすとするとやはり労働委員会だ、そういうことになってきているんですかね。

道幸

判定的というより、労働委員会の仕事も減ってきています。

中嶋

行政機関のために労働紛争があるわけじゃない。判定はしないのかな。

道幸

それもはっきりしてません。処理の具体的中身はこれから詰めていくということでしょうね。ただ、労働委員会ではあっせんとかやっていますから、そういうノウハウは若干蓄積しています。

中嶋

調整を想定しているんですかね、主として。

山川

そうですね、主として調整だと思います。

中嶋

それで申し立てられたら、相手方にやや強制的に参加、出頭というか、それぐらいは強制しようということですね。私が思うには、使用者は、たとえば配転命令権があるとか、就業規則の定年制をどうしても引き下げなきゃいけないとか、こういった企業の根幹にかかわるものだったら、紛争が生じても調停を嫌がるのは普通じゃないですかね。むしろ裁判所なら裁判所で白黒を判断してくれという傾向が、そういう問題についてはあるように思うけれども。

道幸

それは重要な点だと思います。つまり、労働委員会であっせんがうまくいく、もしくは使用者がそれに乗ってくるというのは、やはり組合の申請だからだと言えます。組合がいわゆる少数派だとか、合同組合だということになれば、個別的事件にすぎないとして必ずしも十分乗ってこない。個人の事件でもある程度一般性があると影響力が大きいので使用者としては下手にその事件を解決はできない。解雇みたいのは比較的処理しやすいと思いますけれども。紛争を解決したいという使用者のインセンティブをどう高めるかを、十分考えなければ機能しないのではないか。

山川

たとえば変形労働時間制の採用に対して異議のある労働者がいて、配慮義務の問題は別として、調整でその労働者だけは変形労働時間制を適用しないとしますと、制度の実施が困難になるとして、使用者はなかなか応じない、そういう意味でしょうか。

中嶋

そのとおりです。その辺だと思うんですね。それから、あまり推測してはいけないことですが、労働委員会を利用するということになりますと、使用者が反対するんじゃないかという、一般的推測を私は持っていますね。しかし、こういう事件は現実に激増しているんでしょう。

山川

実際には解雇や賃金不払いが多いわけですから、個別処理に適した問題は多いかもしれませんね。ただ、一方で、労基法上の監督署の権限とオーバーラップしますけれども。

機能するシステムとは

中嶋

ある程度強く機能するシステムができたらほんとうにいいですね。

道幸

労使紛争が労委のような第三者機関のところに持ち込まれたということだけでも、公平に処理せざるをえないという側面がありますから、強制力はないとしても、やっぱりそういうシステムがあること自体、意味があるという感じがします。

山川

それは労働委員会の実務に携わっているお二方ならではの発言と思いますが、こういう紛争処理システムを設けること自体による、法律的な解決以外の実際上のメリットですね。

道幸

たとえば、会社の人事担当者が従業員に対していろいろなことを言う場合と、地労委の委員に対して言う場合は違いますからね。少なくとも何か理屈で言わなきゃだめだという意味では、一種の社会化の機能を果たすのではないか。

中嶋

最終的には人事権行使による労働条件の実施というものを扱えるかどうかということですね。これに失敗したらひどいことになる。

山川

制度的枠組みに関わるような問題は、調整システムであれば使用者としては合意を拒否することができて、裁判所に行く道は残されているわけです。ただし、裁判所の調停などでも、むやみに長引くと、かえって当事者双方が困ってしまうことがありますから、裁判所に行く場合のルートやタイミングをはっきりさせる必要はあると思いますが。

中嶋

山川さんは、かつて弁護士もなさっていたから、実際の経験はないとしても、民事調停法による提言、枠組みというのはどういうふうな印象をお持ちですか。

山川

現在では労働法の専門家がいないこともありますし、民事調停では、ある程度合意の見込みがつきそうな事件でないと、強制力がないわけですから、さっき言いましたように、かえって時間がかかってしまう場合もあるように思います。それで裁判所に行くルートを明確化する必要があると申し上げたんですけれども。

中嶋

なるほど。相談程度のもの、つまり、労政事務所や労働センターとかいうような機関がやっている相談制度で決着した率の統計がありましたよね。どれくらい解決するんですか。

道幸

でも、労政事務所の相談件数というのは電話を含むんでしょう。

山川

ええ。それを含めて約4万件ということです。

道幸

北海道でも3000件ありますけれど。もっとも、これは電話とか、何か相談と言えるかどうかもわからないようなものも含みますから。ただ、具体的な紛争処理の場に持ってくるまでのニーズがあるかどうかはわかりません。

山川

これは紛争処理という観念をどう考えるかにも関わってきて、最初の菅野=諏訪論文に戻るんですけれども、交渉力のサポートとしての情報提供としては意味があるのではないかと思います。

道幸

企業オンブズマンとかね。この問題は、企業内における苦情処理みたいなものを一緒に考えなければうまく機能しないのではないでしょうか。

中嶋

毛塚さんの論文の235頁の左上段の最後から……。たとえば企業内処理手続の通過を求めることが前提となるようなことを書いていますよね、括弧でね。これがしかし、一番利用率が低いんですよね、企業内コミュニケーション調査(労働省)を読むと。だから、形としてはいいけれども実際は機能していかないおそれがある。これがほとんど機能しないというのは、不満の主が、要するに組合内少数派とか、そういう人たちだからです。つまり多数派が持っている集団的な力に、いわば無視、軽視されている人たちなので、企業内処理手続に進むことは望ましいけれども、企業内手続はあまり機能していない。そうすると、いわば少数派としては、自分の問題は外に持ち出すというほかない。単なる相談ではなくて、もう少しオーソリティがあるようなところで。

道幸

でも、少数派でも、組合があればまだ発言権がある。むしろ、ないというのが圧倒的に多いという感じがしますね。ともかくそういう形で企業を社会化する、つまり、あるルールのもとで人事管理しなきゃだめだというのを明らかにする必要があります。

山川

そうすると、調整による個別紛争処理システムができたとしても、裁判の機能自体は重要であり続けるということでしょうか。

道幸

そうでしょうね。私の感じでは、労働委員会で和解がうまく機能する前提は、調整が失敗したら救済命令だ、救済命令では使用者はこういう形で命じられる、つまり、何かの形で強制力があるから、和解がうまくいくという側面がある。そういう意味では、調整システムがあったとしても、これがうまくいかなければ裁判に行って、裁判では特定の判断が出るということを前提とした場合、調整自体がうまくいくと思います。

中嶋

合法的な脅かしというかね。だから和解も進められるし、それに応ずるんでしょうね、多分。

道幸

それは痛感しましたね。なあなあ、まあまあ、ボス交で解決するというのは少ない。

山川

裁判所に行けばこういう結果になるという予測を示すことが重要ですね。

道幸

もう一つは、会社も組合もバックがある。たとえば和解に出てくる人事担当者というのは、会社の内部で和解内容を説明しないとだめなんです。その場合に、力関係で決まりましたというよりは、ここでこう決めなければ、結局こういう結論になります、といったほうが説得力が増します。そういう意味では法律のルールとか、強制のシステムというのは和解を促進する機能を果たしていると思います。

中嶋

そうですね。だから、私も判定はどうなるかといったのも、それが判定できるのであれば、相当和解を進めやすいけれども、両方の意見を聞くというだけではなかなかどうでしょうかねという……。

山川

だからといって、もし労働委員会制度を改編して個別紛争処理システムをつくるとした場合に、判定まで行わせるということには直ちにはならないので、裁判所に行った場合にはこうなるというノウハウと専門的知識を持っているかということでしょうね。

中嶋

それはそうかもしれない。これはこれぐらいにします。


不当労働行為

論文紹介「労働委員会命令の司法審査」

中嶋

6番目のグループは不当労働行為についてです。山川さん、お願いします。

山川

それでは、道幸哲也「労働委員会命令の司法審査」に移ります。この論文は、不当労働行為事件における労働委員会命令の取消訴訟につきまして、これまで十分議論されてこなかった問題を検討して、労働委員会命令の特質に即した取消訴訟のあり方を検証する論文です。

内容としては、まず取消訴訟の実態について、ヒアリングに基づき、再審査と行政訴訟がどう選択されているか、命令の取消率はどのくらいか、あるいは労働委員会は取消訴訟にどう対応しているかなどを明らかにいたします。

次に、取消訴訟をめぐる判例法理の展開を詳しく紹介したうえ、特に訴えの利益の問題や取り消しの範囲の問題について、最近の裁判例の問題点を指摘いたします。また、取り消しの範囲については、救済方法の一部が違法と判断された場合に、どの範囲で命令を取り消すか、あるいは、そもそも取消訴訟の対象である命令の個数をどう判断していくかという問題があると指摘しております。

続きまして、アメリカにおける取消訴訟の状況を紹介した後に、労働委員会命令の独自性に即した取消訴訟の法理が提唱されております。まず、取消訴訟の対象、ないし、訴訟物と取り消しの範囲について不当労働行為の個数ごとに判断するという裁判所サイドの見解に対して疑問を提示しまして、むしろ命令の違法事由にも留意しつつ、命令の主文を基準とする考え方によるべきではないかという意見を示しております。具体的には、(1)たとえば個々の組合員に対する救済措置は、それぞれ可分のものであって、不当労働行為の成立が認められない組合員についてはその部分だけ取り消される、(2)複数の不当労働行為について包括的な救済命令が出された場合は、それだけの救済命令を出すに足りる不当労働行為があったかどうかを判断して、そうした不当労働行為がない場合には全体が取り消される、(3)特定の救済方法、たとえばポスト・ノーティスが違法とされた場合には、主文ごとに取り消すのが原則であるけれども、複数の救済方法が関連性を持つときには双方とも取り消されると論じます。

それから、労働委員会の裁量等の関連で問題がなければ、救済方法の一部の取り消し、たとえば中間収入を控除しない部分のみの取り消しができると述べられております。また、新証拠の提出制限につきましては、民事訴訟法139条による、時期に遅れた攻撃防御方法の却下という手段の活用を提唱いたしまして、最後に、訴えの利益に関して、命令の履行がなされたかどうか、あるいは事情変更によって履行の不能が生じたかどうかなどの問題を考える場合には、司法救済とは別個の行政救済独自の立場から判定すべきであると主張しております。

訴訟手続論の検討

コメントとしては、労働委員会命令の取消訴訟につきましては、従来、司法審査の範囲の問題を中心に議論されてきておりますけれども、訴訟手続に関わる問題のような行政訴訟のあり方につきまして、学者サイドから突っ込んだ検討を行った初めての文献として意義が大きいと思います。しかも、内容としても、労働委員会命令の行政救済としての特色を踏まえた考察がなされていると感じました。たとえば、命令後の事情変更をめぐる訴えの利益の判断につきまして、行政救済に即した判断をすべきであるという主張には同感いたします。

他方で、取消訴訟の対象について、不当労働行為の個数に着目するという実務の基準を批判して、主文に着目するという基準が唱えられておりますが、その基準には、なお議論の余地があると思います。たとえば、複数の組合員に対して救済がなされた場合に、主文が一つの場合でも組合員ごとに取り消すとされていますが、それは主文ごとに考えるというアプローチからは徹底しないのではないかという感じがありました。ただ、このアプローチの実際上の意味は、主文ごとに考えることによって、なるべく争いのない部分の確定を早くしようという方向性にあるのではないかと思われます。

実務上はさまざまな問題が生じてくると思いますけれども、いずれにしても、労働法学者がほとんど考えてこなかった、いわば行政訴訟プロパーの問題について、不当労働行為の特色、あるいは実務の経験を踏まえた考察を行ったものとして貴重であると思いました。

討論

中嶋

どうもありがとうございました。確かに今までの労働委員会命令と裁判所の関係というか、司法審査問題というか、これには一種の精神論争の側面があったと思います。裁判所は裁量を尊重せよとか、労委は自由闊達にやれとか、大胆不敵にやれとか。私自身もそうでした。もはや精神論ではどうにもならない。今度の道幸論文はかつての司法研修所編「救済命令等の取消訴訟の処理に関する研究」の学者版のような側面があり、学界でも遅ればせながら始まったという感想を持ちました。ところで、研修所編のあの論文とは大分違うんですか。

