調査シリーズNo.155
求人情報・求職情報関連事業の実態
―求人情報・求職情報関連事業に関する調査結果から―

平成28年5月31日

概要

研究の目的

失業なき労働移動の実現を図るために、人材ビジネスの一層の発展が期待されている。

人材ビジネスの中でも、求人情報事業は、労働市場において大きなシェアを持ち、また、ヒアリング調査結果からは、求人情報事業に連動して求職者情報提供事業も拡大し、職業紹介事業の運営にも大きな影響を与えるようになっていることが分かっている。

一方、求人情報・求職者提供事業を網羅的に調査した先行研究がなく、その全体的な実態は不明のままである。

そこで、本研究は、より網羅的なアンケート調査を行うことによって、求人情報・求職情報関連事業の実態を把握・分析した上で課題を探り、人材ビジネスの一層の発展と今後の労働市場政策の立案に役立てることを目的とする。

研究の方法

求人情報企業等がどの程度あるのかについて不明であることから、種々のルートから調査対象企業リストを作成して、アンケート調査を配付・回収した。

併行して、インターネット検索等により、調査対象企業の求人情報事業の実施状況について確認している。

主な事実発見

<求人情報企業数の推定> 

  • 全国に400社近くの求人情報企業があると推定。

<事業内容>

  • 求人情報企業の4割超が求職者情報提供事業、職業紹介事業を実施(派遣事業は2割超)、職業紹介事業の許認可は5割超。

<求人情報事業の状況>

  • 多くの企業で取り扱う求人での非正社員求人の比重が高い(非正社員でも「臨時・アルバイト・パート」が中心)。
  • 求人情報事業の利用媒体は、紙媒体6割超に対して求人情報サイトが8割超と上回っている(図表1)。

図表1 求人情報事業の利用媒体別割合

図表1画像

  • 利用する紙媒体では無料求人誌が最も多く、次いで折込広告。有料求人情報誌は1割程度。広告掲載料は10万円未満のものが多く、比較的安価。
  • 求人情報サイトへの掲載も10万円未満のものが多く、紙媒体と同様に比較的安価。
  • 求人情報誌の発行形態としては正社員・非正社員両方向けのものが主流。
  • 求人情報サイトでは、紙媒体と同様に広告掲載料として料金を徴収する伝統的公募型が4割以上と多いが、求職者情報サイトを活用するものの方がより多くなっている。
  • 掲載求人はほとんどの企業が自社受注のものだが、1割は他社受注求人を掲載。
  • 求人情報サイトの事業区分別企業割合を推計した結果は図表2のとおり。

図表2 求人情報サイトの事業区分別企業割合

図表2画像

<求職者情報提供事業の状況>

  • 5割超の企業で求職者登録を実施(登録料は無料)、そのうち、8割が外部への提供を行い、1割超は紹介事業者等求人者以外に提供。
  • 登録求職者へのなんらかのサービスをほとんどの求職情報提供企業で実施。「適合する求人の推奨」を6割、「面接日の調整」を5割、「求人者からのスカウトメール送信」を4割が行っていた。

<ビジネス指向性類型(Bz類型)による違い>

  • 求人情報企業を職業紹介・労働者派遣の実施の有無、広告事業の実施有無で4類型(人材Bz型、広告Bz型、折衷型、専念型)に分類した結果は図表3のとおり。
  • 人材Bz型・折衷型に比べ、広告Bz型・折衷型と人材ビジネス系事業、雇用関連サービスの実施割合が高い。
  • 人材Bz型は求人情報サイト利用率が100%、他の3類型は求人情報サイト利用が7割~8割であり、紙媒体の利用では、広告Bz型>折衷型>専念型>人材Bz型となっている。
  • 人材Bz型と折衷型は登録求職者へのサービス(「適合する求人の勧奨」、「面接日の調整」等)の実施割合が高い。

図表3 求人情報企業のビジネス類型別割合

図表3画像

<求職者からの信頼を得るための取組>

  • 求人情報事業における信頼を得るための基本事項がなされていない企業が4分の1程度あり、広告Bz型・人材Bz型にその傾向が強い(図表4)。
  • 登録者の個人情報保護措置も不十分な企業が見られた。
  • 苦情受付窓口の明示で対応にばらつきが見られ、広告Bz型は窓口明示割合が低い(図表5)。
  • 求職者からの苦情では「求人情報の内容が実際と異なっていた」が約7割と最も多い。
  • 求人者からの苦情では「応募者がない、または、少ない」が最も多く約9割。求職者からの苦情で多い「求人情報の内容が実際と異なっていた」は約2割。

図表4 ビジネス類型別信頼を得るための取組

図表4画像

図表5 ビジネス類型別苦情受付の明確化状況

図表5画像

政策的インプリケーション

人材ビジネスの発展と健全な労働市場の形成を図るために次を提案した。

  1. 求人情報企業等の事業実態の把握方法の具体化
  2. 労働市場で信頼を得るための取組の強化
  3. 求職者情報を活用した求人情報事業の展開における職業紹介への移行手続きの明確化
  4. 求職者情報活用の進展に伴う求人情報事業関係自主ルールの見直し
  5. 業界の自主ルールの幅広い浸透のための仕組みの検討

政策への貢献

「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」(厚生労働省職業安定局)において本調査結果の一部が紹介されたところであり、今後の労働市場政策においての活用が期待される。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

プロジェクト研究「生涯にわたるキャリア形成支援と就職促進に関する調査研究」

サブテーマ「生涯にわたるキャリア形成支援に関する調査研究」

研究期間

平成26年度~平成27年度

担当者

亀島 哲
労働政策研究・研修機構 統括研究員

関連の研究成果

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