道幸

当時とは判例の数も違うし、最近、この種の問題が随分議論されていますから問題点が明確になっています。それからもう一つは、あの本は裁判官の立場から書いているんです。本論文は、どちらかといえば労働委員会の立場から書いているという点で、具体的な中身、特に命令の個数とかがかなり違います。

主文基準の意味

中嶋

訴えの利益とか、認容部分は早く確定させろとか、これはさほど難問が生じなくてもいいように思うけれども、やっぱり裁判所としては不当労働行為の個数とかという点になるとなかなか譲れない点でしょうね、どうですか。山川さん。

山川

譲れないかと言われると難しいんですけれども、ただ、行政処分の個数は不当労働行為の個数によって決まるという裁判所の見解は、基準としてはそれなりに明確なものであると考えます。

中嶋

それ自体はね。

山川

応用面になると問題は出てきます。これに対し、道幸論文の基準は、主文に着目するとありますが、別にそれだけが唯一の基準ではないわけですか。

道幸

申立ての一部が認容された命令を考えると、組合のほうから棄却された部分について取消訴訟を提起したいという場合に、今までの議論だったら、取消訴訟を提起すると命令全体が確定しないことになる。そうすると、使用者が争わない部分についても確定しませんから、強制の方法がない。ただ、使用者が履行すると問題はないんですけれども。組合としては、非常にリスクを負わなければ取消訴訟を提起できないというのはやはりおかしいのではないかというのが、個数を考える際の基本的な問題意識でした。

中嶋

つまり、一部は棄却されるとしても、ほかの認容された部分は早く確定したいわけですよね、中立側としては。

道幸

事件としてはトータルだという側面も、当然ありますが、少なくとも取消訴訟の段階になると、少しドライに考えたほうがいいんじゃないか。和解する場合は別ですけれども。強制の仕方ではなるベく確定するほうに考えたほうがいいのではないかというのが基本的な立場です。あともう一つ言わせていただければ、結局、この種の取消訴訟でも、多くの裁判官は普通の行政処分を前提とした法理を適用しています。しかし、労働委員会命令の特殊性を踏まえて、それを修正した理屈が必要ではないかということです。

山川

そのことと命令主文に着目する基準はどう関連してくるのでしょうか。

道幸

まず、不当労働行為の個数というのははっきりわからない。

中嶋

裁量ですね。道幸さんの命令主文説というのは、いわば労働委員会の裁量を前提にして、そういうふうに裁量でやったものを対象にすベきだという考えなんでしょう。

道幸

裁量重視といえますが、命令主文に注目しても、どういう命令主文にするかについて明確なルールはないんですね。だから、その点では、命令主文説に大きな意味があるのではなくて、なるベく早く確定させるための理屈をどう考えるかということなんです。

中嶋

主文にしたほうが確定が早い、迅速であると。

道幸

その部分は確定しているから履行しなさいということですから。同時に、取消訴訟の具体的理由に応じて全然違うということにもなります。

山川

そうすると、たとえばA、B、Cというまったく別個の不当労働行為があったとして、主文においてまとめて一つのポスト・ノーティスを出したとしますね。その場合に、Cという不当労働行為だけは不成立とされた場合には、どういう処理になるのでしょうか。

道幸

それは可分かどうかということになりますね。不当労働行為の個数と主文がどう対応するかの問題です。たとえば団交拒否の例で考えると、団交拒否が3回あったけれども、救済命令は一つだ。その3回のうち一つが不当労働行為でないという判断をされた場合にも、「団交に応じなさい」というように、救済命令はまったく同じことがあります。

不当労働行為の成否と救済命令との関係が密接に連動する場合と連動しない場合があるから、無限に細かい議論になっていっていく。だから、こういうあまり細かい議論は事件処理上適切でないという議論はありうるでしょうけれども。基本的には、取消事由との関係でどの範囲で主文を取り消すかということを考えればいいのではないかと思います。

命令主文と不当労働行為の個数

山川

判決主文で具体的に取り消すのはまさに命令主文ですけれども、実務の基準では、理論上は、主文としてはひとつでも不当労働行為の個数に応じた行政処分が存在するのではないでしょうか。たとえば、一つの主文であっても、不当労働行為が三つあった場合には、三つの命令が併存していると考えるのではないでしょうか。

道幸

そういう場合はね。でも、一つの不当労働行為で三つのというのはどういう場合ですか。

山川

三つの不当労働行為でも主文が1個のポスト・ノーティスにまとめられた場合ですが、その場合には三つの命令が併存していると考えるのではないでしょうか。

中嶋

一つの文章に三つの命令が包含されているわけですね。

山川

ただ、現実に取り消す際には、もちろん三つの命令を取り消すとは言わないわけですね。ですから、理論上の問題ではあるんですけれども。

道幸

今言った三つというのは具体的にどういうことですか。

山川

継続する行為の問題があるので難しいんですけれども、たとえば先ほどの団交拒否について、解雇についての団交拒否が成立し、もう一つ、配転についての団交拒否が成立し、さらに、出向についての団交拒否が成立する場合、主文は一つで、解雇、配転、出向について、団交拒否してはいけないという命令になったとすると、命令主文は一つだけれども、理論上は三つの不当労働行為に対する救済命令が併存しているということにならないでしょうか。実務の基準から言えばですね。

道幸

今の場合はそのとおりだと思います。たとえば中間収入控除の問題で、救済命令の違法性を理由として取り消したような場合は、不当労働行為の成否の問題ではないわけです。そういう場合は、一つの不当労働行為だけれども、取り消すのはその部分だけです。だから、不当労働行為の個数と救済命令が対応しているような場合は、一応、どっちの議論でもあまり違いはないと思います。不当労働行為の個数と救済命令の主文がきれいに対応していない場合、どう考えるかという問題だと思います。

山川

それはまさに労働委員会に裁量があるがゆえに、そういうケースが起きてくる。

道幸

裁量があるし、同時に救済命令の書き方というのは申立書の記載にも影響されるので、バック・ペイと原職復帰を一つの文書で書く場合と、二つに分ける場合とあるんですね。

中嶋

道幸さんは判例等を詳細に引いてはいるけれども、やっぱり幾つかの個別解題のような形でやってみないとちょっとよくわからないですね。だから、道幸さんには、意図的にそういう形で展開してほしかった。

道幸

そうですね。ただ、問題に関しては、さっき言ったように、なるべく分離して確定させるための理屈だということです。

山川

逆に言うと、なるべく早く確定させるように命令主文を工夫するということですね。

道幸

そうなるでしょうね。

中嶋

そんなことでよろしいですか。今後に期待しまして、これで終わります。


国際労働関係

論文紹介「国際的労働関係と労働基準法」「国内における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」「国外における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」

中嶋

七つ目のグループで、国際労働関係についての諸論文を簡単に私からご紹介します。まず、1994年10月の日本労働法学会で「国際的労働関係の法的課題」という統一テーマでシンポジウムが行われました。その際には、報告者が、労働法関係から4人、国際私法学関係から1人登場しまして、報告及びシンポジウムが行われました。きょう取り上げるのは、その中での労働法学の立場からの荒木さんと野川さんの二つの論文を、そしてその前に、それらと時期を同じくして『季刊労働法』に発表された山川さんの論文を取り上げます。

したがって、山川隆一「国際的労働関係と労働基準法」、荒木尚志「国内における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」、野川忍「国外における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」の3本ということになります。しかし、重複する部分もありこれを並列的に取り上げてもあまり意味がないと思いますので、むしろ総論と労働基準法部分を山川論文から、そして、集団的労働法関係に関しては荒木論文から、そして、労働市場法論に関しましては野川論文からというふうに、パッチワークですが、時間の関係でそういうふうにご了承いただきたいと思います。

実はこの国際的労働関係をめぐる裁判論は、相当以前から始まっているにも関わらず、労働法学研究者は、いわばなかなか手を出しにくかったテーマでありまして、これまで多くの論説は、「国際的労働関係」を扱う場合にも国際私法学者によってなされてきたと言っていいと思います。もちろん、まったく労働法関係に足跡がないわけではなくて、これらの論文を見れば、幾つか引いてありますが、基本的な論争が始まったというほどではなかったと思います。それが、これらの今回の諸論文をきっかけにして、労働法学内部においても国際的労働関係の法的課題が論じられるきっかけがつくられたという意味で、非常に画期的と言うのが大げさであれば、高く評価すべきことに異論はなかろうと思います。

論点は四つあります。第1に労働渉外事件における国際裁判管轄の問題、つまり、法廷地の問題、第2に、労働渉外事件にいかなる国の労働法が適用されるか、その決定基準はいかなるものであるかという、いわゆる抵触法の問題、第3に、労働諸法規はいかなる地域的適用範囲を有するかという問題、第4には、その結果、どのように労使の権利義務が規律されるかという、実質法と言われている問題です。

まず、山川論文はこのうちの第2と第3を主として扱っています。

そこでは国際的労働関係の意義、つまり、渉外性を持つことがこのテーマの前提ですから、渉外性を持つというのはどういうことかということが論じられまして、個別的労働関係と団体的労使関係、労働市場法の三つについて、たとえばこういう場合、たとえばこういう場合というふうに挙げられています。

そこで、山川さんは、適用法規の決定に関しては二つの枠組みがあるのだということを指摘します。第1が、国際私法上の準拠法の選択のアプローチ、これは我が国の国際私法上の法例7条を中心としたアプローチの仕方、その例としては実際上、裁判所ではシンガー・ソーイング・メシーン判決があったということ。第2のアプローチの仕方は、問題となっている労働関係に、問題となっている法規の適用範囲が及ぶかという、いわゆる地域的適用範囲の確定というアプローチの仕方。

通常、国際私法の準拠法の選択の仕方というのは、私法取引法のグローバルな性質というのに着目するので、どこの国の法を適用しても構わないのだという、合理性の要請がある。この結果、外国法であっても構わないのだから、外国法の適用可能性があることになる。そうすると、当然、国内法との抵触が生ずる可能性がある。このことを考えて各国は、裁判所にとって渉外事案に対する法の選択基準の定め方、いわゆる抵触規則を定めることになる。それが日本では法例だ、こういうような順序になります。それから、地域的適用範囲の確定の手法は、主として公法の適用の際にとられる手法でありまして、公権力の行使に関することだから、自国法を適用するのが通常である。すなわち公法の属地性、すなわち外国公法不適用の原則が生ずる。そこで裁判所は、当該事案が自国の法規の地域的適用範囲に含まれるかどうかを検討することになる。そうすると、次の難問は、労働法はこのうちのどちらに関わるか、あるいは両方に関わるのではないかということが問題意識の出発点で、どういうふうにこれを確定するかということだろうと思います。もっとも、山川論文によると、この二つのほかに、近時、新しいアプローチの仕方が検討され始めたということが紹介されていますが、これは省略します。少し、詳細に紹介してみます。

第1は、労働契約の準奏法に関してです。

我が国の法制及び法理論を総合しますと、準拠法選択の確定の順序は、[1]当事者の意思(法例7条1項)、[2]準拠法に関する当事者の黙示の意思の探索(労務給付地を推定するのが一般的であるとされます)、[3]給付地が一定しないときには営業所所在地の法を適用するということ、[4]最後に、行為地法(契約締結地法=法例第7条2項)であると考えられ、諸外国の事情も概ね同様であると述ベています。

そこで、こういうふうにして準拠法が決定されたならば、これは徹底的に自由に貫かれるか。当事者の意思、あるいは黙示の意思というものが自由に貫かれるかというと、労働法の場合はそうはいかない。特に、労働基準法についてはそうはいかないのだということが述ベられます。そこで第2に、当事者自治の限界、換言すれば公法的規制の斟酌に関して考察が加えられていきます。そこにも三つの手法がありまして、まず公序理論による規制(法令7条を前提とした、その例外としての法令33条を適用する方法)、次に、公法の属地的適用理論による規制(法令とは別枠の手法とされます)、さらに、強行法規の特別連結理論による規制(結果的に法令7条によらずに、労務給付地という特別な連結点により連結させて適用するというもののようです)、というのがそれらです。

ちなみに、現在の状況としては、我が国の裁判例は、準拠法や域外適用に触れることなく労基法を適用してきた。有名な三和プラント事件なんか典型的なものです。政府、すなわち労働省の行政解釈では、労基法の公法的側面については属地主義、私法的側面については法令ないし給付地法が適用される。こういうことのようです。

そこで、第3に、それではどの方向がいいかということになります。山川さんの結論は次のようなものです。

[1]労基法の刑罰法規の側面は、同法8条のいわゆる「事業」という概念による、一種の現場適用主義からすると、当然、日本国内に所在する事業を対象としているのである。したがって、国内における違反行為が制裁の対象となる。[2]労基法の持つ行政取締法規としての側面については、やはり刑法の考え方に従って、国内の事業について、国内での行為に対してのみ適用される。[3]それから、労基法が持つ民事法的側面についてです。これは民法などと同様に、法令7条の選択ルールによる場合もあるが、当事者の選択により労基法の適用も排除できるとすると、刑事罰、行政的監督により実効性を確保しようとする労基法の規制システムとは合致しないことなどを挙げて、労基法は絶対的強行法規性を有するのだから、契約準拠法のいかんにかかわらず、渉外事犯に関しても直接的に強行的に適用される。こういうふうな考え方をとります。

第4に、結論として、山川さんは、労基法それ自体が地域的適用範囲を定めていると解釈されることを強調しまして、同法は日本国内に所在する「事業」に適用され、同法違反行為が国内においてなされた場合に限って適用が認められる、他方、民事責任の根拠としては労働者の所属「事業」が国内にある限り、違反行為が外国で行われた場合にも適用があると述べています。

次は、荒木論文についてです。

荒木さんも、労基法の適用に関しては、山川さんと大差ないと思ったんですが、ただ、荒木氏は、罰則の担保のない個別的労働関係法の適用法規の決定について触れております。たとえば、男女雇用機会均等法を取り上げまして、これは絶対的強行規定とは解されないから、法令7条による選択を認めた上で同33条の公序を柔軟に解釈して、対処すべきである。それから、判例法理の扱いはどうかということなんですが、これは公序理論の操作によって個別的に対応すべきだと述べています。

それから、集団的労働関係につきましては、一般に契約当事者の個人の意思によって処理できない事柄であるから、そもそも準拠法選択の自由は認められない。そのうちでも不当労働行為制度について特に独立して論じますが、これについても行政救済制度であるから、公法的規制として属地的適用に服するのだと、こう述べております。ただ、ちょっと問題にしているのは、在日外資系従業員が外国本社の組合に加入して、外国本社組合が在日会社に団交を申し込んで拒否された場合には、労働委員会に救済を求められるかという問題を立てまして、これには幾つか考え方があることを指摘したうえで、荒木氏は、資格に合致すれば申立ては認められると、こういう考えを示しております。しかし、基本的には、労基法ほどの難しい問題は選択問題に関してあまりなさそうだという一般的な印象は受けるわけです。

それから、三つ目の野川論文は国外における、つまり海外勤務の場合の法適用を中心に、労働市場法の国外適用についても論じたものです。なお、ここには国際的労働関係法全体の論点については、野川さんの非常に要領のいいが作成されていますので、これをそのまま掲げておきます。

[1]個別労働関係(労働給付地国外)
国籍・本拠地
労働者 日本 日本 外国 外国
使用者 日本 外国 日本 外国
(a) (b) (c) (d)
  • (a)海外勤務、派遣法上の海外派遣
  • (b)日本人の海外雇用
  • (c)現地人従業員の雇用関係
  • (d)外国人の外国での雇用関係
[2]集団労使関係(労使関係展開地国外)
住所・所在地
労働組合 日本 日本 外国 外国
使用者 日本 外国 日本 外国
(a) (b) (c) (d)
  • (a)国外組合員の法的地位
  • (b)国内労働組合の海外活動
  • (c)現地従業員組合の活動
  • (d)海外の労働組合の活動
[3]労働市場(労働市場の領域ないし参入関連行為のいずれかが国外)
領域ないし行為地
労働市場 日本 海外
関連行為 海外 日本
(a) (b)
  • (a)日本を目的とする海外での職業紹介、労働者派遣等
  • (b)海外労働市場への労働者派遣等

出所:野川忍前掲論文。

さて、労働市場法との関係に関しては、二つが論じられます。

第1は、国外における国内労働市場への参入を目的とする行為。その際、原則的には職安法の地域的適用範囲が国内に限られることから職安法は不適用ということになるが、ただし、求人、求職の申込みの受理が国内で行われるときには職安法の適用を認めるべきことという平成5年の労働省「国外にわたる労働力需給調整制度委員会」報告書を支持するもののようです。また、労働者供給に関しては供給業者が国内におり、国外の労働者を国外において国内の事業者に供給する場合には、当該供給行為が国内に対して行われるものとして取り扱い、職安法の適用を是認します。さらに、国外から国内への労働者派遣については、派遣元事業主が国内にいる場合の派遣方の適用は肯定し、派遣元事業主が国外におり、かつ国外に所在する労働者を国内の派遣先に派遣する場合には、現今の国外からの外国人労働者の派遣に対する有効な規制という観点からは十分ではないことにはなるものの、国外に対する指導監督の方法がないことなどから、やはり派遣法の適用は難しいのではないかと考えておられるようです。

第2は、国外の労働市場への参入を目的とする国内の行為です。この点、国外への国内からの派遣に関しては、労働者派遣法23条3項が、労働大臣への届出を条件として、このような「海外派遣」への同法の適用を認めているから問題なく、むしろ国外派遣中の労働関係に関する法の適用が問題であると指摘しています。

これら、3論文に対するコメントということになりますが、ここにはご本人の山川さんがおられますから、時間の関係もあり、議論を通してそれらを見ていくということにしたいと思います。

道幸さん、どうですか。

討論

道幸

こういう難しい問題は、知識や能力が不足していてほとんど理解できません。たとえば、外国籍の企業が日本で営業活動を行い、かつ日本の裁判所である問題を処理する際に、なぜ外国法を適用できるのか。結局、契約の自由だからということなんですか。公法の部分はちょっと別でしょうけれども、私法的な意味では脱法的な行為をしてもいいという議論なんですか。無知をさらした質問ですけれど。

準拠法選択の自由

山川

民法であれば、渉外性のある問題については、契約に関する準拠法選択の自由があるわけですね。それと同じように考えていいかどうかですが、私自身は労基法は選択の対象にはならないと考えております。

中嶋

質問の意味は、そもそも準拠法選択の自由というのはなぜ生まれたかということなんでしょう。

山川

その点は、そもそも契約は当事者の意思でつくり出すものであるから、渉外事件の準拠法も当事者の意思で左右してよいと、一般的には言われています。何かわかったようなわからないような話ですが。

道幸

日本人同士の間ではできないんでしょう。日本の会社で日本人を雇った場合に、アメリカ法に基づいて雇うということはできませんか。

山川

それはできないですね。

中嶋

労基法については私も強い公法的性格を持っているからご指摘でいいと思うんですけれども、そのほかの労働法規ですね。荒木さんが扱ったようなことについては、山川さんは荒木さんとは意見が違うんですか。

山川

まだ自分ではっきり結論が出ていないのですけれども、問題は、たとえば、雇用機会均等法のような罰則がない法律ですね。基本的な視点としては、罰則がなくても、行政の関与が非常に強いものについては当事者の準拠法選択の自由は排除されると思っています。たとえば、アメリカの雇用差別禁止法は罰則がありませんけれども、当事者が外国企業であれ、選択によってその適用を排除することは考えられないと思います。それは、国の政策としてそういう立法を行政の取締りという形で実施していく意思があるからだと思います。

ただ、雇用機会均等法は、行政の関与もそう強くないわけですね。かつ、努力義務規定もありますから、結論的には、現在の規制システムを前提にすれば、準拠法の枠組みで準拠法選択を認めて、あとは、荒木論文のように、場合によって公序による制約を活用するというアプローチでいいかなとも考え始めています。これは比較法的には異例のことで、外国人は、雇用平等法が当事者の選択によって排除されるのはおかしいと思うかもしれませんが、それは日本の雇用機会均等法の規制が弱いことの結果ではないかと思います。

道幸

ボーダーラインの例ですか。

山川

ボーダーラインということですね。いずれにせよ、基本的には、刑罰の有無が唯一の基準ではないと思います。

道幸

つまり、行政だから国の政策としての側面があるということになれば、裁判システムである政策を実施しているという点はどうですか。行政と特定の契約の司法上の強制とは全然違うという議論ですね。

実質法的指定

中嶋

あと、準拠法指定とともに「実質法の指定」というものが取り扱われていますが、あれは広く認められた概念なんですか。

山川

ええ。労基法を選択するという場合、通常の抵触法的指定では、労基法自体が契約内容とは別に適用されることになりますが、実質法的指定とは、契約の中に労基法の条文を書く代わりに、労基法によって契約を規律すると約束することです。

中嶋

そうすると、個別的当事者が契約すべきことについて、この法律がそれにかわりますということを約定として行うわけですね。

山川

ええ。

中嶋

それはあなたの考えだと、外国の何か「公正基準」のようなものを日本で適用しようとしても、それも当然できないわけでしょう。

山川

たとえば、アメリカの年齢差別禁止法については、アメリカ系企業が日本でアメリカ人を雇っている場合、域外適用がなされますから、年齢差別は日本においてもできないんです。しかし、その場合でも、アメリカの裁判所ではなく日本の裁判所が年齢差別禁止法を適用することは予定されていないと思います。ただ、契約内容として、うちの会社では年齢差別をしませんということを定めるのは自由ですね。そうすると、そういう条項を書く代わりに、契約内容は年齢差別禁止法によると書くこともできるはずですね。それが実質法的指定です。つまり、法律を適用しようとするのではなくて、契約の中身を法律と同じにするということです。それから、公法の属地性理論と私見との違いですが、両者に共通性はありますが、私のアプローチは、公法という概念に依拠するよりは、労基法という個々の法規の特殊性に着目しているんですね。

中嶋

そうすると、公法の属地的適用論理というのは別個にあるけれども、労基法の独自性を考えれば、当然それに当たるということですね。

集団的労使関係の問題

山川

そうですね。話題は変わりますが、荒木論文と野川論文で出てきた集団的労使関係には、非常に難しい問題があります。つまり、労使関係の所在地と具体的に問題となる行為の所在地が別になることがありうるわけですね。たとえば、海外進出企業で労働問題が起きたが、現地ではらちがあかないから、組合員が日本の本店にやってきて団交要求をして拒否されたという場合は、労使関係は海外だけれども、不当労働行為自体は国内で起きている。また、逆に、日本国内の労使関係での組合活動家が海外の支店に派遣されている場合に、そこで嫌がらせ行為をなされたというケースは、労使関係は国内ですけれども、嫌がらせという不当労働行為は海外で行われています。そういう場合には、労使関係地を基準とするのか、不当労働行為地を基準とするのか、という問題が生じます。争議行為でも同じ問題が起きますけれども、その辺が難しいところです。

道幸

ありうることですね。

中嶋

前者の問題に関しては、国外組合からの救済申立ての道も閉ざしたくないという考えのようですね。

道幸

今の場合は両方とも労働委員会で取り扱えるという議論ではないの。

山川

荒木論文では、日本の主権領域内で展開されている労使関係に起因した不当労働行為については日本の労働委員会が取り扱いうると言っていますが、労使関係に起因した不当労働行為という観念をどこまで広げられるかということですね。

道幸

さっきの二つの例だったらどうですか。

山川

さっきの海外進出企業の例では、労使関係は国外ですね。

道幸

ただ、日本で問題が発生した形にしたら、もう国内問題になるのでしょう。

山川

そうですね。不当労働行為地は日本ですし、さらに、労使関係の意味をどう考えるか。

道幸

だから、どこで考えるかですね。たとえば、スミダ電気みたいなことで、韓国から団交要求したらおかしいけれども、組合員が日本に来て団交を要求したらどうなりますか。

山川

野川論文は、現地の組合員が日本にやってきて団交を拒否された場合には、申立てができるという方向を指向するようですね。確かに団交拒否という不当労働行為自体は国内で生じたわけですね。ただ、それによる被害も国内で生じたと考えるんでしょうか。それとも、労使関係に対する悪影響は国外で生じたと考えるのか。

中嶋

労使関係に起因するといっても、怪しげな指令をしたのが問題なのか、現場で拒否したのが問題なのかというようなことがよくわからないね。

いずれにしても、私も今後やってみたいテーマではある。

では、この議論はこれくらいにします。

最後に、全体的な感想を簡単にお願いします。


おわりに

道幸

非常に多様なテーマが多様なアプローチでいろいろな議論がなされており、労働法は大きく変わりつつあるという印象を強く受けました。取り上げた論文は力作が多く、非常に興味深く読みました。とりわけ、政策論とは別に一種の権利論みたいなものを新たに構築する方向にあるのかどうか、もしもあるとすると、どういう観点から―たとえば個人の権利とか、自主決定とか、自立とかの形で議論が学界全体で形成されていくのか。もしくは、全体的に労働法学自体が、解体していくのか、ちょうどターニングポイントにある時期ではないかという感じを受けました。

山川

今回は豊作であったように感じています。対象に選ばれたものは非常に緻密といいますか、突き詰めた検討を行っている論文が多いと思います。やはり時代の状況などもありまして、かつて花見先生がおっしゃったように(『労働の世界について考える』183頁)、どうしてもこの問題を解決しなければならないという切実さが現れているような気がします。その意味で、読むのに疲れたとしても、読後感は非常によいものでした。

また、今おっしゃられたように、伝統的な労働法の領域にとらわれない、学際的、あるいは分野横断的な論文が多くなりました。現代の社会の中で、労働者のトータルな幸福を考えるには、そのように検討範囲を広げざるをえないのかなという気がいたします。もちろん伝統的な分野でも、労働法における権利義務というものをどう考えていくかなど、まだ未解決な問題はたくさん残っていると思います。

中嶋

私は、前回もこの検討会のメンバーだったのですが、まず前回は取り上げたい論文は、ゼロとは言わないけれども、ほんとうに少なかったということを述べておりました。今回は幸いにして、口はばったいようですが、非常に豊作で、とてもよかったなと思います。今回対象論文を絞るのも大分苦労しました。

それから、多彩になったということにつきましては、やはり、たとえば岩村さんの論文とか、水町さんの論文、あるいは国際労働関係の3論文ですね、もう我々は古いというか、対応できなくなってきたなと、我ながら寂しい思いがする反面、労働法の発展ということでは大変喜ばしいことだと考えております。

また、次回はメンバーの選定も含め、もっと立体的に、広範に、この座談会の取り上げ方について日本労働研究機構に考えていただきたい。これで座談会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。


労働法主要文献目録(1993~95年)

Ⅰ 単行本

  1. 青木宗也・金子征史『労働関係法〈改訂版〉』日本評論社
  2. 青木宗也・中山和久編著『JRにおける労働者の権利』日本評論社
  3. 青木宗也・片岡曻編『労働基準法Ⅰ』,『労働基準法Ⅱ』青林書院
  4. 秋田成就編著『労働契約の法理論―イギリスと日本』総合労働研究所
  5. 秋田成就編著『日本の雇用慣行の変化と法(法政大学現代法研究所叢書13)」法政大学現代法研究所(発売=法政大学出版局)
  6. 安西愈『労働災害の民事責任と損害賠償―その理論と取扱い実務(続)─労働災害の損害賠償論』労災問題研究所
  7. 安西愈『建設労働災害と発注者の責任』労働基準調査会
  8. 石田眞『近代雇用契約法の形成』日本評論社
  9. 石松亮二・宮崎鎮雄・平川亮一『現代労働法〈改訂版〉』中央経済社
  10. 伊藤博義・保原喜志夫・山口浩一郎編外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』有斐閣
  11. 大和田敢太『フランス労働法の研究』文理閣
  12. 片岡曻『労働法(1)―総論・労働団体法〈第3版〉(有斐閣双書)』有斐閣
  13. 片岡曻『労働法(2)―労働者保護法〈第3版〉』有斐閣
  14. 片岡曻・前田達男編『労働法』青林書院
  15. 片岡曻・萬井隆令・西谷敏編『労使紛争と法』有斐閣
  16. 久保敬治『労働協約法の研究』有斐閣
  17. 慶谷淑夫『労働法教室』労働法令協会
  18. 小西國友・渡辺章・中嶋士元也『労働関係法〈第2版〉』有斐閣
  19. 斉藤将『職業能力開発法体系』酒井書店・育英堂
  20. 坂本重雄『団体交渉権論』日本評論社
  21. 下井隆史『労使関係法』有斐閣
  22. 菅野和夫・諏訪康雄『判例で学ぶ雇用関係の法理』総合労働研究所
  23. 菅野和夫『労働法〈第4版〉(法律学講座双書)』弘文堂
  24. 鈴木芳明『労働組合統制処分論』信山社
  25. 高梨昌『改定版 新たな雇用政策の展開』労働行政研究所
  26. 高梨昌『これからの雇用政策の基調』日本労働研究機構
  27. 滝川誠男『労働法講義〈3訂版〉』中央経済社
  28. 蓼沼謙一・佐々木實雄・苑原俊明・藤原稔弘『わが国における外国人労働者問題』八千代国際大学国際研究センター
  29. 塚本重頼『労使関係法制の比較法的研究』中央大学出版部
  30. 道幸哲也『職場における自立とプライヴァシー』日本評論社
  31. 中窪裕也・和田肇・野田進『労働法の世界』有斐閣
  32. 中窪裕也『アメリカ労働法』弘文堂
  33. 中島通子・山田省三・中下裕子『男女同一賃金』有斐閣
  34. 中野育男『スイス労働契約の研究』総合労働研究所
  35. 七瀬時雄『雇用法制の展開』労務行政研究所
  36. 西谷敏『ゆとり社会の条件―日本とドイツの労働者権』労働旬報社
  37. 野川忍『外国人労働者法』信山社
  38. 野沢浩『労使紛争処理システムの現代的課題―構造変化の中で』労働科学研究所出版局
  39. 萩澤清彦・山口俊夫編『労働法読本〈第3版〉(有斐閣選書50)』有斐閣
  40. ペーター・ハナウ=クラウス・アドマイド著/手塚和彰=阿久澤利明訳『ドイツ労働法』信山社
  41. 浜田冨士郎『就業規則法の研究(神戸法学双書27)』神戸大学研究双書刊行会(発売=有斐閣)
  42. 平岡一實『労働法学の課題』創栄出版
  43. 古西信夫 古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』ありえす書房
  44. 本多淳亮・村下博編『外国人労働者問題の展望』大阪経済法科大学出版部
  45. 馬渡淳一郎『三者間労務供給契約の研究―労働者派遣法時代の労働契約論』総合労働研究所
  46. 籾山錚吾『EC労働法の展開と現状』朝日大学法制研究所
  47. 安枝英訷・西村健一郎『労働法〈第4版〉(有要閣双書プリマ・シリーズ16)』有斐閣
  48. 安枝英訷『労働の法と政策』有斐閣
  49. 山口浩一郎・菅野和夫・西谷敏編『労働判例百選(第六版)』(別冊ジュリスト134号)
  50. 山本吉人『労働委員会命令と司法審査』有斐閣
  51. 山本吉人『労働時間』有斐閣
  52. 山本吉人『実務労働時間法』産業労働調査所
  53. 萬井隆令・西谷敏編著『労働法(1)─集団的労働関係法制(NJ叢書)』法律文化社
  54. M.レーヴィッシュ・西谷敏/吉田美喜夫・出口雅久・米津孝司訳『比較労働法─日本・ドイツ・EC(国際比較法シリーズ)』晃洋書房
  55. M.レーヴィッシュ著/西谷敏・中島正雄・米津孝司・村中孝史訳『現代ドイツ労働法』法律文化社
  56. 労働省労政局労働法規課編著『フランスの労使関係法制』日本労働研究機構
  57. 脇田滋『労働法の規制緩和と公正雇用保障』法律文化社

Ⅱ 論文

1. 労働法一般・総説

  1. 荒木尚志「国内における国際的労働関係をめぐる法的諸問題―適用法規の決定問題を中心に」日本労働法学会誌85号
  2. 遠藤昇三「『戦後労働法学』とその見直し・転換の方法的反省」東京都立大学法学会雑誌35巻2号
  3. 大場敏彦「芸能実演家・芸能スタッフの労働実態と社会保障法上の問題点」労働法律旬報1361号
  4. 金子征史「芸能実演家等の雇用関係の現状と課題」労働法律旬報1361号
  5. 金子征史「芸能実演家等の法的地位と今後の検討の方向」労働法律旬報1369号
  6. 斉藤周「実演家の雇用条件をめぐるILOの動向」労働法律旬報1362号
  7. 島田陽一「日本型雇用慣行と法政策」日本労働研究雑誌423号
  8. 島田陽一「労働者の私的領域確保の法理」法律時報66巻9号
  9. 清水敏「職業的音楽家の労働実態と労働法上の問題点」労働法律旬報1361号
  10. 菅野和夫・諏訪康雄「労働市場の変化と労働法の課題―新たなサポ―ト・システムを求めて」日本労働研究雑誌36巻12号
  11. 高橋清一「労働基本権裁判と公平な裁判所」労働法律旬報1343号
  12. 高梨昌「雇用政策」ジュリスト1073号
  13. 伊達隆英「法解釈方法論に関する一考察―特に労働法解釈のために」沖大法学14号
  14. 田端博邦「戦後歴史過程と労働法学(上),(下)」労働法律旬報1367号,1368号
  15. 陳一「国際私法学から見た国際的労働関係」日本労働法学会誌85号
  16. 照井敬「船員労働法と労働時間」季刊労働法172号
  17. 道幸哲也「職場における労働者の自立」季刊労働法165号
  18. 中嶋士元也「実務からみた最近の労働判例の問題点」労働経済判例速報44巻15号
  19. 西谷敏「労働法における自己決定の理念」法律時報66巻9号
  20. 野川忍「国外における国際的労働関係をめぐる法的諸問題」日本労働法学会誌85号
  21. 野川忍「労使協定論の展開」季刊労働法170号
  22. 深谷信夫「企業社会と労働法と労働法学」法の科学21号
  23. 藤川久昭「労働法学における従業員代表制論」季刊労働法169号
  24. 本多淳亮「思想的背景から見た労働者の権利意識―日本人の働きすぎはどこに由来するのか」大阪経済法科大学法学論集29号
  25. 三浦恵司「高齢化に伴う労働法制の課題」法律のひろば46巻1号
  26. 籾井常喜「『戦後労働法学』見直しの視点」労働法律旬報1335号
  27. 籾井常喜「戦後労働法学説史研究会の記録(1)~(4)」労働法律旬報1361号,1363号,1366号,1368号
  28. 籾山錚吾「団結権と制度的保障理論」朝日法学論集11号
  29. 盛誠吾「雇用・職場とプライバシー」『情報公開・個人情報保護(ジュリスト増刊)』所収
  30. 山川隆一「国際的労働関係の法律問題」日本労働法学会誌85号
  31. 山口俊夫「経済効率と人権保護―現代労働法における『弾力化』による均衡の探究」千葉大学法学論集8巻1・2号
  32. 山本吉人「労働法上の『労働者概念』と『使用者概念』について」労働法律旬報1369号
  33. 山本吉人「労働法学の課題─労働者・労働組合・労使関係についての覚書(1),(2)」法学志林92巻2号,3号

2. 労働市場法

  1. 有田謙司「労働移動をめぐる雇用保障法制と労働契約」日本労働法学会誌84号
  2. 石橋洋「会社間労働移動と競業避止義務―退職後の労働者の競業避止義務を中心に」日本労働法学会誌84号
  3. 岩村正彦「労働者の引退過程と法政策―1994年年金法および雇用保険法等の改正の検討(上),(下)」ジュリスト1063号,1064号
  4. 大田俊明「高齢者雇用をめぐる課題」法律のひろば47巻12号
  5. 菊地高志「労働者の会社間移動と労働法の課題―問題の所在」日本労働法学会誌84号
  6. 岸本武史「これからの高齢者雇用対策―高齢者雇用安定法の改正にともなって」季刊労働法171号
  7. 黒川道代「雇用政策法としての職業能力開発(1),(2)―日本・スウェーデンにおける法的システムとその役割」法学協会雑誌112巻6号,9号
  8. 黒川道代「これからの職業能力開発と法律政策の課題―教育訓練休暇制度を中心に」ジュリスト1066号
  9. 坂本重雄「高齢者雇用と公的年金改革」東京都立大学法学会雑誌35巻2号
  10. 庄司博一「高年齢者の雇用と年金改革―政策動向とそのねらい」賃金と社会保障1134号
  11. 諏訪康雄「雇用政策法の構造と機能」日本労働研究雑誌423号
  12. 清正寛「雇用維持の法理と雇用保障立法の課題(上)」熊本法学79号
  13. 土田道夫「労働市場の流動化をめぐる法律問題(上),(下)」ジュリスト1040号,1041号
  14. 内藤恵「転職・転社をめぐる法的問題(上),(下)」労働法学研究会報44巻12号,13号
  15. 長尾治助「労働者募集等の法規制と自主規制―求人情報媒体規制を視野に入れて」立命館法学225・226号
  16. 中原弘二「現代の高齢者雇用をめぐる諸問題」佐賀大学経済論集26巻1号
  17. 西村健一郎「高年齢者雇用安定法の改正」日本労働法学会誌85号
  18. 野田進「労働移動にともなう労働条件の変更」日本労働法学会誌84号
  19. 廣石忠司「わが国企業の定年と中高齢者雇用の問題点」季刊労働法171号
  20. 前澤檀「労働行政における規制緩和と労働力流動化策―新雇用政策から差別撤廃条約を経て」賃金と社会保障1146号
  21. 馬渡淳一郎「職業安定法制の課題」ジュリスト1066号
  22. 森隆男「年金改革と高齢者雇用をめぐる論議の基本的問題」大原社会問題研究所雑誌432号
  23. 森戸英幸「高齢者の引退過程に関する立法政策」ジュリスト1066号
  24. 山本典子「最近の雇用失業情勢と雇用対策」中央労働時報878号

3. 個別的労働関係法

(1)労働基準法
  1. 片岡曻「労働基準法制」ジュリスト1073号
  2. 小嶌典明「労働基準法制と規制のあり方」ジュリスト1066号
  3. 土田道夫「労働保護法と自己決定」法律時報66巻9号
  4. 西谷敏「労働基準法の二面性と解釈の方法」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  5. 古田重明「林業労働と労働基準法」月刊労委労協455号
  6. 保原喜志夫「労働基準法改正の動向と論点―ホワイトカラーの時間管理のあり方とともに」労働法学研究会報43巻46号
  7. 馬渡淳一郎「労働基準法研究会報告書を読む」日本労働研究雑誌35巻11号
  8. 籾井常喜「労働保護法と『労働者代表』制―その立法論的検討」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  9. 安枝英訷「労基研報告と今後の契約法制」労働法学研究会報44巻28号
  10. 山川隆一「国際的労働関係と労働基準法」季刊労働法173号
  11. 山川隆一「労働基準法制の課題」中央労働時報868号
(2)労働契約
  1. 浅倉むつ子「労働契約関係の変動をめぐる立法論的検討」日本労働法学会誌82号
  2. 荒木誠之「労働契約関係と家族的責任」姫路法学(姫路獨協大学)14・15号
  3. 石橋洋「労働契約上の競業避止義務―制限特約が存在しない場合の競業避止義務に関する英米法の法律構成とわが国の理論的課題」季刊労働法165号
  4. 石橋洋「競業避止特約の有効性と合理的限定解釈―西部商事事件・福岡地裁小倉支部判決を契機に」労働法律旬報1360号
  5. 鵜飼良昭「採用内定取消を巡る諸問題」自由と正義45巻9号
  6. 小畑史子「退職した労働者の競業規制」ジュリスト1066号
  7. 片岡曻「労働契約と労働者の義務(1),(2)」龍谷法学26巻1号,2号
  8. 金子征史「労働契約法制の立法論的検討の方法と対象」日本労働法学会誌82号
  9. 毛塚勝利「労働契約法制の立法論的検討課題―労働基準法研究会報告書の意義と問題点」ジュリスト1030号
  10. 斉藤周「労働契約の締結をめぐる立法論的検討」日本労働法学会誌82号
  11. 坂本重雄「プロ野球の選手契約―労働法学の立場から」ジュリスト1032号
  12. 土田道夫「労働契約における労務指揮権の意義と構造(1)~(8完)」法学協会雑誌105巻6号,10号,12号,107巻7号,109巻1号,12号,111巻9号,10号
  13. 土田道夫「労働協約と労働契約との関係(上),(下)―論点の整理と問題解決の方向」労働法学研究会報44巻4号,6号
  14. 道幸哲也「業務命令権と労働者の自立」法律時報66巻9号
  15. 徳住堅治「労働契約法制のあり方―民事実体法上の要件と効果の明確化を!」ジュリスト1066号
  16. 中山慈夫「労働契約法制のあり方―労基研労働契約等法制部会報告について」ジュリスト1066号
  17. 西村健一郎「環境変化と労働条件の変更をめぐる判例法理」季刊労働法172号
  18. 野川忍「労働契約の国際化(上),(下)」労働法学研究会報44巻29号,30号
  19. 古川景一「労働契約―理論と実践をつなぐ」季刊労働者の権利193号
  20. 三井正信「就労請求権についての一考察」広島法学16巻4号
  21. 宮里邦雄「労働契約法立法化の動向 労働契約法制見直しの論点―労基研報告の評価と立法化への提言」労働法学研究会報45巻43号
  22. 宮本健蔵「雇用・労働契約への民法650条3項の類推適用」明治学院論叢(法学研究)49号
  23. 宮本光雄「業務命令権の効力と限界―国鉄鹿児島自動車事件(最判平5・6・12)を契機に」労働法学研究会報44巻43号
  24. 安枝英訷「労基研報告と今後の契約法制」労働法学研究会報44巻28号
  25. 萬井隆令「労働契約論(1),(2)」龍谷法学25巻2号,3号
  26. 渡辺章「労働契約法制の課題」日本労働研究雑誌35巻11号
(3)就業規則
  1. 石松亮二「最高裁判例における就業規則の法的性質論」久留米大学法学16・17号
  2. 土田道夫「労働協約・就業規則と労働者の義務」季刊労働法166号
  3. 野川忍「就業規則と労働条件」東京学芸大学紀要(社会科学)44号
  4. 野川忍「就業規則と労使協定(上),(下)―労使協定機能の法的合理化」ジュリスト1051号,1052号
  5. 野田進「就業規則」季刊労働法166号
  6. 深谷信夫「就業規則法制の立法論的検討」日本労働法学会誌82号
(4)雇用平等・女子労働
  1. 浅倉むつ子「同一価値労働と男女間賃金差の『正当事由』」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  2. 浅倉むつ子「女性の働き方と法制」ジュリスト1066号
  3. 浅倉むつ子「均等法『指針』および女子労働基準規則一部改正の評価」労働法律旬報1334号
  4. 浅倉むつ子「男女雇用差別を解消するために―ポジティブ・アクションのすすめ」法律時報67巻8号
  5. 岩下智和「思想差別にもとづく慰謝料の認定と差別的査定による損害賠償請求の棄却一東京電力思想差別事件・長野地裁判決の意義と問題点」労働法律旬報1337号
  6. 上田純子「セクシュアル・ハラスメント(上),(下)─使用者責任を巡る法律論を中心として」ジュリスト1047号,1048号
  7. 岡村三穂「日立男女賃金・昇格差別裁判の課題―雇用平等の焦点」賃金と社会保障1108号
  8. 奥山明良「不況下の女性労働問題―改めて問われる企業の女性雇用管理」法律のひろば46巻2号
  9. 奥山明良「職場のセクシュアル・ハラスメント問題を考える」月刊民事法情報88号
  10. 奥山明良「雇用機会均等法と救済制度上の課題」法律のひろば48巻8号
  11. 慶谷淑夫「思想・信条による賃金差別と損害賠償・慰謝料との関係―東電訴訟四判決をみて」法律のひろば47巻8号
  12. 諏訪康雄「女性労働をめぐるILO基準の展開」大原社会問題研究所雑誌424号
  13. 中野麻美「『コース別雇用管理』下の女性賃金差別─兼松における男女賃金差別」賃金と社会保障1141号
  14. 野沢浩「紛争処理システムからみた性差別」労働の科学49巻11号
  15. 花見忠「雇用平等法制」ジュリスト1073号
  16. 細矢郁「賃金の男女差別と差額訴訟の法的構成」判例タイムズ861号
  17. 本多淳亮「女性の雇用差別とパートタイム労働をめぐる動向と課題」大阪経済法科大学法学研究所紀要21号
  18. 松田保彦「女性に対する賃金差別事件判例の軌跡」労働判例659号
  19. 松本昌悦「男女雇用機会均等法理と判例理論」中京法学27巻3・4号
  20. 水谷英夫「『男女同一賃金の原則』の発展とその限界」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  21. 山口浩一郎「企業側敗訴が続く男女賃金格差の合理性判断―世帯主基準,勤務地限定基準等の設定と運用」労働法学研究会報45巻35号
  22. 山田省三「セクシュアル・ハラスメントの定義とその法的処理―労働省『女子雇用管理とコミュニケ―ション・ギャップに関する研究会』報告書を読んで」労働法律旬報1326号
  23. 山本吉人「女性労働保護規定の見直しの動向と視点」法律のひろば48巻8号
  24. 米田眞澄「女子差別撤廃条約の国内的実施に関する若干の考察」阪大法学44巻1号
(5)非典型雇用
  1. 姉崎和子「短期有期労働契約の法理と今日的性格―雇用・就業形態の多様化と労働契約」愛知論叢58号
  2. 安西愈「労働者派遣法見直しの主要問題」季刊労働法169号
  3. 池上一志「労働者派遣法および派遣労働」商学論纂(中央大学)34巻1号
  4. 伊藤博義「多様化する労働者の実態とその法理─非正規雇用労働者を中心として」日本労働法学会誌81号
  5. 岩佐真寿美「期間の定めのある雇用契約における解雇権濫用法理―最三小判平成2年6月5日を中心に」判例タイムズ814号
  6. 大山宏「特殊な雇用・就業形態の労働者―契約社員,ワーカーズ・コープを中心に」日本労働法学会誌81号
  7. 大脇雅子「女子・パート・外国人労働者を巡る諸問題」自由と正義45巻9号
  8. 大脇雅子「パートタイム労働法の概要と問題点」季刊労働法170号
  9. 金子征史「日本航空における『契約制スチュワーデス』の導入と労働法上の問題(上)」労働法律旬報1350号
  10. 鎌田耕一「派遣労働の多様化と労働者派遣法の課題」ジュリスト1066号
  11. 小嶌典明「パートタイム労働と立法政策」ジュリスト1021号
  12. 堺鉱二郎「労働者派遣法の制定と課題」札幌法学4巻1・2号
  13. 澤井晴夫「人材派遺業の現状と課題」季刊労働法169号
  14. 砂山克彦「雇用の多様化と労働者派遣法の検討課題」法律のひろば47巻7号
  15. 砂山克彦「派遣労働の実態と二重の労働契約論」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  16. 砂山克彦「派遣労働の現状と労働法的課題」日本労働法学会誌81号
  17. 諏訪康雄「日本におけるパートタイム労働政策」大原社会問題研究所雑誌424号
  18. 諏訪康雄「パートタイム労働をどう考えるか?」官公労働48巻2号
  19. 諏訪康雄「93通常国会に法案提出 パート労働の焦点と法案の見直し―多様なパート処遇の見極めと法的整備」労働法学研究会報44巻10号
  20. 高木龍一郎「多様化するパート労働者の就業形態と保護法理」日本労働法学会誌81号
  21. 中野麻美「派違法の課題と問題点」季刊労働法169号
  22. 中野麻美「派遣労働者の労働条件,契約上の問題点」法律のひろば47巻7号
  23. 中村和夫「戦略的パートタイマーをめぐる問題点」静論67・8号
  24. 中山和久「パート労働法の基本問題」法律時報65巻8号
  25. 中山慈夫「短期契約者の雇止めの法理―ソニー長崎・高田製鋼所事件を中心に」労働法学研究会報45巻5号
  26. 保原喜志夫「パート労働者への社会保険等の適用」ジュリスト1021号
  27. 本多淳亮「女性の雇用差別とパートタイム労働をめぐる動向と課題」大阪経済法科大学法学研究所紀要21号
  28. 馬渡淳一郎「短期労働契約の更新拒絶と派遣労働者の解雇」季刊労働法165号
  29. 水町勇一郎「『パート』労働者の賃金差別の法律学的検討―わが国で採られるべき平等法理はいかなるものか?」法学(東北大学)58巻5号
  30. 水町勇一郎「パートタイム労働法の経緯と問題点」日本労働研究雑誌35巻8号
  31. 水町勇一郎「パートタイム労働の『現在』と『未来』」ジュリスト1066号
  32. 水町勇一郎「非典型雇用をめぐる法理論―臨時工・パートタイム労働者をめぐって」季刊労働法171号
  33. 山川隆一「違法派遣をめぐる問題点」法律のひろば47巻7号
  34. 山路憲夫「労働者派遣法と業界の問題点」季刊労働法169号
  35. 山田省三「『パートタイム労働法案』の内容と問題点」労働法律旬報1309号
  36. 山本圭子「日々雇用・期間雇用労働者の地位と法律問題―育児休業法の法的性質と除外労働者について(2)」法政法学(法政大学)18号
  37. 萬井隆令「労働者派遣と労働契約論―派遣元と派遣労働者との契約の性格について」龍谷法学28巻1号
  38. 労働省職業安定局「労働者派遣法その後の問題点」季刊労働法169号
  39. 脇田滋「派遣労働者と労働組合法上の問題点」法律のひろば47巻7号
(6)外国人労働者
  1. 尾崎正利「外国人労働者に対する国内法の適用問題について」三重法経セミナー(三重短期大学)157・158号
  2. 北村泰三「外国人労働者の人権保障と移住労働者条約」熊本法学75号
  3. 手塚和彰「不況下の外国人労働者と法的諸問題」法律のひろば46巻2号
  4. 手塚和彰「外国人労働者問題の行方」官公労働47巻11号
  5. 村下博「外国人労働者問題と国際人権条約」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)20号
(7)賃金・福利厚生等
  1. 遠藤直哉「破産者の有する将来の退職金請求権」『破産・和議の実務と理論(判例タイムズ臨時増刊830)』所収
  2. 大山宏「社宅の明渡しと居住権」法経論叢(岩手県立盛岡短期大学)15号
  3. 國武輝久「従業員給付をめぐる法的問題状況」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  4. 慶谷淑夫「ボーナスの法的性格と現物給付」法律のひろば46巻2号
  5. 西村健一郎「雇用調整下に注目される賃金カット・現物支給の法律問題─賃金カットの諸形態と法的留意点」労働法学研究会報44巻7号
  6. 本多淳亮「同一価値労働同一賃金の原則について」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)17号
  7. 柳屋孝安「社宅・寮等福利厚生施設の使用関係と労働契約の終了」季刊労働法165号
  8. 山下不二男「最低賃金制の現状と問題点」経済学論纂(中央大学)35巻5・6号
  9. 山本圭子「『年俸制』導入の法律問題」労働法学研究会報44巻37号
(8)労働時間・休憩・休日・休暇
  1. 香川孝三「裁量労働制に関する研究会報告書」日本労働法学会誌86号
  2. 金子征史「時間短縮にとって必要な法改正のあり方」労働法律旬報1305号
  3. 川口美貴「介護・看護と休暇・労働時間等変更制度─家族的責任を有する労働者の労働条件整備・雇用保障」季刊労働法167号
  4. 岸井貞男「労働時間法の現状と課題―総説」日本労働法学会誌83号
  5. 小嶌典明「1年単位の変形労働時間制」経営法曹106号
  6. 小嶌典明「法定外休日(土曜出勤)と時間外労働」阪大法学43巻4号
  7. 小西國友「時季変更権の行使とその制限─時事通信社事件最高裁三小判決を中心に」季刊労働法165号
  8. 今野順夫「時間外労働義務の法的根拠」福島4巻4号
  9. 佐藤幸一「労働時間法制の課題」季刊労働者の権利198号
  10. 関ふ佐子「介護休業法」日本労働法学会誌86号
  11. 高島良一「労働時間とその弾力化(社会法)」『独協大学法学部創設25周年記念論文集』所収
  12. 田嶋好博「法定労働時間について」月刊労委労協459号
  13. 蓼沼謙一「労働時間法改定問題の焦点」労働法律旬報1305号
  14. 田村譲「労働時間法制論─その理念と実態」松山大学論集4巻5号
  15. 田村譲「時間外労働法制論」松山大学論集4巻6号
  16. 富田武夫「育児休業制度の実施に伴う実務上の諸問題」季刊労働法167号
  17. 名古道功「最高裁判例における年休権理論の到達点と課題」季刊労働法175・176号
  18. 西谷敏「労働時間立法の理念と政策―労基法等改正法律案要綱をめぐって」労働法律旬報1305号
  19. 野田進「年次有給休暇の法理」季刊労働法165号
  20. 野田進「休暇・休業と労働契約―『休暇』通論の確立のために」季刊労働法167号
  21. 馬場洋征「労働時間短縮と労働時間法制について」中央労働時報866号
  22. 浜村彰「年次有給休暇」労働法律旬報1342号
  23. 浜村彰「法定労働時間と時短促進法」労働法律旬報1342号
  24. 林弘子「介護休業法をどう評価するか―その意義と問題点」労働法律旬報1366号
  25. 廣石忠司「ホワイトカラーの裁量労働制」季刊労働法170号
  26. 深谷信夫「裁量労働のみなし制」労働法律旬報1342号
  27. 古橋エツ子「傷病休暇制度と休暇法制」季刊労働法167号
  28. 保原喜志夫「労働基準法改正の動向と論点―ホワイトカラーの時間管理のあり方とともに」労働法学研究会報43巻46号
  29. 保原喜志夫「介護休業法制の検討(上),(下)」ジュリスト1064号,1065号
  30. 水野勝「フレックスタイム制の位相と主要法律問題」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  31. 宮川晃「新労働時間法制について」ジュリスト1047号
  32. 宮島尚史「『ユ・シ協定』および時間外労働」学習院大学法学部研究年報28号
  33. 籾井常喜「労働時間短縮政策と第2次労働基準法改正法案(上),(中),(下)」法律時報65巻5号,6号,7号
  34. 盛誠吾「1年単位の変形労働時間制」労働法律旬報1342号
  35. 盛誠吾「フリー勤務制と労基法―変形制,スーパーフレックス,裁量労働制を中心に」労働法学研究会報44巻30号
  36. 門坂正人「主観的公序良俗と客観的公序良俗(3)―違法時間外労働」大阪経大論集43巻4号
  37. 安枝英訷「ホワイトカラーの労働時間制度―平成5年労基法改正を契機に」関西経協48巻3号
  38. 山川隆一「裁量労働制の将来」ジュリスト1066号
  39. 山口浩一郎「仮眠・休息と労働時間―大星ビル管理・仮眠時間初判決を契機に」労働法学研究会報44巻34号
  40. 山本吉人「ホワイトカラーの労働時間規制問題」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  41. 山本吉人「管理監督者と労働時間法制─ホワイトカラーの労働時間問題」季刊労働法166号
  42. 山本吉人「労働時間法制の改正と課題」季刊労働法170号
  43. 山本吉人「新労働時開法の論点─新制度と行政通達について」労働法律旬報1342号
  44. 山本吉人「年休取得と皆勤手当カット─最高裁第二小法廷『沼津交通事件』(平5・6・25判)を中心に」労働法学研究会報45巻2号
  45. 萬井隆令「労働時間のあり方と中基審の建議について」労働法律旬報1305号
  46. 和田肇「年休法理の再検討─二つの裁判例を素材としながら」季刊労働法167号
(9)安全衛生・労災補償
  1. 安西愈「エイズと企業の労働問題」ジュリスト1035号
  2. 安西愈「企業の健康管理義務とエイズ対策問題」季刊労働法168号
  3. 岩出誠「健康異常,成人病患者への健康配慮と人事労務責任─予測される企業責任と法的チェックポイント」労働法学研究会報45巻29号
  4. 岩出誠「脳・心臓疾患等の労災認定基準改正の与える影響─改正を導いた裁判例の動向とそれへの影響を中心として」ジュリスト1069号
  5. 上柳敏郎「脳・心臓疾患と最近の判例動向」季刊労働法175・176号
  6. 岡村親宜「過労死労災認定と高裁判例の動向―最近の労働側逆転勝訴判例の意義」労働法律旬報1341号
  7. 岡村親宜「過労死の救済と救済立法―労働省脳・心臓疾患検討プロジェクト委員会報告批判」労働法律旬報1351・1352号
  8. 岡村親宜「過労死と労災認定─今日のその解釈論」季刊労働法166号
  9. 小畑史子「労働安全衛生法規の法的性質―労働安全衛生法の労働関係上の効力」(1)~(3・完)法学協会雑誌112巻2号,3号,5号
  10. 甲斐祥郎「原子力労働災害における因果関係」広島法学17巻1号
  11. 甲斐祥郎「原子力労働災害の特質と救済について」久留米大学法学16・17号
  12. 川口實「最近の労働判例から─いわゆる『過労死』問題について」官公労働47巻4号
  13. 斎藤驍「職業癌とクロム訴訟の意義」季刊労働法166号
  14. 佐藤進「過労死労災認定基準政策の歩みとその課題」季刊労働法175・176号
  15. 荘司榮徳「産業医活動の実際」日本労働法学会誌86号
  16. 中嶋士元也「職業性循環器系疾患死の因果関係論」鈴木禄弥先生古稀記念『民事法学の新展開』(有斐閣)
  17. 橋詰洋三「重層的建設請負関係における労働災害責任を巡る問題点(上)」季刊労働法169号
  18. 花見忠「WHO・ILOのエイズ対策」季刊労働法168号
  19. 藤原精吾「タール訴訟」季刊労働法166号
  20. 古西信夫「過労死と使用者の法的責任」『立正大学法学部創立10周年記念論集』所収
  21. 保原喜志夫「産業医をめぐる法律問題─問題の所在」日本労働法学会誌86号
  22. 松本克美「製造物責任と労働災害─我が国における判決例の分析」神奈川法学27巻2・3号
  23. 水野圭子「労災補償法制における補償と賠償の調整―三共自動車第二事件(最高裁第一小法廷・平成1・4・27)を題材として」法政法学(法政大学)20号
  24. 水野勝「競合的原因と過労死の認定に関する理論的主要問題─労災補償の理論的課題の一つとして」労働法律旬報1358号
  25. 宮島尚史「団体定期生命保険の違憲・違法と労働者の権利について─就業規則・労災法理との関連における序論」学習院大学法学部研究年報30号
  26. 渡辺賢「産業医の活動とプライバシー」日本労働法学会誌86号
  27. 渡部眞也「産業医学からみた今日の職業病」季刊労働法166号
(10)懲戒
  1. 小西國友「出向社員と懲戒処分─出向元・先双方の懲戒権をめぐって」労働法学研究会報45巻24号
  2. 中筋一郎「反企業言論と懲戒処分の可否について」経営法曹102号
  3. 山本圭子「始末書提出をめぐる判例動向と法律問題」季刊労働法165号
(11)人事
  1. 新谷眞人「国際家族年の意義と単身赴任問題─労働者家族におけるデモクラシーの確立をめざして」季刊労働者の権利205号
  2. 石井保雄「配置転換―最近の裁判例と学説の動向」労働法学研究会報44巻21号
  3. 石川渡「配転・出向と労働者の同意」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  4. 石嵜信憲「転籍・分社化・合併・譲渡・海外派遣問題の検討」労働経済判例速報44巻24号
  5. 上村雄一「出向合意と使用者の責任」日本労働法学会誌84号
  6. 岡田和樹・廣石忠司「ホワイトカラーの雇用調整と法的課題」季刊労働法168号
  7. 葛西嘉隆「出向・転籍の活用と運用基準」労働法学研究会報44巻41号
  8. 香山忠志「自宅待機命令に関する法的考察」季刊労働法173号
  9. 黒岩容子「配転・出向・転籍をめぐる現在の諸問題」自由と正義45巻9号
  10. 慶谷淑夫「転勤命令の法的性格─2つの東京地裁判決を素材に」法律のひろば47巻1号
  11. 小西國友「出向・再出向・復帰の法的基本構造」季刊労働法172号
  12. 菅野和夫「企業のリストラと労働法上の諸問題」自由と正義45巻9号
  13. 高井伸夫「リストラ,雇用調整下の雇用・人事革新の視点」労働法学研究会報44巻45号
  14. 内藤恵「子会社・系列会社への出向・転籍をめぐる法的問題」法律のひろば46巻2号
  15. 中野麻美「総合職人事管理の法的問題」労働法学研究会報45巻11号
  16. 野川忍「海外勤務に伴う人事・労務問題と法的ポイント─海外派遣の法律問題とその実際」労働法学研究会報46巻3号
  17. 廣石忠司「グループ雇用の展開と新たな法的課題」季刊労働法166号
  18. 外尾健一「配転・出向・転属命令の法的根拠と事前の包括的同意」東北学院大学論集43・44号
  19. 盛誠吾「企業のリストラと労働判例の動向(上),(下)」季刊労働法173号,174号
  20. 山本吉人「人事異動の法律問題(上),(中),(下)─配転・出向・転籍」労働判例643号,644号,645号
  21. 山本典子「リストラ進展への対応一雇用対策の観点から」自由と正義45巻9号
  22. 脇田滋「移籍出向拒否と整理解雇─日新工機整理解雇事件控訴審を契機に」龍谷法学25巻2号
  23. 渡寛基「判例の特色と問題点リストラ下の雇用調整・人事政策をめぐる判例傾向」労働法学研究会報45巻31号
  24. 渡寛基「不況下における人員整理,雇用調整の判例傾向―先の円高不況及び経営合理化に伴う事例を中心に」労働法学研究会報44巻1号
(12)労働契約の終了
  1. 伊藤博義「定年延長について」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  2. 鵜飼良昭「『雇用調整ホットライン』にみる雇用調整の特徴と法的焦点─管理職の退職勧奨等を中心に」労働法学研究会報45巻37号
  3. 鴨田哲郎「解雇・退職強要」季刊労働者の権利205号
  4. 鴨田哲郎「一時帰休・希望退職・退職勧奨」自由と正義45巻9号
  5. 小西國友「整理解雇をめぐる実務的問題(上),(下)」労働判例639号,640号
  6. 今野順夫「整理解雇と説明・協議義務」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  7. 清正寛「労働契約の合意解約と退職勧奨」季刊労働法165号
  8. 高木龍一郎「労働契約の合意解約における労働者の意思表示」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  9. 中野麻美「定年制に関する諸問題」自由と正義45巻9号
  10. 野田進「合併,営業譲渡等と解雇」季刊労働法165号
  11. 萩澤清彦「整理・解雇をめぐる法的問題」法律のひろば46巻2号
  12. 藤本茂「労働契約関係の終了をめぐる立法論的検討」日本労働法学会誌82号
  13. 森戸英幸「労働契約の終了(2・完)」季刊労働法173号
  14. 山田靖典「整理解雇をめぐる諸問題」自由と正義45巻9号
  15. 若林今朝六「人員整理解雇適法性」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  16. 脇田滋「移籍出向拒否と整理解雇─日新工機整理解雇事件控訴審を契機に」龍谷法学25巻2号

4. 集団的労働関係法

(1)総説・労働組合
  1. 鵜飼良昭「管理職組合の現状と今後」季刊労働法171号
  2. 萱谷一郎「ユニオン・ショップ協定論転換」労働法律旬報1336号
  3. 鈴木隆「チェック・オフ制度の再検討」島大法学36巻2号
  4. 鈴木隆「チェック・オフ」労働法律旬報1351・1352号
  5. 千々岩力「管理職組合の資格審査をめぐる諸問題」季刊労働法171号
  6. 成川美恵子「管理職組合と労委制度」季刊労働法173号
  7. 布藤純一郎「使用者概念の外的拡大」吉西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  8. 花見忠「管理職の地位と労働法」中央労働時報883号
  9. 花見忠「管理職組合と日米事情 管理職の地位と労働法─労基法,労働法の適用と法律実務」労働法学研究会報45巻22号
  10. 久本憲夫「管理職クラスと労働組合員の範囲」日本労働研究雑誌36巻10号
  11. 三井正信「労働組合と労働者の自己決定」法律時報66巻9号
  12. 宮沢弘「組合が併存する場合のチェック・オフ」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  13. 安枝英訷「労使関係法の課題一柔軟な交渉システムの構築にむけて」ジュリスト1066号
  14. 山川隆一「団体的労働関係法制に対する外国法の影響とその現地化─日本」日本労働研究雑誌35巻9号
  15. 山口浩一郎「労使関係法制」ジュリスト1073号
  16. 山口広「独禁法強化と労働組合の課題」季刊労働者の権利194号
  17. 吉沢利文「複数組合の併存とユニオン・ショップ」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  18. 脇田滋「派遣労働者と労働組合法上の問題点」法律のひろば47巻7号
(2)団体交渉
  1. 豊川義明・森信雄「団交拒否事件における使用者性―朝日放送事件東京高裁判決(平成4年9月18日)について」月刊労委労協445号
  2. 松本道房「いわゆる『誠実団交』の判断基準」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  3. イ・ジョン「団体交渉事項の対象範囲の画定に関する法理」季刊労働法174号
(3)団体行動
  1. 石井保雄「職場占拠法理の研究(1)~(9)」亜細亜法学18巻1号,2号,19巻1・2号,20巻1・2号,21巻1号,22巻1号,26巻2号,28巻1号,29巻2号
  2. 沢田誠「施設管理権と組合活動―組合旗の掲揚・撤去」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  3. 西谷敏「労働事件訴訟における違憲審査―争議禁止の合憲限定解釈をめぐって」ジュリスト1037号
  4. 松本道房「使用者の利益代表者と組合活動」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
(4)労働協約
  1. 小嶌典明「労働協約の理論と実務」阪大法学44巻4号
  2. 後藤勝喜「労働協約による労働条件の不利益変更と未組織労働者─裁判例の検討を中心として(1)」九州国際大学法学論集1巻1号
  3. 土田道夫「労働協約・就業規則と労働者の義務」季刊労働法166号
  4. 土田道夫「労働協約に基づく労働条件の不利益変更と一般的拘束力(社会法)」『獨協大学法学部創設25周年記念論文集』所収
  5. 土田道夫「労働協約と労働契約との関係(上),(下)─論点の整理と問題解決の方向」労働法学研究会報44巻4号,6号
  6. 中窪裕也「労働協約の規範的効力」季刊労働法172号
  7. 名古道功「労働協約の一般的拘束力」労働法律旬報1353号
  8. 船尾徹・塚原英治・則武透「労働協約の一部解約の妥当性─ソニー事件四決定について」労働法律旬報1350号
(5)労働委員会
  1. 伊藤幹郎「中労委命令概観─中労委は何のために存在するのか」月刊労委労協446号
  2. 直井春夫「労委制度改革と労委職員の意識」季刊労働法171号
  3. 直井春夫・成川美恵子「紛争解決システムとしての労働委員会」中央労働時報868号
  4. 直井春夫「弁論兼和解と調査手続の比較」季刊労働法175・176号
  5. 成川美恵子「管理職組合と労委制度」季刊労働法173号
  6. 古西信夫「地労委雑感」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
(6)不当労働行為
  1. 新井幹久「利息相当額の付加命令─バック・ペイ命令に関連して」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  2. 荒木誠之「国労組合員のJR不採用事件中労委命令の検討」ジュリスト1045号
  3. 安藤高行「陳謝を内容とするポスト・ノーティス命令の合憲性に関する最近の判例」中央労働時報852号
  4. 大角雄二「労基法24条1項但書の要件を満たさないチェック・オフの中止と不当労働行為」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  5. 小野寺義象「労組脱退勧誘と支配介入の立証─東北中谷事件・宮城地労委命令」労働法律旬報1341号
  6. 香川孝三「労働委員会における不当労働行為の救済手続」季刊労働法168号
  7. 小西國友「不当労働行為における原因たる行為と結果たる行為(上),(下)―紅屋商事事件を契機にして」判例時報1470,1479号
  8. 小西國友「裁判所の判例からみた労働委員会─不当労働行為禁止制度と不当労働行為救済制度」中央労働時報897号(労働委員会制度50周年記念号)
  9. 佐藤昭夫「差別の機会を提供したJR採用差別事件中労委命令―続・国家的不当労働行為論(3)」早稲田法学69巻3号
  10. 道幸哲也「労働委員会命令の司法審査(1)~(6完)―取消訴訟法理の再検討」法律時報65巻9号,10号,11号,66巻1号,2号,3号
  11. 道幸哲也「不利益取扱い禁止の法理」日本労働研究雑誌36巻5号
  12. 直井春夫「救済命令の名宛人再考」季刊労働法174号
  13. 中津俊雄「最近の不当労働行為事件の問題点を探る」労働経済判例速報1510号
  14. 西尾正美「賃金差別の立証方法─大量観察方式」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  15. 福田平「不当労働行為に対する救済制度について」東海法学13号
  16. 古西信夫「支配介入」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  17. 古西信夫「証人出頭の勤怠取扱いと不当労働行為」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  18. 古西信夫「バック・ペイと中間収入の控除」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  19. 古西信夫・吉沢利文「労働委員会の事業再開命令」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  20. 三浦昭「賃金差別と『継続する行為』」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  21. 宮里邦雄「支配介入をめぐる諸問題(1)~(9)」月刊労委労協441号,444号,445号,448号,449号,451号,456号,457号,460号
  22. 宮沢弘「組合が併存する場合のチェック・オフ」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  23. 宮沢弘「不当労働行為事件の再審査における却下決定」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  24. 門間進「不当労働行為の成否の判断について」経営法曹105号
  25. 山川隆一「不当労働行為をめぐる行政訴訟と民事訴訟」季刊労働法167号
  26. 山川隆一「労働委員会と裁判所─命令の司法審査をめぐって」中央労働時報897号(労働委員会制度50周年記念号)
  27. 山田育太郎「不当労働行為の『使用者』概念」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
  28. 吉田彰男「不当労働行為事件における当事者の不出頭」古西信夫教授還暦記念論集『不当労働行為の判例と実践』所収
(7)経営参加
  1. 奥島孝康「従業員の経営参加」ジュリスト1050号
  2. 奥島孝康「市場経済と労働者参加─会社法学的構成試論」早稲田法学69巻4号
  3. 高橋紀夫「株式会社の構造と従業員の経営参加」私法56号

5. 官公労

  1. 菊谷達彌「労働法と行政法との交錯─公務員不利益処分の公平審査をめぐって」鹿児島大学法学論集29巻1・2号
  2. 鋤本豊博「地方公務員法違反の争議行為の可罰性(上),(中),(下)─埼玉県教組同盟罷業事件最高裁判決を契機に」北大法学論集42巻2号,3号,44巻6号
  3. 高木紘一・村上一美「短期労働契約の更新と公務員」外尾健一先生古稀記念論文集『労働保護法の研究』(有斐閣)所収
  4. 圓谷勝男「公務員の労働基本権について」東洋法学36巻2号
  5. 村上朝満「公務員の争議権と刑罰について」高知論叢(社会科学)46号

6. 紛争処理

  1. 遠藤賢治「倒産と労働仮処分」旬刊金融法務事情1409号
  2. 毛塚勝利「労働紛争処理法─個別労働紛争処理システムの現状と課題」ジュリスト1066号
  3. 藤内和公「労働者の不満・苦情と企業内苦情処理―その現状と課題」岡法44巻3・4号
  4. 直井春夫・成川美恵子「個別的労使紛争と労委制度」季刊労働法172号
  5. 直井春夫・成川美恵子「紛争解決システムとしての労働委員会」中央労働時報868号
  6. 浜村彰「労働契約と紛争処理制度」日本労働法学会誌82号
  7. 林豊「経営戦略と労働仮処分(出向・配転等)」旬刊金融法務事情1409号
  8. 森井利和「民事訴訟法改正の動向と労働訴訟」季刊労働者の権利192号
  9. 宮里邦雄「労働裁判の現状─労働者側代理人の立場から」法学セミナー39巻12号
  10. 宮本光雄「労働裁判の現状―経営法曹の立場から」法学セミナー39巻12号

7. 外国法・比較法・国際法

  1. 浅倉むつ子「男女同一賃金原則における同一『価値』労働評価について(上),(下)─イギリス同一賃金法の研究」東京都立大学法学会雑誌35巻1号,2号
  2. 荒木尚志「欧州従業員代表委員会指令とEU労働法の新局面」日本労働研究雑誌421号
  3. 荒木尚志「マーストリヒト条約以後のEC労働法(上),(下)」ジュリスト1019号,1020号
  4. 石井保雄「職場占拠法理の研究(1)~(9)」亜細亜法学18巻1号,2号,19巻1・2号,20巻1・2号,21巻1号,22巻1号,26巻2号,28巻1号,29巻2号
  5. 石田眞「近代雇用契約法の再構成(上),(下)─『近代雇用契約法の形成』再論」労働法律旬報1347号,1348号
  6. 石田眞「イギリス雇用契約法の形成と『主従法』」名古屋大学法政論集144号
  7. 石橋洋「米国における労働法研究の動向─競業避止義務論と組合活動論を中心に」日本労働研究雑誌36巻2・3号
  8. 岩村正彦「フランスの非典型雇用」東北法学会会報(東北大学)11号
  9. 岩村正彦「フランスの非典型雇用」日本労働法学会誌81号
  10. 上田純子「セクシャル・ハラスメント(上),(下)―使用者責任を巡る法律論を中心として〔アメリカ〕」ジュリスト1047号,1048号
  11. 上田達子「イギリスにおける業務上災害の概念(1),(2完)」同志社法学44巻5号,6号
  12. 上村貞美「フランス法におけるセクシュアル・ハラスメント」香川法学14巻1号
  13. 上柳敏郎「労災補償手続法の日米比較」季刊労働法175・176号
  14. 大内伸哉「イタリアにおける賃金決定機構の変容─その『弾力化』と『制度化』」日本労働研究雑誌36巻7号
  15. 大沼邦博・村中孝史・米津孝司「ドイツ統一労働契約法(草案)(1)~(12完)」法律時報65巻3号,5号,6号,7号,8号,9号,10号,11号,12号,66巻1号,2号,3号
  16. 大和田敢太「オランダの労使関係と法」彦根論叢(滋賀大学)283・284号
  17. 大和田敢太「フランスにおける団結権の課題─労働組合の代表権能をめぐって」彦根論叢290号
  18. 香川孝三「日本から見たアジア諸国の労働法の最近の動向」季刊労働法174号
  19. 香川孝三「アメリカ企業,アメリカ日本企業,日本企業における苦情・仲裁手続の比較研究」同志社アメリカ研究29号
  20. 片桐由喜「イギリスにおける産業保険制度」日本労働法学会誌86号
  21. 加藤智章「フランスにおける産業医制度」日本労働法学会誌86号
  22. 鎌田耕一「ドイツ労働法における使用者責任の拡張─出向,事業場内下請,労働者派遣,親子会社における労働法的第三者関係」法学新報(中央大学)100巻2号
  23. 神尾真知子「男女間の報酬の平等と手当の支給」労働法律旬報1333号
  24. 神尾真知子「フィリピン労働法―歴史と法理」季刊労働法174号
  25. 木村愛子「ILOパートタイム条約・勧告の意義と日本の課題」労働法律旬報1346号
  26. 木村澄「先進工業国の同一賃金保障ILO: Equal pay protection in industrialised market economies -- in search of greater effectiveness 〔アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア〕」世界の労働43巻7号
  27. 木村仁「雇用関係における競業避止契約の合理性」季刊労働法170号
  28. 倉田原志「ドイツにおける労働権論(1),(2完)─ボン基本法のもとでの議論を中心に」法学論叢(京都大学)133巻4号,134巻2号
  29. 桑原昌宏「北米貿易自由協定(NAFTA)とカナダ・日本─労働基準・雇用制度・社会保障」季刊労働法171号
  30. 毛塚勝利「時短協約10年後のドイツ協約政策の現在─雇用危機と柔軟化攻勢のなかで模索・変容する協約政策」労働法律旬報1336号
  31. 毛塚勝利「ドイツにおける弾力的労働時間規制の運用実態─変形労働時間制を中心に」日本労働研究雑誌35巻3号
  32. 小玉敏彦「韓国における労働組合関連法の変遷について(1),(2)」千葉商大論叢29巻2号,3号
  33. 小宮文人「イギリスの年単位労働時間制と時間外規制」日本労働研究雑誌35巻3号
  34. 近藤浩「米国において日本企業が直面する雇用差別問題とその留意点」法律実務研究9号
  35. 斉藤周「ILOパートタイム労働条約の採択」日本労働法学会誌85号
  36. 品田充儀「アメリカにおける産業保険・産業医制度」日本労働法学会誌86号
  37. 島田陽一「フランスの派遣労働法制」季刊労働法169号
  38. 末啓一郎「米国年齢差別禁止法に基づく差別訴訟事件の実際」季刊労働法175・176号
  39. 菅野淑子「アメリカ家族休暇制度の形成(1)~(4)」労働法律旬報1336号,1337号,1338号,1339号
  40. 鈴木隆「イギリス一九九三年労働組合改革・雇用権利法(1)~(3完)」島大法学37巻4号,38巻1号,2号
  41. 鈴木隆「イギリスにおける団結権の保障─一九九三年労働組合改革・雇用権利法の一四条を中心として」島大法学38巻4号
  42. 鈴木隆「イギリスにおけるチェック・オフ制度とその法的規制」島大法学39巻1号
  43. 高橋潔「米国における採用テスト妥当性の専門的基準と法的規制」日本労働研究雑誌36巻11号
  44. 高橋甫「EC労働法の現状と展望」法学研究(慶応義塾大学)66巻9号
  45. 武井寛「ロシア団体協約法の制定によせて」国学院法学31巻4号
  46. 蓼沼謙一「米国における『労働の柔軟化』論と法」八千代国際大学紀要6巻4号
  47. 谷本義高「アメリカにおける労働協約の法的効力(1)~(3完)」同志社法学44巻1号,2号,3号
  48. 千々岩力「NLRB・その近況(上),(下)」中央労働時報868号,869号
  49. 陳一「国際的労働関係の適用法規の決定に関する一考察(1),(2完)―労働契約準拠法と関係諸国の強行法規との適用関係を中心に」法学協会雑誌111巻9号,11号
  50. 藤内和公「オーストリアにおける従業員代表法制と運用実態」季刊労働法172号
  51. 藤内和公「オーストリアにおける労働時間短縮」季刊労働法169号
  52. 藤内和公「スイスにおける従業員代表制」季刊労働法175・176号
  53. 内藤恵「アメリカ雇用契約における労働者の競業避止義務と約因法理」法学研究(慶應義塾大学)65巻12号
  54. 内藤恵「労働者の雇用契約終了後競業避止義務からの離脱─アメリカ雇用契約法理の展関」法学研究(慶應義塾大学)67巻2号
  55. 中窪裕也「アメリカの適用除外とカナダの二段階規制方式」日本労働研究雑誌35巻3号
  56. 中野育男「諸外国における高齢者雇用の実態と法制度」季刊労働法171号
  57. 永野秀雄「アメリカにおける芸能実演家に関する労働法と制度─特に被用者,労働団体活動,著作権関係,代理業務について」労働法律旬報1362号
  58. 長淵満男「オーストラリアの労働時間法の特質」日本労働法学会誌83号
  59. 長峰登記夫「オーストラリアの労働法制の変化と労使関係」日本労働研究雑誌35巻4・5号
  60. 西田康洋「アメリカの労働時間法制の現状と課題」日本労働法学会誌83号
  61. 西谷敏「ドイツ労働法の弾力化論(1)」大阪市立大学法学雑誌39巻2号
  62. 野川忍「ドイツ外来労働者法制の新機軸(上),(下)」ジュリスト1013号,1014号
  63. 野田進「フランスにおける経済的事由による解雇(1)~(3)」法政研究(九州大学)59巻2号,60巻2号,61巻2号
  64. 野田進「労働条件の変更と経済的解雇」〔フランス〕法政研究(九州大学)61巻3・4号
  65. 野田進「労働時間規制の『年次化』の行方─フランス労働時間立法の新展開」労働法律旬報1339号
  66. 野間賢「フランスにおける芸能実演家の労働契約と社会保障」労働法律旬報1362号
  67. 橋本聡「アメリカにおける雇用上の差別是正訴訟をめぐる一側面─アファーマティヴ・アクションを命じる同意判決と第三者の手続権保障」東海法学13号
  68. 林和彦「韓国の労働法制」季刊労働法174号
  69. 平岩新吾「メキシコ労使関係法の紹介」〈特別寄稿〉経営法曹102号
  70. ラインホルト・ファールベック「スウェーデンの民間職業紹介と労働者派遣─国家の統制から市場の自由へ」日本労働研究雑誌418号
  71. 藤川久昭「イギリスにおける組合承認法制」日本労働研究雑誌35巻12号
  72. 藤原稔弘「ドイツの新労働時間法と労働時間規制の柔軟化」労働法律旬報1354号
  73. 古川陽二「イギリス争議行為法の展開─労働組合の不法行為責任と『組合基金の保護』」ジュリスト1049号
  74. 松下乾次「ドイツ連邦共和国の公勤務部門における被用者の団結権保障─92年公勤務ストを契機として」季刊労働法166号
  75. 馬渡淳一郎「ILO有料職業紹介所(改正)条約(第96号)の再検討」姫路法学(姫路獨協大学)16・17号
  76. 水島郁子「ドイツにおける疾病時の賃金継続支払」季刊労働法172号
  77. 水町勇一郎「パートタイム労働の法律政策(1)~(4完)─フランス法とドイツ法の比較法的検討」法学協会雑誌110巻12号,111巻5号,7号,8号
  78. 三井正信「ルネ・サヴァチェの労働契約論について(1)」広島法学17巻2号
  79. 三井正信「フランスにおける労働時間法改革と労働時間短縮」日本労働法学会誌83号
  80. 光岡正博「EC労働法(上),(下)」労働法律旬報1311号,1312号
  81. 宮前忠夫「ドイツにおけるパートタイム労働の制度と実態(1)~(3)─労働協約の規定内容を中心に」労働法律旬報1346号,1348号,1349号
  82. 向山寛夫「中華民国と日本の労働基準法の比較」国学院法学31巻3号
  83. 村下博「外国人労働者問題と国際人権条約」法学研究所紀要(大阪経済法科大学)20号
  84. 村中孝史「ドイツにおける企業年金の現代的諸相」民商法雑誌112巻1号
  85. 本久洋一「19世紀フランスの就業規則─使用者の権威の確立化過程」早稲田法学70巻3号
  86. 本久洋一「フランスにおける『労働契約』の誕生・準備的諸考案」早稲田法学会誌43号
  87. 籾山錚吾「EUのリストラ法制」日本労働研究雑誌421号
  88. 森戸英幸「雇用法制と年金法制(1)~(3)―被用者の引退過程に関する立法政策〔フランス〕」法学協会雑誌109巻9号,12号,110巻1号
  89. 柳屋孝安「従業員代表制に関する一考察─ドイツ事業所組織法の分析をとおして(1),(2完)」法と政治(関西学院大学)45巻3号,4号
  90. 山川隆一「在米日系企業とアメリカ雇用差別禁止法」武蔵大学論集40巻2・3号
  91. 山口俊夫「国際労働基準の設定─その現状と課題」世界の労働44巻10号
  92. 山口学「タイ 労働安全衛生政策とその問題点」日本労働研究雑誌35巻7号
  93. 山下幸司「イギリスにおける有期雇用労働者の法的問題」関東学院法学1巻2号
  94. 山下幸司「英米両国における労働協約の法的地位(1)」関東学院法学4巻2号
  95. 山田省三「イギリス労働法における『自治』─ウェダーバン対ハワース論争」『中央学院大学総合論集復刊1』
  96. 矢野昌浩「フランスにおける企業交渉の新たな展開(1),(2完)─その法的整序に関する動向との関連で」名古屋大学法政論集146号,148号
  97. 吉田美喜夫「ドイツにおける管理職員の利益代表法─1988年の『代表者委員会法』について」立命館法学230・231号
  98. 吉田美喜夫「タイの労働関係と労働法の特徴」季刊労働法174号
  99. 米津孝司「ヨーロッパにおける国際労働法─ドイツにおける労働基準法」日本労働法学会誌85号
  100. 李陽根「倒産時における労働者の保護について(1)~(3完)─中国と日本の比較を中心に」名古屋大学法政論集152号,153号,158号
  101. 劉志鵬「台湾労働法制の現状」季刊労働法174号
  102. 和田肇「ドイツの新労働時間法」日本労働研究雑誌422号

*以上の文献リストは主として『法律判例文献情報』156号(平成5年4月号)~187号(平成7年9月号)に基づき、山口純子(法政大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程在学)が作成した。